2代目エアアジア・ジャパン関連でもう一つ。動画内で「愛知県に本拠を置く唯一の航空会社」と書きましたが、実際のところ、日本の航空会社の本社所在地はどのようになっているのでしょうか?
気になったのでまとめてみたのですが、意外や意外、思ったよりも東京に本社を置く会社は少なく、割と日本各地に散らばっています。今回はそんな日本の航空会社の本社所在地が置かれている場所とその理由を見ていきましょう。
・北海道・東北地方
・北海道
札幌市:エアドゥ、北海道エアシステム
これは当然と言えば当然ですね。「北海道の翼」の本社所在地が東京では興醒めですし、エアドゥの路線展開や設立経緯を考えると札幌に本社を置くのは当然と言えます。北海道エアシステムも路線の殆どは道内なので当然といえば当然。本州との往来は航空機への依存度が高い北海道ならではですね。
え?エアトランセ?はて何の事やら。
・関東地方
・東京都
港区:ANAホールディングス、日本貨物航空(本店)
品川区:日本航空
大田区:スカイマーク、ANAウィングス、エアージャパン(本社)
江東区:アイベックスエアラインズ
冒頭で「日本全国に散らばっている」と書きましたが、やはり日本の首都、大手2社を始めとして6社が本社を置いています。特に目立つのはLCC以外のANA系の航空会社が東京に本社を置いている事。JAL系の航空会社の本社が日本各地に散らばっているのとは対照的です。
意外だったのがIBEXエアラインズも本社を東京に置いていた事。ここの運行上の本拠地は仙台空港、路線的にも仙台、伊丹、中部が中心で羽田路線はゼロですから、東京に本社機能を置く必要性は薄いと思うのですが・・・親会社との兼ね合いでしょうか?
・千葉県
成田市:日本貨物航空(本社)、ジェットスタージャパン、バニラエア、春秋航空日本、エアージャパン(本店)
成田空港があるだけに、LCCを中心に本社を置く航空会社は結構多いです。日本貨物航空とエアージャパンは東京と成田の両方に本社機能を持つのが特徴的ですが、両者とも法人客主体の貨物航空がメインですから、荷主への営業拠点が東京、オペレーション拠点が成田と分けているのでしょうね。
・茨城県
竜ヶ崎市:新中央航空
ここも意外な組み合わせです。コミューター路線は調布飛行場が拠点なのでそちらに本社を置きそうなものですが、新中央航空は元々事業航空がメインの会社。事業航空部門の本拠地は茨城県の龍ヶ崎飛行場なので、会社的にはこちらに本拠地を置く方が理にかなっているという訳です。
・中部地方
・静岡県
静岡市:フジドリームエアラインズ
親会社が静岡の流通グループ・鈴与というのと、静岡空港からの路線開拓を目的に作られた会社ですからある意味納得。今でこそ路線的には名古屋空港が主体ですが、本社はあくまでも静岡というところにFDAの矜持が見られます。
・愛知県
常滑市:エアアジア・ジャパン
これは動画内でも触れたので説明不要ですね。ちなみに、過去に愛知県に本社を置いていたのは名古屋拠点のローカル線を運航していた中日本航空(1969年に定期航空事業をANAに譲渡。会社自体は事業航空会社として現在も存続)と、その中日本航空を含めた名鉄グループとANAの合弁会社、中日本エアラインサービス(2005年にANAの完全子会社「エアーセントラル」に改称後、ANAウイングスに吸収)がありました。
また、ジェイエアも一時期本社を名古屋空港に置いていた時期がありましたが、名古屋路線撤退と同時に本社を大阪に移転しました。
あと、オレンジカーゴという会社も名古屋にあったみたいですが、まあそれはそれ。
・関西地方
・大阪府
池田市:ジェイエア
田尻町:ピーチ・アビエーション
日本第二の都市圏であるにも関わらず、関西地方を本拠地にしているのは2社だけと少なめです。古くは西日本のローカル線が割当てられ、大阪拠点に路線を広げた極東航空と、飛行艇路線を飛ばし、近鉄も出資していた日東航空が大阪に本社を置いていましたが、いずれも他社との合併で消滅し、その後30年以上関西本社の航空会社はゼロになりました。
1997年、日本航空がJALエクスプレスを設立し、本社を伊丹空港に置いた事で久々に関西本社の会社が復活しました。当時のJALはボーイング737-400型を導入して大阪発着のローカル線を広げようとしていましたが、後発ゆえに営業面では苦戦していました。この為、低コスト運航の別会社を設立し、大阪発着の地方路線をJAL本体から移管して先行2社に対抗しようとします。
JALエクスプレスの客室乗務員は「スカイキャスト」と呼ばれ、本来の業務に加え機内清掃も行う事でコスト削減と折返し時間短縮による飛行機の稼働率上昇を狙ったものでした。当初は塗装もJAL本体とは別なものでしたが、JASとの合併後はJAL便の受託運航会社の色が強くなり、塗装もJAL本体と同じになりました。
その後JALエクスプレスは羽田発着路線の比率が高くなった事もあり、2011年10月に本社を羽田に移転。JALエクスプレスと入れ替わるように本社を移転したのがジェイエアでした。時を同じくして関空に本社を置いたのがピーチ。JALエクスプレスもジェイエアもJALグループの経営戦略と路線展開上、大阪に本社を置いているだけとも言えますが、ピーチの場合は本気で関西を拠点にした航空会社でしたので、そう言う意味ではピーチの方がより関西拠点の航空会社と言えるかも知れません。
