〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

日を追うごとに不利な立場になる737MAX、一刻も早い事故原因の究明と信頼回復を

 3月10日のエチオピア航空の墜落事故以降、ボーイングと737MAXには世界中で逆風が吹き続けています。前回、737MAXが全世界で運航停止となった記事を書いた時も、「事故原因を突き止められず、対応を誤ってしまえば737シリーズそのものの歴史に幕が下ろされかねない」と締めくくりましたが、事態はさらに悪い方向に進んでいるように思えます。

なお、これまでの経緯については以下の記事も参照して下さい。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

www.meihokuriku-alps.com

 

3月18日、ボーイングのマレンバーグ会長はメッセージをウェブサイトに掲載し、「安全はボーイングの核心であり、私たちの飛行機によって安全で安心できる旅行を保証することは永続的な価値で、すべての人に対するゆるぎない責任だ」として、安全が同社にとって最優先事項であることを強調しています。その中で737MAXの一連の事故原因と疑われている失速防止システムのソフトウェア改修や訓練プログラムの見直しに言及していますが、その直後に司法当局が737MAXの開発経緯や、安全対策に問題がなかったか調査していると報じられます。

記事内では737MAXの開発担当者に関係する文書を提出するよう罰則付きの召喚状を出したとされており、20日にはFBI(アメリカ連邦捜査局)も刑事事件として捜査に加わったと報道されました。さらにEUやカナダも737MAXの安全性についてFAAの検証結果を受け入れず、独自に調査するとしています。737MAXの安全性だけでなく、FAAの安全認証のプロセスや信頼性にも疑問の目が向けられており、事態は沈静化するどころかアメリカの航空行政を揺るがしかねない状況です。

 

www.aviationwire.jp

headlines.yahoo.co.jp

 

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そして、遂に737MAXの発注キャンセルを表明する航空会社も現れました。インドネシアのフラッグキャリア、ガルーダインドネシア航空は発注済の737MAX49機のキャンセルする意向をボーイングに伝えました。まだ正式なキャンセルではなく、現在はボーイングからの回答待ちと言う状態ですが、インドネシアはアメリカ、中国に次ぐ737MAXの有力市場であり、737MAXの最初の事故が発生したライオンエアの本拠地。その国のフラッグキャリアがキャンセルを表明したのはボーイングにとって大きな痛手です。これが737MAX発注キャンセルドミノの始まりでなければよいのですが・・・

www.aviationwire.jp

 

さて、日を追うごとに立場が悪くなっている737MAXですが、4600機以上もバックオーダーを抱えている今の状態を考えるとこのまま生産中止にするわけにも行きません。しかし、737MAXの安全認証プログラムに何らかの違法性が疑われ、各国の航空当局もFAAの安全審査に疑問を抱いている現状では、早期の路線復帰、生産再開は難しいでしょう。

各国の航空当局や航空会社、ユーザーの737MAXへの不信感は、機体そのものの安全性への疑念よりも製造元のボーイングや安全審査を担当したFAAへの不信感の方が大きいのではないかと思います。それだけボーイングとFAAの立場は危ういものであり、この不信感を払しょくしない限り、FAAが運航再開を指示したとしても他国の航空当局はそれに追随せず、運航停止を継続するでしょうし、長期化すれば航空会社は737MAXを見限り、他の会社の機体(大体はA320neoでしょうが)への鞍替えをする「発注キャンセルドミノ」が起こりかねません。発注キャンセルが大量に起これば信用不安から新規受注も見込めず、737MAXは競争力を失って本当に生産中止に追い込まれかねません。そういう意味では737MAXは崖っぷちに立たされていると言えます。

一方、737MAXを待つという選択をした会社に対しても、納入停止が年単位となれば787の納入遅延時のように、1世代前の737NGを補償として納入する必要が出てくるかも知れません。737NGは今年中にも生産中止になるはずでしたが、737MAXの運航停止が長期化すればそうも言っていられなくなると思いますので、補償用や早急な置き換えが必要な航空会社用として当面は生産継続になるのではないかと思います。旧式の737NGではA320neoよりは競争力は落ちますが、それでも全く対応できないよりはマシですし、万が一737MAXが生産中止になった場合はそれに代わる新型機を完成させるまでの間の繋ぎにはなるでしょう。そう考えると737NGの生産ラインが完全に閉じる前だったのは不幸中の幸いかも知れません。

 

とは言え、本当は737MAXの事故原因が解明され、必要な対策を打って安全に運航できるようになるのが一番なのは言うまでもありません。しかし、737MAX開発の過程で安全に対する重大な瑕疵や過失、問題の隠ぺいがあったのだとしたら、今後の安全の為にも真実を明らかにし、関わった人物には厳しい処罰がなされるべきだと思います。関係当局には改めて一日も早い事故原因の解明と対策の徹底、早期の信頼回復を望みたいです。