〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

羽田空港の発着枠決定・国際線編 〜就航路線はどこ?成田路線はどれだけ減る?〜

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2020年4月からの羽田発着枠増加のニュース、今回は国際線の配分を見ていきましょう。国内線についてはこちらの記事をご覧下さい。

 

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羽田発着国際線の発着枠配分の行方

まずは各国ごとの配分を見ていきましょう。なお、配分については日本側、相手国側同数です。

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アメリカ 12

中国 4

ロシア 2

オーストラリア 2

インド 1

トルコ 1

イタリア 1

スカンジナビア 1

(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー3か国共同)

フィンランド 1

 

前回はヨーロッパや東南アジアに手厚い配分でしたが、今回はアメリカと中国に多めに配分されています。また、ヨーロッパはロシアやイタリア、北欧と言った主要地域以外の部分で配分され、インドやトルコと言った地域にも初めて配分されるなど、いわゆるホワイトスポットへの配分が目立ちます。これまでパリやロンドン、バンコクにシンガポールと言った世界の主要都市が中心だった羽田の就航地のバリエーションは大きく広がる事でしょう。

 

次に、ANAとJALの配分を見て見ます。

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ANA 13.5枠

アメリカ6、中国2、ロシア1、オーストラリア1、インド0.5、トルコ1、イタリア1、スカンジナビア1

 

JAL 11.5枠

アメリカ6、中国2、ロシア1、オーストラリア1、インド0.5、フィンランド1

 

一見するとJALより2枠多いANAの配分は「また傾斜配分か⁉」と思われそうですが、今回はあくまでも両社の運航実績を基に配分したそうで、ANAの方が多いのは単純に就航都市が多いからだそう。確かに一番美味しいアメリカや中国は両社均等に配分されていますし、ANAのみに配分された都市のうちトルコとスカンジナビアはスターアライアンス内に提携相手がいますから順当なところ。むしろJALがこれらの国の配分を受けても使い道に困るでしょうね。

しかし、イタリアに関してはかつてはJALが直行便を飛ばしていた地域でしたので、イタリア路線の運航実績が殆どないANAに配分されるのは意外な気もします。これには昨年アリタリアとANAが結んだ提携が影響しているものと思われますが、まさかこの提携もこうなる事を見越して結んだ、って事はないよね・・・?

 

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とは言え、今回の配分にはANA、JALとも異存はないようで、 特にJALは「当社の意向を十分に汲んで頂いた」と、感謝のコメントを出したくらいです。少なくとも今回の配分に関しては先に発表されたアメリカ側の会社を含め、各社ともおおむね満足のいくものだった、と言えるのではないでしょうか。

 

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ANAとJALはどの路線に飛ばす?

ここからはANAとJALの両社が具体的にどの路線に飛ばすのかを考えてみたいと思います。

まずはANA。アメリカ路線に関しては現在羽田発はニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ホノルルに各1往復ずつ、成田発はロサンゼルスとホノルルが一日2往復とニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、ヒューストン、シアトル、サンノゼ、サンフランシスコに各1往復の合計11往復が就航しています。

このうちホノルルに関しては羽田のA380定期就航が難しいため、移転はないのではないかと思います。逆にワシントンDCはビジネス需要が多いのでユナイテッド同様羽田に移転させる可能性が高いと思いますし、ロサンゼルス線も1往復を羽田に移すのではないかと思います。残りの4枠ですが、成田から移すとなるとサンフランシスコとシアトルが可能性があるかと思いますし、新規開設だとユナイテッドのハブの一つであるニューアークが考えられます。また、ユナイテッドが却下されたヒューストンとグアムにANAが代わりに就航する、というのは考えられないでしょうか。特にグアムはANAが初めて就航させた国際定期路線という歴史がありますし、グアム空港も羽田移転を求めている事を考えると十分可能性はあると思うのですが・・・

 

次にそれ以外の路線ですが、中国路線は順当なのはビジネス需要の大きい上海1往復増加でしょう。もう1往復は北京の増便か、バランス的に大連か成都になりそうな気がします。オーストラリアは既にシドニーの深夜便を飛ばしていますが、昼間は完全に空港に寝かせている機材効率の悪い路線なので、昼間便を増便して効率的な機材運用にすると思います。

また、ロシアはモスクワで決まりでしょうし、インドは首都のデリー線よりもANA単独運航でビジネス需要のより大きいムンバイ線を移す可能性が高いと思います。トルコはイスタンブールで確定、スカンジナビアもコペンハーゲンになる可能性が高いと思います。最後にイタリアですが、観光需要を考えるとローマですが、ビジネス需要はミラノの方が大きいので、どちらに振るか悩ましいところ。しかし最後は観光需要狙いでローマに行きそうな気がします。

 

次にJAL。アメリカ路線は羽田発がニューヨークとサンフランシスコの2往復、成田発がホノルルが4往復とニューヨーク、ボストン、シカゴ、ダラス、シアトル、ロサンゼルス、サンディエゴ、コナ、グアムが各1往復の計13往復ですが、ANAとは逆にホノルル路線を1〜2往復羽田に移すのではないかと思います。また、ロサンゼルス線は新設という形で1往復設けるのではないでしょうか。この他移転の可能性としてはアメリカン航空最大のハブであるダラスが考えられますし、新規路線としてはアメリカンが却下されたラスベガスもありえるかも知れません。あと可能性があるとすればボストンかシカゴあたりでしょうか。

次にそれ以外の路線は中国路線はANA同様1枠は上海だと思いますが、もう1枠は新規開拓で天津あたりはどうでしょうか?JALの場合中部〜天津で就航実績がありますし、ANAが未就航の地域なので結構穴場だと思いますが・・・

ロシアはモスクワ以外には考えられませんし、インドは素直にデリー線を移動させるでしょう。オーストラリアも順当にシドニーですし、フィンランドもヘルシンキしかあり得ないでしょう。こうして見るとJALはアメリカ以外の路線の予想は容易ですね。

 

成田路線への影響は?f:id:meihokuriku-alps:20190904201238j:image

 

さて、羽田発着枠の大枠が固まったところで、今後成田空港発着路線に与える影響はどれだけあるのでしょうか?短期的には路線の減少は避けられないと思います。

まずアメリカ路線ですが、既にデルタが撤退を表明している他、ユナイテッドもシカゴとワシントンD.C.の羽田移転を決めています。日系キャリアも一部路線の羽田移転や減便は避けられないでしょう。特にビジネス需要の大きい路線や複数便運航の路線が危ないと思います。

