〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

エチオピア航空の737MAX墜落事故、中国当局の運航停止指示で今後はどうなる

※3月12日:その後の各国の対応と運航停止の可能性について加筆しました。

 

3月10日、アディスアベバ発ナイロビ行きのエチオピア航空302便が離陸6分後に消息を絶ち、その後墜落と乗員乗客157名の全員死亡が確認されました。737MAXの墜落事故は昨年10月29日のライオンエア610便に続いて2件目、前回の事故から半年もたたないうちに、再び大惨事が起こってしまいました。まずは今回の事故で亡くなられた方とご家族、関係者の方に深く哀悼の意を表します。


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詳しい事故原因は今後の事故調査を待たなければいけませんが、今回の事故とライオンエアの事故は同じ機種と言うだけでなく、新造から間もないうちに起きた事故である事、また離陸してしばらくした後に急にレーダーから消え、墜落したという共通点があります。憶測で語ってはいけないとは思いますが、両方の事故に何か共通した原因がある、と考えても不思議はないのではないでしょうか。


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そしてこの連続事故は航空業界に大きな影響を与えることになりそうです。今回の事故の当事者であるエチオピア航空は同型機4機の運航を停止すると発表しました。事故を起こしたのと同型の機体を運航するわけには行かないでしょうから、これは妥当な措置だと思います。
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※画像は737-800で代用

しかし、それ以上に大きなニュースとなったのが中国当局の737MAXの商業運航停止を指示した事でした。中国民用航空局(CAAC)は国内航空会社が運航する737MAXの全便運航停止を命じました。中国国内で運航されている737MAXは96機。現在世界中で納入されている737MAXは350機程なので、3割近い737MAXが地上に留め置かれることになります。

今のところアメリカやインドネシアなど他の国は中国に追随する事無く、運航を続けるようですが、アメリカ運輸安全委員会(NTSB)の元委員長も2つの事故の類似性と、新型機が5か月に2機も墜落した事が極めて異例の事態であることは認めており、今後の事故調査で両方の事故に何らかの重大な共通点があれば、世界的な運行停止になる可能性もあります。いずれにしても今後の調査が待たれるところです。

 

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さて、今後737MAXが世界的に運航停止となる可能性があるのでしょうか。航空事故の歴史を見ても、全機運航停止になるような事態はそう多くはありませんが、いずれも大きな影響を航空業界に与えています。古くはコメットの連続墜落事故で全世界のコメットが運航停止になった例や、1979年のアメリカン航空191便墜落事故の際は事故機のDC-10の設計不良が疑われたことでFAA(アメリカ連邦航空局)がDC-10の形式証明の効力を取り消し、事故原因が判明するまで1か月以上世界中でDC-10が運航できなくなった例があります。記憶に新しいところでは2013年1月のJALとANAのボーイング787のバッテリー発火事故を受けてFAAが耐空性改善命令を出し、全世界で787の運航が3か月以上停止された例もありました。

一度運航停止になってしまうと航空会社の経営に大きな打撃を与え、機材繰りができず欠航便が大量に出て多くの乗客に影響が出てしまいます。しかし、そのまま運航を続けて事故が起きてはそれこそ取り返しのつかない事態になり兼ねませんから、時には運航停止は必要な事であると思います。実際、DC-10の運航停止の際は事故原因は設計不良ではなく、航空会社の不適切なエンジン整備が原因でしたが、同様に亀裂が入っていた例が多く見つかったため、結果的に運航停止にしたことが同様の事故を防ぐ結果となりました。

中国以外の国で737MAXの運航停止が行われていないのは、事故原因と疑われる個所がまだ特定できておらず、設計不良を疑う証拠がまだ出ていないからだと思います。しかし新型機が立て続けに事故を起こしたこと自体異例の事ですし、737MAXはエアバスA320neo同様、何千機ものバックオーダーを抱える人気機種であり、問題があるのであればまだそれほど就航機数が多くない今のうちに解決した方がいいのではないかと思います。今後の事故調査で疑わしい問題があるのであれば、躊躇する事無くいったん止めるべきだと思いますし、それは今後の737MAXの発展に必要な事なのではないでしょうか。いずれにせよ、一日も早く事故原因が解明され、安心して737MAXに乗れるようになることを祈りたいです。

