〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

新シリーズ「交通機関の栄枯盛衰(仮)」の詳細

先日ニコニコ限定で「東海道交通戦争」のあとがきと新シリーズの予告動画をアップしました。こちらの動画はYouTubeにはアップするつもりはありませんので、気になる方はお手数ですが下記のリンクからご覧下さい。

 

(リンクは後程貼ります)

 

さて、今回は最後の方でちょっとだけチラ見せした新シリーズ「交通機関の栄枯盛衰〜それでも彼らは駆け抜けた〜(仮)」についてもう少し具体的な内容や方針をご紹介したいと思います。一応、まだ(仮)と付けてますが、恐らくこのまま正式タイトルになるんじゃないかと思います。

 

新シリーズの内容的には「しくじり企業」の交通版と思って頂ければいいかと思います。但し解説役に関しては「迷航空会社列伝」に出てきたキャラを使う予定。これは他のゆっくり解説と同じだとYouTubeのスパム判定に引っかかる可能性が高い事と一種の差別化目的、それに自分の動画のキャラの方が私の視聴者の方にもスムーズに感情移入してもらえると思ったからです。ベースはゆっくり解説でも自分なりのエッセンスを加えて行きたいなと思います。

「交通」とは言ったものの、航空関係は既に「迷航空会社列伝」シリーズがあるので、新シリーズで取り上げるのは鉄道やバス、船など航空以外の分野になる予定です。但し、YouTubeのゆっくり解説系動画の収益化剥奪問題があるので、当面は「動画素材の調達が可能なもの」を優先して取り上げる事をお許し下さい。

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取り敢えず、初回は以前に制作した「迷列車北陸編」でも取り上げた加賀温泉駅設置の理由となった両隣の駅の特急争奪戦を予定しています。オリジナルは特急停車駅争奪のいざこざが中心でしたが、加賀温泉郷にまつわる鉄道の歴史や各温泉の集客争い、特急停車駅一本化から加賀温泉駅開業に至る詳しい経緯なども掘り下げるつもりなので、リメイクと言うよりは全くの一から作るのと変わらないです。迷航空会社列伝と並行して作って行くので時間はかかると思いますが、素材と資料は昨日調達してきたのでまあ企画倒れにはならないかと・・・

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一応その後は神岡鉄道や旧京福電鉄福井線をやろうかと考えていますが、当面は素材調達がしやすい北陸近辺が中心になると思います。しかし目星をつけたネタは40〜50はあるので、いずれは他の地域もやって行きます(と言うか一番のネックは映像素材です。これがなかったらどうにでもなるんですが・・・)

 

また、タイトルを「迷〇〇〜」とか「しくじり交通」とかにしなかったのも理由があります。ひとつは「迷」や「しくじり」と言った若干ネガティブなワードを使う事で取り上げる内容に制約を掛けない為。もう一つはネガティブなタイトルだとYouTube運営や新規の視聴者の方にあらぬ誤解を招く可能性があるためです。新シリーズは単に消えたり破綻した会社や路線だけでなく、廃線の危機から復活した路線や経営破綻から再生した会社も取り上げて行きたいと考えてますので、そう言う意味でもネガティブな言葉はタイトルに入れたくなかったんです。

 

新シリーズは今まで通りYouTubeとニコニコ動画の双方にアップして行く予定ですが、YouTubeの方は「東海道交通戦争」の後釜としてサブチャンネルで展開する予定です。今後はメインチャンネルを航空関係、サブチャンネルを鉄道中心に航空以外の交通関係、という風に展開していきたいと思っています。近いうちにチャンネル名も変更するつもりです。

 

正直言うとメインチャンネルの収益化停止が東海道交通戦争の完結と新シリーズの計画を遅らせた事は否めませんし、動画製作の上でも一番の稼ぎ頭だったメインチャンネルの収益がない分、実地調査や動画素材撮影の面で大きな痛手になっている事も事実です。

ですが私自身やりたい事や紹介したい事はまだまだありますし、何より私の動画を楽しみにしてくれている方が沢山いらっしゃいますから、動画はこれからも続けて行きます。収益が多い方が動画に突っ込む金額も増えて色々と取り上げられますが、なかったら続けられない訳じゃないですし。

新シリーズは私にとっては新たな挑戦です。クオリティは落とす事なく、下調べや原稿作成も今まで通り時間をかけていい動画を作って行く基本姿勢は変わりません。今後も引き続きご愛顧の程よろしくお願いします!

 

羽田発着枠のアメリカ側の暫定配分決定・成田発はどれだけ減るのか

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5月16日、アメリカ運輸省(DOT)は2020年夏ダイヤで予定される羽田空港の昼間時間帯の増便について、アメリカ側に割り当てられる予定の12枠を暫定的に割り当てたと発表しました。今後5月30日までに反対意見を受け付けたのち6月10日には正式決定、その後日本側の承認を得た上で夏ごろには正式に決まる見通しです。
www.aviationwire.jp

 

headlines.yahoo.co.jp

 

では、今回の配分はどのようになったのでしょうか。まず各社の配分ですが

デルタ5

ユナイテッド4

アメリカン2

ハワイアン1

となりました。以前の記事で私が出した予想がデルタ5、ユナイテッド4、アメリカン2+早朝深夜1、ハワイアン1だったので、アメリカンの早朝深夜枠以外は予想が当たりました。我ながらまんざらでもない予想だったなw

 

その時の私の予想は以下の記事をご覧下さい。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

次に各社認可された路線を見ていきます。

デルタ:デトロイト、アトランタ、シアトル、ポートランド、ホノルル各1往復

ユナイテッド:ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルス各1往復

アメリカン:ダラス、ロサンゼルス各1往復

ハワイアン:ホノルル1往復

 

