〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

ゆっくり解説動画が書籍化⁉「奇書の世界史」8/23発売

このブログでは基本的に航空や鉄道を中心とした話題を取り上げていますが、今回は航空とも鉄道とも関係ありません。ですが今回はどうしても紹介したい書籍が出て来ましたので、あえてその原則を破ります。

 

私が好きな動画の中に「世界の奇書をゆっくり解説」というシリーズがあります。いわゆる「ゆっくり解説」のジャンルの動画の一つで、世界中の異端文学的な「奇書」の内容や生み出された背景などを開設する動画なのですが、実際に本を読んでいるかのような心地よいテンポの構成や語り、丁寧な作りやしっかりとした考察で非常にクオリティーの高いシリーズです。私自身もそのクオリティの高さと丁寧な構成に毎回驚かされ、目標にしている作者さんの一人です。

百聞は一見に如かず、もしご覧になったことがない方は第一回とシリーズのマイリストのリンクを張っておきますので、是非一度見て下さい。なお、それでハマって徹夜して体調や社会生活に支障をきたしても当方は一切関知いたしません(笑)

 

 

www.nicovideo.jp

 

 

で、今回紹介したい書籍、というのがこのシリーズの作者様である「三崎律日(Alt+F4)」様が書いた

「奇書の世界史」(KADOKAWA刊)です。

 

そう、「世界の奇書をゆっくり解説」シリーズが本になって全国の書店やネット書店で販売されるのです!こんな事、恐らくゆっくり解説動画では初めての事ではないでしょうか!詳細は是非上の動画を見て頂きたいのですが、内容としては動画で紹介された奇書12冊に加え、書き下ろしが2冊の合計14冊。動画で紹介された奇書が書籍ではどのように紹介されるのか、書き下ろしの奇書はどんな内容なのか、今から本当に楽しみです。

 

「奇書の世界史」の発売日は8月23日(金)、8月2日(金)より予約受付開始です。

この本が売れれば人気動画の書籍化という新たな道が開かれますし、出版不況の中新たなヒット作の源泉となる可能性を秘めていると思います。それがなくとも個人的に三崎律日様の動画はもっと多くの人に見てもらいたいと思っていましたので、この書籍化がそのきっかけになればいいなと思います。ツイート見てたら「版数読みのためAmazonで予約して下さると助かります」と書いてあったので、予約をおすすめします。

 

何はともあれ、私が言いたいことはただ一つ。

発売されたら皆様是非買って下さい。

もちろん私も買います。

 

 

 

キャセイパシフィック、香港エクスプレスを買収。今後のキャセイグループの行く末は

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3月27日、香港の大手航空会社キャセイパシフィック航空は、中国の海南航空グループ(HMA)から傘下のLCC「香港エクスプレス」を49億3千万香港ドル(約690億円)で買収すると発表しました。その後7月19日に買収手続きが完了し、香港エクスプレスは正式にキャセイグループの一員に。買収後も路線やブランドは維持されますが、CEOはキャセイから送り込まれます。ここ数年のアジアでのLCC設立ブームからは距離を置き、フルサービスキャリア一本で路線展開していたキャセイですが、今回の買収で方針を転換することになります。

 

sky-budget.com


www.traicy.com


www.nikkei.com

 

今回の買収について、モルガン・スタンレーは「香港の基盤を強化できるが買収額は割高」と疑問を呈す一方、ジェフリーズのアナリストは「キャセイと香港エクスプレスは異なる顧客基盤を持つ」と一定の評価を出すなど、市場の評価は分かれています。実際、香港エクスプレスの純資産価値は約11億香港ドルと買収額の2割強しかなく、2018年12月期の最終損益も1億4100万ドルの赤字と確投資効率を考えるとあまり良い買い物とは言えません。キャセイが就航していない日本の地方都市への路線は魅力的ですが、成田や関空などキャセイと香港エクスプレスがバッティングする路線も多く、買収後は香港エクスプレスの経営改善とキャセイと香港エクスプレスの棲み分けが課題になるでしょう。

www.nikkei.com

 

カタール航空で人気の世界都市へお出かけください。

 

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キャセイパシフィック航空は貿易港である香港の地の利を生かし、香港の役割が変化するのに合わせて事業を拡大してきました。イギリス統治時代は香港が中国大陸と世界を結ぶ玄関口となった事で急速に事業を拡大し、1970年代に香港がアジアの金融・貿易センターとしての地位を確立すると世界中にネットワークを広げ、香港をハブとした路線展開を行います。航空連合への加盟も早く、1998年に発足したワンワールドの創立メンバーでもありました。

 

しかし、中国の急速な経済成長で航空需要が急増すると中国国際、東方、南方といった中国本土の航空会社は世界各地へ直行便を飛ばし、香港を経由せずとも自国の航空会社や中国本土に乗り入れる航空会社の便を使って海外に行けるようになった事でキャセイの強みは薄れます。

さらに元々乗継需要狙いだったシンガポール航空に加え、タイ国際航空や大韓・アシアナ航空、近年ではJALやANAといったアジアの他の大手航空会社が乗継需要を重視するようになり、更にはLCCの台頭で価格重視の顧客が流れるなど、アジアの航空会社間の競争の激化でキャセイの業績は悪化していきました。

2016年12月期には得意のビジネス需要の低迷と燃料ヘッジの失敗で赤字決算となり、600人の人員削減などのリストラに踏み切りました。昨年度は黒字になったものの、決して経営は盤石とは言えません。香港エクスプレスの買収は堅調な需要がある日本路線が目的と言われており、LCC事業に参入する事で価格重視の顧客を取り込みたいところでしょうが、レガシー系列のLCCも成功と言えるのはカンタス系列のジェットスターくらいで、シンガポール航空系列のスクートは業績が低迷し、タイ国際航空系列のノックエアも赤字続き。ANA系列のピーチは好調ですが、規模的には他社よりも小さく、バニラとの統合作業など不透明要素が残っています。キャセイが買収した香港エクスプレスの経営も赤字であり、今後経営を立て直せなければ却って経営の重荷になる可能性もあり、今回の買収を上手く活かせるかどうかがキャセイグループの分かれ道になるのではないでしょうか。

 

www.nikkei.com

 

 

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関空でJALのA350を撮ってきた

 

7月13~15日の3連休に関西地方に出かけました。最大の目的は迷列車関係のイベントに行く為でしたが、何気なくツイートを見ているとJALさんの公式Twitterでこんなツイートが。

 

 

 

ああそうか、9月1日の就航に向けて訓練飛行やるんだな。もし旅行中に日程が合えば訓練飛行の機体を撮りたいなと思って見て見ると・・・

 

7月13日と14日に関空に来る!

