〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

アリタリア航空の再建スポンサー、破綻から2年2か月たってやっと決定。三度目の正直になるのか、それとも・・・

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一部のネットニュースで出ていましたが、2017年5月に2度目の経営破たんとなったアリタリア航空の再建計画案が7月15日に提出され、再建スポンサーが明らかになりました。主体となるのは旧イタリア国鉄の鉄道会社・イタリア鉄道で、これに加えて空港や高速道路の運営を行うインフラ運営会社のアトランティア、スカイチームの名手であるデルタ航空、イタリア財務省の4者がアリタリアの経営再建にあたる事になります。

具体的な出資比率は明らかにされていませんが、現地報道によると出資比率はイタリア鉄道とアトランティアが35%ずつ、デルタ航空とイタリア財務省が15%ずつとなりますが、イタリア鉄道は民営化されたとは言え全株式をイタリア政府が保有しており、株主構成上は事実上、イタリア政府が主導権を握る形となります。とは言え、当初は破たんから半年でスポンサーを決める予定だったのがズルズルと先延ばしにされてきたアリタリアの再建スポンサーは破たんから2年2か月でようやく決まる事になりました。

 

sky-budget.com

 

 アリタリアに関しての以前の記事はこちらもご覧下さい。

www.meihokuriku-alps.com

 

 

www.meihokuriku-alps.com

 

アリタリアの2度目の破たんまでは私の動画も参照にして下さい。

 

 

当初はイタリア鉄道、デルタ航空、イギリスのLCCのイージージェットの3者がスポンサーとなる予定でしたが、イージージェットは3月に撤退。その穴をアトランティアが埋めた形です。他の企業も加わっているとは言え、元国営の鉄道会社がフラッグキャリアを買収するのは異例中の異例。世界的に見ても国有鉄道がフラッグキャリアを保有するケースは私の知る限り、カナダ国営鉄道がエアカナダを保有していた例くらいではないかと思います。

sky-budget.com

 

さて、今回アリタリアの主要再建スポンサーとなったイタリア鉄道ですが、元はイタリア国鉄で1985年に公社化、1992年に民営化、2001年に鉄道の所有と運行の分離に関する欧州連合の指令を受け、運行会社のトレニタリアと鉄道施設保有会社のレーテ・フェッロヴィア・イタリア(RFI)を傘下に持つ持ち株会社に再編されました。それまでルフトハンザやイージージェットと言った競合他社の名前が挙がっていたアリタリアの再建スポンサーにイタリア鉄道の名前が挙がったのは2018年10月末に締め切られた入札の時。この時買収提案をした2社のうちの一社としてイタリア鉄道が名乗りを上げたのです(もう一社はデルタ航空)

下記の記事ではイタリア鉄道が買収に名乗りを上げたのは、アリタリアを救済することで、アリタリアの国内線を守るために時速300km/hに抑えられているイタリアの高速鉄道の最高速度緩和の材料にする、とされていますが、EUの補助金規制で自分では再建に乗り出せないイタリア政府が、株式を保有するイタリア鉄道に救済を要請したのかも知れません。いずれにしても、結果的には元国営の会社が手を握る事になり、イタリアの国内長距離輸送はイタリア鉄道とアリタリアのグループが大きなシェアを握る事になります。

toyokeizai.net

 

一見盤石に思える組み合わせではありますが、実際のところ、この連合は「かなり危険な組み合わせ」とも言えます。と言うのもイタリアの国内長距離輸送で大きなシェアを握るという事は独占禁止法に抵触する可能性があるという事。イタリアやEUの公取委が統合の条件として両社が持つ権益の一部放出を迫るか、最悪の場合、買収後のシェアの大きさを懸念して買収中止を命令する可能性すらあり得ますので、買収手続きがスムーズに行くかは不透明です。

 

さらにアリタリアのスポンサーの中にイタリア財務省が入っている点や、イタリア政府が全株式を保有するイタリア鉄道がメインスポンサーになっている点をEUが問題視する可能性は十分に考えられます。以前もアリタリアにつぎ込まれたつなぎ融資の額が大きすぎる&長すぎるとEUが問題視して調査を開始したというニュースがあり、今後再建計画がEUの承認を得られるかどうかも気になるところ。万が一EUがイタリア鉄道やイタリア財務省の出資を認めなかった場合、再建計画は振り出しに戻る可能性があり、まだまだ予断は許さないのではないでしょうか。

www.nikkei.com

 

そして何より、「本当に今度こそ再建計画が実施されるのか」と言う点が最大の懸念事項でしょう。これまでもアリタリアは経営危機に陥る度再建計画を立て、人員削減や不採算路線の整理を掲げてきましたが、組合の反対や経営陣の怠慢、アリタリアを取り巻く政府や政治家の思惑などでことごとく失敗してきました。今回の再建スポンサーもイタリア政府が影響力を持つ企業がメインスポンサーとなっており、強いリーダーシップを発揮できるかどうかは微妙。スポンサー間の調整や利害対立といった問題もあり、与党の「五つ星運動」も雇用維持を公約に掲げている手前、本当に人員削減や給与カットと言った痛みを伴う改革ができるのか、疑問です。

 

とは言え、ようやく再建スポンサーが決まったというのにネガティブな予想ばかりするのも野暮と言うもの。幸い、アリタリアは長距離旅客を中心に旅客数を伸ばしており、高単価の旅客獲得に成功するなど明るい話題もあります。定時到着率も信じられない事ですが世界トップクラスとなり、2019年上半期は86.8%、アンケート調査ではサービスに満足した旅客が90%に達するなど、これまでのアリタリアからは考えられないような改善っぷりです。正直まだ疑ってる自分がいる

www.traicy.com

 

流石にアリタリアの再建へのチャンスはこれが本当に最後になるでしょう。今でさえEUやイタリア国民からは多額の税金をつぎ込んだアリタリアには批判的な目が向けられているだけに、もう本当に後がないと思います。アリタリアには背水の陣で再建に臨んで欲しいですし、今度こそ過去の体質と決別して本当の意味でイタリア国民に愛される「イタリアのフラッグキャリア」として生まれ変わって欲しいですね。

 

 

 ↓アリタリアと言えばWRCなどで活躍したアリタリアカラーのランチア・ストラトスを思い出す人も多いのではないでしょうか。見事再建を果たし、いつかまたスポンサーになってレースシーンでアリタリアカラーのマシンを見たいものです。

 

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