〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

MRJの名称変更?正気ですか?→スペースジェットになってしまった・・・

まず始めに謝りますが、今回のタイトルは少々辛辣な言い回しになっています。このタイトルを見て不快になられた方には申し訳ございませんが、今回報道されているMRJの名称変更についてはMRJの今後に悪影響を与えかねない事態なので、敢えてキツい言い回しをしました。その辺ご理解頂けますと幸いです。

 

5月29日、朝日新聞や日本経済新聞、時事通信などの大手メディアが相次いで「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の事業方針を見直し、70席級の機体開発を本格化させるとともに、名称を「スペースジェット」に変更して「三菱」の名前を外す予定だと報じました。

MRJは当初は2013年の就航を目指していましたが、5度に渡る納入延期もあって今のところ2020年の就航予定と当初の予定から7年も遅れています。現在は90席級の「MRJ90」の開発が中心ですが、新規受注は完全に止まっている上にこのクラスは「エンブラエルE2」や「エアバスA220」「スホーイスーパージェット」と言ったライバル機種がひしめく激戦区。このため三菱航空機はアメリカで需要が見込める70席級にターゲットを変更して仕様も大幅に刷新、さらに開発遅延でマイナスイメージが付いた「三菱」の名称も外してイメージも刷新する、と報道されています。


trafficnews.jp


www.nikkei.com

 

この報道に対し三菱航空機の親会社の三菱重工は「当社グループが発表したものではない」とのプレスリリースを出しましたが、報道の内容自体は否定していません。名称変更はともかく、70席級の開発自体は恐らく社内でも検討されているのではないかと思いますし、否定しないという事は、近いうちに何らかの正式発表があるのではないかと思います。いずれにせよ、詳細は三菱重工や三菱航空機の正式発表を待つ必要がありますが、三菱重工が完全否定しなかった事や、複数のメディアが報道している事からいわゆる「飛ばし記事」の可能性は低そうです。

www.mhi.com

 

f:id:meihokuriku-alps:20190530162248j:plain

 

さて、今回の報道を受けてネット上では「スペースジェット」への名称変更に対して好意的なコメントよりも否定的なコメントの方が多いようです。と言うか私自身も「スペースジェット」という名前のセンスは置いといて、この時期の安易な名称変更や「三菱」の名前を隠すようなネーミングはやるべきではないと思います。この記事のタイトルが妙に辛辣なのもある意味私の名称変更報道に対する憤りだと思って下さい(笑)

 

「MRJ」の名称は2007年2月の名称決定以来、12年もの間「日本初のジェット旅客機」「三菱が開発する航空機」として日本国内はもとよりアメリカを始めとした世界市場で浸透してきました。三菱グループもMRJの名称を大々的に宣伝し、愛知県に工場見学施設「MRJミュージアム」も作るなど、最早MRJの名称と三菱のブランドは国内外に十分広まっています。

そんな中での安易な名称変更と「三菱」ブランド隠しは、例え三菱が否定しても「開発遅延でケチが付いたMRJの名前を捨てて、過去の失敗をなかったことにしようとした」と受け取られてしまいます。また、既に試験機が完成し、来年には初号機が納入される(はず)というタイミングでの名称変更は納入先の航空会社や営業面でも混乱を招く可能性が高く、国交省やFAAなどの形式認定作業にも影響を与える可能性があります。

 

f:id:meihokuriku-alps:20190530164746j:plain

途中で名称が変更された例としてはマクドネルダグラスMD-95がボーイング717に変更された例や、ボンバルディアCS100/300がエアバスA220に変更された例がありますが、これについては前者はメーカーの吸収合併、後者は合弁会社設立と言う事実上の事業売却があったため、むしろ必要な事だったと思います。

一方のMRJ→スペースジェット(一部報道)の変更はメーカーが変わったわけでもなければ機体コンセプトの大幅な変更があったわけでもありません。正直言って、名称変更の必要性が感じられず、安易なイメチェンと取られても仕方ないのではないでしょうか。

 

三菱重工や三菱航空機はここまで来たからには安易に名前を変えて小手先のイメージチェンジでお茶を濁すのではなく、早期に安全な機体を完成させて堂々とMRJの名前で勝負するべきでしょう。今は開発遅延でイメージは悪いかもしれませんが、地道に飛行実績を積み上げて市場の信頼を得ていくしかMRJが生き残る道はないと思います。航空機ビジネスは名前のイメージより信頼性と実績、アフターサービスで購入を決める世界であり、それらを置き去りにしたまま本当に名称変更という手段を取れば、イメージ刷新どころか市場から完全に見限られかねません。三菱が今後70席級の機体に注力するとしても、安易に名前を変えることのない事を祈りたいです。

 

【6月13日追記】

遂に名称変更が現実のものとなってしまいました。今日の三菱航空機の発表で正式にMRJの名称を「三菱スペースジェット」に改名し、90席級のMRJ90は「スペースジェットM90」に、今後の主力となる70席級のMRJ70は「スペースジェットM100」にそれぞれ名称変更されます。17日からのパリ・エアショーで展示される予定の試験飛行3号機も既にオランダでスペースジェットの塗装に塗り替えられたそうで、三菱航空機のHPのトップページも既にスペースジェットのCGに置き換えられています。ここまで来たら名称変更はもう動かしがたいようですね。

 

www.aviationwire.jp

www.mitsubishiaircraft.com

 

恐らくパリ・エアショーの中で名称変更の理由やM100の詳細などが説明されるものと思われますが、先日明らかになったボンバルディアのCRJ事業買収も名称変更のきっかけになった可能性があります。まずは17日以降分かるであろう改名の動機を見てからになると思いますが、正直私にはこの名称変更がプラスに動くとはあまり思えません。しかし変えてしまった以上は新ブランドを一日でも早く市場に浸透させなければならないと思います。その戦略をどう取るか、パリエアショーに注目です。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 

 

↓この本のように初心に立ち返って欲しいです・・・

 

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
にほんブログ村

東海道新幹線や航空業界の「もしも」の話(昭和編)

東海道交通戦争の補足・振り返りシリーズ、第二弾は作中内でのいくつかのターニングポイントの「もしも」を予想してみたいと思います。歴史にifは禁物、とよく言いますが、そのifを考えてみるのも歴史の醍醐味の一つではないでしょうか。

これについては長い歴史の中で様々な「もしも」が考えられますので、一度で終わらなさそうです。そこで今回は「昭和編」と「平成編」に分けて検証してみたいと思います。今回は「昭和編」です。


東海道交通戦争 第一章「新幹線開業前夜」

 

 

1.もし東海道線の増強が新幹線ではなく複々線化だったら

f:id:meihokuriku-alps:20190525194732j:image

史実ではパンク寸前の東海道本線の増強策として複々線案と高速新線案が候補となり、当初は複々線案が優勢だったものの当時の国鉄総裁の十河信二氏が高速新線案で押し切り、東海道新幹線の開業にこぎつけました。

しかし、もし十河総裁が押しきれなかったり、あるいは早々に更迭されてしまっていたら、東海道新幹線の増強は複々線になっていたと思います。では、もし東海道本線が複々線で整備され、新幹線が建設されなかったら東海道の交通はどんな姿になっていたのでしょうか?

