今年3月に退役し、6月に離日した政府専用機2機のうち1機がアメリカの中古市場で売りに出されました。航空機販売サイト「コントローラー」によると、販売価格は2800万ドル(29億6000万円)で、売り文句は「世界で最も飛行時間が短い747-400の一つ。新品同様に見える」で、相当状態のいい掘り出し物として扱われているようです。実際、この機体の飛行時間は1万6332時間、飛行回数は1万3569回と経年機の割には少ない飛行時間です。
政府専用機は3月の退役後、産業廃棄物のリサイクルを手掛けるエコネコルという会社に2機13億円(推定値)で売却され、2号機は6月17日に、1号機は27日に日本を離れました。今回売りに出されたのは1号機の方の様で、日本のみならず、アメリカでも「天皇陛下や日本の首相が使ってきた機体が売りに出されている」と報じています。機内は政府専用機時代の会議室やシャワールームなどがそのまま残されているようで、VIP機としてもそのまま転用できそうです。
さて、この元政府専用機の売り出し価格、妥当と言えるのでしょうか?「コントローラー」には他にもう一機、747-400が売りに出されていますが、こちらは1992年製で飛行時間は6万6千時間と元政府専用機の4倍以上。お値段は1600万ドルと元政府専用機の半分強であり、この機体だけで比較すると確かに「お買い得」と言えそうです。
では他の飛行機はどうでしょうか。こちらのサイトには何と最新のボーイング787も売りに出されています。787-8型5機、-9型1機が掲載されていますが、うち値段が付いているのは-8型一機のみ。2017年製で飛行時間はわずか3時間、ビジネス18席、エコノミー244席の合計262席仕様でお値段は1億2200万ドル。カタログ価格は2億4600万ドルですから、年式や飛行時間を考えるともの凄いお買い得品と言えます。そう考えると元政府専用機もかすんで見えるなあ・・・
続いて売れ筋機のボーイング737-800型。こちらは2機が売りに出されており、1機は2018年製で飛行時間20時間のこれまた新品同様の機材。お値段も4800万ドルとカタログ価格9600万ドルと比較すると半値で買えます。もう1機は2010年製で飛行時間2万6500時間、お値段は2900万ドルと年式相応の値段と言えます。
ではエアバス機はどうでしょうか。ボーイングに比べると機数は少なく、半分近くがVIP仕様のA320シリーズでした。値段も「要問合せ」が多いです。そんな中、A380が1機売りに出されているのを発見・・・例の元シンガポール航空機でしょうか。
値段が付いている飛行機の中でいくつか特徴的な機体をピックアップしたいと思います。まずは1997年製のA340、飛行時間46000時間の機体がわずか900万ドルで売られていました。中古市場でも不人気機種となったA340ですが、中古価格からも不人気ぶりが伺えます。一方、2002年製のA330も売りに出されていて、こちらは飛行時間は不明ですが2700万ドルで売りに出されていました。こちらの方が新しいとはいえ、A340の3倍の値段・・・
そしてもう一機、1998年製のA321も販売されていますが、こちらは飛行時間約6万6千時間で950万ドル。先ほどのA340よりも小型な上に飛行時間も2万時間多いのにA340よりも高い・・・どれだけ不人気なんだA340。
こうして見ると1991年製の元政府専用機の2800万ドルという値段はあまりお買い得とは言えないのではないかと思います。いくら飛行時間が少ないとはいえ、これに近い金額を出せば10年以上も新しいA330や2010年製の737-800が手に入るのですから、航空会社としてはこっちを買った方がいいに決まってます。VIP仕様の旅客機を買うにしても、これに近い金額で中古のA318やBBJが手に入りますし、この値段は単純に「飛行機そのものの価値」だけで決められているわけではないような気がします。
恐らく、この2800万ドルと言う販売価格は本来の金額プラス「元日本の政府専用機」という経歴と内装分のプレミアムが付けられているのではないかと思います。そうでなければいくら状態がいいとはいえ、これだけの金額は付けられないでしょう。いいとこ2000万ドルだと思います。さて、果たしてこの元政府専用機、一体誰の手に渡る事になるのでしょうか・・・
↓世界中の政府専用機を紹介した本。大型旅客機を新造機で買う国は実はそんなに多くはなく、大抵はもっと小型だったり中古機だったり航空会社の機体を借り上げたりしています。そう考えると日本ってまだまだ余裕があるのかな・・・?