〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

車内販売を縮小・簡素化するJR東日本と充実させる東海道・山陽新幹線。正しいのはどっちだろう?

5月28日にJR東日本から6月末でホットコーヒーの販売と北陸新幹線での弁当・デザート・お土産類の販売終了がアナウンスされました。3月のダイヤ改正での縮小に続き、またしてもJR東日本の車内販売は縮小することになります。

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trafficnews.jp

 

 前回の車内販売縮小時の考察についてはこちらの記事も参考にして下さい。機内販売が充実する傾向にある航空業界との対比も書いています。

www.meihokuriku-alps.com

 

 

前回の縮小から3か月程度での更なる縮小は正直予想外でしたが、北陸新幹線の場合は乗り入れ先のJR西日本との調整があったから先延ばしにされていただけなのかも知れません。いずれにしろ、これでJR東日本の車内販売から駅弁やデザート類が消え、販売品目はソフトドリンク、アルコール類、お菓子類、つまみ類のみとなります。

 

これまで私は車内販売の縮小は駅ナカ設備の充実による車内販売の売り上げ減少と人手不足が原因であり、時代の流れで仕方ないものと考えてきましたが、今回のJR東日本の更なる車内販売の縮小を見ていると、JR東日本の車内販売自体への意欲も問題なのではないかと思うようになってきました。

と言うのも弁当の場合は賞味期限が短く販売可能時間に制約がある、アイスは冷凍設備が必要など手間がかかる理由がある上に売り上げは減っているので納得はできますが、ホットコーヒーに関しては朝の時間帯を中心に売り上げの高かった人気商品。確かに揺れる車内でコーヒーを注ぐ手間がかかったり、弁当同様販売可能時間に制約があるなど管理しずらい面もありますが、人気商品を「手間がかかるから」と言う理由で無くし、残った商品もコンビニで調達しやすいドリンク類や乾きものだけと言うのはどうもやる気がなさすぎるように思えます。

 

そのやる気のなさを紐解く鍵は下記の記事にありました。記事内ではホットコーヒー廃止の理由を7月1日から事業を開始する「JR東日本サービスクリエーション」にあるとし、グランクラスやグリーン車でのアテンダント業務や車内販売業務、案内業務を同社に集約する際、アテンダントに車内販売業務を兼任させるから車内販売を簡素化させるのでは?という予想をしています。このタイミングでの終了を考えると、結構的を得ているのでは?と思います。

 

tabiris.com

 

最近のJR東日本は運転士と車掌の名称を来年から「乗務係」に統一して運転士や車掌の登用試験も無くす方針を打ち出したり、将来の新幹線の自動運転を目指すなど人的な省力化に力を入れているように感じます。今回の車内販売の省力化もその一環と考えれば辻褄が合いますが、一方では車内販売の売り上げ増加の工夫を諦め、簡単に調達できて販売の手間もリスクもない商品だけにしたとも取れます。

もっと言えば残った品目こそ「コンビニでも簡単に調達できる商品」しかないので、機内販売で見られるような「オリジナル商品の販売で購買意欲を掻き立て、特別感を演出する」ことを自ら放棄したようなもの。今のままでは恐らくそう遠くない将来、JR東日本の車内販売自体が「販売に従事するアテンダントの負担を軽減する為」廃止になり、アテンダント自体も「ご利用のお客様が少ないため総合的に判断して」廃止にするんじゃないかとさえ思います。

必要のないサービスの簡素化は必要な事なのかも知れませんが、売り上げの見込めるホットコーヒーの販売中止は流石に「簡素化しすぎ」であり、安易な縮小を続けて顧客ニーズを汲み取る努力を怠れば、いずれ車内販売どころかJR東日本が市場から見限られ、かつての国鉄のような客離れを招くかも知れません。今回の決定がその最初の兆候でなければいいのですが・・・

 

 

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その一方で東海道・山陽新幹線では今のところホットコーヒーが消える気配はありません。JR東海は2018年9月に車内販売のオリジナルコーヒー「AROMA EXPRESS CAFE」をリニューアルし、今年の5月16日からは車内販売のスイーツに「メゾンカイザー」や「オーボンヴュータン」のフィナンシェやクッキーを投入してコーヒーとのセット割引を行うなどテコ入れを続けています。さらに静岡県とのコラボ商品やプレミアムモルツの「神泡セット」を期間限定で販売するなど、JR東日本に比べると車内販売の充実に積極的です。

山陽新幹線を運行するJR西日本も車内販売には積極的です。こちらも期間限定で沿線地域の名物やお土産を販売する「走る日本市」フェアを定期的に行ったり、新幹線グッズやみそ汁・スープ類の販売も行うなどかなり力を入れており、JR東日本とは対照的。ひょっとしたら、北陸新幹線の車内販売終了が3か月遅くなったのもJR西日本が車内販売の存続を求めて抵抗したからかも・・・?

 

こうしてみると同じ新幹線でもJR東日本が主体的になる東北・北陸・上越新幹線系統は車内販売の省力化・簡素化を進め、JR東海の影響が強い東海道・山陽新幹線系統は限定商品や商品ラインナップのブラッシュアップで車内販売を充実させる方向に分かれていることが分かります。(6/3追記:九州新幹線は今年3月のダイヤ改正で車内販売の営業を終了。直通列車も車内販売は新大阪〜博多間のみ)

一見するとグランクラスを設けているJR東日本の方が社内サービスに積極的なように見えますが、車内販売の面から見ればむしろJR東海や西日本の山陽新幹線区間の方が充実させる傾向にありますし、グリーン車のサービスにしてもJR東海はおしぼりサービスを続ける一方、JR東日本はグリーン車でのおしぼりやウェルカムドリンクのサービスを取りやめるなど、グランクラス以外ではむしろJR東海の方が積極的です。

 

無論、簡素化させたJR東日本にも言い分はあると思いますし、JR東海や西日本でも在来線特急では車内販売のサービスを取りやめていますので、一概にJR東日本だけを悪者にするつもりはありません。しかし、利用者としては主力の新幹線でも簡素化一辺倒のJR東日本よりも、収益の柱である新幹線だけでも何とかしてサービスを維持・充実させようとテコ入れしてくれるJR東海や西日本に好感を持ちますし、応援したくなってきます。私の場合東海道・山陽新幹線を使う機会はそう多くはないですが、今度乗ってみたら車内販売を維持してもらうためにも是非使ってみたいと思います。サービスを使う人がいなければ今は積極的なJR東海などもいずれ簡素化や車販取りやめに動くかも知れませんしね。

 

そして、JR東日本が再び車内販売を充実させる日は果たして来るのでしょうか・・・

 

 

↓一時期話題になった「カリスマ販売員」はJR東日本に多かったんですよね・・・いまの商品ラインナップでは「またあなたから買いたい!けど買いたいものがない・・・」と言われるんじゃないでしょうか。

 

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