 

まず史実でも東京〜小田原間(ただし大半は京浜東北線や横須賀線など運用上は別路線)、名古屋〜稲沢間、草津〜神戸間は複々線化されていますが、国鉄の財政を考えると東京〜大阪を一気に複々線化するのは現実的ではないので、輸送量の大きいこれらの区間や、名古屋圏や勾配のきつい区間を優先的に複々線化して行ったと思います。但し、その後の国鉄の財政を考えると、全区間整備する前に国鉄の財政破綻で中止に。

 

一方、東海道新幹線が整備されなかった事で東京〜大阪間は今ほど活発には移動は起こらず、経済発展にも影響を与えた可能性が高いと思います。東海道本線の高速化は時速130kmが限界だと思いますので、東京〜名古屋間4時間前後、東京〜新大阪間6時間が精一杯ではないかと思います。そうなれば鉄道がまともに航空機と対抗できるのは名古屋まで、大阪へは東京〜福岡同様、航空機が圧倒的優位になっていたのではないでしょうか。

しかし、航空機主体になっていたら羽田や伊丹の発着枠が大阪路線中心になり、他の路線がしわ寄せに遭って史実よりも多頻度運航は後になっていたと思います。さらに輸送量の面でも今の東海道新幹線と同等の便数を確保するのは不可能だと思うので、東京〜大阪間の旅客流動は史実よりもかなり小さくなっていたのは間違いありません。

旅客流動が小さいと日本経済にどう言う影響を与えるかは議論が分かれるところですが、移動が活発化しなければ人もお金も動かず、ビジネス面でも幾らかの制約があった事が予想されますので、日本全体で見ればあまり良い影響を与えなかったのではないかと思います。しかし移動に制約がある分、史実よりは関西発祥の企業が本社機能を東京に移さず、大阪の地盤沈下はそこまで起こらなかったかも知れません。

 

↓新幹線建設がいかに先見の明があったか、十河総裁の決断が凄かったかはこちらをどうぞ。

  

2.もし航空会社再編が運輸省の目論見通り2社体制だったら

f:id:meihokuriku-alps:20190528112819j:image

1960年代の運輸省の航空再編のシナリオは「国際線一社、国内線二社」でしたが、結局は第三の航空会社「東亜国内航空」が誕生した事でシナリオは崩れました。もし運輸省のシナリオ通り、JDAが日航に、東亜航空が全日空に吸収されていたらどうなっていたでしょうか?

 

まず路線面では日航は国内幹線に加えJDAのローカル線も抱える事になりますが、当時のJDAの主力である羽田発の道東、東北、徳島、大分路線や北海道内ローカル線、大阪〜徳島線などが日航の運航となります。

一方の全日空は東亜航空の広島発着のローカル線や福岡〜宮崎・鹿児島線、鹿児島発着の離島路線などが加わる事になり、沖縄以外の離島路線を全日空がほぼ一手に引き受ける事になります。

路線面では多少なりとも羽田発着路線を持ち、離島路線のないJDAの方が良さそうに見えますが、会社の収益や累積赤字はJDAの方が状態が悪いので、トータルで見れば両者の差はあまりないのではないかと思います。

 

機材面ではJALは合併当初はYS-11が加わる程度で大きな変化はなく、大分や釧路などのジェット化もJALの727-100が充てられると思います。その後地方路線のジェット化用に737かDC-9のどちらかを購入したと思いますが、JALは70年代まではダグラス寄りでしたから、DC-9を選択した可能性が高いと思います。80年代の地方路線の大型化はDC-10や767を充てたと思いますが、場合によっては史実のTDAと同様、日欧貿易摩擦対策の一環で767の代わりにA300を購入したかも知れません。

一方の全日空は旧東亜のYS-11とタウロンを引き継ぎますが、史実のTDA同様、タウロンは早々に退役させて広島発のコミューター路線も一部整理するでしょう。地方路線のジェット化は737や727で対応し、大型化の際もトライスターや767で対応したと思います。A300は全日空とボーイングとの関係が深い事を考えると導入の可能性は低いのではないでしょうか。

 

最後に2社体制となった後の航空業界ですが、国内線はJALとANAが互角の立場になる事で「45・47体制」のような棲み分けはあまり設けられず、特に羽田路線でダブルトラック化が進んだと思います。犬猿の仲のJALとANAで激しい競争となったか、2社しかいないから運賃面で横並びになり、ある意味棲み分けができたかは議論の余地がありますが・・・

一方の国際線はしばらくはJAL一社体制が維持されていたと思いますが、国際線参入が悲願であり、元大物事務次官の若狭得治がいるANAは史実以上に国際線参入を強く迫ったと思います。ロッキード事件でしばらく下火になっていたとは思いますが、運輸省には東亜航空を引き取った「借り」がありますし、ライバルのJALがJDA吸収でANAの牙城の国内ローカル線に参入している事を考えると、最終的には史実の1986年よりも早く、ANAの国際線参入が認められたのではないでしょうか。

 

↓ANAとJALの生い立ちや違いはこちらも参考にして下さい。

 

3.もし国鉄が東海道新幹線への投資をまともにやっていたら

f:id:meihokuriku-alps:20190528125014j:image

史実では国鉄の数少ない黒字路線として他路線の赤字穴埋めを最優先し、ろくな設備投資もせずに陳腐化して競争力が低下していった東海道新幹線。本格的な改良はJR東海の発足を待たなければなりませんが、もし国鉄時代に設備投資の有用性を認識し、新型車投入や設備補修、スピードアップなどの投資を適切にやっていたらどうなっていたでしょうか?