 

しかし飛んでくるのは早朝、6:40頃関空着、8:20頃離陸です。イベントは10時からだから関空の近くに前泊して早朝から関空で出張れば・・・撮れる!

 

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という訳で行ってきました。

 

8時ちょっと前に展望ホールに行きましたが残念ながらこの日の天気は雨。地方住みの私にしてみれば大空港に撮影に行くこと自体が一大イベントで、遠方から意気込んで行ったら雨だったというのは一番悲しいシチュエーションなんです。こればっかりは都会住みの航空ファンの方が羨ましいです・・・

ちなみに着陸も押さえようとワンチャン狙いでKIXそらぱーくに行ったんですが、着いた頃には既に着陸後だったうえに事情を知らないリアル友人に発見されてバツの悪い思いをしたのは秘密です。

 

 

そしてお目当てのJALのA350ですが、奥の方に駐機されていたようで展望ホールからは見えませんでした。私の持っているカメラはCanonのEOS80Dと一眼ではそれなりにいい機種なのですが、本体にお金を突っ込んで望遠レンズに廻すお金はありませんでした(涙)なので他の方が白キャノンやバズーカと言ったガチの望遠レンズで構える中、私は本体に付属していた18-135mm USMのレンズで勝ち目のない戦いを挑むことになりました(いやこれも付属レンズとしてはいいやつなんですけど相手がね・・・?)

 

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そしてご覧下さい、これが望遠じゃない普通のレンズで撮った精いっぱいのJALのA350です(泣)

 

被写体的には手前にJTAの甚兵衛ジェットもいて結構いい構図なんですけどねえ。羽田や成田、中部なんかは空港本体に展望デッキがついてたり、周辺に撮影に適した公園があるので標準レンズでも割と撮れるんですが、関空に関しては望遠なしだとやはりキツいです。

 

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なので腹いせに近くに止まってたKEの787とTGのサンパチを撮ってやりました。

 

そして離陸。ここで私はある決断を迫られることになります。それはJALのA350の離陸と言う貴重なシーンを写真で撮るか、動画で撮るかと言う事。A350の美しい姿を切り出すなら写真の方が狙いやすいですし、ブログに載せるなら写真一本に絞った方がいいのですが、この機体は動画素材としても貴重なもの。ブロガーとしてのネタを取るか、動画制作者として素材集めをするか・・・

 

 

動画制作者の方を取ってしまいました。

 

ただ、動画の方を優先した理由はもう一つあって、動画なら画像の切り出しができる事。これなら取り合えず静止画でもJALのA350を見てもらえます。そして切り出した画像がこちら。

 

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・・・まあ、動画からの切り出しだとこんなもんですよね。

 

今回はあまり成功とは言えませんでしたが、JALのA350は当面国内線のみの運航になる事、777の運用から考えると札幌や福岡、那覇と言った高需要路線が中心になり、定期便で関空に飛来することはあまりないかと思いますので、このショット自体貴重なものになるかも知れません。実機を見た事でJALが初めて発注したエアバス機への期待はますます高まりましたし、9月1日に乗るのがますます楽しみになってきました。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 ↓JALが導入するA350を始めとした歴代エアバス機を紹介したムック。就航前におさらいしてみるのもいいかも知れません。

 

 

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アリタリア航空の再建スポンサー、破綻から2年2か月たってやっと決定。三度目の正直になるのか、それとも・・・

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一部のネットニュースで出ていましたが、2017年5月に2度目の経営破たんとなったアリタリア航空の再建計画案が7月15日に提出され、再建スポンサーが明らかになりました。主体となるのは旧イタリア国鉄の鉄道会社・イタリア鉄道で、これに加えて空港や高速道路の運営を行うインフラ運営会社のアトランティア、スカイチームの名手であるデルタ航空、イタリア財務省の4者がアリタリアの経営再建にあたる事になります。

具体的な出資比率は明らかにされていませんが、現地報道によると出資比率はイタリア鉄道とアトランティアが35%ずつ、デルタ航空とイタリア財務省が15%ずつとなりますが、イタリア鉄道は民営化されたとは言え全株式をイタリア政府が保有しており、株主構成上は事実上、イタリア政府が主導権を握る形となります。とは言え、当初は破たんから半年でスポンサーを決める予定だったのがズルズルと先延ばしにされてきたアリタリアの再建スポンサーは破たんから2年2か月でようやく決まる事になりました。

 

sky-budget.com

 

 アリタリアに関しての以前の記事はこちらもご覧下さい。

www.meihokuriku-alps.com

 

 

www.meihokuriku-alps.com

 

アリタリアの2度目の破たんまでは私の動画も参照にして下さい。

 

 

当初はイタリア鉄道、デルタ航空、イギリスのLCCのイージージェットの3者がスポンサーとなる予定でしたが、イージージェットは3月に撤退。その穴をアトランティアが埋めた形です。他の企業も加わっているとは言え、元国営の鉄道会社がフラッグキャリアを買収するのは異例中の異例。世界的に見ても国有鉄道がフラッグキャリアを保有するケースは私の知る限り、カナダ国営鉄道がエアカナダを保有していた例くらいではないかと思います。

sky-budget.com

 

さて、今回アリタリアの主要再建スポンサーとなったイタリア鉄道ですが、元はイタリア国鉄で1985年に公社化、1992年に民営化、2001年に鉄道の所有と運行の分離に関する欧州連合の指令を受け、運行会社のトレニタリアと鉄道施設保有会社のレーテ・フェッロヴィア・イタリア(RFI)を傘下に持つ持ち株会社に再編されました。それまでルフトハンザやイージージェットと言った競合他社の名前が挙がっていたアリタリアの再建スポンサーにイタリア鉄道の名前が挙がったのは2018年10月末に締め切られた入札の時。この時買収提案をした2社のうちの一社としてイタリア鉄道が名乗りを上げたのです(もう一社はデルタ航空)