これについても概ね予想通りでした。個人的にはラスベガス線やグアム線が飛べばいいなと期待していたんですが、まあ仕方ないです。また、この配分で新たにデトロイト、アトランタ、シアトル、ポートランド、ワシントン、ダラスの6都市が羽田発アメリカ線に加わる事になり、既存のロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ミネアポリス、ホノルル、コナの7都市と合わせ13都市に拡大します。日本側の会社の就航地によっては今後更に就航地は増えるかも知れません。

アメリカ側が概ね固まったことで、次は日本側の会社がどの路線を飛ばすか、ANAとJALの配分がどうなるかが焦点となります。今のところ日本側の航空会社の発着枠については大きな動きはありませんが、準備期間等を考えるとそろそろ動きがあってもおかしくないと思います。アメリカ側の配分が正式決定したあたりから動き出すのではないでしょうか。こちらの動きにも注目です。

 

成田発アメリカ路線の行方

さて、アメリカ側の配分が決まったことで、来年以降成田発のアメリカ路線がどうなるかが気になるところです。羽田発アメリカ路線が大幅に増便されることで、重複路線の一部羽田移転は避けられないでしょう。成田空港側も「影響は避けられない」として撤退路線が出る事は覚悟しているようです。

 

www.aviationwire.jp

 

では今後、具体的にどの会社のどの路線が撤退となるでしょうか?各社ごとに予想してみましょう。

デルタ航空

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今回の各社の中で一番激減する可能性があるのがデルタ航空。ここ数年来、成田発着路線を減らしまくってきたデルタですが、羽田路線でほぼ希望通りの枠が認められたことで成田離れがさらに加速しそうです。

まず都市自体が小さく、路線需要も大きくないシアトルとポートランドは間違いなく撤退になると思います。ホノルル線に関しても2往復のうちどちらかは羽田に移すでしょう。問題は残るデトロイトとアトランタですが、個人的な予想ではこの2都市はデルタにとっても二大ハブと言える規模があるので、どちらかは残すかもしれないと考えています。

実はデルタはアメリカ路線のほかにも以遠権を利用してマニラとシンガポールにも路線があり、このうちマニラはホノルル線の以遠なので問題ないとしても、シンガポールはシアトル線の以遠の為、この路線を残したければどこか別の路線にくっつけるしかありません。そこでそのくっつける相手としてアトランタとデトロイトが考えられる訳です。特にデルタ最大のハブであるアトランタからは全米各地の路線はもとより、中南米やカリブ海への路線も出ていますから、乗り継ぎ需要やライバルのアメリカンがダラス線を2往復飛ばしている事、アトランタ~シンガポール直行は難しい事を考えるとアトランタだけは成田に残す可能性はあるのではないかと思います。

もっとも、「羽田で一定の枠が取れたし成田はもういいわ!」と、すっぱり全面撤退する可能性も十分考えられますが・・・

 

ユナイテッド航空

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デルタに比べるとある程度の便数は残りそうなのがユナイテッド。今回の配分でヒューストンとグアム線が却下されたことや、これ以外にもデンバー、ホノルル、サンフランシスコ線がある事を考えると、羽田増枠後も一定の路線は残るのではないかと思います。

それでもいくつかの路線は撤退が避けられないと思います。正直、羽田開設が認可された路線のうち、メインハブのシカゴ線だけでも残ればラッキーなのではないでしょうか。

アメリカン航空

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アメリカンもロサンゼルスの撤退とダラスの減便は避けられないと思います。但しダラス線そのものは却下された1往復は残るのではないでしょうか。また、同じく却下されたラスベガス線を成田発着で実現させるかも知れませんし、アメリカン航空のハブにはマイアミやフェニックス、シャーロットなど、日本未就航の都市がいくつも存在しますので、デルタやユナイテッドとの差を埋めるためにそれらの都市へ新規就航させるかも知れません。まあ、この辺はどちらかと言うと願望ですが・・・

ハワイアン航空

一番減便するのはデルタの可能性が高いですが、ハワイアンに関しては上記3社とは別の問題があります。「成田自体から撤退」の可能性です。

現在、成田からのハワイアン航空はホノルル一往復のみですが、今回の配分で羽田発ホノルル線は週18往復、コナ週3往復となります。これだけの便数があれば羽田に集約したくなるでしょうし、成田~ホノルル線には間もなくANAのA380が就航します。ハワイアンが供給過剰が予想される成田路線に見切りをつけ、都心から近く客単価も高めに設定できる羽田を重視しようと思ってもおかしくない状況は揃っていると言っても過言ではありません。正直言って、ハワイアンの成田撤退の可能性は五分五分ではないかと思います。

 

以上、アメリカ航空各社の成田路線の展望についてまとめてみました。短期的にはデルタを中心に大幅な減便は避けられないと思います。後は各社が新規路線を開拓する意欲があるかどうかですが、この中で開拓の余地があるとすればシェアの小さいアメリカンではないかと思います。幸い、アメリカンにはJALと言う提携相手がいますし、北米~アジアの乗り継ぎ需要も十分見込めますので、新規路線開拓はそう悪い賭けではないと思いますがいかがでしょうか?

