〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

プロペラ機って格下なの?

一時は縮小傾向にあったものの、ボンバルディアDHC8-Q400のおかげですっかり息を吹き返したかに見えたプロペラ機。しかし、ここに来てJALが福岡ー松山や鹿児島ー奄美などDHC8-Q400路線の一部をエンブラエル機で再度ジェット化してきました。

 

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エンブラエル機に置き換えといっても座席数はほとんど変わりませんし、所要時間も5分〜10分縮まる程度。プロペラ機の経済性の高さを考えるとあえてジェット化する必要もない気もしますが、やはり顧客志向としてはジェット機の方が好まれる傾向にあるようで、プロペラ機は「遅い、振動が大きい、快適性に劣る」というイメージがどうしてもついて回ります。

さらにプロペラ機は機体が低く、ボーディングブリッジの使用が困難という弱点があり、これもプロペラ機の「格下感」を助長しています。ANAがわざわざDHC8-Q400用にアダプターを開発したのも、裏を返せばボーディングブリッジが使えないプロペラ機への不満が大きいということではないでしょうか。沖止めだと車椅子利用の場合にも支障が出ますしね。

 

trafficnews.jp

 

しかし、DHC8-Q400も今JALグループが導入しているATR42-600も静粛性や機内の快適さではジェット機とそう変わりません。私もDHC8-400に乗った時はプロペラ機特有のエンジン音と低い高度がジェット機と違うなと感じたくらいで、乗り心地や静粛性はジェット機と大差ありませんでした。ATRの方はまだ乗ったことはありませんが、ATR社CEOの会見やATR機に関する記事を見る限りでは室内の広さと静粛性はジェット機に引けを取らないようです。にも関わらず、なぜプロペラ機は格下扱いされてしまうのでしょうか。個人的な考えですが、以下のような事情が原因なのかと思います。

 

理由1:地方空港のジェット化

現在、日本国内で定期路線が就航している84空港のうち、ジェット機の乗り入れが不可能な空港は、奥尻・調布・三宅島・新島・神津島・但馬・壱岐・天草・屋久島・喜界島・沖之永良部・与論・多良間・南大東・北大東の15空港。基本的には小規模な離島空港ばかりで、本土では調布と但馬の2箇所のみ。今の日本の空港はその気になればジェット機を飛ばせる空港の方が主流で、プロペラ機のみの空港は少数派です。

70年代まではジェット化された空港は限られた存在であり、旭川や岡山、高松といった今では767クラスの中型機が普通に飛んで来る空港も当時はYS-11の独壇場でした。しかし、80年代以降は輸送力増強と高速化のため急速にジェット化が進み、21世紀に入ると利尻や隠岐、種子島などの離島空港でもジェット機の乗り入れが可能となりました。地元政財界や利用者にとってもジェット機は空港近代化の象徴であり、一種のステータスでもあります。それゆえ輸送力でも速度でも劣るプロペラ機は前近代的なものというイメージが染み付いてしまったのではないでしょうか。

さらにはジェット化した離島の空港の中には、採算性や需要の関係でプロペラ機に戻ってしまったり、ジェット機は来ても多客期だけという空港も存在します(利尻、隠岐、与那国)。種子島空港に至ってはジェット化しても定期便でジェット機が飛ぶことはなく、それどころか大阪直行便が臨時便に格下げになるなど踏んだり蹴ったり。また、先述の鹿児島ー奄美線も一度はMD-81でジェット化されたのに、増便と引き換えにプロペラ機のDHC8-Q400に変更された経緯があります。これらの空港の関係者にとってはせっかく大金をかけてジェット化したのに、飛んでくるのは元のプロペラ機ではジェット化の意味がないですし、ジェット機を求めるが故に余計にプロペラ機を「格下」扱いしてしまうのではないでしょうか。

 

理由2:YS-11の存在

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 戦後初の国産旅客機、YS-11。国産という価値に加え、滑走路の短い空港がまだまだ多かった70〜80年代の日本の空港事情にマッチし、耐久性の高さも相まって1973年の製造中止後も長く飛び続け、2006年まで使用された息の長い機材でした。最後まで使用された日本エアコミューターの機材は30年選手がザラでしたから、一般的な旅客機の寿命が20年前後ということを考えると、その耐久性の高さは異例です。

YS-11が日本の航空産業の礎となった名機であることは疑いようがありませんが、その歴史的価値や感情を抜きにして一般利用者の視点で考えると、エンジンが動かないと空調も動かない、荷物棚に重い荷物を載せられない、トイレは汲み取り式、振動もエンジン音も大きいと、現代の旅客機に比べると快適とは言えない飛行機でした。YS-11が主力だった時代ならともかく、90年代以降はジェット機や後継のプロペラ機に比べるとどうしても見劣りしてしまいます。