下記の記事ではイタリア鉄道が買収に名乗りを上げたのは、アリタリアを救済することで、アリタリアの国内線を守るために時速300km/hに抑えられているイタリアの高速鉄道の最高速度緩和の材料にする、とされていますが、EUの補助金規制で自分では再建に乗り出せないイタリア政府が、株式を保有するイタリア鉄道に救済を要請したのかも知れません。いずれにしても、結果的には元国営の会社が手を握る事になり、イタリアの国内長距離輸送はイタリア鉄道とアリタリアのグループが大きなシェアを握る事になります。

toyokeizai.net

 

一見盤石に思える組み合わせではありますが、実際のところ、この連合は「かなり危険な組み合わせ」とも言えます。と言うのもイタリアの国内長距離輸送で大きなシェアを握るという事は独占禁止法に抵触する可能性があるという事。イタリアやEUの公取委が統合の条件として両社が持つ権益の一部放出を迫るか、最悪の場合、買収後のシェアの大きさを懸念して買収中止を命令する可能性すらあり得ますので、買収手続きがスムーズに行くかは不透明です。

 

さらにアリタリアのスポンサーの中にイタリア財務省が入っている点や、イタリア政府が全株式を保有するイタリア鉄道がメインスポンサーになっている点をEUが問題視する可能性は十分に考えられます。以前もアリタリアにつぎ込まれたつなぎ融資の額が大きすぎる&長すぎるとEUが問題視して調査を開始したというニュースがあり、今後再建計画がEUの承認を得られるかどうかも気になるところ。万が一EUがイタリア鉄道やイタリア財務省の出資を認めなかった場合、再建計画は振り出しに戻る可能性があり、まだまだ予断は許さないのではないでしょうか。

www.nikkei.com

 

そして何より、「本当に今度こそ再建計画が実施されるのか」と言う点が最大の懸念事項でしょう。これまでもアリタリアは経営危機に陥る度再建計画を立て、人員削減や不採算路線の整理を掲げてきましたが、組合の反対や経営陣の怠慢、アリタリアを取り巻く政府や政治家の思惑などでことごとく失敗してきました。今回の再建スポンサーもイタリア政府が影響力を持つ企業がメインスポンサーとなっており、強いリーダーシップを発揮できるかどうかは微妙。スポンサー間の調整や利害対立といった問題もあり、与党の「五つ星運動」も雇用維持を公約に掲げている手前、本当に人員削減や給与カットと言った痛みを伴う改革ができるのか、疑問です。

 

とは言え、ようやく再建スポンサーが決まったというのにネガティブな予想ばかりするのも野暮と言うもの。幸い、アリタリアは長距離旅客を中心に旅客数を伸ばしており、高単価の旅客獲得に成功するなど明るい話題もあります。定時到着率も信じられない事ですが世界トップクラスとなり、2019年上半期は86.8%、アンケート調査ではサービスに満足した旅客が90%に達するなど、これまでのアリタリアからは考えられないような改善っぷりです。正直まだ疑ってる自分がいる

www.traicy.com

 

流石にアリタリアの再建へのチャンスはこれが本当に最後になるでしょう。今でさえEUやイタリア国民からは多額の税金をつぎ込んだアリタリアには批判的な目が向けられているだけに、もう本当に後がないと思います。アリタリアには背水の陣で再建に臨んで欲しいですし、今度こそ過去の体質と決別して本当の意味でイタリア国民に愛される「イタリアのフラッグキャリア」として生まれ変わって欲しいですね。

 

 

 ↓アリタリアと言えばWRCなどで活躍したアリタリアカラーのランチア・ストラトスを思い出す人も多いのではないでしょうか。見事再建を果たし、いつかまたスポンサーになってレースシーンでアリタリアカラーのマシンを見たいものです。

 

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神戸空港の発着枠拡大に見る日本の「セカンダリー空港」

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7月5日、神戸空港を拠点にしているスカイマークは神戸空港の発着枠拡大を受け、8月1日から神戸ー茨城・長崎・那覇線を1日一往復ずつ増便すると発表しました。さらに翌6日に神戸市役所で開いた会見では運用時間が午後11時までに延長された場合、羽田空港の特定枠(午前6時~8時30分までの到着と午後8時30分から11時までの出発便に適用)を使って午後9時台出発の羽田~神戸線を設定すると発表しました。スカイマークの神戸路線が充実することになりそうです。

www.aviationwire.jp

 

www.traicy.com

 

また、同じ日にフジドリームエアラインズ(FDA)が10月27日からの冬ダイヤから神戸空港に就航すると正式に発表しました。FDAにとっては初めての関西圏進出となるとともに、神戸空港にとっても2013年6月のエアドゥとスカイネットアジア航空(現ソラシドエア)以来6年ぶりの新規参入となります。7月2日の一部報道では神戸~松本線と神戸~高知線に1日1往復ずつ運航される予定とされましたが、今回のFDAの発表では具体的な路線については「今後決まり次第発表する」とされました。報道通りの松本・高知線なのか、それとも別の路線になるのか気になるところですが、以前から神戸空港でスタッフ募集しているなど神戸空港の発着枠拡大に伴うFDA参入が噂されていましたが、遂に現実のものとなりそうです。

 

www.aviationwire.jp

 

www.nikkei.com

 

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今回の神戸空港の規制緩和で具体的な就航計画が出てきたことで、いわゆる「関西3空港」の立ち位置もはっきりしてきたのではないかと思います。以前神戸空港の規制緩和を取り上げた記事の中でも「関空は国際線と国内幹線とLCC、伊丹は国内線全般、神戸は伊丹のセカンダリー空港」と位置付けましたが、今後は

・関西空港・・・国際線、貨物、LCC中心の関西の基幹空港

・伊丹空港・・・国内線の基幹空港

・神戸空港・・・関空・伊丹を補完するセカンダリー空港

 となって行くのではないでしょうか。

www.meihokuriku-alps.com

 

先の記事でも触れた通り、関空は空港アクセスの遠さ、伊丹は騒音問題による発着枠制限と運用時間がネックとなっており 、神戸空港の立ち位置は両者の弱点を補うには格好の存在と言えます。また、現在の伊丹空港がほぼ大手2社の独占となり新規参入が難しい現状や、アクセス面で難ありの関空が国内短距離路線では競争力を保てないことを考えると、神戸空港は国内線の新規参入の受け皿として有益な存在です。事実、神戸空港からはJALは撤退しましたし、現在でも全体の7割の便数がスカイマークを占め、関西の路線を神戸に集約している事や、FDAが関西の新規就航先に神戸を選んだことなどからもこの説を裏付けています。