それでも羽田空港の配分に制限がある以上、長期的には成田も活用しなくては太平洋線の航空需要はさばききれません。今後成田発アメリカ路線が競争力を維持できるかどうかは中規模路線の開拓がカギとなるのではないかと思います。また、ZIPAIRも北米路線開設を目指していますから、低運賃な航空会社が就航すれば太平洋線の航路図も今後劇的に変わっていくかもしれません。羽田のアメリカ路線増枠は成田にとっては脅威ですが、ピンチをチャンスととらえて今後も路線の充実や誘致で対抗して行って欲しいですね。

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神戸空港の規制緩和でどうなる関西3空港

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5月11日、「関西三空港懇談会」は神戸空港の運用時間を午後11時までに拡大し、1日の発着回数を60回(30往復)から80回(40往復)に増やす事で合意しました。2021年度までに実施される予定で、神戸空港の規制緩和は2006年の開港以来初めてになります。

一方で神戸空港の国際化に関しては「2025年までの中期的な課題」として今回は見送られました。また、伊丹空港の発着枠や運用時間の拡大も今回は実現には至りませんでした。それでも長年対立と言ってもいい状態だった関西三空港の「共存」に向けて大きな一歩になった事は確かです。
www.kobe-np.co.jp

 

一方、神戸空港の運用時間拡大は東海道沿いの航空と鉄道の競争にも影響を与えそうです。これまでは羽田を午後9時以降に離陸する関西方面の航空便は関空路線のみでしたが、神戸空港の運用時間が午後11時までに拡大されれば、羽田~神戸線も21時以降に羽田を出発する便が設定可能になります。また、羽田空港の発着枠配分次第になりますが、スカイマークの羽田~神戸線も増便の可能性が考えられます。伊丹空港は運用時間の関係で午後9時台どころか8時台の便の設定も不可能なので、関空より都心に近い神戸線の最終便繰り下げはビジネス需要の取り込みには効果的です。

さらに増枠された発着枠の大半は神戸を拠点にしているスカイマークに割り当てられると思いますので、既存路線の増便や新規路線開設も期待できます。残りはJALが神戸に再参入するとは思えませんし、新規参入の話もありませんからANAとその協力会社に配分されるのではないでしょうか。
www.kobe-np.co.jp

 

さて、今回の神戸空港の規制緩和で、今後の関西三空港の役割分担はどうなるでしょうか。当面は「関空は国際線全般と一部国内幹線とLCC、伊丹は国内線全般、神戸は伊丹のセカンダリー」という大まかな枠組みは変わらないと思いますが、将来的には神戸空港は「関空・伊丹双方の補完空港」の性格が強まるのではないかと思います。

現在関空は空港アクセスの悪さ、伊丹は発着枠と運用時間がネックになっていますが、神戸空港は空港アクセスは関空以上伊丹以下、運用時間は伊丹以上関空以下であり、ある意味両者の間を取ったような存在。関空・伊丹双方のバックアップという意味では絶妙な立ち位置にあるのです。

昨年の台風で関空が大きな被害を受け、しばらく運用出来なかった時に神戸や伊丹の一時的な国際線運用の肩代わりが検討された事がありましたが、もし神戸空港に税関や出入国管理などの国際線機能があればもっとスムーズに受け入れができたでしょうし、今後同じような事態が起こらないとも限りません。伊丹空港の再国際化は発着枠がないことや運用時間が限られる事を考えると難しいのではないかと思います。そうなると関空のバックアップ兼補完的存在となり得るのは神戸空港でしょう。

滑走路2500mでは飛ばせるのは近距離国際線くらいですが、それを逆手にとって、台北松山や金浦空港のように路線を金浦、北京、上海虹橋、台北松山、香港といった隣国のビジネス路線に限定すれば双方の棲み分けが計れるのではないでしょうか。インバウンド需要で関西の航空需要が伸びていることや2025年に開催される大阪万博の事を考えると、需要分散や万が一のバックアップの点でも一部役割分担をさせるのは理に叶っているのではないかと思います。

 

神戸空港が「関西エアポート」の運営になった事で、関西三空港は同じ運営会社の管理下に置かれました。関西三空港問題がこじれた原因の一つはそれぞれの空港と関係自治体、監督官庁の利害対立であり、この対立が関西圏の空港整備を遅らせ、客の取り合いで航空会社の参入を遠ざけて航空需要を取り逃がした原因でした。運営一本化で少なくとも空港間の対立は解消されており、経営資源を空港の機能強化と誘客に振り向ける事が出来ています。今後は関係自治体が関西圏の航空需要創出のため、利害対立を越えてお互い歩み寄れるかがカギとなります。

 

関西三空港の成立には様々な思惑や紆余曲折、関係者間の感情的対立などで長年迷走し続けました。しかしその対立は関西圏の航空需要を取り逃がし、関西の空の地位低下を招くだけに終わりました。それだけに運営一本化と今回の規制緩和は関西圏の航空需要を増やし、拡大させる大きなチャンスと言えます。

過去の遺恨はどうあれ、今更空港を潰すのは非現実的ですし、利用者の利便性向上に逆行する事になります。今ある3空港をうまく役割分担させて、関西全体で空路を活性化させて欲しいですね。

北陸新幹線が東海道新幹線の「対抗勢力」になる可能性

長年ニコニコ動画やYouTubeのサブチャンネルの方で投稿していた「東海道交通戦争」ですが、遂に先日完結することができました。皆様本当にありがとうございました!