 

まず車両面では史実よりも早く100系かそれに準じた車両が開発・投入されていたと思います。設備改良などで最高速度も230〜240km/h程度には引き上げられていたかも知れません。東京〜大阪間の所要時間は史実よりも早く三時間を切っていたのではないでしょうか。

但し、当時の国鉄の技術力や国鉄全体で新規車両の開発が停滞していた事、当時の国鉄が車両軽量化に消極的だった事を考えると、300系のような軽量・高出力の車両は国鉄時代には生まれなかったでしょう。また70年代の国鉄が新幹線総局の解体を巡って攻防戦を繰り広げていた事や、国鉄自体が破綻寸前だった事を考えると、満足な投資は難しく「史実よりはマシ」な改良で終わっていたでしょう。東海道新幹線の本格的な改良はやはり国鉄分割民営化を待たなければならなかったと思います。

 

4.もし大阪空港のワイドボディ機就航が認められなかったら

f:id:meihokuriku-alps:20190528140409j:image

史実では1977年に発着枠の削減と引き換えに大阪空港のワイドボディ機の発着が認められ、大阪空港の利用者増加に貢献しました。しかし、もしワイドボディ機発着が認められず、単通路ジェット機のみの状態が続いていたらどうなっていたでしょうか。

 

まず機材面ではJALはDC-8-61(253席)、ANAは727-200(179席)が最大となり、大阪の航空路線は停滞が続く事になります。80年代はこれらの機材の後継機を探さなければなりませんが、その際大阪空港用に「単通路機で一番大きい飛行機」を用意する必要があります。

その場合は単通路機ながら200席級の収容力を持ち、767との互換性も高いボーイング757一択になるでしょう。そうなれば80〜90年代の大阪空港は右を向いても左を向いても757だらけ、史実のように757がレア扱いされる事はなく、大阪に行けばうんざりするほど見られる機体になっていたのではないでしょうか。

 

次に路線面での影響ですが、座席数増加が見込めない以上、航空各社は新幹線との競合が激しい路線、特に羽田〜大阪路線の将来性に早々と見切りを付けたのではないかと思います。むしろ札幌や那覇、九州など航空需要が大きい路線に貴重な発着枠を振り向ける為に積極的に廃止にしていったかも知れません。

最後に関空開港後の伊丹空港の立ち位置ですが、機材面で制約が大きい伊丹空港は航空会社から敬遠され、需要の大きい札幌、那覇線などの長距離路線を中心に史実よりは関空への転移が進んだと思います。伊丹空港は単通路機でも十分な地方短距離路線を中心とした空港か、県営名古屋空港のようなコミューター空港になっていたのではないでしょうか。

 

5.もし国鉄分割民営化の際、本州が東西2社の分割だったら

f:id:meihokuriku-alps:20190528165229j:image

国鉄分割民営化の際、当初本州内は東西2社の分割、東海道新幹線は西日本会社の所属となる案が有力でしたが、スーパードル箱路線の東海道新幹線を持つ西日本会社が収益面で有利になると判断され、最終的には東海道新幹線と東海地域、東日本会社のうち山梨・長野県の南部を名古屋本社の別会社(=JR東海)に移管する事になりました。

この分割の区割りやJR東海発足については現在でも様々な議論を呼んでいますが、もし当初の予定通り東西2社の分割だった場合、東海道新幹線やJR各社はどんな姿になっていたのでしょうか?

 

まず本州2社の収益性ですが、首都圏の通勤路線を多数抱え、国鉄の遊休不動産を多数保有していた東日本会社は概ね今のJR東日本と同様の歴史を歩んでいたと思います。

一方の西日本会社ですが、優先的な投資対象を私鉄との競合が激しい京阪神間と、収益性は高いが設備更新が必要な東海道新幹線のどちらに置いたかで少々差異があると思います。

 

東海道新幹線に重点投資した場合、史実のJR東海同様スピードアップやサービス改善が図られたと思います。但し、史実のJR東海ほど輸送力増強やスピードアップが図られたかは疑問です。

JR東海は東海道新幹線の進化が会社の命運を左右するほどの重大事項ですが、西日本会社の場合は山陽新幹線や在来線など、東海道新幹線以外にも投資が必要な路線を抱えている為、史実のJR東海ほど東海道新幹線には力を入れず、改良もそれなりで終わった可能性の方が高いかと思います。恐らく品川新駅の整備も後回しになり、リニアについてもそこまで積極的にはなってないかも知れません。

 

一方、京阪神間の在来線を優先した場合は国鉄時代同様、東海道新幹線は他路線の投資資金や赤字穴埋めの為に使われて設備投資は引き続き最小限に抑えられていたと思います。

収益性を考えると東海道新幹線に投資した方が効果は大きく、収益も上がるとは思いますが、どちらの道を選んだとしても投資対象は分散せざるを得ず、東海道新幹線の収益性は史実のJR東海ほどは高められなかったのではないでしょうか。

 

f:id:meihokuriku-alps:20190528165608j:image

しかし、東西2社に分割したら本州会社の収益性の格差は少なくなり、西日本会社の経営は史実のJR西日本よりもかなり楽になっていたと思います。競争のためにスピードアップに必要以上に躍起になる事もなく、福知山線脱線事故のような事はなかったかも知れませんし、車両投資の面でも古い車両を無理に延命する事なく置き換えが早まったかも知れません。

以上の事から、もし東西2社に分割となった場合、東海道新幹線は史実よりも不利になるが、現JR西日本エリアにとっては今よりも良くなった可能性がある、と言ったところではないでしょうか。

 

↓「国鉄改革3人組」の一人でもあった葛西氏の著書。分割民営化を巡る生々しいやり取りも書いてあります。

 

以上、昭和時代の東海道にまつわる歴史のifを予想してみました。あくまでも一個人の勝手な想像なので、与太話程度に捉えて頂ければと思います。その中でも東海道新幹線の有無はその後の日本の発展に大きく影響したと思いますし、もし幻のままで終わっていたら日本の姿そのものは今とは全く別のものとなっていたかも知れません。そう考えると十河信二氏の先見性と決断力には改めて感嘆させられますね。

 

次回は平成時代の「もしも」を予想してみたいと思います。「昭和編」よりも長くなってしまいましたが、それに見合った考察はしたつもりですので、こちらも是非ご覧下さい。

www.meihokuriku-alps.com

 

 

にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村 にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
にほんブログ村

伝説のF1レーサー、ニキ・ラウダの「飛行機野郎」としての一面

5月20日、70年代から80年代にかけてF1で活躍したニキ・ラウダ氏が亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。


headlines.yahoo.co.jp

 

正直言うと、私はF1レーサーとしてのニキ・ラウダを知りません。彼が活躍したのは私が生まれる前の70年代から80年代前半にかけてで、物心がついた頃には既に引退していたのですから。なのでここでは彼の引退後の「航空会社経営者」としての一面を取り上げたいと思います。

 

 

ラウダ航空

 

ニキ・ラウダが航空ビジネスに携わったのは1979年、F1から引退して「ラウダ航空」を設立した時でした。1975年に初めて世界チャンピオンとなり、1976年の大事故で瀕死の重傷を負うも奇跡の生還を果たして一か月後に復帰、翌年には再び世界一になるなどF1レーサーとして絶頂期を迎えていた中での突然の引退と実業家への転身、それも当時はまだ航空自由化前で規制でがんじがらめだった航空ビジネスへの参入は世間を驚かせました。