逆に、神戸空港に伊丹の機能を移すことも神戸空港の主要アクセスであるポートライナーの輸送能力を考えると現実的ではありませんし、神戸空港自体も大規模なターミナル増設工事が必要になるので難しいでしょう。現在の神戸空港の処理能力を考えると、関空や伊丹の補完空港にはなっても両者の存在を脅かすほどの発展は難しいのではないかと思います。そういう意味では神戸空港は良くも悪くも「関西地域のセカンダリー空港」という立ち位置として、関空や伊丹で吸収できない需要や第三極の航空会社の受け皿となっていくのではないでしょうか。

 

↓FDAを立ち上げた鈴木与平氏の著書。地方間路線を開拓し、移動を活発化させることで地方を活性化しようとする鈴木氏とFDAの理念が良く分かります。

 

  

さて、日本には神戸市のように大都市の基幹空港の役割を補完する「セカンダリー空港」がいくつもあります。大別すると基幹空港から離れたところに建設され、空港アクセスが重視されない貨物路線やチャーター便、アクセスの悪さを価格でカバーできるLCCが就航する「郊外型セカンダリー空港」と、都心近くでアクセスは良いものの、用地や空域の問題でこれ以上の拡張が難しく、小型機や短距離路線に特化している「都市型セカンダリー空港」の2種類があり、前者の代表例はライアンエアーの拠点の一つであるフランクフルト・ハーン空港やロンドンのガトウィック空港、後者の代表例はサウスウエスト航空創業の地であり、現在も主要拠点の一つであるダラス・ラブフィールド空港やロンドンシティ空港などが挙げられます。今回はそんな日本の「セカンダリー空港」を紹介して空港の役割分担について考えていきたいと思います。

 

1.札幌丘珠空港(基幹空港:新千歳空港)

丘珠空港は分類的には「都市型セカンダリー空港」になりますが、路線的には「コミューター路線用空港」に近いです。

元々は陸上自衛隊の航空基地だったものを1961年に共用化した空港であり、当初はジェット機が運航される基幹空港の千歳空港に対しプロペラ機用の空港として運用されました。しかし1974年に丘珠を拠点にしていた東亜国内航空(TDA)が撤退した後は道内路線を運航するコミューター空港となり、全日空系列の日本近距離航空(のちのエアーニッポン、現在はANA本体に吸収)が長年運航してきました。1998年からは日本エアシステム系列の北海道エアシステム(HAC)が参入して2社体制になったものの、プロペラ機しか就航できない状況や道内路線のみのネットワークと言う点には変わりありませんでした。

2010年にANAが路線を新千歳空港に集約させる方針を取って丘珠路線を撤退させ、入れ替わりに日本航空が経営から撤退し、北海道や札幌市などが株式を引き受けたHACが路線を丘珠に集約させます。その後HACはJALグループに復帰して現在は便名もJALになり、路線も道内の函館・釧路・利尻に加え青森県の三沢にも就航。加えて2016年からはFDAが静岡~丘珠線を開設し、2018年からは松本~丘珠線を開設した事で「就航するのはプロペラ機のみ、路線も道内路線のみ」というかつての立ち位置からは変わりつつありますが、FDAのエンブラエルは離陸重量の制限や冬季の就航ができないなど課題も多く、今後も基本的な立ち位置は変わらないでしょう。

 

2.茨城空港(基幹空港:羽田空港・成田空港)

こちらは最初からLCCの就航をターゲットにした「郊外型セカンダリー空港」を目指しており、当初の目論見とは異なるもののその地位を確立しつつあります。

元々は航空自衛隊の百里基地を2010年に共用化したのですが、開港前は羽田の再国際化や成田のLCC誘致の陰に隠れて航空会社の誘致が進まず、就航路線ゼロの危機に陥りました。その後アシアナ航空のソウル線就航が決まって開港時の就航路線ゼロは回避したものの、国内線は大手2社は全く見向きもせず、開港時の路線はゼロと将来性が危ぶまれたスタートとなりました。

 

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そんな危機的状況を救ったのがスカイマーク。2010年6月から茨城~神戸線を開設したのを皮切りに、2012年には札幌と中部、那覇線を開設(中部線はその後休止と再開を繰り返し2014年10月26日を最後に運休)、2014年には福岡線を開設するなど時期によって増減はあったものの、現在では神戸と札幌を1日2往復ずつ、福岡と那覇を1往復ずつの計6往復を運航するまでになりました。国際線はめまぐるしく変わったものの、現在は春秋航空の上海行が週6往復、タイガーエアの台北行きが週2往復、イースター航空のソウル行きが週3往復運航し、海外LCCが複数就航するまでになりました。2017年度の利用者数は年間68万人と当初の利用予測には及ばないものの、開港当初の下馬評を考えると善戦していると言っていいでしょう。最も、現在の立ち位置は羽田と成田のセカンダリーと言うよりは「茨城県を中心とした北関東の地方空港」に近いですが・・・

 

3.県営名古屋飛行場(基幹空港:中部国際空港)

元々は東海地方の拠点空港だった名古屋空港ですが、自衛隊との共用空港や住宅地の中と言う立地条件もあってこれ以上の拡張は不可能であり、2005年に中部国際空港が開港すると、全ての国際線と大半の国内線が中部に移転しました。

しかし、名古屋空港自体は国内リージョナル路線を運航する県営空港として存続することになり、設置区分も国管理の「第二種空港」から愛知県管理の「その他の空港」に変更。路線についてもJALグループのジェイエアが本社を広島西飛行場から小牧に移転した上で残留、拠点とすることになりました。

その後名古屋飛行場はジェイエアの一大拠点として機能することになり、機材も50人乗りのCRJ200から76人乗りのエンブラエルE170に大型化しましたが、2010年1月のJALグループの経営破たんで状況は一変します。再建計画の中には名古屋空港の全面撤退とジェイエアの伊丹移転が盛り込まれ、安泰と思われていた名古屋飛行場は一転して路線ゼロで存続の危機に陥ります。もともと地元では中部空港と県営名古屋空港との「棲み分け」が問題視されており、2007年には中部空港との間で「名古屋空港からはこれ以上新規路線を開拓しない」との合意が取り付けられたほどでした。中部空港もこの頃には集客に苦戦しており、空港機能を中部に一元化させたい経済界にとってはジェイエアの撤退は一元化の大きなチャンスと言えました。