 


東海道交通戦争・最終回「陸と空の未来予想図」

 

 

さて、今回からしばらく「東海道交通戦争」の動画の補足説明などをしていきたいと思います。今回は動画の終盤で触れた「北陸新幹線が割引運賃やスピードアップで東海道新幹線に勝負を仕掛ける可能性」についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

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スピード面で勝負を仕掛ける可能性

まずスピード面からですが、結論から言うと絶対にのぞみには敵いません。

「藪から棒に何を」と思われるかもしれませんが、北陸新幹線の東京~新大阪間の距離は700km以上になるのが確実であり、実キロベースで515kmの東海道新幹線と比較して200kmもの距離の差をスピードで埋めるのは不可能なためです。

加えて北陸新幹線(と言うよりJR東日本の新幹線全てに言える話ですが)は東京~大宮間の最高速度が騒音問題などの関係で110km/hに制限されており、この区間で約25分前後かかってしまう事も時間短縮の足かせとなっています。

現在、この区間の最高速度を130km/hに引き上げるべく工事が進められていますが、引き上げられるのは一部区間で、完成後も短縮されるのは1分程度と劇的な速度向上にはならない見込みです。

trafficnews.jp

 

さらに北陸新幹線と共用される上越新幹線の大宮~新潟間で最高速度を275km/hに引き上げる工事が着工される予定で、2022年度末に完成すれば北陸新幹線も2分程時間短縮の恩恵を受ける事になりますが、それでも時間短縮効果はわずかであり、短期的には北陸新幹線の所要時間が劇的に改善される見込みはありません。

trafficnews.jp

 

では実際のところ、北陸新幹線経由での東京~新大阪間の所要時間はどのくらいでしょうか。石川県の北陸新幹線特集ページによると、2022年度末の金沢~敦賀間開業時には金沢~新大阪間は現在の2時間半から2時間程度に短縮される見込みです。東京~金沢間の最速列車が2時間28分ですから、合わせて約4時間半程度になります。しかしこの所要時間では「のぞみ」はおろか「こだま」にすら負ける上に乗り換えが必要になるので全く勝負になりません。東海道新幹線に万が一の事が起きた時の代替交通機関としてはある程度機能するでしょうが、対抗勢力にはまずなり得ないです。

www.pref.ishikawa.jp

 

北陸新幹線が東海道新幹線の対抗勢力になり得るとすれば、新大阪まで全通した時でしょう。全通した時の金沢~新大阪間は1時間20分程度にまで短縮される見込みであり、仮に東京~新大阪間を直通する列車を設定したとすれば先の東京~高崎間の時間短縮と合わせ、3時間45分程度で走破することができます。この距離なら少なくとも「こだま」には勝てますし、大宮~新大阪間で見れば約3時間20分程度になり、東京乗り換えが必要になる東海道新幹線周りと互角になります(リニアを使えばもっと速い!というツッコミはこの際目をつぶって下さい)

 

さらに北陸新幹線には「スピードアップの余力がある」事も見逃せません。現在の北陸新幹線の最高速度は260km/hですが、これはいわゆる「整備新幹線」の設計最高速度であり、東北新幹線の盛岡以北や北海道新幹線、九州新幹線も最高速度は260km/hに統一されています。

とは言っても実際には320km/h運転にも耐えられるよう設計されているらしく、騒音や法律、新幹線設備のリース料の問題(整備新幹線は鉄道・運輸機構が施設を保有し、JRに貸し付けている)さえ解決できれば最高速度の引き上げは不可能ではありません。実際、JR東日本も盛岡~新青森間で最高速度を320km/hに引き上げるべく、200億円を投じてこの区間の防音対策工事を行い、5年後をめどに最高速度引き上げを実現するとしています。

toyokeizai.net

www.asahi.com

 

もし同じことを北陸新幹線で行うとすれば、東京~新大阪間の所要時間はさらに縮まります。仮に大宮~新大阪間の最高速度を320km/hに引き上げれば、碓氷峠など減速が必要な区間が考あるものの、今の計画よりも30~40分程度は短縮できるのではないかと思います。

3時間10分台なら「ひかり」と十分勝負になりますし、大宮~新大阪なら北陸新幹線が優位。さらに同じ都心でも埼京線で大宮に出る事が可能な池袋や新宿あたりなら、乗り換え時間を考慮しても東海道新幹線とそう大差はないので、多少なりともシェアは奪えるのではないでしょうか。

 

・・・とは言え、どう逆立ちしてもリニアの所要時間には絶対に敵いませんし、スピードアップにしても投資に見合った効果を得られるかどうかという問題があるので、最後はJR東日本と西日本の経営判断次第、と言う事になります。そもそも、今の段階では新大阪までの着工もまだ決まってませんし、完成時期もまだ不明ですが・・・

 

割引運賃で勝負を仕掛ける可能性

スピード云々は時間とお金がかかりますが、割引運賃なら今からでも手っ取り早く勝負を仕掛ける事が可能です。

現在、東京〜新大阪間を金沢経由で移動した場合の料金は、運賃10150円、東京〜金沢間の指定席特急料金6980円、金沢〜新大阪間の指定席特急料金は新幹線乗り継ぎ割引が適用されて1550円、合計18680円になります。東海道新幹線経由が「のぞみ」が14650円、それ以外が14340円なのに比べると高いのですが、その差は4000円強と思ったほど大きな差ではありません。

仮に価格面で勝負を仕掛けるとなると、時間的なハンデを覆すには多少安い程度では勝負になりません。少なくとも10000円程度でないとインパクトは与えられないでしょう。しかしそうなると東京〜金沢間の料金14320円との整合性の問題も出てきますし、先に挙げた所要時間の問題もあります。第一、今の北陸新幹線は東京〜北陸の需要だけで十分なので、JR東日本と西日本に敢えて安売りを仕掛ける理由はありません。

 

仕掛けるとすれば最低でも敦賀開業後。と言うのも対関東では福井県内からの需要がプラスされる上に、関西〜北陸の需要を満たす為に「つるぎ」の敦賀延長が見込まれ、座席供給量の増加や増発が予想される為です。供給量に合うだけの需要が増えれば問題ないですが、そうでない場合、空席を埋める為に首都圏〜関西圏の需要に手を伸ばす可能性は十分にあると思います。