実際、創業からしばらくはラウダ航空の経営は苦戦を強いられます。世界的な金融不況で航空需要自体が冷え込んでいた事に加え、国営のオーストリア航空との路線認可における紛争、規制で思うような運航が認められないなど、ラウダ航空の経営はお世辞にも順調とは言えないものでした。機材面でも旧式のターボプロップ機のフォッカーF27フレンドシップで細々とチャーター便を運航する程度。ラウダ自身は1982年にF1に復帰しますが、ラウダ航空の経営が上手く行っていないからだという説もあるくらいでした。

しかしF1に復帰したラウダはそんな周囲の揶揄をよそに再び活躍し、1984年には3度目の世界チャンピオンに輝きました。翌1985年にはモータースポーツから完全に引退し、航空ビジネスに専念することになります。まず手始めにフレンドシップをBAC1-11に更新し、ツアーオペレーターのITAS社と提携。ツアーチャーターに活路を見出します。これが軌道に乗ると機材を当時最新型のボーイング737-300型二機に変え、1988年には念願の定期航空路線が認められます。新しくボーイング767-300ERを購入してバンコク経由シドニー線や香港線などに就航。創業当時は青息吐息だったラウダ航空は長距離国際線を運航する航空会社にまで成長したのです。

 

しかし1991年5月26日、香港発バンコク経由ウィーン行きのラウダ航空004便が空中分解事故を起こし、時代の寵児だったラウダは窮地に立たされます。ラウダは自ら事故原因を解明するべく調査に動き、逆噴射装置の誤作動が原因であると突き止めました。さらにボーイングに直接直談判して補償を認めさせるなど、いち航空会社の経営者としては異例の行動力で自社に責任がない事を証明します。

その後もラウダ航空は高いサービスとラウダの知名度を武器に順調に事業を拡大し、ボーイング777を運航するまでに成長しましたが、2000年にラウダ航空の経営権をオーストリア航空に売却し経営から手を引きます。ラウダ航空はしばらくはオーストリア航空グループの航空会社としてチャーター便を中心に存続しますが、2013年にオーストリア航空のブランドに統合され、その名前は消滅しました。

 

ニキ航空

 

しかし、これでラウダが航空ビジネスから手を引いた訳ではありませんでした。2003年にはドイツのアエロ・ロイドの子会社を買収し、今度は自らのファーストネームをつけた「ニキ航空」を設立し、航空業界に再参入します。

今度はドイツのエアベルリンと組み、当初は24.5%、のちに49.9%を出資してエア・ベルリングループの航空会社として再スタートを切りました。ラウダ航空のように長距離国際線はやらず、欧州域内を中心に機材もエアバスA320シリーズやボーイング737と言った単通路機となりました。2012年3月にはエアベルリンのアフィリエイトメンバーとしてワンワールドに加盟し、2015年にはエアベルリンと提携したエティハド航空のコードシェア便と言う形で日本路線にも就航しています(と言っても名前だけでニキ航空の機体が日本に来た訳ではありませんが)

 

しかし2017年8月25日、エティハド航空の支援打ち切りでエアベルリンが破産し、ニキ航空は再び窮地に立たされます。グループ会社だったニキ航空も売却の対象となり、最初はルフトハンザグループに売却され、傘下LCCのユーロウイングスに統合される方針でしたが、寡占化を懸念した欧州委員会が待ったをかけた為計画は断念。ニキ航空は12月14日に運航を停止しました。

その後ブリティッシュエアウェイズやイベリア航空などを傘下に持つインターナショナルエアラインズグループが買収に手を挙げましたが交渉は不調に終わります。そして最終的にニキ航空を取得したのはなんと創業者のラウダでした。この辺については当ブログでも記事にしていますので、詳しくはこちらもご覧下さい。

www.meihokuriku-alps.com

 

 

ラウダモーション

 

こうして三度航空ビジネスに参入したラウダはニキ航空の社名を「ラウダモーション」に変更し、ウィーンとベルリン・テーゲル空港を拠点に2018年3月から運航を開始しました。

但し、ラウダモーションは運航開始直後からアイルランドのLCC大手・ライアンエアーが経営に参加しており、当初はラウダモーション株の24.9%、8月には75%に引き上げており、運航面でもライアンエアーが大きく関わるなど事実上の「ライアンエアー・オーストリア」という状態。それでもブランドを分けているのはラウダが関わった航空会社であると言う事実と、伝説のF1レーサー、ニキ・ラウダの「ブランド力」を利用する為だと思います。

 

ニキ・ラウダが去った後の「ラウダブランド」の行方

 

ラウダモーションが立ち上がり、これからと言う時の突然のラウダの死は、ニキ・ラウダの名を冠した航空会社の先行きを不透明にしました。すぐにブランドが消える事はないにしても、ラウダモーションはラウダ個人の航空ビジネスの情熱とラウダの知名度でできた会社であり、そのラウダが世を去った今、彼の名を冠した航空会社が長い期間ブランドを維持できるとは思えないからです。

そう遠くない将来、恐らくライアンエアーがブランドを一本化した方がプラスだと判断した時が、ニキ・ラウダの名を冠した航空会社が消える時ではないかと思います。F1でも航空ビジネスでも一時代を築いた「飛行機野郎」ニキ・ラウダの名が航空業界から消えるのは残念ですが、栄枯盛衰が常の航空業界では仕方のない事かも知れません。願わくば、航空業界から「ラウダ」の名前が消える日ができるだけ後ろになることを祈るばかりです。

 

 

 

新シリーズ「交通機関の栄枯盛衰(仮)」の詳細

先日ニコニコ限定で「東海道交通戦争」のあとがきと新シリーズの予告動画をアップしました。こちらの動画はYouTubeにはアップするつもりはありませんので、気になる方はお手数ですが下記のリンクからご覧下さい。

 

 

さて、今回は最後の方でちょっとだけチラ見せした新シリーズ「交通機関の栄枯盛衰〜それでも彼らは駆け抜けた〜(仮)」についてもう少し具体的な内容や方針をご紹介したいと思います。一応、まだ(仮)と付けてますが、恐らくこのまま正式タイトルになるんじゃないかと思います。

 

新シリーズの内容的には「しくじり企業」の交通版と思って頂ければいいかと思います。但し解説役に関しては「迷航空会社列伝」に出てきたキャラを使う予定。これは他のゆっくり解説と同じだとYouTubeのスパム判定に引っかかる可能性が高い事と一種の差別化目的、それに自分の動画のキャラの方が私の視聴者の方にもスムーズに感情移入してもらえると思ったからです。ベースはゆっくり解説でも自分なりのエッセンスを加えて行きたいなと思います。