 

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しかし、そんな県営名古屋空港の危機を救ったのはFDAでした。撤退したジェイエアの路線のうち、名古屋~福岡線と熊本線の引き受けを表明し、2011年3月27日から運航を開始します。その後、東日本大震災の復興支援の名目で5月21日から名古屋~花巻線を、7月2日から名古屋~青森線を就航させ、以後もジェイエアの撤退路線を中心に新規路線を開設。現在は青森・花巻・山形・新潟・出雲・高知・福岡・熊本の8路線、一日24往復を運航するまでになりました。ちなみに県営名古屋空港から撤退したJALもFDAとのコードシェアと言う形で便名だけは残っています。

 

とは言え、今後県営名古屋空港がかつての名古屋空港のように大きく発展する事はもうないでしょう。現在はFDAの拠点空港として一定の地位を築いていますが、2007年の中部空港との取り決めはまだ生きており、ジェイエア時代には就航していなかった仙台や鹿児島、札幌や那覇と言った路線にFDAが就航するのは難しいと思いますし、就航を目指せば中部空港との棲み分け問題が再燃してしまうからです。FDAの路線のうち、青森線と花巻線でJALとのコードシェアを行っていないのも、両路線が「東日本大震災の復興支援」という「特例」でできた路線であり、棲み分け問題を再燃させないためにコードシェアを避けているのではないかと思います。既に廃港になった広島西飛行場や、かつての関西三空港問題のように、空港機能の棲み分け問題は「都市型セカンダリー空港」の抱える大きな問題と言えそうです。

 

以上、日本のセカンダリー空港の簡単な歴史と現状、基幹空港との立ち位置の違いなどをご紹介しました。この他にも福岡空港のセカンダリー空港的な位置にいる北九州空港と佐賀空港、旧広島空港をコミューター用空港として再活用しようとしたものの結局は廃港に追い込まれた旧広島西飛行場などの例もありますが、ここでは割愛させて頂きます。

世界的には大都市の空港は複数あるのが普通で、ニューヨークでも国際線中心のジョンFケネディ空港とニューアーク・リバティー空港、国内短距離中心のラガーディアに分かれていますし、ロンドンでも基幹空港のヒースロー空港のほかにチャーター便やリゾート路線のガトウィック、LCCが多く就航するルートン、ビジネス客向けの短距離小型路線に特化したロンドンシティ空港など6つの空港が存在します。基幹空港が複数あるケースでも航空会社ごとに空港が分かれているケースもあり、先のニューヨークの場合でもJFKはデルタとジェットブルーが、リバティーはユナイテッドがハブとするなどの棲み分けが図られています。

日本のセカンダリー空港もスカイマークやFDAと言った大手2社とは距離を置く第三極の航空会社が拠点としているケースが多く、基幹空港のように立派な設備やアクセス路線はないものの、大手との差別化が図れ、空港サイドの協力や発着枠の面で恩恵を享受できるというメリットがあります。基幹空港との棲み分けと言う問題はありますが、顧客サービスの充実や多様化、基幹空港の混雑緩和には差別化を図りやすい「セカンダリー空港」の存在が不可欠と言えますし、第三極の航空会社が大手との差別化を図るには、セカンダリー空港の活用がカギとなるのではないでしょうか。

 

 

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日本の空を飛んだ旅客機の「ラストナンバー」

6月27日、リース会社のBOCアビエーションはボーイングよりスカイマーク向け737-800「JA73AC」を受領したと発表しました。スカイマークが追加発注した737-800型3機の最終製造機であると同時に、この飛行機が「ボーイング737-800型」自体の最終製造機となるようです。機体は今日6月30日に日本に到着しました。


sky-budget.com

 

ところで、「どの航空会社が新型機の最初のカスタマーになるか」は航空ファンならずとも注目する人は多いと思いますが、「どの航空会社がその機種の最後の納入先になるか」と言う事に関しては気にも留めない人の方が多いのではないかと思います。新型機の最初の一機は送り出すメーカー、受け取る航空会社とも大きな宣伝になりますし、注目度も高く新機種の格好のアピールになりますから大々的にセレモニーを行いますが、消えゆく機種のラストナンバーはひっそりと引き渡されることが多いので、どうしても注目度は下がりがちです。

しかし、実は日本は隠れた「最終製造機保有国」であり、過去に在籍したものを含めると結構な「最終製造機」が日本の空を飛んでいました。新型機を導入したはいいが、導入が製造開始からだいぶ後だったため納入途中で製造がストップしたケースや、既存の機体との共通性を重視してあえて古い機種を導入した結果、最終製造機になったというケースが多いためです。今回はそんな日本の「最終製造機」を紹介しましょう。なお、どの機体が最終製造機になるかは「Rainbow Island」様の情報を参考にさせて頂きました。

 

www.rainbow-island.jp

 

また、機体の現在の消息についてはこちらの本を参照しました。

 

 

エアーニッポン ボーイング737-500型(JA307K)

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エアーニッポン初の自社発注機として1995年に導入されたボーイング737-500。既存の737-200型の置き換えやYS-11路線のジェット化、新規路線の開拓などエアーニッポンのエースとして日本中を飛び回り、新造機は合計16機が納入されました。

しかしエアーニッポンの737-500導入はかなり遅い方で、納入が始まった頃には既に次世代機の737NGの開発が始まっていました。737-500型は1999年に製造中止となりましたが、その際、製造最終号機として納入されたのが写真のJA307Kでした。

その後、エアーニッポンは足りない分は機種統一の観点から737-500型の中古機を購入することにし、ブラジルのリオサルやデンマークのマークスエアから合計9機を購入します。エアーニッポン自体は2004年4月に便名をANA本体と統一したのち、2012年4月にANA本体に吸収合併されて消滅。ANAの737-500型の中にはエアドゥに移籍して出戻りした機体もありますが、JA307KはずっとANAグループで運行を続け、2019年6月現在でもまだ運航中です。

しかし、来年にはANAの737-500型は退役予定ですので、JA307Kが日本の空を飛び続けるのもそう長くはありません。737-500型の退役が日本の737クラシックの終焉になりますので、ひょっとしたらJA307Kがラストフライト機となって日本の737クラシック有終の美を飾る事になるかも・・・?