日本ではプロペラ機というとYS-11を連想する人も多いと思いますが、そのイメージが逆に「プロペラ機=古い時代の飛行機=格下」と思わせてしまう原因の一つではないかと思います。

 

3:DHC8-Q400の初期トラブルと胴体着陸事故

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現在、日本でプロペラ機というとDHC8-Q400のイメージが強いと思いますし、今の日本で一番多く飛んでいるターボプロップ旅客機もこの機体です。現在では大きなトラブルなく飛んでいるDHC8-Q400ですが、過去には降着装置などのトラブルが頻発し、安全性を疑問視されていた時期がありました。その安全性が最も揺らいだのが2007年3月のANA機高知空港胴体着陸事故であり、特に事故の起こった高知県ではボンバルディア機に対する不信は頂点に達し、事故後しばらくDHC8-Q400は高知空港路線からは外された上、事故機も高知県の反発で路線復帰できず、海外に売却されました。

この一連のトラブルがプロペラ機に対するイメージを悪化させた面はありますし、現在でもこの機体のトラブルが報じられると「欠陥機」と言われてしまいますから、DHC8-Q400に対していいイメージを持ってない人は少なくないと思います。

しかしその後DHC8-Q400の日本最大のカスタマーであるANAが地道に改善に取り組んだおかげでトラブルは減り、現在では他機種と遜色ない安全性を確保しています。短距離ではジェット機と遜色ない時間で飛べますし、騒音も少なく低燃費でエコな機体ですから、初期トラブルやあの事故さえなければ今よりも高い評価を受け、プロペラ機に対するマイナスイメージを払拭できたと思うんですが・・・

 

「絶対に良い飛行機にしてやる」特集・Q400を鍛え直した男たち(1)

 

 私個人としてはプロペラ機は決してジェット機に劣っているとは思いませんし、燃費の良さや環境負荷の軽減、滑走路の短い空港からでも離着陸が可能なSTOL性能など、プロペラ機が有利な点はいくつもあります。採算の取りづらい地方間路線や離島路線、フィーダー路線にはATRやDHC8-Q400のようなプロペラ機は最適な機材だと思います。

しかし、過去のプロペラ機の乗り心地やトラブルからいいイメージを持っていない人がいるのもまた事実ですし、飛行機=特別な乗り物という意識がまだ強い日本では、どうせ乗るなら速くて快適なジェット機を選びたくなりますし、どうしてもプロペラ機は「格下」と見られてしまうのかもしれません。

とは言え、JALグループでは日本エアコミューターのDHC8-Q400はいずれ退役する飛行機ですし、ANAグループでもMRJが就航すればDHC8-Q400は置き換えられてしまうかもしれません。そのうちプロペラ機は本当に離島路線専用機となり、限られた路線でしか乗れない貴重な存在になる可能性も十分に考えられます。ひょっとしたらプロペラ機が日本中どこでも乗れる今は実は貴重な時期なのかもしれません。もし喰わず嫌いでプロペラ機に乗ったことがない方、普通に飛んでる今のうちに一度試してみてはいかがでしょうか。ジェット機よりも低空を飛ぶプロペラ機の眺めは、また違った景色かもしれませんし、昔よりも快適性が増したプロペラ機の旅は、案外快適かもしれませんよ。

 

 

あえて誰も引き受けないアリタリア航空を丸ごと引き受けてくれそうな会社を探してみた。

現在、再建スポンサー待ちのアリタリア航空ですが、今のところ丸ごと引き受けてくれそうなスポンサーはなく、一番可能性のありそうなルフトハンザも一部事業の引き受けだけのようです。KLM、エールフランス、エティハドと名だたる航空会社が支援に手を挙げながらことごとく裏切ってきたアリタリアのことなので、この結果は当然と言えば当然なのですが、本当にもうアリタリアを全面的に支援してくれるスポンサーはいないのか、考えてみました。

 

候補1:過去のスポンサーがもう一回手を挙げる

まあ、こう書きましたけど動画を作るにあたりアリタリアの事を調べ、過去のスポンサーの末路と被害額を知っている私としては

 

絶対にない

 