「交通」とは言ったものの、航空関係は既に「迷航空会社列伝」シリーズがあるので、新シリーズで取り上げるのは鉄道やバス、船など航空以外の分野になる予定です。但し、YouTubeのゆっくり解説系動画の収益化剥奪問題があるので、当面は「動画素材の調達が可能なもの」を優先して取り上げる事をお許し下さい。

f:id:meihokuriku-alps:20190520191619j:image

取り敢えず、初回は以前に制作した「迷列車北陸編」でも取り上げた加賀温泉駅設置の理由となった両隣の駅の特急争奪戦を予定しています。オリジナルは特急停車駅争奪のいざこざが中心でしたが、加賀温泉郷にまつわる鉄道の歴史や各温泉の集客争い、特急停車駅一本化から加賀温泉駅開業に至る詳しい経緯なども掘り下げるつもりなので、リメイクと言うよりは全くの一から作るのと変わらないです。迷航空会社列伝と並行して作って行くので時間はかかると思いますが、素材と資料は昨日調達してきたのでまあ企画倒れにはならないかと・・・

f:id:meihokuriku-alps:20190520193346j:image

一応その後は神岡鉄道や旧京福電鉄福井線をやろうかと考えていますが、当面は素材調達がしやすい北陸近辺が中心になると思います。しかし目星をつけたネタは40〜50はあるので、いずれは他の地域もやって行きます(と言うか一番のネックは映像素材です。これがなかったらどうにでもなるんですが・・・)

 

また、タイトルを「迷〇〇〜」とか「しくじり交通」とかにしなかったのも理由があります。ひとつは「迷」や「しくじり」と言った若干ネガティブなワードを使う事で取り上げる内容に制約を掛けない為。もう一つはネガティブなタイトルだとYouTube運営や新規の視聴者の方にあらぬ誤解を招く可能性があるためです。新シリーズは単に消えたり破綻した会社や路線だけでなく、廃線の危機から復活した路線や経営破綻から再生した会社も取り上げて行きたいと考えてますので、そう言う意味でもネガティブな言葉はタイトルに入れたくなかったんです。

 

新シリーズは今まで通りYouTubeとニコニコ動画の双方にアップして行く予定ですが、YouTubeの方は「東海道交通戦争」の後釜としてサブチャンネルで展開する予定です。今後はメインチャンネルを航空関係、サブチャンネルを鉄道中心に航空以外の交通関係、という風に展開していきたいと思っています。近いうちにチャンネル名も変更するつもりです。

 

正直言うとメインチャンネルの収益化停止が東海道交通戦争の完結と新シリーズの計画を遅らせた事は否めませんし、動画製作の上でも一番の稼ぎ頭だったメインチャンネルの収益がない分、実地調査や動画素材撮影の面で大きな痛手になっている事も事実です。

ですが私自身やりたい事や紹介したい事はまだまだありますし、何より私の動画を楽しみにしてくれている方が沢山いらっしゃいますから、動画はこれからも続けて行きます。収益が多い方が動画に突っ込む金額も増えて色々と取り上げられますが、なかったら続けられない訳じゃないですし。

新シリーズは私にとっては新たな挑戦です。クオリティは落とす事なく、下調べや原稿作成も今まで通り時間をかけていい動画を作って行く基本姿勢は変わりません。今後も引き続きご愛顧の程よろしくお願いします!

 

にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村

羽田発着枠のアメリカ側の配分決定・成田発はどれだけ減るのか

f:id:meihokuriku-alps:20190517230230j:plain

 

5月16日、アメリカ運輸省(DOT)は2020年夏ダイヤで予定される羽田空港の昼間時間帯の増便について、アメリカ側に割り当てられる予定の12枠を暫定的に割り当てたと発表しました。今後5月30日までに反対意見を受け付けたのち6月10日には正式決定、その後日本側の承認を得た上で夏ごろには正式に決まる見通しです。
www.aviationwire.jp

 

headlines.yahoo.co.jp

 

では、今回の配分はどのようになったのでしょうか。まず各社の配分ですが

デルタ5

ユナイテッド4

アメリカン2

ハワイアン1

となりました。以前の記事で私が出した予想がデルタ5、ユナイテッド4、アメリカン2+早朝深夜1、ハワイアン1だったので、アメリカンの早朝深夜枠以外は予想が当たりました。我ながらまんざらでもない予想だったなw

 

その時の私の予想は以下の記事をご覧下さい。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

次に各社認可された路線を見ていきます。

デルタ:デトロイト、アトランタ、シアトル、ポートランド、ホノルル各1往復

ユナイテッド:ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルス各1往復

アメリカン:ダラス、ロサンゼルス各1往復

ハワイアン:ホノルル1往復

 

これについても概ね予想通りでした。個人的にはラスベガス線やグアム線が飛べばいいなと期待していたんですが、まあ仕方ないです。また、この配分で新たにデトロイト、アトランタ、シアトル、ポートランド、ワシントン、ダラスの6都市が羽田発アメリカ線に加わる事になり、既存のロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ミネアポリス、ホノルル、コナの7都市と合わせ13都市に拡大します。日本側の会社の就航地によっては今後更に就航地は増えるかも知れません。

アメリカ側が概ね固まったことで、次は日本側の会社がどの路線を飛ばすか、ANAとJALの配分がどうなるかが焦点となります。今のところ日本側の航空会社の発着枠については大きな動きはありませんが、準備期間等を考えるとそろそろ動きがあってもおかしくないと思います。アメリカ側の配分が正式決定したあたりから動き出すのではないでしょうか。こちらの動きにも注目です。

 

成田発アメリカ路線の行方

さて、アメリカ側の配分が決まったことで、来年以降成田発のアメリカ路線がどうなるかが気になるところです。羽田発アメリカ路線が大幅に増便されることで、重複路線の一部羽田移転は避けられないでしょう。成田空港側も「影響は避けられない」として撤退路線が出る事は覚悟しているようです。

 

www.aviationwire.jp

 

では今後、具体的にどの会社のどの路線が撤退となるでしょうか?各社ごとに予想してみましょう。

デルタ航空

f:id:meihokuriku-alps:20190517232006j:plain

今回の各社の中で一番激減する可能性があるのがデルタ航空。ここ数年来、成田発着路線を減らしまくってきたデルタですが、羽田路線でほぼ希望通りの枠が認められたことで成田離れがさらに加速しそうです。

まず都市自体が小さく、路線需要も大きくないシアトルとポートランドは間違いなく撤退になると思います。ホノルル線に関しても2往復のうちどちらかは羽田に移すでしょう。問題は残るデトロイトとアトランタですが、個人的な予想ではこの2都市はデルタにとっても二大ハブと言える規模があるので、どちらかは残すかもしれないと考えています。

実はデルタはアメリカ路線のほかにも以遠権を利用してマニラとシンガポールにも路線があり、このうちマニラはホノルル線の以遠なので問題ないとしても、シンガポールはシアトル線の以遠の為、この路線を残したければどこか別の路線にくっつけるしかありません。そこでそのくっつける相手としてアトランタとデトロイトが考えられる訳です。特にデルタ最大のハブであるアトランタからは全米各地の路線はもとより、中南米やカリブ海への路線も出ていますから、乗り継ぎ需要やライバルのアメリカンがダラス線を2往復飛ばしている事、アトランタ~シンガポール直行は難しい事を考えるとアトランタだけは成田に残す可能性はあるのではないかと思います。

