〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

ボーイング、737MAXのシステム不具合を認める。運航再開はいつになるのか、そもそも再開できるのか。

 3月から続いているエチオピア航空の墜落事故に始まる737MAXの運航停止問題。4月に入り、おおよその事故原因が判明し、生産体制にも大きな動きがありました。これまでの経緯については過去記事もご参照ください。

 

www.meihokuriku-alps.com

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4月4日、エチオピア政府はエチオピア航空302便の墜落事故について、暫定の調査報告書を公表しました。それによるとパイロットの操縦はボーイングが推奨し、FAA(アメリカ連邦航空局)が承認した緊急時の手順に従っていたとしており、ボーイングに機体を制御する「MCAS(操縦特性向上システム)」に不具合が起きていなかったか調査を求めました。ボーイングもデニス・マレンバーグ会長・社長兼CEOも今後数週間のうちにMCASのソフトウェア改修の認証と実証を行うとの声明を発表し、MCASに関する訓練や教材の拡充とMCASを無効化できるよう改修を行うとしています。

 

最終報告書が出るまでには1年以上かかるので、現段階では断定されてはいませんが、一連の事故原因はMCASの不具合や誤作動にあるとの見方が強まっており、今回の暫定報告書もそれを示唆しています。

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そして4月5日。マレンバーグ会長はライオンエアとエチオピア航空の墜落事故についていずれもMCASのソフトウェアに不具合があった事を認め「人命が失われたことを申し訳なく思う」と謝罪しました。ボーイングが公式に不具合を認めた事で今後はMCASの改修と再発防止対策がいつ、どこまで進むかが焦点になります。

合わせてボーイングは737の生産機数を月産52機から42機に減産することを発表。これはまだ製造が続いてる737NGも合わせたものですが、この数字はレントン工場の雇用を維持する最小限の数字であり、ボーイングとしてもある意味「デッドライン」と言える数字。737MAXの運航を再開できない限り、新規受注も新造機の納入もできず、レントン工場には納入できずに留め置かれる737MAXが溜まる一方ですから、一刻も早い運航再開が至上命題となります。
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では、737MAXの運航再開はいつになるのでしょうか。737MAXの納入を再開させるにはMCASの改修と再発防止策の対応が終了し、FAAを始めとした各国の航空当局から「安全」のお墨付きをもらう事が必要になります。改修と再発防止策については今後数週間のうちに全世界の737MAXに対応するとしていますが、問題はその後の航空当局の再承認でしょう。

今回の事故では本来であれば航空機の安全をチェックし、監督するはずのFAAがメーカーとの密接過ぎる関係や後手に回った対応などが非難の対象となっている為、安易な飛行停止措置の解除はできないのではないかと思います。仮にFAAが737MAXの安全性にお墨付きを与えたとしても、中国や欧州など他の地域が追随するかどうかは微妙ですし、恐らく独自に安全性を審査してから飛行停止措置を解除、という流れになるのではないでしょうか。そう考えると737MAXの運航再開はどんなに早くても6月以降になるのではないでしょうか。

 

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そして今の情勢を考えると、6月の再開も難しいのではないかと思います。再審査申請をするにしても現在の機体の改修を終わらせ、再発防止策を周知徹底させてからになると思いますが、再承認の審査は通常の審査以上に厳しいものになる事が予想されます。欧州や中国、事故が起きたインドネシアやエチオピアの審査は特に厳しく審査するものと思われますので、1か月かそこらで承認されるとは思えません。ボーイングが飛行停止措置を回避するためにロビー活動を行ってたり、対応が後手に回って顧客や航空当局の不興を買い、心証を悪化させたことも考慮すると秋口までずれ込むかもしれません。

 

それでもボーイングには「737MAXを諦めて生産中止」という選択肢は取れません。737MAXはボーイングにとって生産機数の8割を占める主力機ですし、150~200席級の単通路機は最もボリュームの大きいマーケットですから、737MAXが生産中止になればボーイングの経営に深刻な打撃を与えるのはもちろん、737MAXによる代替、増強計画を立てていた航空会社の運航計画が大きく狂う事になります。何より737MAXが消えると5000機以上と言う受注残が宙に浮いてしまいます。これだけの需要をエアバス一社で賄う事は不可能であり、単通路ジェット機の著しい供給不足を招いて世界の航空業界を混乱させかねない事態になりかねません。737MAXの運航再開はボーイングにとっても、航空業界にとっても必要な事なのです。

とは言っても運航再開には絶対の安全性が担保されるべきなのは言うまでもありません。例え時間がかかってもボーイングには737MAXを安全に飛行できる旅客機にし、誠実に対応して失った信用を取り戻して欲しいと思います。737MAXの運航再開に時間がかかるようであれば、早急な代替が必要な顧客向けに737NGの生産中止を引き延ばしてつなぎの機材を供給すれば当座の代替需要とレントン工場の雇用維持が可能かと思いますので、安全第一で、顧客や市場への影響を最小限に抑える努力をしてもらいたいですね。

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