と断言してもいいくらい可能性はないと思います。少なくとも数億ユーロの出資金を溶かし、自分の会社にもダメージを与えたにも関わらず、出資の見返りのはずだった合理化や改革ができず、提携の旨味も少なかったアリタリアにもう一度出資しようとはしないでしょう。もしそれでもアリタリアを丸抱えする気なら相当学習能力がない経営陣ですし、実際に出資する前に株主から解任動議を出されてクビを飛ばされると思います。

 

候補2:ルフトハンザの気が変わってアリタリア丸ごと引受けに変更

過去にはエアワンへの出資やルフトハンザ・イタリアの設立でイタリア市場に食い込もうとしていましたので、アリタリアを丸ごと買収して一気にイタリア市場を取り込もう、と考えても不思議ではありません。 

 

しかし断言してもいい、これも絶対にありません。

 

ルフトハンザは傘下にスイスインターナショナルエアラインズやオーストリア航空、ベルギーのブリュッセル航空を抱え、LCC部門としてユーロウイングスを保有して成功を収めるなど、手堅い投資で経営規模を拡大させてきた会社。航空会社の出資に対しては将来性やブランド力、ネットワークの補完性などを慎重に検討している感がありますし、ブリティッシュ・ミッドランド航空のように一度は買収しても赤字続きで改善の見込みがないと判断すれば容赦なく売り払います。

アリタリアに黒字転換の可能性があると判断すれば丸ごと買収に切り替えると思いますが、今までのアリタリアの所業や豊富なオイルマネーを抱えるエティハドですら再建に失敗していることを考えると、投資判断にはシビアなルフトハンザがギャンブル的な投資(それも成功率がかなり低い)をするとは考えにくいです。エアベルリンの一部資産買い取りでお金を使ってますしね。

 

候補3:エミレーツ航空

いきなり大型旅客機を大量発注したり、世界中のプロスポーツチームや大会のスポンサーになり、巨額の資金を提供するなど、航空業界内でも「何をするかわからない航空会社」と言われるドバイのエミレーツ航空。ひょっとしたら突然アリタリアの出資に名乗りを上げる・・・

 

なんてことはない、絶対にない。

基本的にエミレーツは自力でネットワークを構築しており、航空連合にも加盟はしていません。過去にもスリランカ航空へ出資したことがある程度で、マイレージサービスも独自のもの。提携についてもロンドンーシドニー線の経由地をドバイに変更したカンタス航空のように、自社のネットワーク拡大に貢献できる相手となら提携をするでしょうが、アリタリアにはそれだけのメリットは見いだせません。つまり、独立独歩のエミレーツにとってアリタリアの出資にはメリットはなく、それどころかすぐ隣の会社が大火傷したデンジャラスエアラインに出資してお金をドブに捨てるような行為はしないでしょう。

 

候補4:ライアンエアーやノルウェーエアシャトルなどの欧州LCC

このうちライアンエアーは実際に買収に手を上げましたし、アリタリアのスポンサー候補の中にはイージージェットも含まれています。が、ライアンエアーはパイロット不足問題で買収どころではないでしょうし、ノルウェーエアシャトルも自社で長距離路線を開拓する予定なので、アリタリアには食指を伸ばさないでしょう。イージージェットもエアベルリンの時同様、欲しいのはイタリア発着の近距離路線の権益だけだと思うので、一部資産の買取ならともかく、欧州LCCが高コストのアリタリアを買う可能性はないと思います。

 

候補5:JALやANAが買うとか・・・

 

ないですね。

 

JALもANAも国際線の主力はアジア路線と北米路線であり、アジアー北米の乗り継ぎ需要。欧州路線は増えてはいるものの、基本的にはアジア方面からの乗り継ぎはあまり見込めないので、それぞれのアライアンスのハブ空港への路線が中心です。イタリアは今でも観光需要は大きいので旅客は見込めますが、提携先の会社のコードシェア便で事足りるので、わざわざアリタリアに出資して爆弾抱えるメリットは全くありません。

 

・・・個人的にはJALあたりがローマ線復活してくれないかな?と思うんですが、これだって別にアリタリアと手を組む必要なんてないですしね。

 

候補6:中国系の会社

正直、今アリタリアを丸ごと買う可能性のある会社となるとこの辺りしか思いつかないです。・・・と言っても上記の会社よりは可能性がある程度ですが。

ですが、中国系の航空会社って意外と海外航空会社の買収はやってないんですよね。中国市場自体が広大で、十分食べていけるだけの需要がありますから、エティハド航空のように規模拡大のために他の航空会社の買収に必死になる必要がないからでしょうか。そう考えるとアリタリアを買収する積極的な理由が見つかりません。少なくとも旧民航系の中国国際航空、東方航空、南方航空の3社はアライアンス提携先の会社の路線を使えばいいわけですから、アリタリアには食指を伸ばさないでしょう。

