〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

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パリ航空ショー2023の受注ニュースまとめ

6月19日から25日まで開催されたパリ航空ショー。イギリスのファーンボロ航空ショーと一年おきに交互に開催されますが、これらの航空ショーは航空機メーカーの商品アピールや新型航空機のお披露目の場であると同時に、メーカーと航空会社、メーカーとサプライヤーなどとの商談の場でもあり、毎回大規模な航空機発注が発表されるのが通例です。

今回のパリ航空ショーでもインドの航空大手の大規模発注が発表されるなど、大型発注が相次いで発表された一方、一部メディアで可能性が報道されたANAとJALからの発注は今回はありませんでした。

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今回はパリ航空ショーで発表された受注状況をまとめてみました。

 

エアバス

今回のパリ航空ショーで最大のニュースは何と言ってもインディゴのA320neo大量発注でしょう。これまでもインディゴは2019年に300機のA320neoファミリーを発注しており、当時でも単一航空会社としては最大の発注数でしたが、今回はその数を大幅に上回る過去最大の発注数です。何をするか分からない航空会社もビックリ

これでインディゴの総発注数は1330機となりますが、実際には一部のA320ceoの代替用ですので、全ての機材が同時にフリートに加わるわけではありません。ですが、将来的には世界最大のLCCであるサウスウエスト航空(但し、近年のサウスウエストのビジネスモデルは多少FSC寄りになってきてますが)と同等か、それを上回る保有機数となる事になり、インド市場とインディゴの勢いの凄さを改めて感じます。

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19日の発表はまだまだ続きます。エアモーリシャスからA350型3機の追加発注を発表しました。モーリシャスはアフリカの島国で、かつてはサトウキビ栽培がほぼ唯一の産業でしたが、現在は工業や観光業も発達するなどアフリカでも有数の裕福な国です。

モーリシャス航空はモーリシャスの観光産業の一翼を担う存在であり、ヨーロッパを中心にアジア・アフリカ各地に路線もを広げています。日本には未就航ですが、上海や香港には就航しており、今回のA350追加発注もこれらの国際線強化のためと考えられます。これ使って日本にも飛んでこないかなあ・・・

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また、サウジアラビアの格安航空会社・フライナスもA320neoを30機追加発注。これでフライナスのA320neoファミリー発注数は120機となります。

フライナスは2007年に設立され、中東地域を中心に路線を広げています。サウジアラビアの航空会社というと国営のサウジアラビア航空くらいしか思いつきませんが、近年サウジアラビアは観光客受け入れの強化と乗り継ぎ需要の取り込みに力を入れており、最近では首都のリヤドをハブとする第二の国営航空会社・リヤド航空を設立するなど航空事業の投資に積極的。インドと同じく、将来的にはサウジアラビアの存在も業界内の新たな「台風の目」となるかもしれません。

 

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続いて20日にはエアインディアがA350を40機、A320neoを210機の合計250機を正式に発注。これは2月に発注意向を表明していた分の正式発注ではありますが、インディゴに続く超大型発注で、インドの航空業界は爆発的に規模を拡大する見込みです。

 

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↓エアインディアの飛行機爆買いについてはこちらもどうぞ。

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更にフィリピン航空がA350-1000型9機を確定発注。こちらも5月に発注意向を表明したものの正式発注ですが、フィリピン航空は最重要路線の北米路線に投入する見込みです。ちなみに2021年に破綻したこの会社、しれっと去年に裁判所管理から脱却しています。

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そして22日、カンタスがA220型9機の追加発注をしたと発表。A220自体は昨年5月に20機の発注を発表しており、この時にA350-1000型12機とA321XR20機を発注済み。これらの路線は現在使用している機材よりもより長距離を飛ぶことが可能であり、カンタスはこれらの機材を使ってより長距離の路線を開拓することになるでしょう。

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最後に6月23日、アイルランドのリース会社・アボロンがA330neo20機の発注意向を表明。アボロンは所有・管理している機体やコミットメントを含め830機の航空機を保有していますが、その大半はエアバス機。20機のA330neo発注は順当なものと思われます。

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ボーイング

初日こそ発注発表がなく、インディゴの巨額発注でエアバスに持って行かれた感のあるボーイングでしたが、20日から発注のニュースが相次ぎました。口火を切ったのはエアインディアの正式発注で、737MAX190機、787型20機、777X10機の合計220機。