それ以外の路線もロシア、スカンジナビア、フィンランド、トルコの路線は羽田移転は避けられないでしょう。イタリアはアリタリアがローマとミラノのどちらかは残すと思いますし、オーストラリアもカンタスは羽田に移るかも知れませんが、ジェットスターとJALのメルボルン線は成田に残りますので、一定数は残ると思います。

 

一方で成田に新たに就航する航空会社もあります。エルアル・イスラエル航空が成田への就航を表明している他、JAL系LCCのジップエアも来年4月から就航予定。新規路線に関してもANAがパース、チェンナイ、ウラジオストク線を、JALがウラジオストクとベンガルール線を就航予定だったりと、羽田の発着枠に限りがある以上成田への就航がなくなることはあり得ないと思います。

今回の増枠後は当分羽田の発着枠が増える事はないと思いますので、今後は成田をどう活用し、新規路線を誘致していくかが課題となるでしょう。今まで羽田に力を入れていた分、今後は成田路線の充実にも振り向けて羽田と成田を「日本の空の両輪」として育てて行って欲しいですね。

 

 

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羽田空港発着枠の配分決定・国内線編 〜新規参入枠の見通し〜

9月2日、国土交通省航空局は羽田空港の発着枠配分を決定しました。日本側全体で25枠増加となる国際線枠については改めて紹介し、今回は回収の上再配分となる国内線の発着枠について考えてみたいと思います。

 

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羽田発着枠に関する以前の記事はこちらもご覧下さい。

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さて、今回の発着枠増加で増えるのは国際線のみ。国内線に関しては配分がないため、既存の会社の発着枠19枠を回収した上で再配分するという形を取りました。

 

まず回収される発着枠ですが、

JAL 8

ANA 7

スカイマーク、エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー 各1

 

一方の再配分は

JAL 5

ANA 6

スカイマーク 2

エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー 各1

新規参入会社用 3

 

この結果、新しい羽田国内線の配分は

JAL 181.5(-3)

ANA 170.5(−1)

スカイマーク 37(+1)

エアドゥ 23

ソラシドエア 25

スターフライヤー 23

新規参入用 3(就航までは既存航空会社が暫定利用)

 

となります。

 

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全般的にはJALが一番割りを食っている印象ですね。発着枠だけを見るとJALはANAより10枠以上多いのでJALが余計に削られるのは分からなくもないですが、それでもANAがエアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーとのコードシェアで実質的に71枠の「隠れ発着枠」を持っている事を考えると本当に妥当なのかと言う気はします。

一方でスカイマークが1枠増加になったのは良かったと思います。他の新規参入組と違い、スカイマークは今のところANAとのコードシェアは行なっていませんから、第三極として踏ん張って欲しいところです。折しも神戸空港も発着枠増加が認められたばかりですから、神戸線増便に充てるのでしょうか?

 

ちなみに、今回再配分された発着枠は札幌、大阪、福岡、那覇のいわゆる幹線以外の路線に使われる事になります。具体的にどの路線に配分されるかは航空会社次第です。

また、今回の配分とは別に廃止された羽田〜三宅島線と大島線に配分されていた2枠は「政策コンテスト枠」に廻される事になります。現在、山形、鳥取、石見の3路線に1枠ずつ配分されていますが、新たな2枠については年度内にコンテストを実施するそうです。どの空港が手を挙げるのか注目ですが、個人的には搭乗率保証で高搭乗率を維持している能登空港に手を上げて欲しいなと勝手に思ってます。

 

そして、今回一番注目なのが久し振りに割り当てられた「新規枠」羽田空港に新規に就航する航空会社向けに優先的に配分される枠ですが、果たして完全な「新規参入会社」が現れるかどうかは疑問です。

自由化直後ならいざ知らず、新規参入会社がある程度規模を大きくした今からだと大手2社プラス既存の新規参入社との競争になりますので、3枠だけでは不利なのは明らか。それに今後近い将来羽田空港の発着枠が増える予定はありませんから、新規会社の羽田路線が増える見込みは当面ありません。初期のスカイマークやエアドゥが3枠だけの配分で利便性や効率性の低さで大手にコテンパンにされた事を考えると、今更一から航空会社を立ち上げて参入する物好きがいるとは思えないのです。

 

となると考えられるのは既存の会社のうち羽田に未就航の会社が参入する事。あり得るとすればフジドリームエアラインズかエアアジアジャパンではないかと思います。

 

まずFDAですが、静岡と小牧をベースに地方間路線を飛ばしてきましたが、今年の10月から神戸にも就航し、初めて関西圏に進出します。一方の首都圏は羽田は発着枠がなく、成田もLCCがしのぎを削る中の参入は体力面で厳しいためこれまでは考えてもいなかったと思います。

しかし羽田の発着枠が出るなら話は変わって来るのではないかと思います。エンブラエル機では広島や鹿児島といった大規模地方路線はキャパ的に厳しいですし、JALとの関係を考えるとJAL単独路線への参入も難しいですが、ANA単独路線だったらどうでしょうか?庄内、富山、八丈島、鳥取、佐賀。737クラスでは厳しくともエンブラエル機なら採算に乗りそうな路線はいくつか考えられます。

また、隠岐や徳之島、種子島といった羽田未就航の離島に飛ばしても面白そうですし、羽田発着路線の常識を覆してくれるかも知れません。

 

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一方のエアアジアジャパンは中部発着路線を増やし、ようやく3機フル稼働体制となりましたが、他の空港の拠点化のメドは立っていません。特に成田はピーチ、ジェットスタージャパン、スプリングジャパンとLCCが3社もひしめいている現状では参入の余地はないと言っていいでしょう。

そんなエアアジアジャパンにとっては羽田発着枠は3枠でも喉から手が出るほど欲しいのではないでしょうか。仮に羽田〜札幌に就航する事が出来ればLCC初の羽田発国内線として注目を集めますし、本数は少ない分は低価格で十分カバーできます。何より他のLCCとの差別化も図れますし、羽田就航の実績を作れば将来の配分も期待できますから、発着枠確保に動く可能性は十分あると思うのです。