 

可能性があるとすれば、旧民航系に続く第4のグループ、海南航空ではないでしょうか。海南航空はどこのアライアンスにも属しておらず、提携相手の一つであったエアベルリンが破産したため、ヨーロッパでの提携先がない状態です。業績の方も今年は減益ですが、基本的には拡大傾向にあり、近年ではニューヨークやラスベガス、シドニーなどの長距離路線を拡大しています。

どこの航空連合にも属さない独立系、拡大傾向、民航系会社との差、提携先の破綻で空白の欧州地域・・・アリタリアに手を伸ばす条件としては十分じゃないでしょうか?

 

しかしこの海南航空、提携先の会社の一つがあのエティハド航空なので、自分の提携相手が大火傷を負ったアリタリアに果たして手を出すかな?という気がします。それでも私の考える限りでは手を出す可能性があるとすればここくらいしか思いつきません。ただ、その場合でもEU外の航空会社からの出資ですから、エティハド同様、揉めることになりそうですから、実際には手を上げる可能性はかなり低いかなと思います。

 

 他にもアメリカ系の会社、カタール航空、アエロフロート、シンガポール航空など出資できる可能性のある会社も考えてみましたが、アリタリアの規模が大きすぎる上に赤字額も大きいので、多分手を出しそうな会社はないように思います。大企業は大きすぎて潰せない、とよく言われますが、アリタリアの場合は「大きすぎて買い手がつかない」といったところでしょうか。考えれば考えるほど、アリタリアが丸ごと生き残れる可能性は低いです・・・

 

アリタリアを潰したのは誰か

迷航空会社列伝、今回は3回シリーズでアリタリア航空を取り上げました。

 


迷航空会社列伝 「イタリアのフラッグキャリア」アリタリア航空 前編:マルペンサの乱


迷航空会社列伝 「イタリアのフラッグキャリア」アリタリア航空 中編・資金繰りとストと破産


【後編・石油王でもダメでした】迷航空会社列伝「イタリアのフラッグキャリア」アリタリア航空

 

 今回の動画でも分かる通り、アリタリアーイタリア航空の行く末はまだ決まっておらず、現段階では引受先のスポンサーとして7グループが名乗りを上げましたが、どのグループもアリタリア丸ごとの引き受けには難色を示しており、来年の4月までに交渉でその差を埋めるとしていますが、状況は不透明です。

そんな中、11月14日には就航70周年を祝って歴代CAの制服を披露するファッションショーが開かれましたが、正直、71周年を迎えられないかもしれない瀬戸際なのに、呑気にイベントを開いてる場合じゃないのではと思うのは私だけでしょうか。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

再生か、清算か、瀬戸際にいるアリタリアですが、結局のところ、イタリアのフラッグキャリアを潰し、追い詰めたのは一体誰なんでしょうか。

 

①歴代のアリタリア経営陣が悪いのか

会社の経営陣は高い地位と報酬を得る代わりに会社の経営に責任を持ち、会社に損害を与えれば責任を取らされて更迭されますから、アリタリアの場合も経営陣に破綻の責任があるのは当然のことです。

しかし、アリタリアの過去の経営陣が全て悪いのか、と言われるとそうとも言い切れません。アリタリアはつい10年前までイタリア政府の資本が入っていましたから、経営にもイタリア政府の意向が反映されていたはず。実際、国営時代には組合のストを抑えるために合理化策を出した経営陣を更迭する、という事が何度もあり、自分たちの意思で長期的な経営ビジョンを打ち出せなかったのではないでしょうか。

さらに言えばアリタリアの根本的な問題は余剰人員などの高コスト体質であり、これをなんとかしない限り再建はおぼつかないし、歴代の経営陣も合理化を最優先にせざるをえなかったと思います。そう考えると経営陣に全ての責任を押し付けるのは酷なのではないでしょうか。

 

②アリタリアの労働組合が悪いのか

動画内では事あるごとに合理化に反対し、倒産の原因のように書いてきた労働組合。実際のところ、イタリア国内ではアリタリアの評判は良くないようで、2013年には預け入れ荷物から現金や貴金属を何年も盗んでいたとしてアリタリアの従業員数十人が逮捕されるなど、従業員のモラルは良くありません。今回の破綻も最終的には従業員投票で3分の2が合理化案反対という結果を受けてのもので、少なくともアリタリアに関しては従業員の意識を根本から変えない限り、いくらお金をつぎ込んでも再建は不可能だと思います。