 

全日空 ボーイング747SR(JA8159)

まあ、これに関しては747SRを導入した会社がJALとANAだけなので微妙と言えば微妙ですが、一応最終号機である事には変わりありませんので・・・

言わずと知れた国内線専用ジャンボ「ボーイング747SR」を最初に導入したのは日本航空で、1973年から75年にかけて9機が納入されました。当時の日本航空の国内線は幹線だけでしたのでこれで十分でしたが、その後1979年からSR型を導入した全日空は幹線だけでなく、羽田や伊丹発の主要地方路線の輸送力増強の為に合計17機を購入しました。

SR型最終号機となったJA8159は1983年に納入され、その生涯を国内線で過ごします。2006年のSR型退役を前にした2005年に退役し、アメリカにフェリーされてそのまま部品取り、スクラップとなりました。こちらは最終製造機が有終の美、とは行かず国際線も経験したJA8157がSR型のラストフライト機となりました。

 

日本航空 マクドネル・ダグラスDC-10-40(JA8549)

こちらも導入したのはJALとノースウェストの2社だけなんですけど、純粋な日本航空の機材で最終製造機がこれだけだったので・・・

DC-10の主力はGE製エンジンを搭載した長距離用の30型でしたが、JALが選択したのは747型と同じプラットアンドホイットニー製のJT9Dエンジンを搭載した40型でした。結果的には40型を買ったのは前述の2社だけで、JALが買ったのはノースウェストの後だった為必然的に製造最終機がJALに来る事になりました。

JALに納入されたDC-10-40型の最終製造機・JA8549は1983年に国内線用機材として納入されました。当初は国内幹線のみの運航でしたが、45・47体制廃止後は地方路線にも活躍の場を広げていきます。90年代に入り、国内線用に767-300や777が導入されると国内線用DC-10のうち3機はセンターギアを追加されて国際線に転用されましたが、残る7機のうち初期導入の5機は1997年12月のJA8530を皮切りに2001年3月までに退役、JA8549を含めた残りの2機は比較的機齢が若い事もあって辛うじて残りましたが、基本的に羽田~関西~ソウル線のような内際兼用や他の機種の代打というポジションになって行きました。

そしてJA8549は2003年9月に退役。機齢20年とJALのDC-10の中では比較的若かったにも関わらず70年代製造の国際線用機材よりも早い退役だったのは、国内線用機材で離着陸回数が多かったのと、既に国内線は機数が揃っていた為運用範囲が限られていたからではないでしょうか。その後のJA8549はウェルズファーゴバンクに売却されましたが、部品取りとしての売却だったようで、しばらく砂漠で保管されたのち路線復帰する事無く解体されました。

 

 

日本エアシステム エアバスA300-600R(JA016D)

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東亜国内航空→日本エアシステムを代表する機材と言えるA300シリーズ。延べ38機が日本エアシステムに納入されましたが、最後に納入されたA300-600R、JA016Dは結果的にA300シリーズ旅客型の製造最終号機となりました(貨物を含めた最終号機は2007年にフェデックスに納入されています)

 

ところでJASは既存の機種との互換性を重視してあえて旧型の機材を購入したり、新型機も前の機種と性能を合わせる癖があったようです。例えばA300の初期型にしても2名乗務のA300-600型が既に販売されていたにも関わらず中古のA300在来型を世界中から買い漁ったり、1980年に導入したDC-9-81型のコクピットを旧型のDC-9-41型と同じにしたり、グラスコクピット搭載が可能だったMD-87をMD-81と共通性優先で従来の機械式で納入したりしています。

A300-600Rにしても、JA016Dを含めた最後の3機を発注したのは既に旅客型の新規受注が途絶えていた2001年。既にエアバスのワイドボディ機の主力はA330・A340型に移っていましたが、JASはA330型が置き換え対象のA300B2/B4よりも大きい事や、既存のA300-600Rとの共通性を重視して、取り合えず3機だけ追加して様子を見ることにしたのです。実際のところ、旧式のA300はこの時点で全17機が現役であり、流石に全てをA300-600Rの新造機に置き換えるのはエアバスも嫌がるだろうと思うので、足りない分はA300-600Rの中古機で凌ぐつもりだったのか、別の新型機を導入するまでの時間稼ぎだったのかは分かりません。そしてJASがどう考えていたかは永遠に分からなくなりました。

 

2001年11月にJASはJALとの統合を決定し、2002年10月に持ち株会社方式で経営統合します。統合と前後して発注済だったA300-600R3機が順次納入されますが、最終製造機のJA016Dだけは統合後の2002年11月の納入であり、新生JALの「太陽のアーク」塗装が発表された後だった為に、オールホワイト塗装でJALに納入された後羽田で太陽のアーク塗装になりました。つまり、JA016Dは納入されたタイミングのおかげで「日本エアシステムが発注した最後の旅客機であり、JASのA300シリーズで唯一レインボーカラー塗装にならなかった機体」「日本航空グループに初めて納入されたエアバス機」といういろんな意味で記録的な機体となりました。

その後JA016Dは他のA300-600R同様、統合後のJALで国内線を飛び続けます。しかしそのJALは2010年1月に経営破たんし、大幅な縮小を余儀なくされました。機材面でもボーイング747やMD-81、貨物専用機を退役させますが、A300-600Rも機種整理の対象となってしまいます。当初は2011年3月に退役予定だったのが東日本大震災の復興支援で東京~青森・秋田・花巻線に集中投入されることになり、2011年5月31日に羽田~青森線でラストフライトを迎えました。この時に起用されたのがJA016Dであり、図らずもA300旅客型の最終製造機が日本のA300シリーズの最後を締めくくる事になりました。

 

その後JALのA300-600Rの殆どは貨物機に改造され、現在でも19機がEATライプツィヒで、2機がエアホンコンで現役です。しかしここでもJA016Dだけは他の機体とは別の道を歩みました。エアキャッスルに売却されてN836ACの登録記号を付けられたのちキルギスに売却、そこから更にイランのマハン航空に移籍して旅客型のまま運航を続けています。つまり、イランに行けばギリギリ旧JASのA300-600Rに乗れるチャンスはあるワケで・・・いや、治安や渡航履歴の問題があるのでお勧めはできませんが。