ただし、エアアジアジャパンの場合は監督官庁である国交省との関係が良くないのがマイナス材料です。また、既存の航空会社もLCCであるエアアジアジャパンの羽田参入に難色を示して反対するでしょうし、他のLCCも反対する可能性が高いので、実現する可能性は低いと思います。羽田未就航の会社を入れるとしたら、やはりFDAの方が無難でしょうね。

 

とは言え、新規参入会社が入ったらそれはそれで面白いですし、FDAやエアアジアジャパンが入っても羽田の国内線に変化をもたらす事でしょう。色々思うところが無いわけではありませんが、配分する以上は利用者の為に有益に活用して欲しいですね。

 

 ↓新規参入組で真っ先に経営破たんしたエアドゥの破たんまでのいきさつを書いた本。体力のない新規参入組が中途半端な発着枠しかもらえないとこうなるという教訓と言えます。

 

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JALのA350の羽田発就航2便目(JAL329便)搭乗記

2019年9月1日、JALの新機材、エアバスA350-900の就航日を迎えました。私も以前の記事でも言った通り、18:10発のJAL329便、羽田発の就航2便目に乗って来ました。初便じゃないのは残念でしたが、2便目も2便目で就航初日特有の高揚した雰囲気を感じることができました。まあ2便目のレポやる人なんてそうはいないと思うのでこれはこれで貴重な記録になると思います。

 

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手荷物預かり待ちの時に対応してくれた係の方が便名を見て「A350ですか!今日就航なんですよ!」と反応してくれました。やはりJAL社内でも今日は特別な日みたいですね。

 

さて、通常初便就航のセレモニーは搭乗ゲート前でやるのが一般的ですが、今回は第1ターミナルの中央のホールでも10時から行われました。おかげで初便の予約に失敗した私もセレモニーを見る事ができました。ご一緒したムーンライト備後さんありがとうございました。

ちなみに初便のフライトにはご一緒したムーンライト備後さんが登場したほか、人気YouTuberのスーツさんやおのださんなど、錚々たるメンバーが乗っていたようです。こっちの便が取れてたらワンチャン声かけるチャンスがあったかも・・・


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ムーンライト備後さんと別れた後、搭乗便まで時間があったので一旦羽田空港を離れ、動画素材用に東急の撮影に勤しんだり、神保町で何か資料になりそうな本がないか物色してたりしました。

 

・・・もはや一種の職業病ですねw

 

その後16時過ぎに羽田空港に戻りました。「是非お会いしたい」と言って下さった®️さんと待ち合わせだったのですが、ここでスマホの充電を切らすと言う失態を犯し、泣く泣く乾電池式の充電器を買う羽目に。コインロッカーの施錠も航空券もスマホで済ませていたのでスマホの電源が切れる=詰み、と言う状態だったんです・・・おかげで®️さんをお待たせしてしまう事に。®️さん、その節は大変失礼しました。またお土産も頂きありがとうございました。

 

 

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さて、®️さんとしばしお話した後制限エリアへ。いつも乗る富山便は端の搭乗口か下手したらバスラウンジなのですが、今回は保安検査場を出てすぐの9番ゲートでした。流石幹線&最新鋭機は扱いが違うw

 

そしてゲートで遂にA350とご対面!

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流石に初便ほどではないですが、明らかにこれ狙いだった人が多数カメラを構えたり、初便担当のパイロットさんと記念撮影したり、2便目のクルーの方が総出で乗客に挨拶したりと、就航初日の独特のテンションを感じることができました。東京には昨日入ったのですが、そこかしこでA350の広告を見ることができ、JALがこの機体に社運をかけている事がよく分かります。

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定刻では18:10出発だったのですが、前の便の遅れで18:30発に変更。まあ慣れない機材で初日で満席、しかも機内を見回してなかなか席に着かない人も多かったと思いますのでこれは仕方ないなと思います。実際、私が乗った2便目もなかなか列が進みませんでしたし。

ああ、そう言えば普段は十数人程度の優先搭乗がこの便では5〜60人くらいいました。そこまでいたら優先搭乗の意味ないやん・・・どれだけ解脱者がいたんだか。

 

そして機内に入りました。新造機だけあって機内はいわゆる「新車の匂い」がして否応にも新しい飛行機に乗るんだとテンションが上がります。座席は普通席ですが、座面は革張り、背面は布中心で座り心地はいいです。背面も革だと背中がズルズルと滑るのでこの組み合わせは良く考えてあるなと思いました。薄型シートなので足元にも余裕があり、短時間なら苦にならないレベルです。

また、背面には可動式の枕も付いており、これも快適性向上に一役買っています。北陸新幹線などでもこの手の枕はありますが、これがあるとないとでは快適性が違うんですよね。

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そしてA350の大きな特徴の一つが全席シートモニター。国内線ではJASの777が最初でANAにもA321の例がありますが、JALの方は機外カメラ装備という「飛び道具」があります。これは前輪と尾翼部分に取り付けられた機外カメラの映像をモニターに映し出すと言うもの。国際線機材では他にもあったと思いますが、恐らく国内線機材では初めての試みではないかと思います。

 

※当初「ANAのA321が最初」と書きましたが、ツイッターでご指摘を受けて調べた結果、JASの777で全席シートモニターを採用していました。訂正の上お詫び申し上げます。


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夜間飛行と言うこともあって巡航中は真っ暗でしたが、離着陸時は滑走路の光や都市の夜景が映し出され、幻想的な光景をモニター越しに楽しむことができます。A350のような大型機だと窓側の席に当たる確率は2割台と低いですが、この機外モニターがあれば景色を楽しめない不満はいくらか和らぐのではないでしょうか。個人的にはこの機内モニターがあるだけでも積極的にA350に乗りたいと思ってしまいます。

 

ただ、ちょっと残念だったのが機内WiFiの調子が悪く使う事が出来なかった事。機内アナウンスでもその旨お詫びがありましたが、折角の新機材ですしこの点に関しては早急に改善して欲しいところですね。

 

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飲み物はコンソメスープと迷いましたが「スカイタイム キウイ」を選択。スッキリした飲み心地とキウイの甘みと酸味が効いてて美味しかったです。うどんですかいやラウンジのビーフカレーもですが、JALって結構オリジナル商品に力を入れていますよね。これもJALのヘビーユーザー確保に一役買っていると思います。

 

 

2便目なので初便のような記念品はありませんでしたが、今日が初日である事を意識してか、機長のアナウンスはA350が今日から就航した事に触れ、静かさや軽量化を図ってCO2を削減し、環境に優しい飛行機とA350の紹介をしていました。

