〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

MRJの名称変更?正気ですか?→スペースジェットになってしまった・・・

まず始めに謝りますが、今回のタイトルは少々辛辣な言い回しになっています。このタイトルを見て不快になられた方には申し訳ございませんが、今回報道されているMRJの名称変更についてはMRJの今後に悪影響を与えかねない事態なので、敢えてキツい言い回しをしました。その辺ご理解頂けますと幸いです。

 

5月29日、朝日新聞や日本経済新聞、時事通信などの大手メディアが相次いで「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の事業方針を見直し、70席級の機体開発を本格化させるとともに、名称を「スペースジェット」に変更して「三菱」の名前を外す予定だと報じました。

MRJは当初は2013年の就航を目指していましたが、5度に渡る納入延期もあって今のところ2020年の就航予定と当初の予定から7年も遅れています。現在は90席級の「MRJ90」の開発が中心ですが、新規受注は完全に止まっている上にこのクラスは「エンブラエルE2」や「エアバスA220」「スホーイスーパージェット」と言ったライバル機種がひしめく激戦区。このため三菱航空機はアメリカで需要が見込める70席級にターゲットを変更して仕様も大幅に刷新、さらに開発遅延でマイナスイメージが付いた「三菱」の名称も外してイメージも刷新する、と報道されています。


trafficnews.jp


www.nikkei.com

 

この報道に対し三菱航空機の親会社の三菱重工は「当社グループが発表したものではない」とのプレスリリースを出しましたが、報道の内容自体は否定していません。名称変更はともかく、70席級の開発自体は恐らく社内でも検討されているのではないかと思いますし、否定しないという事は、近いうちに何らかの正式発表があるのではないかと思います。いずれにせよ、詳細は三菱重工や三菱航空機の正式発表を待つ必要がありますが、三菱重工が完全否定しなかった事や、複数のメディアが報道している事からいわゆる「飛ばし記事」の可能性は低そうです。

www.mhi.com

 

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さて、今回の報道を受けてネット上では「スペースジェット」への名称変更に対して好意的なコメントよりも否定的なコメントの方が多いようです。と言うか私自身も「スペースジェット」という名前のセンスは置いといて、この時期の安易な名称変更や「三菱」の名前を隠すようなネーミングはやるべきではないと思います。この記事のタイトルが妙に辛辣なのもある意味私の名称変更報道に対する憤りだと思って下さい(笑)

 

「MRJ」の名称は2007年2月の名称決定以来、12年もの間「日本初のジェット旅客機」「三菱が開発する航空機」として日本国内はもとよりアメリカを始めとした世界市場で浸透してきました。三菱グループもMRJの名称を大々的に宣伝し、愛知県に工場見学施設「MRJミュージアム」も作るなど、最早MRJの名称と三菱のブランドは国内外に十分広まっています。

そんな中での安易な名称変更と「三菱」ブランド隠しは、例え三菱が否定しても「開発遅延でケチが付いたMRJの名前を捨てて、過去の失敗をなかったことにしようとした」と受け取られてしまいます。また、既に試験機が完成し、来年には初号機が納入される(はず)というタイミングでの名称変更は納入先の航空会社や営業面でも混乱を招く可能性が高く、国交省やFAAなどの形式認定作業にも影響を与える可能性があります。

 

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途中で名称が変更された例としてはマクドネルダグラスMD-95がボーイング717に変更された例や、ボンバルディアCS100/300がエアバスA220に変更された例がありますが、これについては前者はメーカーの吸収合併、後者は合弁会社設立と言う事実上の事業売却があったため、むしろ必要な事だったと思います。

一方のMRJ→スペースジェット(一部報道)の変更はメーカーが変わったわけでもなければ機体コンセプトの大幅な変更があったわけでもありません。正直言って、名称変更の必要性が感じられず、安易なイメチェンと取られても仕方ないのではないでしょうか。

 

三菱重工や三菱航空機はここまで来たからには安易に名前を変えて小手先のイメージチェンジでお茶を濁すのではなく、早期に安全な機体を完成させて堂々とMRJの名前で勝負するべきでしょう。今は開発遅延でイメージは悪いかもしれませんが、地道に飛行実績を積み上げて市場の信頼を得ていくしかMRJが生き残る道はないと思います。航空機ビジネスは名前のイメージより信頼性と実績、アフターサービスで購入を決める世界であり、それらを置き去りにしたまま本当に名称変更という手段を取れば、イメージ刷新どころか市場から完全に見限られかねません。三菱が今後70席級の機体に注力するとしても、安易に名前を変えることのない事を祈りたいです。

 

【6月13日追記】

遂に名称変更が現実のものとなってしまいました。今日の三菱航空機の発表で正式にMRJの名称を「三菱スペースジェット」に改名し、90席級のMRJ90は「スペースジェットM90」に、今後の主力となる70席級のMRJ70は「スペースジェットM100」にそれぞれ名称変更されます。17日からのパリ・エアショーで展示される予定の試験飛行3号機も既にオランダでスペースジェットの塗装に塗り替えられたそうで、三菱航空機のHPのトップページも既にスペースジェットのCGに置き換えられています。ここまで来たら名称変更はもう動かしがたいようですね。

 

www.aviationwire.jp

www.mitsubishiaircraft.com

 

恐らくパリ・エアショーの中で名称変更の理由やM100の詳細などが説明されるものと思われますが、先日明らかになったボンバルディアのCRJ事業買収も名称変更のきっかけになった可能性があります。まずは17日以降分かるであろう改名の動機を見てからになると思いますが、正直私にはこの名称変更がプラスに動くとはあまり思えません。しかし変えてしまった以上は新ブランドを一日でも早く市場に浸透させなければならないと思います。その戦略をどう取るか、パリエアショーに注目です。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 

 

↓この本のように初心に立ち返って欲しいです・・・

 

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