前回アップした車内販売終了に関する記事が過去になかった勢いでPV数が伸び、多くのスターやブックマークを頂きました。スマートニュースにも載ったみたいで、今そちらからのアクセスがもの凄い勢いです。皆様本当にありがとうございます!
さて、今回は以前も触れた、2020年の羽田空港発着枠のアメリカ路線割り当ての続報です。2月20日から21日にかけてアメリカ側の大手、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空、ハワイアン航空の4社がアメリカ運輸省(DOT)に路線開設を申請しました。
以前の記事はこちらをご覧下さい。
・配分予定の枠を越える申請で発着枠の取り合いに
改めて各社の申請内容をおさらいしましょう。(2月25日追記:各社の優先希望を追加してます)
・アメリカン航空(1日4往復・うち1往復は早朝深夜枠)
ダラス(2往復・777-200ER)
ロサンゼルス(早朝深夜枠1往復増便・787-8)
ラスベガス(1往復・787-8)
(優先1位ダラス1便目、2位ロサンゼルス、3位ダラス2便目、4位ラスベガス)
・デルタ航空(1日6往復)
シアトル(1往復・A330-900neo)
デトロイト(1往復・A350-900)
アトランタ(1往復・777-200ER)
ポートランド(1往復・A330-200)
ホノルル(2往復・767-300ER)
(1位シアトル、2位デトロイト、3位アトランタ、4位ポートランド、5.6位ホノルル)
・ユナイテッド航空(1日6往復)
ニューアーク(1往復・777-200ER)
シカゴ(1往復・777-200ER)
ロサンゼルス(1往復・787-10)
ワシントン(1往復・777-200ER)
ヒューストン(1往復・777-200ER)
グアム(1往復・777-200ER)
(第一希望ニューアーク、シカゴ、ワシントン 第二希望ロサンゼルス、第三希望ヒューストン、グアム)
・ハワイアン航空(1日3往復)
ホノルル(3往復・A330-200)
4社合計で昼間枠18往復、早朝深夜枠1往復の合計19往復分と、割り当て予定の昼間枠12枠を大きくオーバーしています。前回2016年の配分の際も昼間枠5枠、早朝深夜枠1枠に対し届出は9路線ですから、今回も各社最大限認められる可能性のある路線を申請したのではないかと思います。
・「ホノルル線」「デルタ航空」の動向が発着枠配分のカギに
さて、ここから実際に認可される路線はどこになるのでしょうか。ポイントになるのは「ホノルル線」と「デルタ航空」の2つになると思います。
今回の各社の届け出を見るとホノルル線がハワイアン3往復、デルタ2往復と突出しているのが分かります。近年羽田ーホノルル線は搭乗率が高く、ハワイアン航空も羽田ーホノルル線はANA便も合わせて90.8%、ハワイアン単体では91.9%に達しており、旅客需要が高い事をアピールしていますので、確かにホノルル線の増便は理にかなっています。
しかし、今年はANAが成田ーホノルル線にA380を投入するなど、ハワイ路線全体で見れば今後は急激な供給量増加が見込まれます。恐らく日本側の会社も羽田発ハワイ路線の増便は申請してくるでしょうし、さらにハワイアンとデルタの申請をそのまま認めるとハワイ路線は一気に供給過多になって激しい安売り合戦に陥り、採算を悪化させかねません。恐らくホノルル線に関しては満額認められることはなく、せいぜいデルタ1往復、ハワイアン1往復の認可になるのではないでしょうか。
次にデルタ航空の動向ですが、下記記事内でも触れている通り、JALとアメリカンの連合、ANAとユナイテッドとの連合に比べて日本側の提携航空会社のないデルタは羽田路線で不利であり、今回の割り当てでその是正を求めています。さらにハワイアンとJALの共同事業が承認された場合、デルタは羽田路線で更に不利になるため、デルタ6、アメリカンとハワイアン3、ユナイテッド3の配分にするべきだと主張しています。
今回のアメリカ側の発着枠配分は運輸省がデルタの主張を認めるか否かで分かれるのではないかと思います。仮に3グループ均等に配分された場合、アメリカン3、ハワイアン1、デルタとユナイテッド各4となりそうですが、その配分は日本側の航空会社のコードシェアは考慮されていません。アメリカンはJALと、ユナイテッドはANAとのコードシェアを行う事で実際は配分枠を越える便数を手にすることができる事を考えると、デルタの主張にも一理あると思います。
とは言え、デルタの主張通り認めてしまうと今度は他の会社からの反発も予想されますから、6枠配分も少々考えにくいです。となると間を取ってデルタ5、ユナイテッド4、アメリカン2+早朝深夜枠1、ハワイアン1になるのではないかと予想します。アメリカンに早朝深夜枠を認めて実質3枠にする代わりに、前回1便しか配分のなかったユナイテッドにはアメリカンよりも多い枠を認めてバランスを取るのではないでしょうか。
・今回の配分で認可される路線はどこ?