また、到着時のチーフパーサーのアナウンスもA350を「JALの全社員の想いを込めた新しいフラッグシップ」と表現し、型通りの言葉ではない、A350に対するJAL社員の想いを代弁したかのようでした。これだけでもJALがA350に力を入れ、並々ならぬ想いで仕上げて来たのだなと言う事が伝わって来ます。無理してでも初日に乗ってその想いに少しでも触れる事が出来て本当に良かったです。

思えば荷物預けの時に気さくに話しかけてくれた係りの方や搭乗前に一斉に挨拶するクルー、記念撮影に気さくに応じるパイロットや植木会長の姿を見て、「本当にJALは変わったんだな」と思いました。ANAと比べても本当に気さくでフレンドリー、それでいてプロとしての一線はしっかり守っている。ひょっとしたらかつてのJASのクルーもこんな感じだったんでしょうか。改めて稲盛和夫氏の改革の凄さを垣間見る事ができました。

 

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そして20時30分頃、JAL329便は定刻より30分遅れで福岡空港に到着。機内では那覇行きの乗り継ぎの他に羽田行きの乗り継ぎ案内もしていました。

・・・つまり福岡には泊まらず、そのまま羽田に引き返す人が一定数いるって事ですね。この界隈ではよくある事です。明日は仕事と言う方も多いでしょうし。

私は今日中に富山に戻る術はもうないので大人しく休み取って福岡に一泊しました。まあ、もし初便だったら私も同じように羽田に引き返して富山行きに乗るか、小松行きの飛行機に乗ってその日のうちに富山に戻ろうとしてたと思いますので人の事は言えませんが・・・話は前後しますが、今回の旅行ではA350以外にも色々ブログのネタを仕入れましたので、順次書いていきたいと思います。

 

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ANAのA320が「LCC仕様」の座席配置に?どうしてそうなった

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一昨日あたりからTwitterなどでANAのHPや予約スケジュールなどで「座席数180席」のA320が出現したと話題になっています。機種名に「32G」とついている便が問題の機材のようで、昨日ANAの公式HPの機材一覧にも出て来ました。

togetter.com

 

で、問題の機材のシートマップを見て見ると、確かに座席数180席でプレミアムクラスの設定は当然なし。説明欄には「当機材は180席仕様の為他のA320機材より座席間隔が狭くなっております」とわざわざ注意書きもされていますし、機内WiFiもなし。この座席数と言い、シートマップのレイアウトと言い、LCCのA320と同じ座席配置ですね・・・

www.ana.co.jp

 

 この機材の出どころはどこなのでしょうか?少なくとも既存のA320を改修したわけでないのは間違いありません。今ANAに残っているA320は機齢20年を超えており、間もなく退役を迎える機体ですから今更改修なんてしないでしょうし、エンジンの形式も違います。

種明かしをするとこの機材は系列LCCであるピーチかバニラ、恐らくバニラの機体である可能性が高いと思います。現在、バニラエア所属のA320は順次ピーチ仕様への改修を進めており、改修初号機のJA04VAがピーチ仕様になって就航した他、JA06VA、JA09VA、JA13VAの3機が改修の為一時抹消中。最終的にはバニラ所属の15機のうち12機がピーチ仕様に改修されますが、言い換えれば残りの3機は改修されず、ピーチには行かないという事になります。

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この他にもピーチの初号機JA801Pが登録抹消されていますが、こちらは既にエアバスに所属が移っており、登録記号も変わっていますから、この機体がANAに来るとは思えません。後述しますが「32G」の機体がアサインされている便数を考えると2~3機程度で運用しないと廻せないので、やはりピーチ行きにならない元バニラ機材がバニラの運航終了後、ANA本体に来ると考えるのが自然なようです。

www.aviationwire.jp

 

では、実際にどの路線に180席仕様のA320が投入されるのでしょうか?1月6日以降のダイヤを見てみると以下の3路線3往復が該当します。

 

羽田〜八丈島、岩国、佐賀 各1往復

 

また、来年3月以降のダイヤで探して見ると以下の5路線6往復が該当しました。

 

羽田~庄内 2往復

羽田~八丈島 1往復

羽田~富山 1往復

羽田~能登 1往復

羽田~石見 1往復

 

見事にANAの単独運航路線ばかりですね。しかし庄内や富山はJRとの競合があるし、能登は地元自治体が搭乗率補償まで付けて集客に協力してるのにこんな機材入れたら逆効果になる気がするのですが・・・

JALやSKYなど他社競合がある路線に詰め込み仕様のA320を入れないあたり、ANAもこの機材が世間でどう思われるか分かっているような気がします。実際、ツイッターを見ててもこの機材に対する評価は散々で、早くもこの機材を避けて乗ろうと言う声があるほどの「嫌われ機材」になりつつあります。元バニラの機材と言う事はオーディオ設備もないでしょうから、「ハズレ機材」と思われても仕方ないのではないでしょうか。

 

それにしても、なぜANAは自らの評価を下げかねない「詰め込み仕様」の機材を入れようとしたのでしょうか?恐らくですが、スペースジェットの度重なる納入遅延でANAの機材繰りが深刻化しているのではないでしょうか?今までは737-500やA320といった老朽機の退役先延ばしで何とかしのいできましたが、737-500は来年の退役がアナウンスされていますし、A320も10月以降は別の機材に代わる事が多くなっていますので、引き延ばしはそろそろ限界になりつつあります。恐らくこれらの機材の穴は737-700型で埋めることになると思いますが、それでもギリギリですし、来年春には羽田空港の発着枠増加で更に多くの飛行機が必要になります。

しかし新造機を買うにも納入までに数年単位の時間がかかりますし、中古機もそう簡単に出物が出るわけでもない。リース機だってA320クラスの旅客機は引き合いが多く、条件の良い機材は簡単には出て来ません。そこに出てきたのがピーチに移籍しないバニラエアのA320。バニラの機材の中にはANA本体が発注した機材も多いですし、手続きの面でも比較的移籍が容易にできるのではと思うので、繋ぎと割り切ってANA本体で飛ばそうとするのではないかと思います。長期的な使用を前提にするなら機体の改修をするでしょうから、この180席仕様のA320を飛ばすのは精々1〜2年程度ではないでしょうか。

 

