9月2日、国土交通省航空局は羽田空港の発着枠配分を決定しました。日本側全体で25枠増加となる国際線枠については改めて紹介し、今回は回収の上再配分となる国内線の発着枠について考えてみたいと思います。
羽田発着枠に関する以前の記事はこちらもご覧下さい。
さて、今回の発着枠増加で増えるのは国際線のみ。国内線に関しては配分がないため、既存の会社の発着枠19枠を回収した上で再配分するという形を取りました。
まず回収される発着枠ですが、
JAL 8
ANA 7
スカイマーク、エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー 各1
一方の再配分は
JAL 5
ANA 6
スカイマーク 2
エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤー 各1
新規参入会社用 3
この結果、新しい羽田国内線の配分は
JAL 181.5(-3)
ANA 170.5(−1)
スカイマーク 37(+1)
エアドゥ 23
ソラシドエア 25
スターフライヤー 23
新規参入用 3(就航までは既存航空会社が暫定利用)
となります。
全般的にはJALが一番割りを食っている印象ですね。発着枠だけを見るとJALはANAより10枠以上多いのでJALが余計に削られるのは分からなくもないですが、それでもANAがエアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーとのコードシェアで実質的に71枠の「隠れ発着枠」を持っている事を考えると本当に妥当なのかと言う気はします。
一方でスカイマークが1枠増加になったのは良かったと思います。他の新規参入組と違い、スカイマークは今のところANAとのコードシェアは行なっていませんから、第三極として踏ん張って欲しいところです。折しも神戸空港も発着枠増加が認められたばかりですから、神戸線増便に充てるのでしょうか?
ちなみに、今回再配分された発着枠は札幌、大阪、福岡、那覇のいわゆる幹線以外の路線に使われる事になります。具体的にどの路線に配分されるかは航空会社次第です。
また、今回の配分とは別に廃止された羽田〜三宅島線と大島線に配分されていた2枠は「政策コンテスト枠」に廻される事になります。現在、山形、鳥取、石見の3路線に1枠ずつ配分されていますが、新たな2枠については年度内にコンテストを実施するそうです。どの空港が手を挙げるのか注目ですが、個人的には搭乗率保証で高搭乗率を維持している能登空港に手を上げて欲しいなと勝手に思ってます。
そして、今回一番注目なのが久し振りに割り当てられた「新規枠」羽田空港に新規に就航する航空会社向けに優先的に配分される枠ですが、果たして完全な「新規参入会社」が現れるかどうかは疑問です。
自由化直後ならいざ知らず、新規参入会社がある程度規模を大きくした今からだと大手2社プラス既存の新規参入社との競争になりますので、3枠だけでは不利なのは明らか。それに今後近い将来羽田空港の発着枠が増える予定はありませんから、新規会社の羽田路線が増える見込みは当面ありません。初期のスカイマークやエアドゥが3枠だけの配分で利便性や効率性の低さで大手にコテンパンにされた事を考えると、今更一から航空会社を立ち上げて参入する物好きがいるとは思えないのです。
となると考えられるのは既存の会社のうち羽田に未就航の会社が参入する事。あり得るとすればフジドリームエアラインズかエアアジアジャパンではないかと思います。
まずFDAですが、静岡と小牧をベースに地方間路線を飛ばしてきましたが、今年の10月から神戸にも就航し、初めて関西圏に進出します。一方の首都圏は羽田は発着枠がなく、成田もLCCがしのぎを削る中の参入は体力面で厳しいためこれまでは考えてもいなかったと思います。
しかし羽田の発着枠が出るなら話は変わって来るのではないかと思います。エンブラエル機では広島や鹿児島といった大規模地方路線はキャパ的に厳しいですし、JALとの関係を考えるとJAL単独路線への参入も難しいですが、ANA単独路線だったらどうでしょうか?庄内、富山、八丈島、鳥取、佐賀。737クラスでは厳しくともエンブラエル機なら採算に乗りそうな路線はいくつか考えられます。
また、隠岐や徳之島、種子島といった羽田未就航の離島に飛ばしても面白そうですし、羽田発着路線の常識を覆してくれるかも知れません。
一方のエアアジアジャパンは中部発着路線を増やし、ようやく3機フル稼働体制となりましたが、他の空港の拠点化のメドは立っていません。特に成田はピーチ、ジェットスタージャパン、スプリングジャパンとLCCが3社もひしめいている現状では参入の余地はないと言っていいでしょう。
そんなエアアジアジャパンにとっては羽田発着枠は3枠でも喉から手が出るほど欲しいのではないでしょうか。仮に羽田〜札幌に就航する事が出来ればLCC初の羽田発国内線として注目を集めますし、本数は少ない分は低価格で十分カバーできます。何より他のLCCとの差別化も図れますし、羽田就航の実績を作れば将来の配分も期待できますから、発着枠確保に動く可能性は十分あると思うのです。
ただし、エアアジアジャパンの場合は監督官庁である国交省との関係が良くないのがマイナス材料です。また、既存の航空会社もLCCであるエアアジアジャパンの羽田参入に難色を示して反対するでしょうし、他のLCCも反対する可能性が高いので、実現する可能性は低いと思います。羽田未就航の会社を入れるとしたら、やはりFDAの方が無難でしょうね。
とは言え、新規参入会社が入ったらそれはそれで面白いですし、FDAやエアアジアジャパンが入っても羽田の国内線に変化をもたらす事でしょう。色々思うところが無いわけではありませんが、配分する以上は利用者の為に有益に活用して欲しいですね。
↓新規参入組で真っ先に経営破たんしたエアドゥの破たんまでのいきさつを書いた本。体力のない新規参入組が中途半端な発着枠しかもらえないとこうなるという教訓と言えます。