 

日本エアシステム マクドネル・ダグラスMD-81(JA8557)

1985年からTDAでの納入が始まったMD-81ですが、最終号機が納入されたのは1994年の事でした。翌年からはMD-90の納入が控えていたので結果的には最後に納入されたJA8557が最後のMD-81となりました。

JASのMD-81はローカル線を中心に国内線全般で重宝されましたが、JASの顔とも言えるA300や「クロサワ・レインボー」でド派手に目立ったMD-90に比べると地味な存在でした。経営統合後のJALでも引き続き使用されましたが、経年化が進んでいたのとJALの破たんで2010年9月に全機退役します。しかし、JA8557はJALの破たんやラストフライトを迎える前の2009年12月に退役しました。

退役後のMD-81は別の航空会社に移籍して飛び続けた機体もありましたが、JA8557は最初から部品取りとして売却され、機体はまだ残っているもののストア状態にあるようです。恐らくJA8557が再び空を飛ぶ日はもうないでしょう。

 

東亜国内航空 マクドネル・ダグラスDC-9-41(JA8451)

東亜国内航空の黎明期を支え、初期のフラッグシップとして活躍したDC-9-41型。翌年のMD-81型への切り替えを控え、1979年に納入されたJA8451がDC-9-41型の最終製造機となりました。ちなみに、JA8451の一つ前に製造された機体もJA8450として同じ月にTDAに納入されています。

全22機が納入されたTDAのDC-9-41型ですが、全機が揃っていたのはわずか2年程であり、1981年3月にはDC-9-81型と入れ替わりに納入1号機のJA8423がフィンエアーに売却されています(その後元JA8423は更にTWAに売却)

その後DC-9-41はMD-81やMD-87の納入に合わせて段階的に売却され、最後に残った6機も1996年から1997年にかけてMD-90と入れ替わりに退役しました。JA8451はラストフライトの8か月前の1996年8月にアメリカの貨物航空会社、エアボーンエクスプレス(現ABXエア)に売却されましたが、ラストフライトを務めたのは同時期に納入されたJA8450の方でした。

 

エアボーンエクスプレスにはJA8450やJA8451を含めた13機が移籍し、貨物機に改造されて第二の機生を送りました。しかし流石に経年化が進み、現在では全ての機体がスクラップ、又はストア状態となっています。JA8451も既に解体済みの様です。

 

日本貨物航空 ボーイング747-200F(JA8194)

世界有数のジャンボ王国であった日本ですが、747クラシックの製造最終号機も日本に納入されています。しかし、意外にもと言うか、最終製造機の納入先はJALやANAではなく、日本貨物航空(NCA)でした。1985年から運航を開始したNCAは就航前はアメリカとの航空交渉に苦しめられ、就航後もアメリカや香港で航空当局や競合会社の参入妨害に悩まされてきました。そんな中でも何とか業績を拡大させ、747-200Fの新造機を6機購入するまでになります。747の生産ラインが2名乗務機の747-400型に移行する中、1991年11月に納入されたJA8194は747クラシックの製造最終号機となりました。

その後JA8194は世界中を飛び回ってNCAの規模拡大に貢献し、2007年1月にNCAを退役した後は複数の航空会社を転々とします。現在はイランの貨物航空会社、ファース・エア・ケシムでEP-FABの登録記号で運用中の様です。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。747SRとか多少強引なものもありましたが、調べてみると割と日本の空を飛んでいた最終製造機がいた事が分かります。その履歴も国内線で一生を終えた機体や、タイミングの問題で他の機体とは違う道を辿った機体、日本を離れた後転々とした機体など様々ですが、ラストナンバーだからと言って特別扱いされているわけではないのが分かりますね。

 

スカイマークに来た737-800最終製造機、JA73ACはこれから日本でどんな経歴を積み上げて行くのでしょうか。これからの活躍に期待したいですね。

 

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北陸新幹線開業後の「しらさぎ」の存続は難しいと思う

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2023年3月までに予定されている北陸新幹線の金沢~敦賀間延伸開業ですが、その際、現在の北陸本線の特急は新幹線開業と平行在来線の第三セクター化に伴って敦賀止まりとなり、北陸新幹線との乗り継ぎが図られる事が予想されています。

これに対して福井県内の一部では、開業後も特急を福井まで運転するようJRに求める動きがあり、昨年12月には「特急『しらさぎ』号の存続を求める会」が発足して1月から10万人を目標に署名活動を行っています。「しらさぎ」に絞ったのは米原駅で東海道新幹線に接続することで東西の移動の利便性が確保できること、将来のリニア延伸の際、北陸方面からの旅客流動を取り込むために直通の特急が必要という観点からのようです。

 

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福井までの存続対象を「しらさぎ」に絞ったことや、リニアも絡めて有用性をアピールするのは面白いなと思います。しかし、かつて金沢開業の際に富山~金沢間の特急全列車廃止を経験した富山県民の私から見れば、正直言って無理なのではないかと思います。それどころか、敦賀~名古屋間の「しらさぎ」存続すら厳しいのではないかとさえ思っています。今回は「しらさぎ」を初めとした北陸線特急の敦賀以北の存続が難しい理由について考察したいと思います。

 

 

理由1.「しらさぎ」の存在意義とJR側の意向

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「しらさぎ」は現在の運転区間は金沢〜米原・名古屋間。北陸新幹線開業前は富山や和倉温泉にも乗り入れていました。

1964年に「しらさぎ」が設定された際は北陸〜中京地区を結ぶ特急と言う位置付けですが、米原駅で東海道新幹線に接続し、東京へ向かう新幹線接続特急の性格も持っていました。1975年に金沢〜米原間の「加越」が新設され、しらさぎと合わせて12往復に増発されてからは接続特急の側面が強くなり、首都圏〜北陸の最短ルートとして発展します。

1982年に上越新幹線が開業した後は富山県や金沢市はそちらがメインルートとなりますが、石川県南部や福井県は依然として米原廻りが主流でしたし、北陸新幹線金沢開業後も福井以南は相変わらず米原廻りが最短ルートです。