切羽詰まった事情があるのだと思いますが、そんな事情を知らない一般の利用者にとってはサービス低下としか映らないでしょうし、やはり改修せずに使うのはブランドイメージ上良いとは言えません。また、競合会社のないANA単独路線に入れると言うやり方も余り共感を得られる方法とは言えないでしょう。運賃も他の機材と変わらないみたいですし、悪い意味で話題になって顧客離れに繋がらないと良いんですが・・・

 

 

【10月26日追記】

180席仕様のA320投入についての理由や背景などを書いた記事が出ました。やはりANAがリースしてバニラにサブリースしていた3機を転用するようです。投入の理由としてはボーイング787のエンジン問題て他の機材の稼働率が上がった結果退役が早まり、一時的に国内線用機材が不足する事、また、現在のA320と同じ166席仕様に改修した場合、設計や配線変更など大掛かりな改造が必要となり、当局の承認などに掛かる期間などを考えると2年近くかかるそうで、路線維持やオペレーションの安定を優先してそのまま投入することを決めたそうです。

ANAにとっても今回の180席仕様のA320投入は「仕方なく」の部分が大きく、背に腹は代えられない苦肉の策だったようです。787の納入遅れ以来、どうもANAの機材繰りは綱渡りを強いられることが多いようですね・・・機材運がなさすぎると言うか。

 

それでもダッシュ8-400型と同様のWiFi活用のサービス(インターネット接続なし、機内コンテンツの利用のみ)を導入するなど、できる限りサービス格差は埋めようとしています。とは言え、事情を知らない人も多いと思うので、実際に就航したら色々と言われるのではないかと思います。

180席仕様のA320の運航期間は1年程度だそうで、その後の動向は分かりませんがリースバックされるものと思われます。まあ、あまり長期間運用すると流石に色々言われるでしょうから、繋ぎと割り切って一年間付き合うしかなさそうです。羽田~富山線にも投入が予定されているそうなので、恐いもの見たさで一度乗ってみようかな・・・

 

www.traicy.com

 

 

 

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デアゴスティーニの「JAL旅客機コレクション」創刊。沼に沈む気しかしない。

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Traicyを見てたらもの凄く物欲を掻き立てられる記事を発見してしまいました。

デアゴスティーニから「JAL旅客機コレクション」創刊、だと・・・?

 

www.traicy.com

 

早速デアゴスティーニのHPを見て見ましたが、創刊号は9月10日発売で税込990円、2号目からは2760円の税別で2週間おきに発売されるようです。1/400スケールのダイキャストモデルと冊子がセットになっていますが、このダイキャストモデルの凄いところはJALと航空機メーカーの監修の元作られているという事。そして現在のJALの機体だけでなく、レシプロ機時代も含めた過去のJALの機材やグループ会社の機材、さらにはJALと合併した旧JASの機材までもがラインアップされる予定という、かなり本気度の高い内容です。

 

 

deagostini.jp

 

初回は現在のJALの最新型機材、ボーイング787-9ですが、第2号は一昔前のJALの象徴、ボーイング747-100型ですし、第3回はJASのレインボーセブンが早くも登場、第5回にはJAS塗装のA300-600Rと、航空ファン、特に旧JASのファンのツボを突く機材チョイスです。上手いところ突いてくるなあ・・・

そして付属の冊子ではモデルの機体の紹介に加え、入れ替わりでJALの全てや航空大百科、世界のエアポートなどのコンテンツも掲載されているそうで、こちらも揃え甲斐がありそうです。しかし、毎号3000円前後もするのか・・・10月からは消費税も上がるし痛いなあ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あれー?何で定期購読してるんだろう?

不思議だなー(棒)

 

 

 

はい、生まれて初めてこの手の分冊百科?と言うのに手を出してしまいました。

予定は全80号らしいので、全て揃えるには向こう3年間、毎月6000円程デアゴスティーニにつぎ込み続けることになり、総額は軽く20万を超える見通しです。下記の記事によると創刊号を買った後最後まで買う人は全体の1~2割程度だそうですが、確かにこれだけ高額で長期間だと、途中で脱落したり、欲しい号だけ買っておしまい、って人も少なからずいそうですよね・・・

 

www.oricon.co.jp

 

とりあえず、9月10日に届く予定の第一回のダイキャストモデルを見て、今後買い続けるかどうかを決めたいと思います。まあ、少なくとも旧JAS機材やDC-8なんかは個人的に欲しいので、少なくともその辺までは買う事になるんじゃないかと思います。まあ、こうやって定期的に買い続けたら続けたでこのブログや動画のネタになるかなと邪な考えもあったりするわけで(オイ)

創刊号が届いたらこのブログでレポートしたいと思います。

 

↓とりあえず創刊号は予約販売中。気になった方、初回は990円なので試しに買ってみてはいかがでしょうか。なお、これで沼に沈んでも当方は一切責任を負いません。 

 

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ボーイングvsエアバス、世界の航空会社はどっち派?

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世界の航空機メーカーは100席以上の機体に限るとほぼボーイングとエアバスの2社に分かれ、大半の航空会社で両社の航空機が使用されています。しかし中には「ボーイングだけ」「エアバスだけ」という会社もありますし、大型機はボーイングだけど小型機はエアバスだけ、逆に大型機はエアバスしか使ってないけど小型機はボーイングだけ、という会社もありますので、航空会社によってボーイングとエアバス、両者の機材の使い方は様々です。

昔、月刊エアライン2001年1月号でボーイングとエアバスのライバル関係を取り上げた特集がありましたが、その中に世界の航空会社がボーイング派か、エアバス派かを比較した記事がありました。この頃はまだボーイングが吸収した旧マクドネル・ダグラス機がまだ多数残っており、エアバスは当時はまだ新興メーカーと言う事もあって、古くから航空会社との関係を築いてきたボーイング優勢、と言う感じでした。あれから18年、ボーイングとエアバスの複占がすっかり定着し、機材更新サイクル的にも一回りした今、世界の航空会社での両社の勢力図はどうなっているのでしょうか?調べてみました。

ルール

今回対象にするのは保有機数50機以上の旅客航空会社ですが、国を代表するフラッグキャリアに限り30機以上を対象にします。とは言っても対象機数に満たなくてもそれに近い機数であれば有名どころの会社は対象にしている場合もありますし、逆に抜けてる会社があるかも知れませんがご容赦下さい。フェデックスなどの貨物航空会社は旅客会社に比べて機材情報が少ないので対象外にしますが、旅客航空会社が保有する貨物機は比較対象にします。