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その場合、ただ単に格安切符を売るだけでなく、新幹線開業前に設定されていた首都圏の在来線も乗り放題な「首都圏フリー切符」的な商品を売れば、成功の可能性は高まります。

首都圏向けにはJR東日本の首都圏の在来線フリー切符付き、関西圏向けにはJR西日本の京阪神の在来線フリー切符を付け、価格も往復25000円〜26000円程度で販売すれば、割引率が低くてもお得感は演出でき、中高年層を中心に一定の支持は得られるのではないでしょうか。

但し、これもJR東日本と西日本の利害が一致し、その気になればの話。ですが在来線乗り放題付きのフリー切符は豊富な在来線網を持つ両社だからできる商品ですし、JR東海にはないアドバンテージなので、スピードアップよりは可能性が高いのではと思います。

 

それ以外の分野で勝負を仕掛ける可能性

価格以外でも北陸新幹線が東海道新幹線にないもので対抗できる要素は存在します。「グランクラス」と「観光」です。

グランクラスは効率性重視の東海道新幹線では当分出現する見込みはないので、逆にグランクラスを前面に出して、お金も時間も余裕のある層をターゲットにした旅行商品を企画しても面白いのではないでしょうか。

 

また北陸新幹線の好調を支えている要素の一つが金沢を中心とした観光需要。敢えて東京〜大阪間の直行需要は狙わず、北陸内や長野県内での途中下車を認める「寄り道推奨」の企画乗車券を販売すれば、新たな需要掘り起こしや北陸新幹線沿線の観光需要創出が見込めます。

速達化・直行化の観点から考えると北陸新幹線の不利ばかりが目立ちますが、観光・レジャー要素は北陸周りの方が優位。視点を変えれば需要を掘り起こす方法はいくらでもあると思います。

 

まとめ

以上、北陸新幹線が東海道新幹線の対抗勢力になる可能性について考えてみました。遠回りの北陸新幹線が東海道新幹線に取って代わる、と言う事はまずありませんが、工夫すれば需要の一部は北陸新幹線に引っぱれるのではないかと思います。

北陸新幹線の建設理由の一つは東海道新幹線の災害時のバックアップであり、全線開通の暁には東京〜大阪通し運転の列車が設定されるかも知れません。もし通し運転の列車が設定されれば関西〜長野・北関東や関東〜小浜〜丹後半島といった新たな観光ルートを創出する可能性を秘めています。そう言う意味では北陸新幹線が一日も早く全線繋がる日が来ると良いのですが・・・

 

 

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東海道交通戦争、最終回明日(5/5)アップします!

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とりあえずご報告です。

現在、長い間引っ張ってきた「東海道交通戦争」の最終回を製作中です。原稿は既に完成済みで現在編集中、あとはエンディングの映像はめ込みと一部字幕つけ、エンディング以外のBGM選定を残すのみです。明日5/5の午後までにはYouTubeにアップ、その翌日の5/6までにニコニコ動画へのアップを予定してます。

完結まで7年半もかかりましたが、私にとっては一つの区切りであり、集大成でもあります。完成後は当ブログで補足説明や振り返り、今後のサブチャンネルの方向性などをお話して行きたいと思いますので、どうぞ皆様もう少しだけお付き合い下さい。

 

なお、まだ見てない方やそもそもブログから入ってこのシリーズ自体知らないと言う方は、この機会に一度ご覧頂ければと思います。トータルで5〜6時間くらいかかりますが、多分損はさせないと思いますので(笑)とりあえずYouTubeとニコニコの第1話を貼り付けておきますので是非ご覧下さい。

 


東海道交通戦争 第一章「新幹線開業前夜」

 

【5月6日追記】

ユーチューブで5月5日、ニコニコで5月6日に最終回をアップしました!


東海道交通戦争・最終回「陸と空の未来予想図」

 

 

これからしばらくはこのシリーズの補足とまとめみたいなことを順次書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。まずはご報告まで。

それにしてもトータルで6時間くらいの大作になってしまいました。ここまで長くなるとは・・・

 

 

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京王観光不正乗車事件の調査報告書を読んでみた。

1月に発覚した京王観光の不正乗車問題ですが、4月24日の報道で被害額が約6000万円、JR各社からの損害賠償額が約1億8000万円にのぼる事が分かりました。同時に乗車券の販売委託契約も解除され、マルスも正式に引き上げとなりました。今後京王観光ではJR券の発券ができなくなり、JR利用のツアーや団体旅行を扱う事は事実上不可能となります。

 

これまでの経緯についてはこちらの記事もご参照ください。 

www.meihokuriku-alps.com

 

さて、JRからの処分を受けて京王観光は今回の事件のお詫びと社内調査の結果を書いたお知らせを公表しました。今回はこの調査報告を読んでみて、京王観光がなぜこんな不正をやっていたのか、長年野放しになっていたのか、今後の京王観光はどうなるかを検証してみたいと思います。

調査報告は京王観光のHPで公開されていますので、一度読まれることをおすすめします。

www.kingtour.com

 

http://www.keio-kanko.co.jp/file/kta_report20190425.pdf

今回は調査報告書の項目ごとに内容の概略を書き、検証していきます。

 

