〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

あえて誰も引き受けないアリタリア航空を丸ごと引き受けてくれそうな会社を探してみた。

現在、再建スポンサー待ちのアリタリア航空ですが、今のところ丸ごと引き受けてくれそうなスポンサーはなく、一番可能性のありそうなルフトハンザも一部事業の引き受けだけのようです。KLM、エールフランス、エティハドと名だたる航空会社が支援に手を挙げながらことごとく裏切ってきたアリタリアのことなので、この結果は当然と言えば当然なのですが、本当にもうアリタリアを全面的に支援してくれるスポンサーはいないのか、考えてみました。

 

候補1:過去のスポンサーがもう一回手を挙げる

まあ、こう書きましたけど動画を作るにあたりアリタリアの事を調べ、過去のスポンサーの末路と被害額を知っている私としては

 

絶対にない

 

と断言してもいいくらい可能性はないと思います。少なくとも数億ユーロの出資金を溶かし、自分の会社にもダメージを与えたにも関わらず、出資の見返りのはずだった合理化や改革ができず、提携の旨味も少なかったアリタリアにもう一度出資しようとはしないでしょう。もしそれでもアリタリアを丸抱えする気なら相当学習能力がない経営陣ですし、実際に出資する前に株主から解任動議を出されてクビを飛ばされると思います。

 

候補2:ルフトハンザの気が変わってアリタリア丸ごと引受けに変更

過去にはエアワンへの出資やルフトハンザ・イタリアの設立でイタリア市場に食い込もうとしていましたので、アリタリアを丸ごと買収して一気にイタリア市場を取り込もう、と考えても不思議ではありません。 

 

しかし断言してもいい、これも絶対にありません。

 

ルフトハンザは傘下にスイスインターナショナルエアラインズやオーストリア航空、ベルギーのブリュッセル航空を抱え、LCC部門としてユーロウイングスを保有して成功を収めるなど、手堅い投資で経営規模を拡大させてきた会社。航空会社の出資に対しては将来性やブランド力、ネットワークの補完性などを慎重に検討している感がありますし、ブリティッシュ・ミッドランド航空のように一度は買収しても赤字続きで改善の見込みがないと判断すれば容赦なく売り払います。

アリタリアに黒字転換の可能性があると判断すれば丸ごと買収に切り替えると思いますが、今までのアリタリアの所業や豊富なオイルマネーを抱えるエティハドですら再建に失敗していることを考えると、投資判断にはシビアなルフトハンザがギャンブル的な投資(それも成功率がかなり低い)をするとは考えにくいです。エアベルリンの一部資産買い取りでお金を使ってますしね。

 

候補3:エミレーツ航空

いきなり大型旅客機を大量発注したり、世界中のプロスポーツチームや大会のスポンサーになり、巨額の資金を提供するなど、航空業界内でも「何をするかわからない航空会社」と言われるドバイのエミレーツ航空。ひょっとしたら突然アリタリアの出資に名乗りを上げる・・・

 

なんてことはない、絶対にない。

基本的にエミレーツは自力でネットワークを構築しており、航空連合にも加盟はしていません。過去にもスリランカ航空へ出資したことがある程度で、マイレージサービスも独自のもの。提携についてもロンドンーシドニー線の経由地をドバイに変更したカンタス航空のように、自社のネットワーク拡大に貢献できる相手となら提携をするでしょうが、アリタリアにはそれだけのメリットは見いだせません。つまり、独立独歩のエミレーツにとってアリタリアの出資にはメリットはなく、それどころかすぐ隣の会社が大火傷したデンジャラスエアラインに出資してお金をドブに捨てるような行為はしないでしょう。

 

候補4:ライアンエアーやノルウェーエアシャトルなどの欧州LCC

このうちライアンエアーは実際に買収に手を上げましたし、アリタリアのスポンサー候補の中にはイージージェットも含まれています。が、ライアンエアーはパイロット不足問題で買収どころではないでしょうし、ノルウェーエアシャトルも自社で長距離路線を開拓する予定なので、アリタリアには食指を伸ばさないでしょう。イージージェットもエアベルリンの時同様、欲しいのはイタリア発着の近距離路線の権益だけだと思うので、一部資産の買取ならともかく、欧州LCCが高コストのアリタリアを買う可能性はないと思います。

 

候補5:JALやANAが買うとか・・・

 

ないですね。

 

JALもANAも国際線の主力はアジア路線と北米路線であり、アジアー北米の乗り継ぎ需要。欧州路線は増えてはいるものの、基本的にはアジア方面からの乗り継ぎはあまり見込めないので、それぞれのアライアンスのハブ空港への路線が中心です。イタリアは今でも観光需要は大きいので旅客は見込めますが、提携先の会社のコードシェア便で事足りるので、わざわざアリタリアに出資して爆弾抱えるメリットは全くありません。

 

・・・個人的にはJALあたりがローマ線復活してくれないかな?と思うんですが、これだって別にアリタリアと手を組む必要なんてないですしね。

 

候補6:中国系の会社

正直、今アリタリアを丸ごと買う可能性のある会社となるとこの辺りしか思いつかないです。・・・と言っても上記の会社よりは可能性がある程度ですが。

ですが、中国系の航空会社って意外と海外航空会社の買収はやってないんですよね。中国市場自体が広大で、十分食べていけるだけの需要がありますから、エティハド航空のように規模拡大のために他の航空会社の買収に必死になる必要がないからでしょうか。そう考えるとアリタリアを買収する積極的な理由が見つかりません。少なくとも旧民航系の中国国際航空、東方航空、南方航空の3社はアライアンス提携先の会社の路線を使えばいいわけですから、アリタリアには食指を伸ばさないでしょう。

 

可能性があるとすれば、旧民航系に続く第4のグループ、海南航空ではないでしょうか。海南航空はどこのアライアンスにも属しておらず、提携相手の一つであったエアベルリンが破産したため、ヨーロッパでの提携先がない状態です。業績の方も今年は減益ですが、基本的には拡大傾向にあり、近年ではニューヨークやラスベガス、シドニーなどの長距離路線を拡大しています。

どこの航空連合にも属さない独立系、拡大傾向、民航系会社との差、提携先の破綻で空白の欧州地域・・・アリタリアに手を伸ばす条件としては十分じゃないでしょうか?

 

しかしこの海南航空、提携先の会社の一つがあのエティハド航空なので、自分の提携相手が大火傷を負ったアリタリアに果たして手を出すかな?という気がします。それでも私の考える限りでは手を出す可能性があるとすればここくらいしか思いつきません。ただ、その場合でもEU外の航空会社からの出資ですから、エティハド同様、揉めることになりそうですから、実際には手を上げる可能性はかなり低いかなと思います。

 

 他にもアメリカ系の会社、カタール航空、アエロフロート、シンガポール航空など出資できる可能性のある会社も考えてみましたが、アリタリアの規模が大きすぎる上に赤字額も大きいので、多分手を出しそうな会社はないように思います。大企業は大きすぎて潰せない、とよく言われますが、アリタリアの場合は「大きすぎて買い手がつかない」といったところでしょうか。考えれば考えるほど、アリタリアが丸ごと生き残れる可能性は低いです・・・