機材についてはボーイングとエアバスのみを比較対象とし、エンブラエルやスホーイなど他の会社は仮に両者の資本が入った会社でも対象外です。但し、ボーイングに吸収された旧マクドネル・ダグラス機はボーイング機、A220になった旧ボンバルディアCシリーズはエアバス機としてカウントします。機材については787やA350などの双通路機を大型機、737やA320などの単通路機を小型機として分類してそれぞれの割合を比較します。

比較する航空会社についてですが、LATAMやエアアジアのように国籍の関係で会社は別でもブランドが統一されている場合は同一会社として扱います。逆にエールフランスKLMや、カンタスとジェットスターのように資本は同一でもブランドや運営は別な場合、ヴァージングループのようにブランドは同じでも経営や資本が別の場合は別会社として扱います。

 

 なお、各航空会社の機材データについては基本的に月刊エアライン2018年11月号の特集を参考にしました↓

 

①全部ボーイング

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ダグラスが弱体化してボーイングに吸収され、エアバスが今ほど力を持っていなかった頃はボーイングだけと言う会社は珍しくありませんでした。コンチネンタル航空やKLMオランダ航空、カンタスやJALなどエアバス機は買わず吸収した旧マクドネル・ダグラス機を含めてボーイングのみと言う会社は結構ありましたが、現在ではそう多くはありません。

現在ボーイング機のみの会社で一番大きいのはは737オンリーのサウスウエスト航空。まあここは単一機材がセオリーの元祖LCCですから当然と言えますが、その737だけで735機保有は圧巻です。他にも737オンリーで機材の多いLCCはアイルランドのライアンエアーやブラジルのGOL、UAEのフライドバイが挙げられます。この他はカナダのウエストジェットは767と737の2機種体制ですがボーイングだけ、ノルウェージャン・エアシャトルも機材は787と737の2機種を保有しておりボーイングだけの構成ですが、将来的にはA321neoも導入予定ですので、いずれこのグループからは外れます。

次にフルサービスキャリアでボーイングオンリーの会社ですが、メキシコのアエロメヒコ、エルアル・イスラエル航空、ロイヤル・エア・モロッコ、アイスランド航空、LOTポーランド航空、ケニア航空、厦門航空、山東航空の8社。このうちエルアルはアメリカとの強固な同盟関係もあってその歴史の殆どでアメリカ製の旅客機を使い続け、特にジェット時代になってからは1機だけMD-11をリースで使った以外は全てボーイング機という筋金入りのボーイング派です。また、エアバスのおひざ元である欧州でもボーイングのみのフラッグキャリアが2社いるのは特筆されますが、昔に比べるとボーイングだけ、という会社はずいぶん減ったなと言う印象です。

 

②全部エアバス

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昔はエアバスのみ、という会社はいませんでしたが、旧ダグラス機をメインに使用していた会社や欧州の航空会社を中心にエアバスに鞍替えするケースが目立っています。また、近年ではLCCがエアバスA320シリーズを採用する例が目立っており、単一機材に統一というLCCのビジネスモデルも相まってエアバスのみと言う会社は実は結構多いんです。

 

まずフルサービスキャリアでエアバスだけと言う会社ですが、イベリア航空、フィンエアー、アイルランドのエアリンガス、ブリュッセル航空、TAPポルトガル航空、南アフリカ航空、スリランカ航空、天津航空、吉祥航空、四川航空の10社。将来的には737NGをA320neoに置き換える予定のスカンジナビア航空もこのグループに入る予定です。また、中国でエアバスのみの会社4社のうち3社は海南航空グループに属していますが、海南本体はボーイング寄りな機材構成なのが面白いところです。

次にLCCですが、これは本当に多いです。まずボーイングのおひざ元アメリカではジェットブルー、スピリット航空、フロンティア航空の3社がA320シリーズだけ。かなりアメリカ市場に食い込んできています。さらにアジアLCCの雄、エアアジアもA330とA320のエアバス機のみでボーイング機は創業期に737を使用しただけ。また、イギリスのイージージェットも創業後しばらくは737シリーズを使用していましたが、途中でエアバスに鞍替えして現在はA320シリーズのみの運航です。

この他LCCでエアバス機のみの会社はメキシコのボラリス、インテルジェット(SSJ100も購入してます)、スペインのブエリング航空、ハンガリーのウィズエアー、インドのIndiGo、フィリピンのセブパシフィック航空、ベトナムのべトジェットエア中国の春秋航空、北京首都航空が挙げられ、LCCでエアバス機だけという会社は14社とボーイングを引き離しています。ちなみに、ルフトハンザ傘下のユーロウィングスも機材の殆どはエアバス機なのですが、なぜか1機だけ737-800を運航しているため、後述の⑥のグループに入ります。

 

③大型機ボーイング、小型機エアバス

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「そんな奇麗に分かれるもんなの?」と思われるかもしれませんが、意外や意外、このタイプの会社は結構あるんです。代表的なのがカンタス系列のLCC,ジェットスター。かつては短距離はA320、中長距離はA330とエアバスオンリーの構成でしたが、近年中長距離機をB787に置き換えたため、このグループになりました。また、ニュージーランド航空もかつてはボーイング機のみの構成でしたが、小型機をA320に置き換える一方、長距離路線は引き続きボーイング製の777や787を購入したため、奇麗に分かれたという経緯があります。この他にもエアインディアとパキスタン航空がこのグループに該当します。

④大型機エアバス、小型機ボーイング

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では逆パターンはどうでしょうか?実は意外とこのグループに該当する会社も何社か存在するんです。小型機は長年慣れ親しんで互換性もある737を使い、大型機はエアバスに置き換える、というタイプの会社が多いですね。

代表的なのはマレーシア航空。以前は大型機、小型機共にボーイング製の割合が多かったのですが、大型機に関してはエアバス機の比率が増えてきたところに、2014年にボーイング777の連続事故(もっとも、これはボーイングの責任ではないですが)が発生し、2016年までに全機売却。結果、大型機はエアバス、小型機はボーイングという機材構成になりました。また、インドネシアのLCC、ライオンエアも元々は737オンリーの機材構成でしたが、中距離路線用にA330を購入した結果、このグループになりました。この他、アルゼンチン航空がこのグループに該当します。

 

⑤大型機ボーイング、小型機両方

 