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22日は発注ニュースが一段落したエアバスに代わってボーイング機の発注ニュースが相次ぎました。チャイナエアラインが787-9型のオプション分8機を確定発注に変更し、併せて既存発注分の787-9型16機のうち6機を-10型に変更しました。小型機はエアバスに鞍替えされてしまったボーイングですが、787の追加発注で巻き返した形です。

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続いてアフリカのアルジェリア航空から737-9型8機を受注したことを発表し、併せて既存の737の貨物型改修計画も受注。こちらも大型機はエアバスのみで先日の新型機受注もエアバスでしたが、小型機は737シリーズに統一されており、今回の受注で牙城を守った形です。

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そして先ほどエアバスの方でも出ていたアボロンからも737MAXを40機受注したと発表。737-8型の需要が旺盛なことを受けての発注のようで、2019年の運航停止でイメージダウンとなった737MAXも順調に市場の信頼を回復しているようです。

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また、ルクセンブルクのルクスエアからも737-7型4機を受注したと発表。737MAXの中でも最小サイズの-7型は受注が低迷していたので、久しぶりの受注となったのではないでしょうか?

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アメリカの航空リース大手・ALCからも787を2機受注しました。

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最後に、インドのLCC・アカサエアから737-8型4機の受注を発表しました。アカサエアは2022年に運行を開始したばかりの新しい航空会社で、既に2021年11月に72機の737MAXを発注済み。CEOはジェットエアウェイズとゴーエアのCEOを歴任しており、「インドのバフェット」とも言われたラケシュ=ジュンジュンワラ氏が後ろ盾になっていました。そのジュンジュンワラ氏はアカサエアの就航直後に亡くなってしまい、将来が不安視されていますが、インディゴとエアインディアの2強体制になりつつあるインドの航空業界で存在感を発揮できるか注目です。

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その他のメーカー

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2大メーカー以外で注目されたのは、デ・ハビランド・カナダのDHC-6ツインオッターの新型・クラシック300-G。ツインオッター自体は1965年に初飛行したかなり古い飛行機ですが、機体の頑丈さと未整備の飛行場でも離着陸できるタフさで根強い人気を誇ります。1988年に一旦製造を終了したものの、2006年に製造権を買い取ったバイキングエアによって、2008年に生産が再開。この際、エンジン換装とグラスコクピット化で近代的にした400型を発表し、日本でも沖縄の離島路線参入を目指した第一航空によって2機が購入されています。

今回発表されたクラシック300-Gは機体をより軽量化して搭載量をアップしたほか、機内インテリアも一新。今回のパリ航空ショーでも3社から発注または購入意向をゲットし、滑り出しは順調のようです。

 

また、受注とは直接関係ありませんが、ブラジルのエンブラエルと日本のニデック(旧日本電産)が空飛ぶクルマ用のモーター開発で合弁会社を設立したというのも大きなニュース。スペースジェットの開発中止など良いニュースの少ない日本の航空機産業ですが、航空機の電動化によって今まで考えられなかったメーカーの参入が見込まれるなど、航空機業界の変革で思いもしないメーカーが航空機産業に名を連ねるのかも知れません。

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まとめ

以上、2023年のパリ航空ショーでの受注ニュースをまとめました。航空ショーで発表された総受注数はエアバス846機に対しボーイングは358機と、これだけ見るとエアバスの圧勝のように思われます。とはいえ、エアバスの受注数のうち500機はインディゴの多量発注であり、これを除けばエアバスとボーイングの受注数はほぼ互角。737MAXの運行停止や777Xの開発遅延、787の品質問題など課題山積なボーイングですが、少なくとも受注数だけを見れば信頼を取り戻しつつあるのではないでしょうか?

今回のパリ航空ショーでもボーイングは777Xと737-10の展示飛行でアクロバティックな飛行を披露しており、自社機の性能と技術力の高さをアピールしました。エアバスの一人勝ちでは旅客機も面白くなくなりますし、ジェット旅客機の老舗としてボーイングにはこれからも頑張って欲しいですね。

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また、今回の受注傾向としてインドの航空会社からの受注が目立ちました。インドの航空需要の急速な伸びを受けてのものですが、エアインディアがアジア~ヨーロッパ・アフリカの乗り継ぎ需要を狙っているように、インドの航空会社も将来的には中東御三家やターキッシュエアラインズなどがしのぎを削る国際ハブ競争に名乗りを上げてきそうですし、今後世界の航空業界で存在感を増してくることでしょう。

 

来年はイギリスのファーンボロ航空ショーが航空機発注のお披露目の場になると思われます。どんな会社がどんな発注をして世界を驚かせるのでしょうか?