では労働組合がアリタリア破綻の全責任を負うべきなのでしょうか。確かに責任の一端を負うべきではあると思いますが、労働組合はあくまでも従業員側の利益の代弁者であり、従業員の雇用と給与を守るために合理化策に反対し、ストを打つのはある意味当然の事です。ただ、スト戦術に固執するあまり、やりすぎて会社が潰れては元も子もないのでどこかで経営側と折り合いをつけて従業員の利益をできるだけ確保できるよう交渉をするべきでした。現実認識の無さとモラルの低さは責められるべきでしょうが、従業員に全ての責任をなすりつけるのも暴論ではないかと思います。

 

③イタリア政府が悪いのか

アリタリアがこれだけ赤字をこいても危機意識を持たず、不毛なストを繰り返したのも会社が傾くたびにイタリア政府が救済してきたから。結果、従業員は何かあっても最後には国が助けてくれると安心し、危機感を持つことはありませんでした。アリタリアが変われなかったのは、イタリア政府が甘やかし続けたからとも言えます。

個人的には経営陣や組合よりも政府の責任の方が大きいのかなと思います。アリタリアを救う為につぎ込んだ資金も行き着くところは国民の税金。いくらイタリアの空を守るためと言っても、湯水のように税金をつぎ込んでいいというわけでもないですし、相次ぐ資金投入も結局はアリタリアの延命でしかありませんでした。EUが航空自由化に舵を切った時点でアリタリアは抜本的に改革して高コスト体質から決別させるべきだったのですが、それができずに問題を先送りした結果が二度の破綻を招いたのだと思います。

 

しかし、強力な組合のストを押し切れるほど政府に強力なリーダーシップが取れたかと言われると、ちょっと難しかったかも知れません。というのもイタリアは1993年の小選挙区制に移行後、選挙ごとに政権交代が起こる上に首相も頻繁に交代するので、長期的な政策が取りづらいという問題を抱えています。2008年の倒産の際も、一度はエールフランス−KLMへの身売りが決まったのに、選挙で勝ったベルルスコーニがひっくり返したことからもわかるように、どうしてもその時々の政権に左右されてしまいます。そう考えると、イタリア政府がアリタリアの再建を強力に主導する、というのはちょっと考えづらいです。

 

 

以上のことから、経営陣、労働組合、イタリア政府の三者に責任はあるものの、全ての責任があるとも言えない、と言う結論に達しました。個人的には責任の度合いとしては政府>経営陣=組合かなと思いますが、アリタリアはイタリアの悪い部分(先送り体質、頻繁なトップ交代、極端な変化への抵抗)や国民性(楽天的、マイペース、ルーズ、直情的)が悪い方向に作用した感もありますので、アリタリアを追い込んだ本当の犯人はイタリアの気質そのものだったりして・・・?

 

 

迷航空会社列伝はこうやって作ってます(後編)

更新が遅くなってすみません。後編は動画ソフトの紹介や動画作成のやり方などを紹介します。前編をまだご覧になっていない方は先にそちらをご覧ください。

 

meihokuriku-alps.hatenablog.com

 

と、その前に新たに見つけたネタ探し用の素材を一つ紹介。

世界各国の運輸事情をまとめた国土交通省のレポートですが、航空以外にも鉄道、海運、自動車輸送の概況をまとめてあります。特に海外の交通事情を知る手段は限られていますので貴重な資料です。国交省の調査なので信用もできると思います。

国際:主要運輸事情調査報告書 - 国土交通省

 

では、改めて動画編集の仕方をご紹介します。

 

3:動画の編集作業

現在、私が動画編集に使っているのはSonyのVegas Movie Studio。Sony製といってもアメリカの法人で開発されたソフトを日本に逆輸入しているため、販売先はSonyではなくソースネクストという会社です。直感的に編集作業ができることや、エフェクトの種類も多いので重宝しています(全然使いこなせてないけど)

www.sourcenext.com

 

但しこのVegas、スタンダード版でも14,000円前後、ハイグレード版だとその数倍はするので、このソフトと合わない、または使いこなせないと全くの無駄金になってしまいますし、投資するには少々勇気のいる金額です。

 

そこで値段的なハードルが低いソフトとしてオススメなのがAviutl。迷列車関係でもこのソフトを使用している作者さんが多いですし、拡張性も高く、結構機能も多いようですので、プラグイン知識のある方はこっちがいいのではないでしょうか。何と言っても無料ですしw

www.gigafree.net

 