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このグループの代表格はユナイテッド航空でしょう。元々ユナイテッドはボーイングとは同根企業だったうえに、合併相手だったコンチネンタル航空もボーイングのみの機材構成とボーイング寄りな会社でしたが、今でもエアバス機はA320シリーズのみでボーイング機が主力です。ただし、そのユナイテッドもA350を45機発注していますので、将来的には⑨のグループに移行する見込みです。

この他ロシア航空と30機以下ではありますがウズベキスタン航空も該当しますが、実はこのグループ、該当するのはこの3社しかありません。大型機はボーイング、エアバスともに複数機種あるのに対し、小型機に関してはボーイングは737のみ(生産中止になった機種も含めると717、757もあり)、エアバスもA220が加わるまではA320のみとバリエーションが少なく、航空会社も機材統一の観点からどちらか片方に集約する傾向にありますので、今後もあまり出てこないグループと言えます。ちなみに、ANAも少し前まではこのグループでしたが、空飛ぶサンパチ君A380を導入してエアバスの大型機も運航するようになったため、後述する⑨のグループに移動しました。

 

⑥大型機エアバス、小型機両方

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現在はスカンジナビア航空がこのグループに該当しますが、前述の通り、将来的にはエアバス機に統一される予定で②のグループに移行します。あとは深圳航空が大型機はA330型4機だけですが、一応このグループに該当します。また、767が退役して大型機はA330のみになったハワイアン航空も今はこのグループですが、将来的にA330は787に置き換えられる予定ですので、⑤のグループに移行します。ちなみにハワイアン航空はボーイングの小型機は717のみという、レアパターンな航空会社です。

こちらのグループも⑤のグループと同じ理由で今後出てくることはあまりないでしょう。

 

⑦大型機両方、小型機ボーイング

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⑤や⑥とは打って変わり、このグループは該当する会社が結構出て来ます。つい最近A350が納入されたJALも①のグループからこちらのグループに移行しました。

このグループの代表格はKLMオランダ航空。ヨーロッパの航空会社の中では珍しく、伝統的にボーイングと親密な航空会社ですが、エールフランスとの統合後はA330がフリートに加わっています。と言ってもA330は5機だけであり、ボーイング優位の機材構成に変わりはありません。また、スペインのチャーター会社、エアヨーロッパもこのグループに該当します。

また、中東ではオマーンエア、アフリカではエチオピア航空、アジアではガルーダ・インドネシア航空やチャイナエアライン、海南航空、上海航空が該当します。オセアニアではカンタス、ヴァージン・オーストラリアの2大エアラインが機材構成は違えど仲良くこのグループに入りました(会社自体は仲良くはないですが)

 

しかし、このグループは将来的には数を減らすかもしれません。737MAXの連続事故に伴う運航停止でA320に切り替える動きが出ているためです。事故の当事者の一人であるエチオピア航空は737MAXの発注をキャンセルしましたし、ガルーダも発注取り消し。チャイナエアラインも次期小型ジェット機としてA321neoを発注しましたので、将来的には⑧のグループに移る事が見込まれます。ボーイングにとって737MAXを諦められないのはこういった事情もあるんです。

 

⑧大型機両方、小型機エアバス

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実はこのグループに該当する航空会社は今までのパターン以上に多いんです。欧州の有力キャリアが小型機をA320に統一したり、以前は737を使用していた会社が置き換えを機にA320に鞍替えしたりするケースが多い為です。これも単通路機がエアバス優位という今の航空機情勢を示していると言えます。

 

欧州ではルフトハンザ、エールフランス、ブリティッシュエアウェイズといった三大キャリアが揃ってこのグループ。大型機に関してはルフトハンザはエアバス優位、エールフランスは中間、BAはボーイング優位と差はありますが、小型機はA320に統一している点は共通です。この他欧州ではルフトハンザグループのオーストリア航空とスイスインターナショナルエアラインズ、その他ではアリタリア航空の合計6社が該当します。

中東でもこのパターンの会社は多く、エティハド航空とカタール航空、サウジアラビア航空、オマーンエア、クウェート航空、ガルフエアの6社が該当します。アジアではアシアナ航空、エバー航空、フィリピン航空、ベトナム航空が該当。また、子会社運行分も含めるとタイ国際航空とキャセイパシフィック航空もこのグループです。

また、南米では二大航空グループのLATAMとアビアンカもこのグループ。LATAMの前身のうちブラジルのTAMはエアバス寄り、チリのLANはボーイング寄りでしたが、近年はLANもエアバス機の比率が増えていました。こうしてみると小型機をA320シリーズに統一する会社はかなり増えて来ている事が分かりますね。

 

⑨大型機も小型機もごちゃ混ぜ

このグループは保有機数が多くなればなるほど該当する会社が増えてきます。数百機にもなるとどちらかのメーカーで統一してもスケールメリットは小さく、逆に両方の機種を保有して両者を競わせた方が値引きやリスクヘッジの観点から有利な為です。

実際、アメリカン航空とデルタ航空中国国際航空、南方航空、東方航空とアメリカの三大メガキャリアのうち2社と中国の三大メガキャリアは両方の機種を保有してますし、基本大型機のみですがエミレーツ航空とシンガポール航空も両方の機種を導入しています。ちなみにエミレーツは2機種に絞られていますが、その2機種がA380と777。絞り方おかしいでしょ・・・

その他アエロフロートやエジプト航空ターキッシュエアラインズや大韓航空もこのグループ。また、大型機のみですがヴァージンアトランティック航空、小型機のみですがアラスカ航空とS7航空もこのグループに該当します。また、以前は⑤のグループだったANAもA380導入で大型機もボーイング・エアバス両方の機種を保有する事になりました。

 

⑩ボーイング?エアバス?両方ないわ!