ちなみにピーチの本社は関空にありますが、所在地は田尻町のエリアにあるため、日本の航空会社で唯一本社所在地が町にあると言う珍記録を持っています。
・中国・四国地方
すいません、現在は本当にないんです。但し、過去には広島本社の航空会社は存在していました。
1953年に設立され、1971年に日本国内航空と合併した東亜航空は広島に本社を置いており、建材メーカーの不二サッシが親会社でした。1956年に鹿児島~種子島線の開設を皮切りに定期航空事業に参入し、広島を拠点に西日本一帯にローカル線を飛ばしていました。1950年代に次々と作られたローカル線航空会社の中では一度も合併せずに単独で勢力を広げた会社でした。
しかし、航空業界の不況に伴う運輸省の「国際線は日航1社、国内線は日航と全日空の2社」という方針の元、東亜航空は提携相手であった全日空との合併を迫られます。渋々合併交渉のテーブルに着いたものの、合併比率を巡って全日空との交渉は決裂。そうしているうちに国内の航空需要が急回復し、各社とも業績は好転します。そこで日航への吸収を免れたい日本国内航空(東急系)が東亜航空に接近し、全日空との合併交渉が行き詰まっていた東亜航空も渡りに船とばかりにJDAとの合併に方針転換。第三の航空会社「東亜国内航空」誕生へとつながりましたが、存続会社は日本国内航空、本社も東京へと移り、広島、と言うか中四国を本拠地とする航空会社はなくなりました。
しかし、考えてみると羽田~中国・四国路線のうち四国は航空路線の依存度が高いドル箱路線なのに、未だにJALとANAの複占になっているのは不思議と言えば不思議。同じく航空路線への依存度が高い九州地区にスターフライヤーやソラシドエアと言った新規参入会社が相次いで設立され、大抵の羽田~九州路線に最低一社はJALとANA以外の会社が参入しているのとは対照的です。そのうち四国拠点の新規参入会社、できないもんですかねえ・・・
羽田発着枠の問題があるし設立するにも大金が必要だから難しいか。
・九州地方
・福岡県
北九州市:スターフライヤー
本社は東京にあると思われがちですが、元々スターフライヤーは2006年の新北九州空港開港時に就航した会社。今でも本社及び運航拠点は北九州にあります。
が、九州の中心であるにも関わらず、福岡市に本社を置く航空会社は一つもありません。過去にはハーレクインエア、エアーネクスト、壱岐国際航空が福岡市を本社にしていましたが、いずれも長続きしませんでした。この為「福岡市が本社の航空会社は短命」と言うジンクスができてしまいました。あと設立前に潰れた会社が一つありましたが触れないでおきます。
・長崎県
大村市:オリエンタルエアブリッジ
・熊本県
天草市:天草エアライン
これら2社は第三セクターの離島路線コミューター会社という共通点がありますが、オリエンタルエアブリッジは元は長崎航空と言う60年近い歴史のある老舗、天草エアラインは2000年の天草飛行場開港に合わせて作られた新興企業と言う違いがあります。
・宮崎県
宮崎市:ソラシドエア
ここも九州・沖縄に路線網を広げている事もあって東京本社と勘違いされがちですが、スターフライヤー同様、設立当初は宮崎ー羽田線の参入を目指して宮崎の政財界が中心となって立ち上げられた会社でした。現在も宮崎交通を始め宮崎県内の企業が大株主です。
・鹿児島県
霧島市:日本エアコミューター
鹿児島の離島路線を結ぶために当時の東亜国内航空と奄美群島の自治体が中心となって設立された会社。一時期西日本全体に路線網が広がりましたが、資本的にはJALと鹿児島県の第三セクターと言う立場は変わりませんでした。
近年では本州の地方路線の大半をジェイエアに任せ、自らは本来の立ち位置であった鹿児島の離島路線に回帰しつつあります。
・沖縄地方
・沖縄県
那覇市:日本トランスオーシャン航空、琉球エアコミューター
会社設立以来、一貫して沖縄の翼として飛び続けたJTAとRAC(一時期名古屋〜山形線を飛ばしていた事がありますけど)JALグループではありますが、資本的には沖縄の自治体や企業も出資しています。本土と文化の違う沖縄県に進出する大手企業は地元を知り尽くしている地場企業と組むケースが多く、JALがJTAを別会社のままにしているのもこうした沖縄の特性を考慮しての事でしょう。
ちなみにレキオス航空と言う会社もありましたが飛ぶ前に会社が飛んでしまいましたね。
以上、日本の航空会社の本社所在地を見てきました。規制が強かった90年代までの航空業界は東京本社の会社が大半でしたが、大手のグループ会社が細分化され、新規参入会社も増えた今では航空会社のあり方も多様化しています。
東京一極集中と言われて久しいですが、少なくとも航空会社に関してはそれなりに分散している感じです。地方に本社を置く航空会社が増えれば地域の雇用や経済にも好影響を与えますし、税収面でも本社を置く自治体に地方法人税が入ります。今後も地方に本社を置く航空会社は増えていくと思いますので、そういった点にも注目して飛行機に乗るのも面白いかも知れません。