先日の一部報道でJALの中長距離LCC参入のニュースが報じられましたが、今日、正式に参入計画が発表されました。7月に準備会社を設立し、2020年の春ダイヤをメドに就航を目指す計画です。
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LCC事業に積極的なANAに対し、これまでのJALはジェットスタージャパンには出資したものの、一定の距離を置いてきました。LCC参入が本格化したころはJALはまだ再建中であまり身動きが取れなかった事、再建後もいわゆる「8.10ペーパー」による縛りで事業拡大に制限があったことで、LCC事業拡大がし辛かったのもあると思いますが、JAL自身、どちらかと言うとフルサービス事業を発展させる方向に行っていたのもあるのかと思います。長距離路線は運航コストが掛かる分、ビジネスクラスやプレミアムエコノミーの比率を上げて客単価を上げる戦略を取る会社が多く、JALもANAも長距離用機材はエコノミーの比率が低くなっています。恐らくJALも下手にLCCに参入して自分から客単価を下げるのは得策ではないと考えていたと思います。
しかし、世界のLCCはここ数年で短距離から中長距離路線に拡大しており、アジア地域でもエアアジアXやシンガポール航空傘下のスクートが日本→東南アジア路線やホノルル線を運航したり、カンタス傘下のジェットスターがオーストラリア路線を飛ばしたりしています。大西洋路線でもノルウェーエアシャトルなどが参入するなどLCCの守備範囲は年々広くなっています。今のところ日本から北米大陸や欧州に飛ばすLCCはありませんが、今後も参入がないとは言えません。ANAがピーチを作った時と同様、どうせLCCが来るならいっそ自分たちで、という事なのでしょう。
ビジネス需要が大きいロンドンやパリなどの大都市や乗り継ぎ需要の大きい路線は今後もフルサービスキャリアのJALで運航する方が得策だと思いますが、例えばローマやアテネ、デンパサールなど観光需要は大きいけど客単価は低い路線はLCCの方がいいかもしれません。また、関空発着の長距離路線は観光需要主体で客単価が低い傾向にあるので、こちらをLCCで飛ばすのもアリではないかと思います。ANAが今のところ長距離LCCに関心がないのも参入の理由でしょうが、長距離路線のノウハウが豊富なJALの強みを生かす、と言う点でも中長距離LCCの方がいいのかも知れません。
機材はボーイング787-8型2機の予定ですが、新造機になるのか、JALの787を改修するのかはまだ決まってません。座席数は300席程度になるようですが、上級クラスを設置するかどうかもこれから。JALのLCCが成功するかどうかは、JAL本体のブランドとどれだけ差別化できるか、ピーチのような単なる格安にとどまらない、魅力のあるブランディングができるかどうかにかかっていると思います。恐らくLCCの詳細が分かるのは来年以降かと思いますが、787の航続距離なら例えばかつてJALが就航していた路線で観光需要が高いローマやラスベガス、あるいはこれまで直行便がほとんどなかったマイアミやアテネ、タヒチなども十分射程圏内に入ってくるのではないでしょうか。これまでなかった長距離LCCの分野でJALがどんな一手を打ってくるのか。期待して待ちたいところです。