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冷戦時代はこのパターンは珍しくはありませんでした。ソ連を中心とした東側諸国は西側の機体を買わないのが当たり前だったからです。

しかし冷戦崩壊後はアエロフロートを含めた旧東側のキャリアはこぞって西側の機体を買うようになり、このグループの航空会社はほとんどいなくなりました。例外はスカイウエストなど元々小型機のみの運航なアメリカの大手地域航空会社くらいです。

 

しかし、「フラッグキャリアで30機以上」と言う縛りを外せば一社だけ、ボーイングもエアバスも使ったことのない航空会社が存在します。北朝鮮の高麗航空です。政治的な理由で西側の新造機が買えない上に、イラン航空のように中古機購入のツテもない高麗航空は事実上ロシア製の機体しか調達できません。そのロシア製の機体も稼働しているのは比較的新しい4機だけで、後は野ざらしらしいので西側の機体を買えたとしてもまともに飛ばせないかも知れませんが・・・

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?こうして見ると一口にボーイング・エアバスと言っても、その機材構成は航空会社によってさまざまなパターンがあるのが分かります。どちらか片方だけ、と言うケースは少ないですが、航空会社の機材戦略や路線特性、メーカーとの関係や時には外交関係も絡んで機材構成が分かれているのが分かりますね。

また、エアバス機のみ保有と言う会社や以前よりエアバス機の比率が増えている会社が多い事も分かるのではないでしょうか。特に単通路機ではエアバスの方が優勢になっていますので、小型機はA320シリーズに統一、という会社が欧州を中心に増えている事も伺えます。逆に737MAXで躓いたボーイングはただでさえ劣勢の単通路機市場で更に不利になってしまいましたので、是が非でも早期に運航再開させなければエアバスとの差は開くばかりです。

とは言え、ボーイングも787などの大型機ではエアバスよりも優位ですし、長年の実績や顧客との信頼関係でまだまだ多くのユーザーがいますので、今のところはエアバスが若干優勢だがまだまだ互角、と言ったところでしょうか。こういった観点からも航空会社の機材構成を見るのも面白いと思いますよ。

 

 

 

 

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元日本政府専用機、29億円で売り出し中。これってお買い得なの?

今年3月に退役し、6月に離日した政府専用機2機のうち1機がアメリカの中古市場で売りに出されました。航空機販売サイト「コントローラー」によると、販売価格は2800万ドル(29億6000万円)で、売り文句は「世界で最も飛行時間が短い747-400の一つ。新品同様に見える」で、相当状態のいい掘り出し物として扱われているようです。実際、この機体の飛行時間は1万6332時間、飛行回数は1万3569回と経年機の割には少ない飛行時間です。

 

www.aviationwire.jp

 

政府専用機は3月の退役後、産業廃棄物のリサイクルを手掛けるエコネコルという会社に2機13億円(推定値)で売却され、2号機は6月17日に、1号機は27日に日本を離れました。今回売りに出されたのは1号機の方の様で、日本のみならず、アメリカでも「天皇陛下や日本の首相が使ってきた機体が売りに出されている」と報じています。機内は政府専用機時代の会議室やシャワールームなどがそのまま残されているようで、VIP機としてもそのまま転用できそうです。

 

www.aviationwire.jp

 

trafficnews.jp

 

さて、この元政府専用機の売り出し価格、妥当と言えるのでしょうか?「コントローラー」には他にもう一機、747-400が売りに出されていますが、こちらは1992年製で飛行時間は6万6千時間と元政府専用機の4倍以上。お値段は1600万ドルと元政府専用機の半分強であり、この機体だけで比較すると確かに「お買い得」と言えそうです。

https://www.controller.com/listings/aircraft/for-sale/list/category/3/jet-aircraft/manufacturer/boeing/model/747-400

 

では他の飛行機はどうでしょうか。こちらのサイトには何と最新のボーイング787も売りに出されています。787-8型5機、-9型1機が掲載されていますが、うち値段が付いているのは-8型一機のみ。2017年製で飛行時間はわずか3時間、ビジネス18席、エコノミー244席の合計262席仕様でお値段は1億2200万ドル。カタログ価格は2億4600万ドルですから、年式や飛行時間を考えるともの凄いお買い得品と言えます。そう考えると元政府専用機もかすんで見えるなあ・・・

https://www.controller.com/listings/aircraft/for-sale/list/category/3/jet-aircraft/manufacturer/boeing/model/787-8

 

続いて売れ筋機のボーイング737-800型。こちらは2機が売りに出されており、1機は2018年製で飛行時間20時間のこれまた新品同様の機材。お値段も4800万ドルとカタログ価格9600万ドルと比較すると半値で買えます。もう1機は2010年製で飛行時間2万6500時間、お値段は2900万ドルと年式相応の値段と言えます。

https://www.controller.com/listings/aircraft/for-sale/list/category/3/jet-aircraft/manufacturer/boeing/model/737-800

 

 

ではエアバス機はどうでしょうか。ボーイングに比べると機数は少なく、半分近くがVIP仕様のA320シリーズでした。値段も「要問合せ」が多いです。そんな中、A380が1機売りに出されているのを発見・・・例の元シンガポール航空機でしょうか。

値段が付いている飛行機の中でいくつか特徴的な機体をピックアップしたいと思います。まずは1997年製のA340、飛行時間46000時間の機体がわずか900万ドルで売られていました。中古市場でも不人気機種となったA340ですが、中古価格からも不人気ぶりが伺えます。一方、2002年製のA330も売りに出されていて、こちらは飛行時間は不明ですが2700万ドルで売りに出されていました。こちらの方が新しいとはいえ、A340の3倍の値段・・・

そしてもう一機、1998年製のA321も販売されていますが、こちらは飛行時間約6万6千時間で950万ドル。先ほどのA340よりも小型な上に飛行時間も2万時間多いのにA340よりも高い・・・どれだけ不人気なんだA340。

 

https://www.controller.com/listings/aircraft/for-sale/list/category/3/jet-aircraft/manufacturer/airbus

 

こうして見ると1991年製の元政府専用機の2800万ドルという値段はあまりお買い得とは言えないのではないかと思います。いくら飛行時間が少ないとはいえ、これに近い金額を出せば10年以上も新しいA330や2010年製の737-800が手に入るのですから、航空会社としてはこっちを買った方がいいに決まってます。VIP仕様の旅客機を買うにしても、これに近い金額で中古のA318やBBJが手に入りますし、この値段は単純に「飛行機そのものの価値」だけで決められているわけではないような気がします。

恐らく、この2800万ドルと言う販売価格は本来の金額プラス「元日本の政府専用機」という経歴と内装分のプレミアムが付けられているのではないかと思います。そうでなければいくら状態がいいとはいえ、これだけの金額は付けられないでしょう。いいとこ2000万ドルだと思います。さて、果たしてこの元政府専用機、一体誰の手に渡る事になるのでしょうか・・・

 

↓世界中の政府専用機を紹介した本。大型旅客機を新造機で買う国は実はそんなに多くはなく、大抵はもっと小型だったり中古機だったり航空会社の機体を借り上げたりしています。そう考えると日本ってまだまだ余裕があるのかな・・・?

 

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