〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

神戸空港の発着枠拡大に見る日本の「セカンダリー空港」

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7月5日、神戸空港を拠点にしているスカイマークは神戸空港の発着枠拡大を受け、8月1日から神戸ー茨城・長崎・那覇線を1日一往復ずつ増便すると発表しました。さらに翌6日に神戸市役所で開いた会見では運用時間が午後11時までに延長された場合、羽田空港の特定枠(午前6時~8時30分までの到着と午後8時30分から11時までの出発便に適用)を使って午後9時台出発の羽田~神戸線を設定すると発表しました。スカイマークの神戸路線が充実することになりそうです。

www.aviationwire.jp

 

www.traicy.com

 

また、同じ日にフジドリームエアラインズ(FDA)が10月27日からの冬ダイヤから神戸空港に就航すると正式に発表しました。FDAにとっては初めての関西圏進出となるとともに、神戸空港にとっても2013年6月のエアドゥとスカイネットアジア航空(現ソラシドエア)以来6年ぶりの新規参入となります。7月2日の一部報道では神戸~松本線と神戸~高知線に1日1往復ずつ運航される予定とされましたが、今回のFDAの発表では具体的な路線については「今後決まり次第発表する」とされました。報道通りの松本・高知線なのか、それとも別の路線になるのか気になるところですが、以前から神戸空港でスタッフ募集しているなど神戸空港の発着枠拡大に伴うFDA参入が噂されていましたが、遂に現実のものとなりそうです。

 

www.aviationwire.jp

 

www.nikkei.com

 

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今回の神戸空港の規制緩和で具体的な就航計画が出てきたことで、いわゆる「関西3空港」の立ち位置もはっきりしてきたのではないかと思います。以前神戸空港の規制緩和を取り上げた記事の中でも「関空は国際線と国内幹線とLCC、伊丹は国内線全般、神戸は伊丹のセカンダリー空港」と位置付けましたが、今後は

・関西空港・・・国際線、貨物、LCC中心の関西の基幹空港

・伊丹空港・・・国内線の基幹空港

・神戸空港・・・関空・伊丹を補完するセカンダリー空港

 となって行くのではないでしょうか。

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先の記事でも触れた通り、関空は空港アクセスの遠さ、伊丹は騒音問題による発着枠制限と運用時間がネックとなっており 、神戸空港の立ち位置は両者の弱点を補うには格好の存在と言えます。また、現在の伊丹空港がほぼ大手2社の独占となり新規参入が難しい現状や、アクセス面で難ありの関空が国内短距離路線では競争力を保てないことを考えると、神戸空港は国内線の新規参入の受け皿として有益な存在です。事実、神戸空港からはJALは撤退しましたし、現在でも全体の7割の便数がスカイマークを占め、関西の路線を神戸に集約している事や、FDAが関西の新規就航先に神戸を選んだことなどからもこの説を裏付けています。

逆に、神戸空港に伊丹の機能を移すことも神戸空港の主要アクセスであるポートライナーの輸送能力を考えると現実的ではありませんし、神戸空港自体も大規模なターミナル増設工事が必要になるので難しいでしょう。現在の神戸空港の処理能力を考えると、関空や伊丹の補完空港にはなっても両者の存在を脅かすほどの発展は難しいのではないかと思います。そういう意味では神戸空港は良くも悪くも「関西地域のセカンダリー空港」という立ち位置として、関空や伊丹で吸収できない需要や第三極の航空会社の受け皿となっていくのではないでしょうか。

 

↓FDAを立ち上げた鈴木与平氏の著書。地方間路線を開拓し、移動を活発化させることで地方を活性化しようとする鈴木氏とFDAの理念が良く分かります。

 

  

さて、日本には神戸市のように大都市の基幹空港の役割を補完する「セカンダリー空港」がいくつもあります。大別すると基幹空港から離れたところに建設され、空港アクセスが重視されない貨物路線やチャーター便、アクセスの悪さを価格でカバーできるLCCが就航する「郊外型セカンダリー空港」と、都心近くでアクセスは良いものの、用地や空域の問題でこれ以上の拡張が難しく、小型機や短距離路線に特化している「都市型セカンダリー空港」の2種類があり、前者の代表例はライアンエアーの拠点の一つであるフランクフルト・ハーン空港やロンドンのガトウィック空港、後者の代表例はサウスウエスト航空創業の地であり、現在も主要拠点の一つであるダラス・ラブフィールド空港やロンドンシティ空港などが挙げられます。今回はそんな日本の「セカンダリー空港」を紹介して空港の役割分担について考えていきたいと思います。

