〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

もし北海道新幹線が札幌~新函館北斗間を先に作っていたら

以前、苦境が続く北海道新幹線と好調を維持する北陸新幹線の結果の差について記事を書いたことがあります。正直、内容については賛否両論だったかと思いますが、その後ふと思った事があります。

 

「もし道内区間を先に建設した場合、ひょっとしたら状況は全然違っていたのではないだろうか」

 

実際のところ新函館~札幌間のルートが正式に決まったのは1998年ですし、新青森~新函館北斗間の着工が決まった2005年の時点でもまだ地質調査すら行われていない状態でしたから、現実にはあり得ない話です。しかし九州新幹線が中途半端ではあるけど時間短縮効果の大きい新八代〜鹿児島中央間を先に完成させて大幅な時間短縮を実現させた例があるように、北海道新幹線でも道内区間を先に着工させて速達化を図る、という選択肢はあったはず。今回はもし札幌〜新函館北斗間を開業させていたらどうなっていたかを考察したいと思います。まあ、戯言程度に読み流して下さい。

 

↓以前の記事はこちら。

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 1.所要時間

札幌〜新函館北斗間の距離は約211.5km。仮に整備新幹線の最高速度260km/hで運転されたとしたら所要時間は1時間10分前後で走破する事になり、新函館北斗〜函館間の「はこだてライナー」の最短所要時間15分と新函館北斗駅の乗り換え時間を考慮しても、札幌〜函館間は1時間30分台で結ばれます。

現在の在来線特急「スーパー北斗」の所要時間3時間30分台、かつての最速所要時間2時間59分と比較しても所要時間は半分以下となり、相当なインパクトや時間短縮効果が見込めます。この所要時間なら札幌〜函館の日帰りも余裕で可能になる上に観光・ビジネス両面での需要増加が見込めます。後述する需要予測でもプラスに働くでしょう。

 

2.本数と車両編成

現在の札幌〜函館間の特急は1日12往復、基本7両編成ですが多客期には増結されます。もし新幹線ができれば1時間に1本程度は設定されると思いますので少なく見積もっても1日15〜16往復は設定されるのではと思います。需要動向によっては増発の可能性も十分ありそうです。

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車両については自社開発は難しいかと思いますので、開通時期にもよりますが将来の直通を見越してJR東日本のE2系かE5系ベースの車両となるのではないでしょうか。車両数も全線開業までは8両編成で運転、編成数は上述の運転本数なら予備も含めて5〜6編成あれば十分でしょう。

 

3.需要予測と採算性

札幌〜函館間の旅客流動は2010年で300万人弱。うち鉄道のシェアは37.3%で、輸送人員は100万人強です。北海道新幹線が開業すればこの分に加え航空利用の人員約10万人やマイカー利用分の一部が転移するものと思われます。

また、新幹線の沿線自治体のうち、小樽近辺からの需要も新たに加わる事になり、札幌〜小樽間の通勤利用や時間短縮による新たな需要創出も見込めますので、少なく見積もっても300万人程度の利用は見込めるのではないかと思います。そこからどれだけ利用客を伸ばせるかは道庁と沿線自治体、JR北海道のテコ入れ次第ですが、大都市の札幌都市圏を抱えている分、青森〜新函館北斗よりは伸び代は見込めるのではないでしょうか。

 

次に採算性ですが、青函トンネルが無い分維持費は少ないかと思いますが、それでも黒字化に至るかは微妙です。もっとも、東京直通は部分開業の時点では考慮する必要はないので、車両数や設備面などで多少簡素化してコストを抑えるという方法もあります。この点でも新青森〜新函館北斗間よりは有利な点です。採算面では楽観視はできないものの、やり方次第では十分黒字には持って行けるのではないでしょうか。

 

また、間接的な効果として拓銀破綻などで冷え切っていた北海道経済に大きな経済波及効果をもたらします。新幹線建設に伴う建設需要の増大や、開業後の観光需要増大などで道南はもちろん、道央地域全体に経済波及効果が見込め、道北・道東地域にも多少なりとも恩恵はあるかと思います。

 

4.新青森~新函館北斗間の建設時期

札幌〜新函館北斗間が部分開業すれば北海道民、特に札幌都市圏の道民には新幹線の速達性は大きなインパクトを与えます。何より目の前に新幹線が現れ、速達化の恩恵を受ける事が出来れば「東京直通」への期待感はより高まるのではないでしょうか。

恐らく新青森〜新函館北斗間の建設に関しても誘致運動は今よりも盛り上がり、着工も史実の新函館北斗〜札幌間よりも早かったかも知れません。国も北海道新幹線の中途半端な状態を解消するべく、着工の優先順位を上げた可能性もありますので、北海道新幹線の全線開業も史実より早まったかも・・・?

 

但し、その場合でも青函トンネルの貨物列車共用問題は残っています。ひょっとしたら部分開業した後の方が直通方法などで揉めて着工が遅れたかも知れませんので、これについては先行開業も善し悪しかも?

 

以上、北海道新幹線の札幌〜新函館北斗間を先に開業させた場合の予想について考察してみました。東京直通は遠のきますが、道内区間を先に開業させた方が北海道にとってはプラス面が大きかったのではないでしょうか。JR北海道の経営的にも道内区間の方が経営改善に寄与した可能性は大きかったと思います。着工までのハードルは道内区間を先にやった方が高いと思いますが、こっちを先に開業させた方が後々プラスだったかも知れません。まあ、今となってはもうどうしようもありませんが・・・

 

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