〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

エアアジア・ジャパン撤退決定・・・コロナ禍で「第3極」は厳しくなる?

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10月5日、マレーシアのLCC大手・エアアジアの日本法人である「エアアジア・ジャパン」は12月5日付で全4路線を廃止し、日本路線から撤退すると正式に発表しました。既に10月1日~24日の間の全便運休が決まっていますが、運休期間を12月5日まで延長し、そのまま路線廃止にするようなので、9月の連休中に運航したのが「ラストフライト」になってしまうようです。

今後は予約済みのチケットの払い戻しや事業廃止に伴う債権者や株主に対する説明や事後処理、関係機関への廃止手続きなどの清算業務を行うことになり、従業員は一部を除き11月4日付で解雇されることになります。マレーシアやタイなど、海外から乗り入れるエアアジアグループの路線については今のところ撤退の話はなく、出入国規制が緩和され次第再開するとしていますので、エアアジア自体が日本市場から撤退するわけではありませんが、新型コロナウイルスの影響で日本の航空会社が消える初のケースとなるだけに、大きく報道されました。

 

www.aviationwire.jp

 

newsroom.airasia.com

 

https://support.airasia.com/s/article/AirAsia-Japan-Announcement?language=en_GB

 

 

エアアジア・ジャパンの生い立ちについては私のこちらの動画も参照してください。これ作った頃はこんな形で撤退するとは夢にも思いませんでした・・・

 


【日本最強の航空会社とアジア最強のLCCが組んだのに・・・】航空会社から学ぶこと 短命に終わった初代エアアジア・ジャパン

 


【郷に入ってもゴーイング・マイ・ウェイ】航空会社から学ぶこと 二代目エアアジア・ジャパン

 

エアアジア・ジャパンの撤退は直接的な原因は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う旅行需要の「蒸発」ですが、2度目の参入の際、許認可の遅れや安全体制の構築などに時間がかかって就航までに3年半もの時間を費やしてしまい、想定以上の累積赤字を抱えてのスタートだったのも撤退に影響を与えたと思います。これが足枷となって規模拡大や黒字化が大きく遅れ、2019年12月期の決算は47億円の赤字と売上高以上の赤字を出していました。薄利多売で回転率と搭乗率を上げないと利益が出ず、スケールメリットがものを言うLCCのビジネスモデルは今回のような事態ではレガシーキャリア以上に苦境に立たされる事になり、特に経営基盤が脆弱だったエアアジア・ジャパンは持ちこたえることができなかったでしょう。マレーシアのエアアジア本体でさえ赤字続きで追加融資が必要な状態で、エアアジア・ジャパンへの支援どころではないことを考えると、撤退はやむを得なかったと思います。

www.nikkei.com

 

さて、エアアジア・ジャパンの事業撤退は「コミューター会社を除けばANA・JALの出資や協力を全く受けていない航空会社が消える」という別の側面もあります。日本の航空会社は26社ありますが、実はその殆どがANAやJALから資本やコードシェア、整備面などで協力関係にあり、エアアジア・ジャパンのように大手2社の協力を全く受けていない会社の方が珍しいのです。

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エアドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーの3社はANAの出資を受けている上に予約システムもANAの「able」に統一し、コードシェアでANAに座席の一部を販売してもらっているなどANAへの依存度が高く、スカイマークもable導入こそ断って予約システムは自前のものを使うなど独立志向ですが、ANAの出資を受けています。また、IBEXエアラインズとオリエンタルエアブリッジはANAと、フジドリームエアラインズと天草エアラインはJALとコードシェアを行っており、機材面でも協力関係にあります。日本貨物航空も2005年に日本郵船が子会社化して一度はANAグループを離れましたが、2018年にANAと業務提携を行って再度関係を強化しており、日本の航空会社と関係がなさそうな春秋航空日本も2017年12月にJAL系列の会社に整備業務の一部を委託するなど、程度の差こそあれ大多数の会社はANAかJALのどちらかと繋がりを持っているのです。

エアアジア・ジャパンは日本の大手2社の影響を全く受けない希有な会社で、エアアジアグループの総帥であるトニー・フェルナンデス氏も大手2社の影響下にある日本のLCCや、日本市場の閉鎖性を度々非難してきましたが、エアアジアグループの経営悪化とコロナ禍で撤退に追い込まれてしまいました。

 

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エアアジア・ジャパンの撤退で現状、明確に「第三極」を目指している会社はスカイマークのみとなりましたが、そのスカイマークはANAの出資を受けるなどその影響を完全に排除したわけではありません。予定では今年にも東証一部への再上場申請をするはずでしたが、コロナ禍で取りやめになってしまいました。

再上場すれば上場に伴う株式売却益でANAに「恩を返す」形でANAの出資を引き上げることが可能だったかもしれませんが、現状では無理にANAとの関係を解消するよりも、今のまま安定株主として株を保有してもらい、つかず離れずの関係を維持した方が得策のように思います。本格的に「第三極」として独り立ちするのは航空需要が回復した後でもいいでしょう。

 

現状ではエアアジア・ジャパンの3度目の参入は望み薄であり、当面はANA・JALの大手2社を中心とした体制が維持されるものと思われます。しかし、世界各地でレガシー・LCCを問わず航空会社の破綻が続いている事を考えると、こういった非常時には競争の激しくない日本の航空業界の方が体力を温存できるのかも知れません。今は何とかこの難局を乗り切り、これ以上航空会社の撤退が起きないよう航空各社には踏ん張ってもらいたいですね。

 

 

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