〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

ファーイースタン航空(遠東航空)運航停止・・・新幹線が一変させた台湾の空

12月12日、台湾の航空会社・ファーイースタン航空(遠東航空)は、資金繰りの悪化を理由に13日以降の運行をすべて停止すると発表しました。航空券の販売は停止しており、従業員約1000人も清算に必要な人員を除き全員解雇となりました。このまま清算になるものと思われます。

日本へは2016年の新潟への定期チャーター便を皮切りに、秋田、福島、新潟へ週2便ずつ運航されていました。日本はもちろん、今や世界中でも珍しくなったMD-80を使用していた事で航空ファンからも注目されていた会社でしたが、突然の運航停止で日本でも台湾に取り残された人や、台湾に出発予定だった人が行けなくなるなどの被害が予想されます。

本当に突然の運航停止だったのか、日本側にも事前の連絡はなかったようです。今後代金の返金はあるのか、帰りの足を失った人が無事帰ってこれるのか、気がかりな所です。

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ファーイースタンの運航停止はこれが初めてではなく、2008年にも原油高と台湾高速鉄道(台湾新幹線)の開業に伴う急速な国内線の落ち込みで経営が悪化、資金繰りに行き詰って運航停止に追い込まれました。以前は台北~高雄を中心とした台湾の旺盛な国内線需要のおかげで、国内航空会社はファーイースタン、トランスアジア、ユニー航空(エバー航空系)、マンダリン航空(チャイナエアライン系)の4社がしのぎを削っていましたが、台湾高速鉄道の開業後は人口の多い西海岸側の路線は壊滅状態となってしまいました。4社の中で一番規模が小さく、体力もなかったファーイースタンは真っ先に行き詰ってしまったのです。

 

その後会社は休業状態となり、保有機も台北松山空港に野ざらしになっていましたが、2010年1月12日に運航再開計画書が提出され、復活に向けて動き出します。再開までには時間がかかりましたが、2011年4月に台北松山~金門線で運航を再開し、徐々に路線を増やしていっていました。

しかし、台湾の航空業界は国内線は台湾高速鉄道のおかげで壊滅状態で、わずかに残った人口の少ない東海岸路線と離島路線を4社で奪い合う状態。国際線にしても国内4社に加えタイガーエア台湾などの大手系列LCCや海外のフルサービスキャリア、バニラエアや香港エクスプレス、ジンエアーなどの海外LCCがひしめく激戦区の為、以前から過当競争が指摘されていました。2016年11月21日にはトランスアジア航空が突然運航停止を決定し、会社解散となってしまうなど弱い立場の会社ほど苦しい経営を強いられていました。2年前からは航空当局から財務基盤の脆弱さを指摘され、経営の監視を受けるなど、ファーイースタン航空も経営は火の車だったようです。

 

さらにファーイースタンにとって不運だったのが機材更新の失敗。2016年にはMD-80シリーズの後継としてリース会社からボーイング737-800型を調達する計画を立てましたが、機体の状態を巡って訴訟沙汰に発展し、更新計画は失敗してしまいました。2018年4月にはボーイング737MAX-8型を最大11機購入する契約を結び、2019年第4四半期から運航を開始する予定でしたが、その前に737MAXの運航停止で納入計画もストップ。機齢30年近いMD-80シリーズを使い続けるしかなくなってしまいました。

国内線に関してはATR72型でMD-80型を置き換えることで凌いでいましたが、より距離の長い国際線はそうはいかず、機材不足が原因と思われる飛行時間超過などで当局から運航の制限を受けるなど、機材繰りに関しても綱渡りだったようで、満身創痍の中で資金繰りにも行き詰ってしまい、今回の運航停止に追い込まれたのではないでしょうか。

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ファーイースタン航空の運航停止は直接的には資金繰りの悪化と過当競争にあります。しかし、元を正せば台湾高速鉄道の開業でドル箱の国内線を失った事で経営基盤が揺らいだこと、各社とも残る国際線に活路を見出そうとして路線開設を行った結果、過当競争に陥って共倒れになってしまいました。

台湾高速鉄道が航空業界を追い詰めた、とは言いません。台湾高速鉄道の開業で航空路線が大きな影響を受けることは開業前から分かっていた事ですし、そうなる前に他の収益源を育てたり、再編に動くなど手は打てたはずです。機材更新がままならないなど不運な要素はあったと思いますが、運航停止に陥る前に合併や段階的な運航停止など、軟着陸させるための方策はなかったのかと思ってしまいます。恐らく、ファーイースタン航空の2度目の復活はないと思いますし、仮に復活したとしても同じ結果になるだけだと思います。

 

一方で台湾には来月から新しい航空会社、スターラックス航空(星宇航空)が運航を開始します。こちらは最初から中長距離国際線を狙っていますし、資金面も潤沢なのですぐに行き詰まる事はないと思われますが、台湾路線の過当競争は続く事になります。形はどうあれ、ファーイースタンの退場で経営不安のある航空会社は当面出てこないと思いますが、願わくばこれ以上突然運航停止になる航空会社は出てきてほしくないですね。

 

・・・航空需要が急減している隣のあの国で出そうな気もしますが、

 

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【12月13日追記】

このまま清算されるかと思われたファーイースタン航空ですが、良く分からない事態になってきました。張会長が記者会見を開き「会社を閉じるつもりは毛頭ない」と営業継続の意向を強調したのです。12日には副社長が台湾交通部と記者会見を開いて運航停止と全従業員の解雇を発表したのですが、張会長はこれを否定。2週間前後で約10億台湾元(36億2000万円)の資金が調達できる見通しとし、運営資金の帳簿には4000万元(約1億4500万円)が残ってると主張。交通部民航局に運航再開の同意を求めました。

一方で民航部はあくまでもファーイースタン航空の運航継続は不可能とし、交通部に航空事業許可の取り消しを求める公文書を提出しました。張会長の言い分と民航局の方針が真っ向から対立しており、運航継続なのか、やはり運航停止なのか、はっきりわからない状態です。しかし、張会長の資金調達のめどが立っているという言い分に具体的な根拠や資金提供元の名前がないので、現状では運航停止の可能性の方が高いのかなと思います。いずれにせよ、この問題はしばらく続く事になりそうです。

headlines.yahoo.co.jp

 

 

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