 

【3月12日追記】

中国に引き続き、インドネシアの航空当局も737MAXの運航停止を指示しました。インドネシアは昨年墜落事故を起こしたライオンエアやフラッグキャリアのガルーダインドネシア航空が737MAXを運航しており、その影響は大きなものです。

さらにシンガポールの航空当局も現地時間12日午後二時以降の737MAXの運航停止を命じました。こちらは国内航空会社だけでなく、シンガポール上空での運航全てでの運航停止を命じるもので、シンガポール国外の航空会社の737MAX乗り入れや上空通過も不可能になります。737MAXの有力市場であるアジア地域での「737MAX離れ」は日を追うごとに深刻になってきています。

 

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一方、墜落したエチオピア航空機からはフライトレコーダーなどが改修されました。今後解析が進められることになりますが、ライオンエアの墜落事故では、機体の姿勢制御時に迎角を検出する「AOAセンサー」に問題があったことが判明しており、FAAは11月に「耐空性改善命令(AD)」を発行しています。今回の事故でも同様の問題の可能性が出てくれば、改修が終わるまで運航停止が命じられる可能性もあるのではないでしょうか。

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そして、737MAXに対する乗客の信頼はかなり揺らいでいるようです。今のところFAAやアメリカの航空会社は「耐空性要件は満たしている」として運航停止は考えていないようですが、「自分の乗る飛行機は737MAXではないのか」という問い合わせが相次いでいるようで、少なくともサウスウエスト航空は手数料なしで予約変更に応じているようです。短期間で2度も似たような理由で墜落事故が起こり、他国の航空当局が運航停止を指示する今の状況では、乗客が不安がるのも無理もない事ではないでしょうか。

ボーイング株は事故発生後12%も下落し、13日にロールアウト予定だった777Xの式典も延期しました。ボーイングにとっては自社の新型機に対する安全性が揺らいでいる今、今後の大きな稼ぎ頭となる737MAXの全面運航停止は絶対に避けたいでしょう。航空機が重要な輸出産業であるアメリカ政府も全面停止は回避したいところだと思います。しかし、いくら当局やメーカーが「安全」と言っても、事故原因が明確でない今の状態では対策の立てようもなく、利用客の懸念を払しょくはできないのではないでしょうか。

 

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では、今後737MAXが全面運航停止になる可能性はあるのでしょうか?最終的には他の国の航空当局にも影響を与えるFAAの判断次第だと思いますが、今後の事故調査で何らかの問題が浮上すれば、安全確保の為運航停止を命じる可能性は十分あります。

もう一つの可能性としては「安全性を懸念する国際世論に押されて運航停止命令に追い込まれる」事態です。737MAXが運航停止に至っていないのはおひざ元のアメリカやカナダ、欧州や中東の航空会社が今のところ運航停止の動きに追随していないからですが、今後欧米の航空会社でも運航停止の動きが広がれば、その動きに押されるように737MAXの運航停止命令を出すかもしれません。

 

個人的には北米での737MAX最大の発注者であり、創業以来737型機を使い続けていたサウスウエスト航空の動向がカギになると思います。現在サウスウエストは希望者に手数料なしで予約変更を受け付けていますが、今後自社の顧客から737MAX運航継続を望まない声が高まると、顧客重視のサウスウエストは自社のブランドイメージと顧客を守るため、自主的な運航停止を決める可能性があります。

737シリーズ最大の運用者であるサウスウエストが運航停止を決めてしまえば、他の航空会社も追随する可能性があり、なし崩し的にFAAも運航停止命令に追い込まれるかもしれません。しかしこのような形での運航停止はFAAの権威を失墜させ、737MAXに取り返しのつかないダメージを与えてしまいかねません。既にライオンエアが737MAXの納入を辞め、エアバスA320neoへの切り替えを検討しているという報道もあり、対応が後手に回れば回る程、737MAXへの信頼性を失い、更なる利用者離れ、顧客離れを招いてしまうと思います。ここは将来の事を考え、一旦運航を止めて全ての問題を洗い出す必要があるのではないでしょうか。

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