前回の登録記号と順番が逆になりましたが、今回はYouTube限定でアップした、ボーイング757の後継機を巡る航空会社とボーイング、ボーイングとエアバスの攻防について取り上げました。
迷旅客機列伝「~帯に短したすきに長し?~ボーイング757後釜戦争」
動画内ではエアバスA320neoの新しい派生型であるA321LRの販売攻勢と、それに対抗するボーイングの新型機構想、ボーイング797の開発計画に触れて終わりました。今後は757の後継のみならず、単通路機と長距離中型機の間の空白地帯を巡るボーイングとエアバスの陣取り合戦が激化すると思われますが、個人的に気になるのはこれらの機種が日本の航空会社に納入される可能性があるかどうか。今後日本の航空会社がこれらの機種を買う可能性があるか、それぞれ考えてみました。
・日本の航空会社がエアバスA321LRを買う可能性
これに関しては先日のピーチとバニラの統合のニュースの際、統合後のビジョンの一つとして「中距離国際線への進出」を掲げており、その機材としてA321LRが有力視されています。下記の記事でも書かれている通り、中距離路線用の機材には空席リスクのある大型機ではなく、今のA320と座席数がそう変わらない航続距離の伸びた単通路機が最有力候補となっていますが、ボーイング737MAXは航続距離がそこまで長くないことや、現在ピーチとバニラが使用しているA320との共通性を考えるとA321LR一択になりそうです。
さらにジェットスタージャパンについても、本体がA321LRを発注した事や、ピーチやバニラと同じくA320を主力機としていること、そして新生ピーチに対抗して中距離国際線に進出する可能性があることを考えると、A321LRを発注する可能性は十分に考えます。
しかし、それ以外の航空会社がA321LRを買う可能性は低そうです。ANA本体はA321neoを順次導入していますが、今のところは国内線専用。仮に国際線に投入したとしてもA321LRが必要な路線は767や787クラスの機材じゃないと間に合いませんし、地方発の長距離路線を開拓する気はANAにはないでしょう。増してやA320シリーズの就航経験がなく、これ以上機種を増やす気のないJALがA321LRに食指を伸ばす可能性はゼロに近いです。とは言え、近い将来JAナンバーのA321LRを見る可能性は高いと思います。
・日本の航空会社がボーイング797を買う可能性
これについてはボーイング797が単通路機になるか、双通路機になるかで予測は変わってきますが、ここでは可能性の高い双通路機として開発された場合でお話しします。短通路機だったら737MAXとかぶりますし、A320neoとの優位性もあまりないですからね。
双通路機になった場合、恐らく2-3-2のアブレストになると思いますが、このレイアウトで真っ先に思いつくのがボーイング767。全盛期は過ぎたとはいえ、JALもANAもまだ数十機単位の767を保有しており、国内線やアジア路線、ホノルル線などに投入していますが、90年代に納入された機体は退役が進んでいるのもまた事実。いずれは代替機を考える必要がありますが、787は一回り大きい上に長距離路線用として開発された機体であり、767の置き換え用としては少々オーバースペックです。
797のサイズが今の767に近いものとなれば、座席数、航続距離ともに今のANAとJALの767の運用範囲に合致しますし、797が就航を目指す2025年頃には2000年代に納入された767の更新時期を迎えますから、代替用としてJALやANAが797に食指を伸ばす可能性は十分考えられます。他にも767を使用するエアドゥがANAと歩調を合わせて購入する可能性も考えられますし、スカイマークも737よりも大きい機材が必要になった場合、797を選択肢に入れる可能性も十分あります。今後、797のスペックが767に近いものであれば、日本の航空会社が雪崩を打って発注する可能性は高いと思いますし、787のように日本のメーカーも一定数分担すれば、猶更発注の可能性は高まるのではないでしょうか。
もっとも、797が単通路機として開発され、757に近いスペックになった場合は逆に発注する航空会社はないかもしれません。そういう意味では797のローンチ時の最終スペックが、今後日本の航空会社が797を発注するか否かの分かれ道と言えるかもしれません。