1.不正の概要と経緯

不正が行われていたのは大阪支店、大阪西支店、福岡支店の3店舗。このうち大阪西支店は2018年11月に大阪支店に統合されています。

不正の手口は京王観光に貸し出されたマルスで団体乗車券を発行する際、実際の乗車人数よりも少ない人数で発行し、足りない分は回数券と座席指定だけした券(いわゆる「指のみ券」)を発券して添乗員に持たせ、当日改札で確認されずに通過した場合は回数券を払い戻して利益として計上、というものでした。

不正に関与していたのはこれら3支店に在籍していた12名で、うち4名は不正で得た利益の一部を着服していたそうです。上記3支店以外では同様の不正は行われていなかったとの事。不正で利益を得ていただけではなく、着服までしていたとは・・・開いた口がふさがりません。

 

不正が発覚したのは2018年6月の従業員からの告発でした。これを受けた京王観光では3支店の従業員36名に事情聴取を行うなどの社内調査を開始。不正が確認された8月2日にJR西日本(恐らく当該支店のマルスの管轄がJR西日本だったのでしょう)に不正の報告と謝罪をしました。さらに他の支店の社員303名にも事情聴取を行い、全支店のJR券発券データと精算データを照らし合わせて不正金額を調査し、10月19日に第一次方向書を提出しました。JR側の検証作業の後、2019年1月28日より再調査を実施。なお週刊文春の記事で不正が明るみに出たのは再調査前の1月9日の事でした。

第二次調査では従業員の再度の聞き取りとデータ等による検証を行い、4月18日にJR西日本に第二次報告書を提出。この間2月5日にはJR券の発券停止処分となり、マルスも引き上げられました。

 

2.不正金額

データから算定した結果、不正の件数は約110件、金額は約6000万円でした。1件あたりの平均金額は約54万円ですから、人数が多く、改札で切符を確認されずに通される可能性の高い大口の団体を中心に不正を行っていたのではないかと思います。但し、これもデータが残っている2007年4月以降で算出されたものなので、それ以前の不正件数や金額は不明。後述しますが不正は少なくとも1990年代半ばから行われていたそうなので、実際の不正金額はこの倍以上ではないかと思います。

 

3.賠償額とJRからの処分

不正行為に対してJR各社に支払う賠償金は約1億8100万円。これはJRの旅客営業規則第264条の「乗車券の無札及び不正使用の旅客に対する旅客運賃・増運賃の収受」に基づくものと思われ、「不正分の運賃・特急券分の3倍の料金をペナルティとして支払わなければならない(要約)」というJR各社の規則に基づいた請求額です。京王観光は賠償金を5月31日までに支払うとしています。

また、上記の通りJR各社との乗車券類の委託販売契約は正式に解除。委託販売契約が打ち切られるのは極めて異例の事で、京王観光の行った不正がいかに重大で悪質な事であるかがこの事からも分かります。

 

4.上記以外の問題行為

不正が行われていた3支店では不正乗車以外にも「団体乗車券における大人と小人の人数の取り扱い、回数券の払戻手数料、学生団体料金の適用、回数券の取り扱いで問題行為が判明しております(京王観光の調査報告書から引用)」とされており、これら3支店ではこうした不正や水増しは日常茶飯事であった事が伺えます。しかしこれらの問題行為に関しても他の支店では不正は確認されなかったとされています。なぜ3支店だけこのような不正や問題行為が横行していたのでしょうか?

 

5.不正行為の原因

ある意味、この項目が今回の調査報告書の最大の肝かもしれません。要約すると大阪支店誕生の経緯や歴史、京王観光内での大阪支店の特異な立ち位置が不正の温床になっていたようで、この事例は今後企業のコンプライアンス対策の面でケーススタディーのひとつになりそうです。

 

今回の不正行為に関わっていた社員の中で、最も古くから関与していたとされる社員の証言では、少なくとも1990年代前半から団体旅行でこの種の不正が行われていたそうです。その時不正を行っていた社員は既に退職しているそうですが、その社員がたまたまやり始めたというものではなさそうですから、恐らく不正行為自体はその前から行われていたのではないかと思います。

大阪地区の支店は京王ブランドの影響力が強い首都圏の支店と違って知名度がなく、「東京に数字で負けたくない」という風土が強く、特に利益管理が他の支店よりも厳しかったようです。営業担当者は支店長から目標達成を強く求められ、前述の社員も2001年に大阪支店長に昇進したころから予算達成の為に不正に手を染めたと証言するなど、大阪地区にはノルマ達成の強いプレッシャーがあった事が不正行為に手を染める同期になったものと思われます。不正に手を染めなければならない程追い詰められていたという事は相当無理なノルマだったのではないのでしょうか。

また、着服に関しては予算見込み利益を超えた際に「少しくらいいいだろう」という安易な考えから手を出してしまったらしく、2008年から2018年までの間に4人合計で230万円を着服したようです。正直、これに関しては呆れるしかなく、完全に不正行為をしているという感覚がマヒしてしまっています。

 

また、大阪地区の支店誕生の経緯も不正の温床のひとつとなっていたようです。京王観光は1953年に設立されましたが、基本的には京王線のある首都圏のみでの営業でした。京王観光の営業所一覧を見てもツアー商品や乗車券類を販売するカウンターのある店舗は京王沿線内のみですし、カウンターのない団体旅行専門の支店も首都圏以外では札幌、仙台、大阪、福岡の4店舗のみ。全体的に首都圏での営業が主で、他の地域は傍流と言う感じです。

その後、1969年に関西地盤の桜菊観光と合併し、関西にあった桜菊観光の支店は京王観光の支店に衣替えします。つまり、大阪地区の支店は京王観光自身が開設したものではなく、吸収した桜菊観光の流れをくむものでした(4.26訂正:京王観光のHPを再確認したら合併後の存続会社は桜菊観光で、形式的には桜菊観光が京王観光を吸収後、社名を京王観光に変更しています。事実上の力関係はともかく、誤った情報でした。申し訳ありませんでした)