しかし、言い換えればプラグイン知識がないとソフトを立ち上げることすらできないのが難点。というか私がそうでしたwなので私はVegasに走ったんですけどね・・・

 

とりあえずお試しでやりたい、けどAviutlはとっつきにくい、と言う方はPC付属の動画編集ソフトでやってみてはどうでしょうか(WindowsならWindowsムービーメーカーMacならiMovie

 

 

さて、編集ソフトの紹介が終わったところでいよいよ編集作業ですが、基本的な流れとしては、

1:原稿を音声合成ソフトで読み上げて編集ソフトに読み込む

2:原稿の字幕つけ

3:シーンに応じた写真をはめ込む

4:クレジット表記や代理の人のセリフを書く

5:BGMを入れる

6:最終チェック後、問題なければレンダリングして投稿

となります。

 

1:原稿を音声合成ソフトで読み上げて編集ソフトに読み込む

まずは作成した原稿を音声合成ソフトに読み込みます。

私が使用している音声合成ソフトはこちら。

www.vector.co.jp

いわゆる「ゆっくりボイス」の代表格ですね。無料でダウンロードできますし、音程や速さを変えればある程度はバリエーションが増やせますので、入門編にはいいかなと思います。

他にもボーカロイドやボイスロイドを使っている人もいますが、お金がかかるのでこだわりのない方はこれで十分かなと。ただ、結構誤訳が多いので、読み込み前の確認と修正は必須です。・・・もっとも、それでも読み間違いはしてしまうんですがw

ちなみに、私はこの作業で原稿の最終確認も兼ねています。読み込みの段階で変えた方がいいと判断したらここで原稿の修正を行って読み込みます。

 

2:原稿の字幕つけ

読み上げが終わったら編集ソフトに読み込んで並べ、字幕を付けて行きます。

基本的には原稿からコピペして貼り付けるだけの作業ですが、この単純作業が地味に面倒ですw

3:シーンに応じた写真をはめ込む

字幕つけが終わったら写真をはめ込んで行きます。画像の選択で動画の雰囲気が決まる大事な作業ですが、割と直感で選んでいきます。

 

4:クレジット表記や代理の人のセリフを書く

クレジット表記も地味な作業ですが、画像をお借りした方の名前や出典先を明記するのは大事なことですので、間違えないように慎重にします。そして、ある意味迷航空会社シリーズの肝となる代理キャラのセリフですが、実はこれも基本的には直感で書いていますwでも案外何気なく直感で決めたセリフがツボにはまったりするんですよね。

裁判所猫の「You!チャプタ−11行っちゃいなyo!」とかw

 

5:BGMを入れる

シーンに応じたBGMをつける作業は楽しいけど悩む時間。とりあえず勝利確定BGM(甘茶の音楽工房様の「残業戦士」)を入れる瞬間は一番テンション上がります。

 

6:最終チェック後、問題なければレンダリングして投稿

最終チェックで画像や表記、台詞の間違いがないか、通しで見て確認します。でも抜けてしまうこともあるんですよね・・・元々が抜けているので一人で全部作業してるとどうしてもミスを見落としてしまうんですよね。申し訳ない。

で、チェック終了後、レンダリング作業に入ります。Vegasだと大体20分〜30分くらいですか。終了後、問題なければ投稿し、終了。

 

以上、動画作成の一連の流れを簡単にご紹介しましたが、やり方は人それぞれなので、「これが最適」というものはないと思います。結局は自分に合ったやり方を模索するのが一番ですが、それでも動画の作り方が全くわからない人にとっては多少なりとも参考になるのではと思います。ぜひやってみたいと思った方は参考にして頂けると嬉しいです。

迷航空会社列伝はこうやって作ってます(前編)

私が投稿している「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」シリーズ。今でこそYouTubeでも公開していますが、元々はニコニコ動画の「迷列車で行こうシリーズ」での投稿が動画製作者としてのスタートでした。

今回、11月10日(金)から11月13日(月)の期間で「迷列車で行こうシリーズ8周年祭」をニコニコ動画上で開催します。詳細は下記の動画を参照して下さい。

 

 

今回は祭りの告知宣伝も兼ねて、私が普段どのように動画を制作しているかをご紹介します。動画を作ってみたいけどやり方がわからない、という方の参考になれば幸いです。

 

(本当は動画で出すつもりだったけど、作っている暇がないのでブログで済ませるなんて死んでも言えない)

 