 

1.札幌丘珠空港(基幹空港:新千歳空港)

丘珠空港は分類的には「都市型セカンダリー空港」になりますが、路線的には「コミューター路線用空港」に近いです。

元々は陸上自衛隊の航空基地だったものを1961年に共用化した空港であり、当初はジェット機が運航される基幹空港の千歳空港に対しプロペラ機用の空港として運用されました。しかし1974年に丘珠を拠点にしていた東亜国内航空(TDA)が撤退した後は道内路線を運航するコミューター空港となり、全日空系列の日本近距離航空(のちのエアーニッポン、現在はANA本体に吸収)が長年運航してきました。1998年からは日本エアシステム系列の北海道エアシステム(HAC)が参入して2社体制になったものの、プロペラ機しか就航できない状況や道内路線のみのネットワークと言う点には変わりありませんでした。

2010年にANAが路線を新千歳空港に集約させる方針を取って丘珠路線を撤退させ、入れ替わりに日本航空が経営から撤退し、北海道や札幌市などが株式を引き受けたHACが路線を丘珠に集約させます。その後HACはJALグループに復帰して現在は便名もJALになり、路線も道内の函館・釧路・利尻に加え青森県の三沢にも就航。加えて2016年からはFDAが静岡~丘珠線を開設し、2018年からは松本~丘珠線を開設した事で「就航するのはプロペラ機のみ、路線も道内路線のみ」というかつての立ち位置からは変わりつつありますが、FDAのエンブラエルは離陸重量の制限や冬季の就航ができないなど課題も多く、今後も基本的な立ち位置は変わらないでしょう。

 

2.茨城空港(基幹空港:羽田空港・成田空港)

こちらは最初からLCCの就航をターゲットにした「郊外型セカンダリー空港」を目指しており、当初の目論見とは異なるもののその地位を確立しつつあります。

元々は航空自衛隊の百里基地を2010年に共用化したのですが、開港前は羽田の再国際化や成田のLCC誘致の陰に隠れて航空会社の誘致が進まず、就航路線ゼロの危機に陥りました。その後アシアナ航空のソウル線就航が決まって開港時の就航路線ゼロは回避したものの、国内線は大手2社は全く見向きもせず、開港時の路線はゼロと将来性が危ぶまれたスタートとなりました。

 

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そんな危機的状況を救ったのがスカイマーク。2010年6月から茨城~神戸線を開設したのを皮切りに、2012年には札幌と中部、那覇線を開設(中部線はその後休止と再開を繰り返し2014年10月26日を最後に運休)、2014年には福岡線を開設するなど時期によって増減はあったものの、現在では神戸と札幌を1日2往復ずつ、福岡と那覇を1往復ずつの計6往復を運航するまでになりました。国際線はめまぐるしく変わったものの、現在は春秋航空の上海行が週6往復、タイガーエアの台北行きが週2往復、イースター航空のソウル行きが週3往復運航し、海外LCCが複数就航するまでになりました。2017年度の利用者数は年間68万人と当初の利用予測には及ばないものの、開港当初の下馬評を考えると善戦していると言っていいでしょう。最も、現在の立ち位置は羽田と成田のセカンダリーと言うよりは「茨城県を中心とした北関東の地方空港」に近いですが・・・

 

3.県営名古屋飛行場(基幹空港:中部国際空港)

元々は東海地方の拠点空港だった名古屋空港ですが、自衛隊との共用空港や住宅地の中と言う立地条件もあってこれ以上の拡張は不可能であり、2005年に中部国際空港が開港すると、全ての国際線と大半の国内線が中部に移転しました。

しかし、名古屋空港自体は国内リージョナル路線を運航する県営空港として存続することになり、設置区分も国管理の「第二種空港」から愛知県管理の「その他の空港」に変更。路線についてもJALグループのジェイエアが本社を広島西飛行場から小牧に移転した上で残留、拠点とすることになりました。