流石に50年前の事なので合併に至った経緯や状況は分かりませんが、なぜか合併後も旧桜菊観光の支店は半ば独立して運営され、京王観光内でも他支店との接点が少ない特異な存在となって行きます。

 

※4.26追記:桜菊観光との合併の際、京王観光は東京都知事登録なのに対し桜菊観光は運輸大臣登録でした。旅行業登録は国内外の企画・手配旅行全てができる第1種旅行業のみ運輸大臣(現国土交通大臣)登録、国内のみ企画旅行が取り扱える第2種旅行業と手配旅行のみ取り扱える第3種旅行業は都道府県知事登録なので、第1種旅行業登録を活かすために桜菊観光を存続会社にしたのではないかと思います。

また、桜菊観光は国鉄の団体手数料交付業者指定を受けており、第1種旅行業登録と合わせ京王観光が持っていないものをいくつも持っていました。そう考えると旧桜菊観光の流れをくむ大阪地区の支店が半独立化していたのも納得できます。

推測ですが合併の際も許認可面で有利な桜菊観光の影響力は強く、合併後も旧桜菊観光の支店は半独立化を黙認されていたのではないかと思います。人事面でも旧桜菊観光の支店と社員は旧京王観光とは別体系となり、大した異動や人事交流もないまま今に至ったのではないでしょうか。

 

大阪地区の社員は首都圏や他地域への異動はほとんどなく、逆に首都圏や他地域から社員が異動する事もほとんどありませんでした。昇進についても大阪地区で採用された社員が内部昇格するなど、京王観光の一支店にも関わらず独自の組織文化が維持・継承されていきました。ちなみに、福岡支店の場合は2015年4月に開設された際に大阪支店から1名異動になり、大阪支店での担当案件を不正行為と一緒に福岡支店に持って行ったことが原因でした。

 

異動による人的交流もなく、他地域の社員との接点も希薄だったことが長年不正を行っていても発覚しなかった理由であり、逆に不正が大阪と福岡だけで止まっていた理由でもありました。不正行為は大阪地区の支店内で引き継がれていき、同じメンバーが同じ案件を継続的に行い、同じ不正行為を続けて行きました。支店内でも不正の認識はあったものの、申告すれば同僚が処分を受けることを恐れたり、上司の関与が疑われるのを恐れてそのまま黙っていたために結果的に大阪支店内で情報が止まっていた事も発覚を遅らせる原因となっていました。

本社サイドは「大阪地区の支店は支障なく運営されているとの予断があった」「不正の手口は特殊で、通常の内部監査では不正は発見できなかった」としていますが、恐らく京王観光内でも特異な存在である大阪地区の支店は本社サイドでも触れてはならない存在になっており、下手に介入をしない風潮が生まれていたのではないかと思います。不正を起こしたのは大阪地区の支店であり、JRや顧客に迷惑をかけ、会社を窮地に陥れた責任は重いのですが、大阪地区の支店を野放しにしていた本社にも責任はあると思います。

 

6.お客様への影響

委託販売契約の解除によって今後京王観光の支店ではJR券の発券業務ができなくなり、京王観光の窓口でJR券を購入することは不可能になりました。JR利用以外のツアーや他社パッケージツアーは引き続き販売されますが、京王線沿線はJRの駅と離れている駅が多いので、この地域でのJR券購入は多少不便になりそうです。

また、報告書では触れられていませんが、京王観光の強みである修学旅行についてもJR利用のコースは今後手配できなくなるので、業者選定の候補から京王観光を外す学校が続出しそうです。まあ、そうでなくとも刑事事件級の問題を起こした京王観光は指名停止などで公立学校の修学旅行から締め出されそうですが・・・

 

7.処分

今回の処分を受け、京王観光では社長を始め取締役8人中6人を減俸処分とし、監査役も自主的に報酬の一部を返上しました。親会社の京王電鉄でも社長を始めとした一部の役員が自主的に報酬の一部を返上します。また、不正に関わった社員12名に対しては解雇を含む厳正な処分を実施する、としています。「着服の事実も勘案し」とされていますから、少なくとも着服も行った4名に関しては解雇となる可能性が高いと思われます。また、責任者であり、自身も不正に関わった当時の支店長も解雇になるかも知れません。

 

8.再発防止策

不正の温床となった一部支店の半独立化などの内部統制の問題に対する対策に重点が置かれている印象です。まず既に実施されているのは各支店・営業所の統括管理部門の新設と大阪支店の人事刷新。大阪西支店の統合も再発防止策の一環だったようです。

また、今後は不正を未然に防ぐために営業管理システムを一新し、利益偏重主義の反省から人事評価制度の再設計、営業担当のジョブローテーションの義務化など、業務の属人化を防ぐ仕組みが作られるほか、コンプライアンス教育の徹底や内部統制システムの再点検が行われます。不正行為を行っていた大阪支店は閉鎖され、大阪には既存顧客への対応要員を本社直轄の駐在所が置かれる以外は社員は全て首都圏などの支店や本社に異動することになります。

 

まとめ

再発防止策自体は具体的なものであり、不正の再発や社内の管理体制にメスを入れるものになると思います。しかし、今回の不正で京王観光は多額の賠償金を払うほか、マルスや大阪支店の顧客、修学旅行の案件も失う事になります。そして何よりJRを始めとした取引先や顧客からの信用を失う事になり、今後の営業活動はかなり厳しいものになる事が予想されます。また、JR6社の中で一番被害が大きかったJR東海は「刑事告訴すべきかどうかも含めて検討中」としており、今後刑事事件化や関係者の立件の可能性もあります。場合によっては京王観光と言う企業そのものの存続も厳しくなるかもしれません。