もっとも、「羽田で一定の枠が取れたし成田はもういいわ!」と、すっぱり全面撤退する可能性も十分考えられますが・・・

 

ユナイテッド航空

f:id:meihokuriku-alps:20190517233646j:plain

デルタに比べるとある程度の便数は残りそうなのがユナイテッド。今回の配分でヒューストンとグアム線が却下されたことや、これ以外にもデンバー、ホノルル、サンフランシスコ線がある事を考えると、羽田増枠後も一定の路線は残るのではないかと思います。

それでもいくつかの路線は撤退が避けられないと思います。正直、羽田開設が認可された路線のうち、メインハブのシカゴ線だけでも残ればラッキーなのではないでしょうか。

アメリカン航空

f:id:meihokuriku-alps:20190517233940j:plain

アメリカンもロサンゼルスの撤退とダラスの減便は避けられないと思います。但しダラス線そのものは却下された1往復は残るのではないでしょうか。また、同じく却下されたラスベガス線を成田発着で実現させるかも知れませんし、アメリカン航空のハブにはマイアミやフェニックス、シャーロットなど、日本未就航の都市がいくつも存在しますので、デルタやユナイテッドとの差を埋めるためにそれらの都市へ新規就航させるかも知れません。まあ、この辺はどちらかと言うと願望ですが・・・

ハワイアン航空

一番減便するのはデルタの可能性が高いですが、ハワイアンに関しては上記3社とは別の問題があります。「成田自体から撤退」の可能性です。

現在、成田からのハワイアン航空はホノルル一往復のみですが、今回の配分で羽田発ホノルル線は週18往復、コナ週3往復となります。これだけの便数があれば羽田に集約したくなるでしょうし、成田~ホノルル線には間もなくANAのA380が就航します。ハワイアンが供給過剰が予想される成田路線に見切りをつけ、都心から近く客単価も高めに設定できる羽田を重視しようと思ってもおかしくない状況は揃っていると言っても過言ではありません。正直言って、ハワイアンの成田撤退の可能性は五分五分ではないかと思います。

 

以上、アメリカ航空各社の成田路線の展望についてまとめてみました。短期的にはデルタを中心に大幅な減便は避けられないと思います。後は各社が新規路線を開拓する意欲があるかどうかですが、この中で開拓の余地があるとすればシェアの小さいアメリカンではないかと思います。幸い、アメリカンにはJALと言う提携相手がいますし、北米~アジアの乗り継ぎ需要も十分見込めますので、新規路線開拓はそう悪い賭けではないと思いますがいかがでしょうか?

それでも羽田空港の配分に制限がある以上、長期的には成田も活用しなくては太平洋線の航空需要はさばききれません。今後成田発アメリカ路線が競争力を維持できるかどうかは中規模路線の開拓がカギとなるのではないかと思います。また、ZIPAIRも北米路線開設を目指していますから、低運賃な航空会社が就航すれば太平洋線の航路図も今後劇的に変わっていくかもしれません。羽田のアメリカ路線増枠は成田にとっては脅威ですが、ピンチをチャンスととらえて今後も路線の充実や誘致で対抗して行って欲しいですね。

 

【8月10日追記】

本日アメリカ運輸省は5月に仮承認した各航空会社への割り当てを、当初の予定通りに最終決定して配分したと発表しました。この間、ハワイアン航空が「市場規模を鑑みてデルタのロサンゼルス線を自社のホノルル線に割り当てるべき」グアム空港が「成田空港までの移動時間を考えると羽田空港から就航した方が競争力を維持できる」と異議申し立てを行いましたが、いずれも認められることはありませんでした。特にハワイアンの主張は他の全ての航空会社が反論したそうです。まあ、ハワイアンは既に羽田~ハワイ路線で3枠ももらってますから、ハワイアンの規模やハワイ路線に特化した路線網を考えると他の航空会社から総スカン喰らっても仕方ないと思いますが・・・

また、アメリカン航空は割り当てが却下されたダラス線の2便目とラスベガス線について、他の航空会社が通年運航を打ち切った場合、自社に割り当てられるようバックアップ権限の付与を求めるなどしたたかな動きも見せています。

www.traicy.com

 

アメリカ運輸省が正式に配分を決定した事で、羽田空港からのアメリカ航空会社の路線と発着枠は以下の通りになる予定です。

 

デルタ航空 1日7往復

(アトランタ、デトロイト、ミネアポリス、シアトル、ポートランド、ロサンゼルス、ホノルル)

ユナイテッド航空  1日5往復

(ニューアーク、ワシントン、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ)

アメリカン航空  1日3往復

(ダラス、ロサンゼルス2往復)

ハワイアン航空  1日3往復

(ホノルル週18往復、コナ週3往復)

 

現在と比べて便数が3倍になる事で、羽田空港のアメリカ路線の存在感は大きくなります。従来からの国内各地からの乗り継ぎはもちろん、従来成田空港が担ってきた東南アジア〜北米の乗り継ぎ需要の一部も羽田に移りそうです。

 

そして気になる成田空港の路線ですが、先日当ブログでも記事にした通り、デルタ航空は成田空港からの撤退と羽田集約の方向であり、今回の正式承認を受けて正式に移転を発表しました。

デルタ航空「成田撤退」決定?ノースウエスト時代から続くハブ機能、終焉か - 〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

また、ユナイテッド航空は今回羽田に新設する路線のうち、ニューアークとロサンゼルスは新設、シカゴとワシントンは成田からの移転と言う形を取ります。デルタと違いユナイテッドは一定の路線は残すことがはっきりした事で、今後成田に乗り入れる外国航空会社最多はユナイテッドになりそうです。

アメリカンとハワイアンは今のところ発表はありませんが、ハワイアンの方は成田路線は残す方向のようですので、動向が不明なのはアメリカン一社になります。アメリカンの成田路線はダラス2往復とロサンゼルス1往復だけですが、今回配分された路線を羽田に移転すると残りはダラス1往復だけ。アメリカンはJALと共同運航していますので、ひょっとしたら成田はJALのコードシェアで賄ってデルタ同様羽田に集約する可能性もあるかも知れません。今後のアメリカンの動向に注目したいところです。

 

 

 

にほんブログ村 その他趣味ブログ 航空・飛行機へ
にほんブログ村

 

神戸空港の規制緩和でどうなる関西3空港

f:id:meihokuriku-alps:20190512175114j:plain

5月11日、「関西三空港懇談会」は神戸空港の運用時間を午後11時までに拡大し、1日の発着回数を60回(30往復)から80回(40往復)に増やす事で合意しました。2021年度までに実施される予定で、神戸空港の規制緩和は2006年の開港以来初めてになります。

