〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

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ANAのA320が「LCC仕様」の座席配置に?どうしてそうなった

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一昨日あたりからTwitterなどでANAのHPや予約スケジュールなどで「座席数180席」のA320が出現したと話題になっています。機種名に「32G」とついている便が問題の機材のようで、昨日ANAの公式HPの機材一覧にも出て来ました。

togetter.com

 

で、問題の機材のシートマップを見て見ると、確かに座席数180席でプレミアムクラスの設定は当然なし。説明欄には「当機材は180席仕様の為他のA320機材より座席間隔が狭くなっております」とわざわざ注意書きもされていますし、機内WiFiもなし。この座席数と言い、シートマップのレイアウトと言い、LCCのA320と同じ座席配置ですね・・・

www.ana.co.jp

 

 この機材の出どころはどこなのでしょうか?少なくとも既存のA320を改修したわけでないのは間違いありません。今ANAに残っているA320は機齢20年を超えており、間もなく退役を迎える機体ですから今更改修なんてしないでしょうし、エンジンの形式も違います。

種明かしをするとこの機材は系列LCCであるピーチかバニラ、恐らくバニラの機体である可能性が高いと思います。現在、バニラエア所属のA320は順次ピーチ仕様への改修を進めており、改修初号機のJA04VAがピーチ仕様になって就航した他、JA06VA、JA09VA、JA13VAの3機が改修の為一時抹消中。最終的にはバニラ所属の15機のうち12機がピーチ仕様に改修されますが、言い換えれば残りの3機は改修されず、ピーチには行かないという事になります。

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この他にもピーチの初号機JA801Pが登録抹消されていますが、こちらは既にエアバスに所属が移っており、登録記号も変わっていますから、この機体がANAに来るとは思えません。後述しますが「32G」の機体がアサインされている便数を考えると2~3機程度で運用しないと廻せないので、やはりピーチ行きにならない元バニラ機材がバニラの運航終了後、ANA本体に来ると考えるのが自然なようです。

www.aviationwire.jp

 

では、実際にどの路線に180席仕様のA320が投入されるのでしょうか?1月6日以降のダイヤを見てみると以下の3路線3往復が該当します。

 

羽田〜八丈島、岩国、佐賀 各1往復

 

また、来年3月以降のダイヤで探して見ると以下の5路線6往復が該当しました。

 

羽田~庄内 2往復

羽田~八丈島 1往復

羽田~富山 1往復

羽田~能登 1往復

羽田~石見 1往復

 

見事にANAの単独運航路線ばかりですね。しかし庄内や富山はJRとの競合があるし、能登は地元自治体が搭乗率補償まで付けて集客に協力してるのにこんな機材入れたら逆効果になる気がするのですが・・・

JALやSKYなど他社競合がある路線に詰め込み仕様のA320を入れないあたり、ANAもこの機材が世間でどう思われるか分かっているような気がします。実際、ツイッターを見ててもこの機材に対する評価は散々で、早くもこの機材を避けて乗ろうと言う声があるほどの「嫌われ機材」になりつつあります。元バニラの機材と言う事はオーディオ設備もないでしょうから、「ハズレ機材」と思われても仕方ないのではないでしょうか。

 

それにしても、なぜANAは自らの評価を下げかねない「詰め込み仕様」の機材を入れようとしたのでしょうか?恐らくですが、スペースジェットの度重なる納入遅延でANAの機材繰りが深刻化しているのではないでしょうか?今までは737-500やA320といった老朽機の退役先延ばしで何とかしのいできましたが、737-500は来年の退役がアナウンスされていますし、A320も10月以降は別の機材に代わる事が多くなっていますので、引き延ばしはそろそろ限界になりつつあります。恐らくこれらの機材の穴は737-700型で埋めることになると思いますが、それでもギリギリですし、来年春には羽田空港の発着枠増加で更に多くの飛行機が必要になります。

しかし新造機を買うにも納入までに数年単位の時間がかかりますし、中古機もそう簡単に出物が出るわけでもない。リース機だってA320クラスの旅客機は引き合いが多く、条件の良い機材は簡単には出て来ません。そこに出てきたのがピーチに移籍しないバニラエアのA320。バニラの機材の中にはANA本体が発注した機材も多いですし、手続きの面でも比較的移籍が容易にできるのではと思うので、繋ぎと割り切ってANA本体で飛ばそうとするのではないかと思います。長期的な使用を前提にするなら機体の改修をするでしょうから、この180席仕様のA320を飛ばすのは精々1〜2年程度ではないでしょうか。

 

切羽詰まった事情があるのだと思いますが、そんな事情を知らない一般の利用者にとってはサービス低下としか映らないでしょうし、やはり改修せずに使うのはブランドイメージ上良いとは言えません。また、競合会社のないANA単独路線に入れると言うやり方も余り共感を得られる方法とは言えないでしょう。運賃も他の機材と変わらないみたいですし、悪い意味で話題になって顧客離れに繋がらないと良いんですが・・・

 

 

【10月26日追記】

180席仕様のA320投入についての理由や背景などを書いた記事が出ました。やはりANAがリースしてバニラにサブリースしていた3機を転用するようです。投入の理由としてはボーイング787のエンジン問題て他の機材の稼働率が上がった結果退役が早まり、一時的に国内線用機材が不足する事、また、現在のA320と同じ166席仕様に改修した場合、設計や配線変更など大掛かりな改造が必要となり、当局の承認などに掛かる期間などを考えると2年近くかかるそうで、路線維持やオペレーションの安定を優先してそのまま投入することを決めたそうです。

ANAにとっても今回の180席仕様のA320投入は「仕方なく」の部分が大きく、背に腹は代えられない苦肉の策だったようです。787の納入遅れ以来、どうもANAの機材繰りは綱渡りを強いられることが多いようですね・・・機材運がなさすぎると言うか。

 

それでもダッシュ8-400型と同様のWiFi活用のサービス(インターネット接続なし、機内コンテンツの利用のみ)を導入するなど、できる限りサービス格差は埋めようとしています。とは言え、事情を知らない人も多いと思うので、実際に就航したら色々と言われるのではないかと思います。

180席仕様のA320の運航期間は1年程度だそうで、その後の動向は分かりませんがリースバックされるものと思われます。まあ、あまり長期間運用すると流石に色々言われるでしょうから、繋ぎと割り切って一年間付き合うしかなさそうです。羽田~富山線にも投入が予定されているそうなので、恐いもの見たさで一度乗ってみようかな・・・

 

www.traicy.com

 

 

 

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