一方の「しらさぎ」の当初の目的だった北陸〜中京地区の輸送ですが、東海北陸道全線開通で少なくとも富山県内はマイカーや高速バスにシフトし、北陸新幹線開業後は金沢での乗り換えが必要になった事で更に不利になりました。金沢や福井からも名古屋行きの高速バスが設定されており、「しらさぎ」は今でも優位に立っているとは言えない状況です。

 

この状態で敦賀開業を迎えたらどうなるか。まず対首都圏への利用客はほぼ新幹線にシフトします。敦賀だけは開業後も米原周りの方が時間的に優位ですが、それでも東京直通列車が設定されればそちらに移るでしょうし、JR西日本的にも米原で他社の新幹線に乗り換えられるよりは北陸新幹線を使ってもらった方が収入面ではプラスなので、しらさぎは積極的には残したくないのではないでしょうか。

また、北陸〜中京圏にしても石川県や富山県にすれば敦賀止まりだろうが福井止まりだろうが乗り換えが必要な事に変わりはなく、さらに米原で新幹線に乗り換えて名古屋に行った方が速いので実質的に2回の乗り換えをしないと時間的な優位性は確保できません。北陸新幹線の区間が伸びる分、料金も上がることが予想されますので今以上に高速バスに利用客が流れるのではないでしょうか。

 

理由2.JR東海と西日本の会社間調整

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「しらさぎ」の立場を更に複雑にしているのがJR東海の存在。使用車両がJR西日本の681/683系なので全区間JR西日本を走行すると思われがちですが、実際は米原〜名古屋間はJR東海の管轄なので2社にまたがる運行です。今はJR西日本側の走行距離が長く、需要面でも北陸側の利用が多いので、全車両がJR西日本所属でも何の疑問も持たれていません。

 

しかし、敦賀開業後はむしろJR東海側の走行距離が多くなり、前述の通り「しらさぎ」の存在意義の一つであった新幹線連絡輸送がなくなると、JR西日本は需要も少ないのに他社区間の方が長い特急に今まで通り自前の車両だけで賄う事に疑問を感じるかも知れません。

一方のJR東海にしても、自前の車両を用意してまで「しらさぎ」を残すメリットは薄いと思います。対北陸への旅客流動は名古屋〜米原間は東海道新幹線を使ってもらった方が効率的ですし、自社区間内のみの特急利用もそう多いとも思えません。需要が激減する上に乗り入れ調整が必要な特急を積極的に残す理由がJR東海、西日本ともなく、敦賀開業を機に「名古屋乗り入れ辞めて米原止まりで・・・」となる可能性は十分あり得ると思います。

 

理由3.平行在来線の貨物使用料問題

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新幹線開業で北陸線の特急利用が不便になる事例は福井が初めてではありません。金沢開業の際、富山〜金沢間の特急廃止が発表された時も富山県では激しい反発があり、一時は移管後の三セクで特急を走らせられるか検討されましたが、特急を走らせたらその分貨物列車の線路使用料が減り、三セク会社の経営にマイナスである事が判明し、断念した経緯があります。

 

民営化後、貨物列車に関してはJR貨物が旅客各社の線路を借りて運行する形式になりましたが、線路使用料はJR貨物の厳しい経営を考慮して貨物列車を走らせた場合の経費増加分のみの負担(アボイダブルコスト)となり、実際よりも安く抑えられました。

 

しかし整備新幹線開業で並行在来線の三セク化が現実のものとなると、JR貨物以上に経営の厳しい三セク会社が今の線路使用料で貨物列車を走らせる程の施設を維持できず、経営に悪影響を与えるという問題が発生します。そこで実際に維持に必要な線路使用料とアボイダブルコスト分の差額を調整金として鉄道・運輸機構からJR貨物に支払われる事になります。

ところがこの調整金は旅客車両と貨物車両の線路の使用率で金額が決められる為、特急が増えればその分貨物の線路使用料が目減りする事になります。福井県の試算でも現行の特急が全て福井駅まで乗り入れた場合、7億円の減収になるとされています。福井県が特急存続運動を「しらさぎ」に絞ったのも線路使用料の問題が背景にあると思います。

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理由4.平行在来線運行会社の負担増

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仮に線路使用料の目減りを覚悟したとしても、「しらさぎ」の福井存続にはなお高いハードルがあります。敦賀〜福井間の特急運行を誰が行うか、と言う問題です。

先の記事では並行在来線区間の特急運行はJR西日本に委託するとしているようですが、自社の新幹線と競合する特急の運転委託や車両の乗り入れを果たしてJR西日本がすんなり受け入れるでしょうか?富山〜金沢間の例を考えても、恐らくJR西日本は首を縦に振らないでしょう。

そうなると三セク会社が自力で運行し、車両も調達する必要がありますが、会社の体制作りやJRからの運行引き継ぎで手一杯になるであろう三セク会社が特急運行もやる余力はないのではないでしょうか。更に乗り入れ先との調整も三セク会社が行う事になり、「しらさぎ」の場合はJR西日本に加えJR東海との調整も必要になります。果たして、それだけの交渉をするだけの体制を三セク会社が整えられるでしょうか。

 

まとめ

以上の事から「しらさぎ」の福井乗り入れ継続は難しいと言わざるを得ません。乗り入れ先の会社との調整や利害関係、三セク会社の負担を考えると特急存続が却って重荷になる可能性の方が高いと思われます。国鉄再建の際、特定地方交通線存続のために各地で繰り広げられた署名活動や乗車運動が一時的な延命には繋がっても結局は廃線か三セク化の道を辿ったように、陳情や署名活動程度では「しらさぎ」存続は無理でしょう。

とは言え、何もしなければ新幹線開業後の「しらさぎ」は良くて敦賀〜名古屋間に短縮、下手したら敦賀〜米原のリレー列車になるか、最悪の場合列車自体が廃止になる可能性すらあります。本気で「しらさぎ」を残したいのであれば、福井県は存続と引き換えに三セク会社への一定の財政支援や、JR西日本や東海に対し利用促進の支援や補償を行う覚悟が必要でしょう。「しらさぎ」の福井乗り入れ存続はある意味、福井県の調整能力が問われているのかも知れません。

 

 ↓整備新幹線の歴史や現状、整備スキームなどを分かりやすくまとめている本です。勉強になりますので是非。

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