一方で神戸空港の国際化に関しては「2025年までの中期的な課題」として今回は見送られました。また、伊丹空港の発着枠や運用時間の拡大も今回は実現には至りませんでした。それでも長年対立と言ってもいい状態だった関西三空港の「共存」に向けて大きな一歩になった事は確かです。
www.kobe-np.co.jp

 

一方、神戸空港の運用時間拡大は東海道沿いの航空と鉄道の競争にも影響を与えそうです。これまでは羽田を午後9時以降に離陸する関西方面の航空便は関空路線のみでしたが、神戸空港の運用時間が午後11時までに拡大されれば、羽田~神戸線も21時以降に羽田を出発する便が設定可能になります。また、羽田空港の発着枠配分次第になりますが、スカイマークの羽田~神戸線も増便の可能性が考えられます。伊丹空港は運用時間の関係で午後9時台どころか8時台の便の設定も不可能なので、関空より都心に近い神戸線の最終便繰り下げはビジネス需要の取り込みには効果的です。

さらに増枠された発着枠の大半は神戸を拠点にしているスカイマークに割り当てられると思いますので、既存路線の増便や新規路線開設も期待できます。残りはJALが神戸に再参入するとは思えませんし、新規参入の話もありませんからANAとその協力会社に配分されるのではないでしょうか。
www.kobe-np.co.jp

 

さて、今回の神戸空港の規制緩和で、今後の関西三空港の役割分担はどうなるでしょうか。当面は「関空は国際線全般と一部国内幹線とLCC、伊丹は国内線全般、神戸は伊丹のセカンダリー」という大まかな枠組みは変わらないと思いますが、将来的には神戸空港は「関空・伊丹双方の補完空港」の性格が強まるのではないかと思います。

現在関空は空港アクセスの悪さ、伊丹は発着枠と運用時間がネックになっていますが、神戸空港は空港アクセスは関空以上伊丹以下、運用時間は伊丹以上関空以下であり、ある意味両者の間を取ったような存在。関空・伊丹双方のバックアップという意味では絶妙な立ち位置にあるのです。

昨年の台風で関空が大きな被害を受け、しばらく運用出来なかった時に神戸や伊丹の一時的な国際線運用の肩代わりが検討された事がありましたが、もし神戸空港に税関や出入国管理などの国際線機能があればもっとスムーズに受け入れができたでしょうし、今後同じような事態が起こらないとも限りません。伊丹空港の再国際化は発着枠がないことや運用時間が限られる事を考えると難しいのではないかと思います。そうなると関空のバックアップ兼補完的存在となり得るのは神戸空港でしょう。

滑走路2500mでは飛ばせるのは近距離国際線くらいですが、それを逆手にとって、台北松山や金浦空港のように路線を金浦、北京、上海虹橋、台北松山、香港といった隣国のビジネス路線に限定すれば双方の棲み分けが計れるのではないでしょうか。インバウンド需要で関西の航空需要が伸びていることや2025年に開催される大阪万博の事を考えると、需要分散や万が一のバックアップの点でも一部役割分担をさせるのは理に叶っているのではないかと思います。

 

神戸空港が「関西エアポート」の運営になった事で、関西三空港は同じ運営会社の管理下に置かれました。関西三空港問題がこじれた原因の一つはそれぞれの空港と関係自治体、監督官庁の利害対立であり、この対立が関西圏の空港整備を遅らせ、客の取り合いで航空会社の参入を遠ざけて航空需要を取り逃がした原因でした。運営一本化で少なくとも空港間の対立は解消されており、経営資源を空港の機能強化と誘客に振り向ける事が出来ています。今後は関係自治体が関西圏の航空需要創出のため、利害対立を越えてお互い歩み寄れるかがカギとなります。

 

関西三空港の成立には様々な思惑や紆余曲折、関係者間の感情的対立などで長年迷走し続けました。しかしその対立は関西圏の航空需要を取り逃がし、関西の空の地位低下を招くだけに終わりました。それだけに運営一本化と今回の規制緩和は関西圏の航空需要を増やし、拡大させる大きなチャンスと言えます。

過去の遺恨はどうあれ、今更空港を潰すのは非現実的ですし、利用者の利便性向上に逆行する事になります。今ある3空港をうまく役割分担させて、関西全体で空路を活性化させて欲しいですね。

北陸新幹線が東海道新幹線の「対抗勢力」になる可能性

長年ニコニコ動画やYouTubeのサブチャンネルの方で投稿していた「東海道交通戦争」ですが、遂に先日完結することができました。皆様本当にありがとうございました!

 


東海道交通戦争・最終回「陸と空の未来予想図」

 

 

さて、今回からしばらく「東海道交通戦争」の動画の補足説明などをしていきたいと思います。今回は動画の終盤で触れた「北陸新幹線が割引運賃やスピードアップで東海道新幹線に勝負を仕掛ける可能性」についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

f:id:meihokuriku-alps:20190509233457j:plain

 

スピード面で勝負を仕掛ける可能性

まずスピード面からですが、結論から言うと絶対にのぞみには敵いません。

「藪から棒に何を」と思われるかもしれませんが、北陸新幹線の東京~新大阪間の距離は700km以上になるのが確実であり、実キロベースで515kmの東海道新幹線と比較して200kmもの距離の差をスピードで埋めるのは不可能なためです。

加えて北陸新幹線(と言うよりJR東日本の新幹線全てに言える話ですが)は東京~大宮間の最高速度が騒音問題などの関係で110km/hに制限されており、この区間で約25分前後かかってしまう事も時間短縮の足かせとなっています。

現在、この区間の最高速度を130km/hに引き上げるべく工事が進められていますが、引き上げられるのは一部区間で、完成後も短縮されるのは1分程度と劇的な速度向上にはならない見込みです。

trafficnews.jp

 

さらに北陸新幹線と共用される上越新幹線の大宮~新潟間で最高速度を275km/hに引き上げる工事が着工される予定で、2022年度末に完成すれば北陸新幹線も2分程時間短縮の恩恵を受ける事になりますが、それでも時間短縮効果はわずかであり、短期的には北陸新幹線の所要時間が劇的に改善される見込みはありません。

trafficnews.jp

 

では実際のところ、北陸新幹線経由での東京~新大阪間の所要時間はどのくらいでしょうか。石川県の北陸新幹線特集ページによると、2022年度末の金沢~敦賀間開業時には金沢~新大阪間は現在の2時間半から2時間程度に短縮される見込みです。東京~金沢間の最速列車が2時間28分ですから、合わせて約4時間半程度になります。しかしこの所要時間では「のぞみ」はおろか「こだま」にすら負ける上に乗り換えが必要になるので全く勝負になりません。東海道新幹線に万が一の事が起きた時の代替交通機関としてはある程度機能するでしょうが、対抗勢力にはまずなり得ないです。

www.pref.ishikawa.jp

 