正直言って不正の問題発覚や再発防止策は「遅きに失した」と言わざるを得ません。不正を行ったのは一部の支店でしたが、その支店に適切な管理や指導をせず、野放しにしていた京王観光自体の責任も重大です。もっと早く不正が分かって対処していれば賠償金の額も少なく済んだと思いますし、委託販売契約解除までは行かなかったかもしれません。京王観光の立て直しは茨の道ですが、今回の事件を真摯に受け止めて信頼回復に努めて欲しいと思います。

 

コンプライアンスの遵守に世間の目が厳しくなっている昨今、不正を放置したり、隠ぺい工作を行う事自体が大きなリスクになっています。しかし日本では組織防衛や目先の業績の為に不正や隠ぺい行為に走るケースが後を絶たず、結局発覚して致命的なダメージを受けてしまいます。ここ数年、日本企業で相次いだデータの改ざんや粉飾決算、過重労働などの不祥事も問題の根っこは同じだと思いますし、「不正や隠ぺいを行う方がリスクが大きい」と言う事を企業全体、特に経営層が改めて認識すべきではないのでしょうか。

 

 

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ジェットスタージャパン・成田ー庄内線就航決定。今後のLCC就航のトレンドは「地方路線の掘り起こし」?

 

4月17日、ジェットスタージャパンは8月1日からの成田ー庄内線の就航を発表しました。1日1往復で成田発は午後1時、折り返しの庄内発は午後2時50分発。ジェットスタージャパンにとっては初めての東北路線となるほか、山形県にとっても初のLCC就航となります。

庄内線就航の決め手となったのは「自治体や地元企業が熱心に誘致した事」と「庄内地方は40万人の人口があり、航空需要掘り起こしの余地がある事」の2つ。2年前から県知事らが就航を働きかけ、チェックインカウンター整備などで支援する姿勢を示したことで継続的な地元の支援を受けられるとジェットスタージャパンが判断した事、また、庄内地方は観光需要の他、ハイテク企業が集まり一定のビジネス需要も見込めることが就航決断を後押ししたようです。

現在、庄内空港からの路線はANAの羽田線4往復のみで独占路線、またJRも所要時間の面で決して優位には立っていない事、特に冬場は積雪や吹雪で運休や遅延することがしばしばあることから、庄内-羽田線の航空運賃は強気な設定になっています。ジェットスターの成田線就航は新たな選択肢ができる以上に、航空運賃の値下げという効果を庄内地方にもたらすことになります。ANAにも直接影響は与えないものの、ジェットスターの低価格は意識せざるを得ないでしょうから、運賃面の見直しも考えられます。

 


www.aviationwire.jp

 

www.fnn.jp

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さて、2012年5月のピーチ就航以降、順調に路線網を広げる和製LCCですが、ここ1~2年は高需要とは言えない地方路線の開拓が目立ってきています。最近のLCC各社の就航路線を見ても、ピーチが関西~新潟・釧路線、ジェットスタージャパンが成田~下地島や成田・関西~高知線、バニラが成田・関西~函館線(ただしこれは軌道に乗らず撤退しましたが)と、以前の就航路線よりも需要が小さい地域への就航が目立ちます。

当初は札幌や福岡、那覇と言った高需要が見込める路線や、鹿児島や宮崎と言った地方路線でも航空が優位に立ち、需要も大きい路線への就航が多かったのですが、近年はそれらの路線の開拓も一巡してきました。LCCの就航はそれまで飛行機に乗らなかった人を呼び寄せ、運賃が安い分、飛行機に乗る回数を増やしたりコンサートやスポーツ観戦にLCCを使うなど新たな需要を開拓してきましたが、一通り需要の大きい路線にLCCが就航した今となっては、規模拡大の為には「既に別のLCCが就航した路線に参入する」「大手や他のLCCが目を付けていないニッチな市場を開拓する」かの二つになります。

今のところ、ジェットスタージャパンは黒字化したとはいえまだまだ累積損失は残っており、ピーチもバニラとの統合作業に人的リソースを割く必要があり競合どころではないため、路線開拓に関しては後者を選択しているようです。両社とも今は正面対決を避けている節があり、競合できる体制が整うまでは空白地帯への就航が中心になって行くものと思います。

 

それでは、今後はどこの路線への就航が考えられるでしょうか。現在のLCC空白地帯は地域単位で見れば北東北(青森・秋田・花巻など)、北陸(小松・富山・能登)、中国(広島以外の全域)と、まだ開拓の余地は残っています。また北海道に関しても旭川や帯広、女満別は羽田線のボリュームや以前関西からの路線が就航していた事を考えると有力な就航先です。それ以外でも観光面で潜在的需要が見込める地域としては南紀白浜や対馬、久米島などが挙げられますし、徳島もLCC未就航地域。関西視点で見れば福島や八丈島も候補に挙がってきますし、中部発の地方路線はまだまだ開拓の余地があります(中部に関してはエアアジア・ジャパンとジェットスタージャパンの取り合いでしょうが)

今後はジェットスタージャパンと、バニラ統合で新たに成田が拠点の一つになるピーチとの間で空白地帯の取り合いが始まるのではないでしょうか。恐らくここ数年で地方空港へのLCC就航はかなり進むことになるのではないかと思います。「うちの地方の空港にはLCCが来ない!」と嘆いているそこのあなた、案外明日当たりLCCの就航発表があるかも知れませんよ・・・?

 

 

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