1:動画の原稿(シナリオ)作成

私の場合、動画の技術的には大したことないので、どうしても内容勝負になります。それゆえ私は原稿の作成を一番重要視しています。

最初に取り上げるネタを決めますが、その際、ウィキペディアなどのネット記事をよく参考にします。薄く広くネタを探す、という点ではネットが一番拾いやすいですね。ただし、実際に原稿を書く際はウィキペディアの内容だけでは信憑性に欠けるので、裏付けするための資料が必要になります。「迷うp主」と言われて叩かれる人は、この辺の裏付けが不十分、または全くせずに内容の薄い動画を投稿してしまうのも原因の一つかと思います。

 

で、資料探しですが、私はAmazonで探してポチるか、古本屋で航空関連の書籍や雑誌を探すか、図書館で探して借りるかです。基本的には紙媒体の資料を使い、ネットのニュースやウィキペディアは補助資料、とする場合が多いです。ただ、リアルタイムの情報はどうしてもネットに頼らざるを得なくなるので、その場合はネットニュースが中心になります。私が多用している航空関連のニュースサイトは以下の通り。

 

www.aviationwire.jp

www.traicy.com

trafficnews.jp

 

それとデータ的なものだと国土交通省の統計資料や国土交通白書が一番確実かなと思います。

www.mlit.go.jp

 

あとは検索で引っかかったブログやサイトも補助資料で使いますね。あくまでも取り上げるのは「客観的な事実」。動画の演出上、ボロクソに言うこともありますが、基本的には事実を基にして、最後のまとめ以外はできるだけ個人の主観が入らないように作成しています。

 

・・・もっとも、オリエントなんとか航空みたいに論外の会社は主観入りまくりですが。

 

2:動画の素材集め 

素材に関しては原則として自前の画像やフリー素材、他の方からお借りしたものを使用しています。特にYouTubeにも動画を出すようになってからはかなり気を使うようになりました。ニコ動は多少ゆるいところもありますが、YouTube著作権に対する対応もペナルティも遥かに厳しいですし、何より後ろめたい思いで動画は作りたくないですからね。

 

画像に関しては以下のサイトをよく使用しています。

www.flickr.com

↑Yahoo系のサイトなので海外の航空機を撮影した方も多いので航空機の画像で一番よく利用させてもらってます。画像によって作者名明記で商業利用も含め使用OK、非営利はOKだけど商業利用はNG、非営利も含めて利用NGと条件が異なりますので、詳しくは下記のブログを参照して下さい。

nanapi.com

 

↓代理猫など動物系や風景の画像はこちらをよく使用しています。

www.photo-ac.com

commons.nicovideo.jp

このうちニコニ・コモンズはニコ動のみで使用OKだったり使用自体に許可が必要な画像も多いので、画像使用の前に条件を確認することをお勧めします。

 

次にBGM。上記のニコニ・コモンズの他に、今私がよく使用しているのはこちらのサイトです。

amachamusic.chagasi.com

ゆっくり解説系の作者さんがよく使っていますね。最近では私の影響もあってか、迷列車でも使用する人も増えてきました。動画内でよく「勝利確定BGM」と言われているBGMもこのサイト内の「残業戦士」という曲です。商業利用もOKなので一番使い勝手がいいと思います。

 

近年ではフリーBGM、フリー画像使用サイトなどが充実してきていますので、以前よりも動画の素材に困るということも少なくなってきていると思います。

それと私個人が撮った画像も使用して頂いて構いません。Googleフォトに一通り画像は添付しましたので、よろしければお使い下さい(できれば撮影者を明記して頂けると嬉しいです)

https://photos.google.com/sharing

 

こうやって作ってます、と言っても素材集めの話ばかりになりましたね。編集ソフトや動画編集の仕方などは後編でお話ししたいと思います。

 

 

アリタリア航空、取りあえず半年生き延びる

5月に破綻したアリタリア航空ですが、16日に再建スポンサーの入札を締め切り、7陣営が応募したそうです。破綻以降、最近はあまり情報が入ってこなかったアリタリアのニュースですが、スポンサーに名乗りを上げたのはドイツのルフトハンザやイギリスのLCCイージージェットなど。ただ、いずれの陣営もアリタリア丸ごとの買収ではなく、一部分のみの買い取りのようなので、丸ごと買収してほしいイタリア政府の思惑通りにはいかず、とりあえず3億ユーロのつなぎ融資を行って来年4月までは運航を続けながらスポンサーを探すようです。

www.nikkei.com

 

