〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

日本の航空会社が単通路機を長距離路線に飛ばす日は来るのか?

6月28日、オーストラリアのヴァージン・オーストラリアは羽田~ケアンズ線を開設し、日本路線に参入しました。

当初はA330によって羽田~ブリズベン路線を開設する予定でしたが、コロナ渦で延期になった上にヴァージン・オーストラリア自身が経営破綻。A330を手放して機材を737に絞り込んだことでその夢は潰えたと思われましたが、そこは意地なのか737でギリギリ直行できるケアンズに就航先を変更し、しかも予定していた737MAX8の受領を待たず、既存の737-700で就航させるという執念深さを見せました。

羽田~ケアンズの距離は約5870km。これに対して737MAX8の航続距離は6510km、737-700は6,225kmですから、特に737-700だと航続距離に余裕がないのがお分かり頂けると思います。

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さて、ギリギリとは言え737でオーストラリアまで行けることにも驚きですが、かつてはANAが737-700ERを使用して成田~ムンバイ線を飛ばしていたのは記憶に新しいところ。世界的には737に限らず、単通路機の航続距離を伸ばし、中長距離路線に投入する傾向にあり、特にエアバスは航続距離8700kmを誇るA321XLR型を開発するなど、単通路機も長距離志向になってきています。日本路線でもかつてはシルクエアーが広島~シンガポール線に737MAXを投入したり、成田~セブ線やダナン線など、飛行距離4000km台くらいなら単通路機で就航するケースも増えてきています。

 

一方の日本の航空会社はJALが737-800の一部、ANAがA320neoを国際線用としているものの、両社とも現在投入しているのは近距離の中国・台湾路線のみで、しかもコロナ渦で一部を国内線に廻しているなど、長距離路線には飛ばす気配がありません。

 

ANAの場合、成田~ムンバイ線やヤンゴン線に737-700ERを飛ばした「前例」はありますが、737ー700ER自体床下貨物スペースを潰して燃料タンクに振り分けた「特別仕様」ですから、この前例は余り参考になりません。ER型ではない737-700型に限ってみれば中国・韓国・台湾路線だけでしたし、後継のA320neoもこの路線を踏襲しています(例外は成田~ウラジオストク路線ですが、距離的にはソウルよりも近いので除外)

私の知る限り、ANAの737-700やA320neoが東南アジアに定期路線で飛んだケースはないように思います。

 

一方のJALですが、過去に関西~ハノイ線や羽田~マニラ線などに737-800を投入した例があり、ANAよりは遠い地域に単通路機を飛ばした実績があります。しかしそれでも飛行距離3000km台前半程度であり、バンコクやシンガポールなどには飛んでいません。

 

なぜANAやJALは単通路機を長距離路線に投入する事に消極的なのでしょうか?一言でいえば「飛ばす必要のある路線がないから」です。

程度の違いこそあれ、ANAもJALも羽田と成田を国際線のハブ空港としていますが、羽田は主に国内線からの乗り継ぎ、成田は東南アジア~アメリカ路線の乗り継ぎ需要を中心にしています。また、日本~東南アジア路線の需要自体も大きなものなので、小型機で細かく需要を拾うというよりは羽田や成田に乗客を集めて大型機でまとめて飛ばす、という手法が一般的です。

一方、関西空港や中部空港発着の路線は縮小傾向にあり、ANAは中部発の国際線から撤退済み。路線自体も中長距離路線といえばJALの関西~バンコク・ホノルル・ロサンゼルス線と中部~ホノルル線くらいで、正直あまり積極的とは言えません。ANAもJALも国際線の乗り継ぎ需要は首都圏発着路線に集約し、中部や関西の路線は主に地区内からの需要で賄える路線だけを飛ばしている、という印象ですので、少なくとも今後数年単位で単通路機を使った中長距離路線開拓に動く可能性は低いと思われます。

 

一方でLCCはピーチが関西~バンコク線、ジェットスタージャパンが成田~マニラ線を就航させており、単通路機で長距離という点ではLCCの方が先んじています。加えて両社とも中距離国際線に投入可能なA321LRを導入しており、今後も東南アジア路線の開拓が見込まれます。ピーチもジェットスターも機材はA320シリーズの単一であり、近距離国際線もある程度開拓した感があるので、今後国際線を拡充するとなると東南アジア路線、ということになります。

今のところは東南アジアより先の路線開拓は考えていないようですが、現在の路線が軌道に乗り、東南アジアの開拓が進めば、より長距離を飛べるA321XLRを買って経済成長が進むインドや観光需要の大きいオセアニア地区への路線展開も視野に入ってくるのではないでしょうか?そういう意味ではLCCの方が単通路機を長距離路線に投入する可能性が高いと思います。

 

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最後に国際線就航実績のあるスカイマークやスターフライヤーが単通路機で長距離路線に参入する可能性ですが、両社とも経営再建中で国際線どころではないですから、当面はありえないと思います。ただ、スカイマークに関しては2026年度以降に737MAXが投入され、国際線が復活すれば737-8あたりで東南アジア路線投入、というのはあり得ると思います。大手2社は当面ありえないとしても、近い将来、日本の航空会社の単通路機が東南アジア路線を飛び回るようになる光景は普通になるかもしれません。