その後名古屋飛行場はジェイエアの一大拠点として機能することになり、機材も50人乗りのCRJ200から76人乗りのエンブラエルE170に大型化しましたが、2010年1月のJALグループの経営破たんで状況は一変します。再建計画の中には名古屋空港の全面撤退とジェイエアの伊丹移転が盛り込まれ、安泰と思われていた名古屋飛行場は一転して路線ゼロで存続の危機に陥ります。もともと地元では中部空港と県営名古屋空港との「棲み分け」が問題視されており、2007年には中部空港との間で「名古屋空港からはこれ以上新規路線を開拓しない」との合意が取り付けられたほどでした。中部空港もこの頃には集客に苦戦しており、空港機能を中部に一元化させたい経済界にとってはジェイエアの撤退は一元化の大きなチャンスと言えました。

 

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しかし、そんな県営名古屋空港の危機を救ったのはFDAでした。撤退したジェイエアの路線のうち、名古屋~福岡線と熊本線の引き受けを表明し、2011年3月27日から運航を開始します。その後、東日本大震災の復興支援の名目で5月21日から名古屋~花巻線を、7月2日から名古屋~青森線を就航させ、以後もジェイエアの撤退路線を中心に新規路線を開設。現在は青森・花巻・山形・新潟・出雲・高知・福岡・熊本の8路線、一日24往復を運航するまでになりました。ちなみに県営名古屋空港から撤退したJALもFDAとのコードシェアと言う形で便名だけは残っています。

 

とは言え、今後県営名古屋空港がかつての名古屋空港のように大きく発展する事はもうないでしょう。現在はFDAの拠点空港として一定の地位を築いていますが、2007年の中部空港との取り決めはまだ生きており、ジェイエア時代には就航していなかった仙台や鹿児島、札幌や那覇と言った路線にFDAが就航するのは難しいと思いますし、就航を目指せば中部空港との棲み分け問題が再燃してしまうからです。FDAの路線のうち、青森線と花巻線でJALとのコードシェアを行っていないのも、両路線が「東日本大震災の復興支援」という「特例」でできた路線であり、棲み分け問題を再燃させないためにコードシェアを避けているのではないかと思います。既に廃港になった広島西飛行場や、かつての関西三空港問題のように、空港機能の棲み分け問題は「都市型セカンダリー空港」の抱える大きな問題と言えそうです。

 

以上、日本のセカンダリー空港の簡単な歴史と現状、基幹空港との立ち位置の違いなどをご紹介しました。この他にも福岡空港のセカンダリー空港的な位置にいる北九州空港と佐賀空港、旧広島空港をコミューター用空港として再活用しようとしたものの結局は廃港に追い込まれた旧広島西飛行場などの例もありますが、ここでは割愛させて頂きます。

世界的には大都市の空港は複数あるのが普通で、ニューヨークでも国際線中心のジョンFケネディ空港とニューアーク・リバティー空港、国内短距離中心のラガーディアに分かれていますし、ロンドンでも基幹空港のヒースロー空港のほかにチャーター便やリゾート路線のガトウィック、LCCが多く就航するルートン、ビジネス客向けの短距離小型路線に特化したロンドンシティ空港など6つの空港が存在します。基幹空港が複数あるケースでも航空会社ごとに空港が分かれているケースもあり、先のニューヨークの場合でもJFKはデルタとジェットブルーが、リバティーはユナイテッドがハブとするなどの棲み分けが図られています。

日本のセカンダリー空港もスカイマークやFDAと言った大手2社とは距離を置く第三極の航空会社が拠点としているケースが多く、基幹空港のように立派な設備やアクセス路線はないものの、大手との差別化が図れ、空港サイドの協力や発着枠の面で恩恵を享受できるというメリットがあります。基幹空港との棲み分けと言う問題はありますが、顧客サービスの充実や多様化、基幹空港の混雑緩和には差別化を図りやすい「セカンダリー空港」の存在が不可欠と言えますし、第三極の航空会社が大手との差別化を図るには、セカンダリー空港の活用がカギとなるのではないでしょうか。

 

 

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