まあ、今回も2008年の破綻の時も労働組合の強硬な反対でリストラ案が拒絶され、追加出資が頓挫したのが原因ですから、高コスト体質と強硬な組合を抱えたままのアリタリアを丸抱えするのはリスクが大きいと判断したのでしょう。エディハド航空を持ってしても組合を抑えることはできなかったのですから、組合をなんとかしない限り、アリタリアを丸ごと引き受けてくれるスポンサーを見つけることはできないと思います。

 

・・・何となく70年代の国鉄に状況が似ていますね。

 

恐らく今の状況では複数のスポンサーに資産や路線を切り売りして、今のアリタリアは良くて大幅縮小、最悪は清算となりそうです。イタリア政府もいつまでもアリタリアの問題を引きずるわけにはいかないでしょうから、今後数カ月で丸ごと引き受けてくれるスポンサーが現れなければ、次善の策として一部資産の譲渡に応じるしかないと思います。そうなると近距離路線はイージージェット、長距離路線はルフトハンザグループに売却、となるんでしょうか。

 

それにしても最近のルフトハンザはエアベルリンの一部資産を買収するなど、ここぞとばかりに攻めてきますね。欧州のレガシーキャリアはルフトハンザ、エールフランス、ブリティッシュエアウェイズの三強が中心ですが、その中でもLCC事業でも成功を収めているルフトハンザは頭一つ抜け出ている感があります。

www.traicy.com

 

しかし部分的とは言えアリタリアの買収がルフトハンザの思惑通りに行くとは限りません。相手はエディハドのリストラ案を潰して会社も潰したアリタリアの組合。この組合にリストラを呑ませるのは至難の技ですし、再建が進まずに二次破綻してしまう可能性もあります。事実エディハド航空はアリタリア再建に失敗したことで多額の出資金を失い、会社の経営が悪化してCEOが退任に追い込まれました。この会社の再建は一筋縄ではいかなさそうです・・・

エアアジア・ジャパン就航(4年ぶり2度目、2年遅れ)

就航が延びに延びまくっていた新生エアアジア・ジャパンですが、ようやく10月30日に就航になりそうです。

 

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当初は2015年夏ダイヤでの就航を目指し、10月には国土交通省の航空運送事業の許可を得ましたが、その後の就航予定は4回も延期。下記の記事によると相次ぐ経営陣の辞任で航空業界に明るい人材が去り、航空局の検査に支障が出ているのが原因のようです。もっとも、エアアジア本体が「航空輸送事業許可さえ出ればすぐにでも飛ばせる」と、日本の検査体制を甘く考えていたのも原因ですが。

前回の失敗は合弁相手のANAとの見解の相違でしたが、新会社の迷走も日本のやり方で時間をかけて就航準備を進めようとした日本人経営者と、エアアジア本体と同じビジネスモデルを要求し、スピードを求めたエアアジア側との対立が原因なんじゃないかと思います。

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さらに言えば「インターネット直販でコスト削減し、格安運賃を提供」というエアアジアのビジネスモデルが日本で受け入れられるかも微妙です。和製LCCの中で最も成功したピーチは日本人に合わせたサービスとブランディングを行い、24時間運用可能な関空を拠点にしたことで遅延や欠航リスクを抑えた事で顧客の支持を得ました。バニラエアはリゾート路線を重視した路線展開を行い、春秋航空日本も本家春秋航空とは異なるブランディングで中国色を極力薄め、日本市場に溶け込もうとしています。

これに対してジェットスタージャパンは当初は最低価格保証をぶち上げて価格重視路線を取りましたが、その後数年間は数十億単位の赤字を出し続けました。現在は他社と競合する路線を避け、サービス面でも日本市場に合わせたものにシフトしつつあるなど、価格一辺倒ではなくなってきました。つまり、日本のLCC各社は多かれ少なかれ日本市場に合わせたサービスを提供しようと模索しており、それぞれリピーター客確保の為に価格以外の独自性を出そうとしています。

 

今のところまだ正式なアナウンスがないので具体的なサービス内容も明らかにはなっていませんが、これまでの経緯を考えると恐らく本国と同じようなビジネスモデルで来るのではないかと思います。5年前ならともかく、一通りの路線にLCCが飛び交い、ジェットスターが中部空港を拠点化している今となっては単なる価格の安さだけではもうお客は飛びつかないでしょう。エアアジアを積極的に選択するような強い動機付けが必要になってくると思いますが、果たして新生エアアジア・ジャパンはそれだけの魅力を持つ航空会社になれるのか。ただでさえ就航が2年遅れで先行する各社とは大きな差がついてしまっているだけに、何かしらの仕掛けがないと就航後も苦戦を強いられるのではないでしょうか。