北陸新幹線が東海道新幹線の対抗勢力になり得るとすれば、新大阪まで全通した時でしょう。全通した時の金沢~新大阪間は1時間20分程度にまで短縮される見込みであり、仮に東京~新大阪間を直通する列車を設定したとすれば先の東京~高崎間の時間短縮と合わせ、3時間45分程度で走破することができます。この距離なら少なくとも「こだま」には勝てますし、大宮~新大阪間で見れば約3時間20分程度になり、東京乗り換えが必要になる東海道新幹線周りと互角になります(リニアを使えばもっと速い!というツッコミはこの際目をつぶって下さい)

 

さらに北陸新幹線には「スピードアップの余力がある」事も見逃せません。現在の北陸新幹線の最高速度は260km/hですが、これはいわゆる「整備新幹線」の設計最高速度であり、東北新幹線の盛岡以北や北海道新幹線、九州新幹線も最高速度は260km/hに統一されています。

とは言っても実際には320km/h運転にも耐えられるよう設計されているらしく、騒音や法律、新幹線設備のリース料の問題(整備新幹線は鉄道・運輸機構が施設を保有し、JRに貸し付けている)さえ解決できれば最高速度の引き上げは不可能ではありません。実際、JR東日本も盛岡~新青森間で最高速度を320km/hに引き上げるべく、200億円を投じてこの区間の防音対策工事を行い、5年後をめどに最高速度引き上げを実現するとしています。

toyokeizai.net

www.asahi.com

 

もし同じことを北陸新幹線で行うとすれば、東京~新大阪間の所要時間はさらに縮まります。仮に大宮~新大阪間の最高速度を320km/hに引き上げれば、碓氷峠など減速が必要な区間が考あるものの、今の計画よりも30~40分程度は短縮できるのではないかと思います。

3時間10分台なら「ひかり」と十分勝負になりますし、大宮~新大阪なら北陸新幹線が優位。さらに同じ都心でも埼京線で大宮に出る事が可能な池袋や新宿あたりなら、乗り換え時間を考慮しても東海道新幹線とそう大差はないので、多少なりともシェアは奪えるのではないでしょうか。

 

・・・とは言え、どう逆立ちしてもリニアの所要時間には絶対に敵いませんし、スピードアップにしても投資に見合った効果を得られるかどうかという問題があるので、最後はJR東日本と西日本の経営判断次第、と言う事になります。そもそも、今の段階では新大阪までの着工もまだ決まってませんし、完成時期もまだ不明ですが・・・

 

割引運賃で勝負を仕掛ける可能性

スピード云々は時間とお金がかかりますが、割引運賃なら今からでも手っ取り早く勝負を仕掛ける事が可能です。

現在、東京〜新大阪間を金沢経由で移動した場合の料金は、運賃10150円、東京〜金沢間の指定席特急料金6980円、金沢〜新大阪間の指定席特急料金は新幹線乗り継ぎ割引が適用されて1550円、合計18680円になります。東海道新幹線経由が「のぞみ」が14650円、それ以外が14340円なのに比べると高いのですが、その差は4000円強と思ったほど大きな差ではありません。

仮に価格面で勝負を仕掛けるとなると、時間的なハンデを覆すには多少安い程度では勝負になりません。少なくとも10000円程度でないとインパクトは与えられないでしょう。しかしそうなると東京〜金沢間の料金14320円との整合性の問題も出てきますし、先に挙げた所要時間の問題もあります。第一、今の北陸新幹線は東京〜北陸の需要だけで十分なので、JR東日本と西日本に敢えて安売りを仕掛ける理由はありません。

 

仕掛けるとすれば最低でも敦賀開業後。と言うのも対関東では福井県内からの需要がプラスされる上に、関西〜北陸の需要を満たす為に「つるぎ」の敦賀延長が見込まれ、座席供給量の増加や増発が予想される為です。供給量に合うだけの需要が増えれば問題ないですが、そうでない場合、空席を埋める為に首都圏〜関西圏の需要に手を伸ばす可能性は十分にあると思います。

f:id:meihokuriku-alps:20190509234418j:plain

 

その場合、ただ単に格安切符を売るだけでなく、新幹線開業前に設定されていた首都圏の在来線も乗り放題な「首都圏フリー切符」的な商品を売れば、成功の可能性は高まります。

首都圏向けにはJR東日本の首都圏の在来線フリー切符付き、関西圏向けにはJR西日本の京阪神の在来線フリー切符を付け、価格も往復25000円〜26000円程度で販売すれば、割引率が低くてもお得感は演出でき、中高年層を中心に一定の支持は得られるのではないでしょうか。

但し、これもJR東日本と西日本の利害が一致し、その気になればの話。ですが在来線乗り放題付きのフリー切符は豊富な在来線網を持つ両社だからできる商品ですし、JR東海にはないアドバンテージなので、スピードアップよりは可能性が高いのではと思います。

 

それ以外の分野で勝負を仕掛ける可能性

価格以外でも北陸新幹線が東海道新幹線にないもので対抗できる要素は存在します。「グランクラス」と「観光」です。

グランクラスは効率性重視の東海道新幹線では当分出現する見込みはないので、逆にグランクラスを前面に出して、お金も時間も余裕のある層をターゲットにした旅行商品を企画しても面白いのではないでしょうか。

 

また北陸新幹線の好調を支えている要素の一つが金沢を中心とした観光需要。敢えて東京〜大阪間の直行需要は狙わず、北陸内や長野県内での途中下車を認める「寄り道推奨」の企画乗車券を販売すれば、新たな需要掘り起こしや北陸新幹線沿線の観光需要創出が見込めます。

速達化・直行化の観点から考えると北陸新幹線の不利ばかりが目立ちますが、観光・レジャー要素は北陸周りの方が優位。視点を変えれば需要を掘り起こす方法はいくらでもあると思います。

 

まとめ

以上、北陸新幹線が東海道新幹線の対抗勢力になる可能性について考えてみました。遠回りの北陸新幹線が東海道新幹線に取って代わる、と言う事はまずありませんが、工夫すれば需要の一部は北陸新幹線に引っぱれるのではないかと思います。

北陸新幹線の建設理由の一つは東海道新幹線の災害時のバックアップであり、全線開通の暁には東京〜大阪通し運転の列車が設定されるかも知れません。もし通し運転の列車が設定されれば関西〜長野・北関東や関東〜小浜〜丹後半島といった新たな観光ルートを創出する可能性を秘めています。そう言う意味では北陸新幹線が一日も早く全線繋がる日が来ると良いのですが・・・

 

 

にほんブログ村 鉄道ブログへ
にほんブログ村