(2/25 各社の優先順位を踏まえた上で加筆修正しました)
配分の見通しを立てたところで、実際にどの路線が認可されることになるのでしょうか?まずデルタは5枠認可が下りればホノルル線の1往復以外は全て就航させることになるのではないかと思います。もし4枠認可なら希望順にシアトル、デトロイト、アトランタ、ポートランドを羽田に移し、ホノルル線のみ残留になりそうです。ハワイアンは元々の申請がホノルル線増便のみですが、既存のホノルル線の一部をを週3往復運航のコナ線に振り向けるかも知れません。
問題はユナイテッドとアメリカンの配分でしょう。恐らくこの2社に関しては希望通り認められる可能性は低いと思いますので、どの路線が認可されないかという問題になります。
まずアメリカン航空ですが、ダラス便のうち一往復と深夜早朝枠のロサンゼルス線は認可されると思います。あとはダラス線2往復のみ認可か、ダラス線1往復とラスベガス線の認可になるかですが、これは甲乙つけ難いです。ダラスは言うまでもなくアメリカン航空最大のハブであり、乗り継ぎ需要を考えると2往復でも十分需要が見込めます。一方のラスベガス線はその知名度と観光需要の大きさの割には直行便がなく、羽田からの直行便ができれば大きなインパクトになります。アメリカン側はダラス線2便目を優先希望に上げていますが、DOTの裁定でラスベガス線を認可するかも知れません。個人的にはラスベガス線を実現させてほしいですね。
一方のユナイテッド航空ですが、6路線とも大都市だったり、ユナイテッドのハブ空港だったりする路線なのでどの路線が認可されても不思議はありませんし、言い換えればどの路線も却下される可能性があります。ユナイテッドの希望順ならニューアーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルスですが、ロサンゼルスは既にANAとデルタが就航している上にアメリカンも申請してますので、下位希望のヒューストンかグアムでの認可になる可能性も考えられます。
もっとも、最後はDOTの判断次第ですし各社思惑もあると思いますから、この予想は素人の戯言程度にとらえて下さい。
・羽田発着アメリカ線の大増発でどうなる成田ハブ
さて、これだけ大規模な増便が行われると、現在の成田空港の路線やハブ機能がどうなるかが気がかりなところです。既に前回の配分では欧州路線のうちロンドンやパリ、フランクフルトといった主要路線がごっそり羽田に移りましたので、今回の配分で同じ事が北米路線でも起こるかも知れません。
実際、ダラスやアトランタ、ニューアークといった基幹ハブ空港への路線や、ニューヨークやロサンゼルスといった大都市への路線は成田からは激減するかも知れません。しかし北米路線自体のボリューム自体はそれほど減らないのではないかと思います。
その予想の根拠になるのは欧州路線。羽田にはロンドン、パリ、フランクフルト、ミュンヘンといったビジネス需要の大きい主要都市への路線が移管され、成田からは1日1〜2便程度に縮小しています。
これだけを見ると成田発欧州路線は壊滅的なように見えますが、その分ANAはデュッセルドルフとブリュッセルに、JALはヘルシンキに就航していますし、イベリア航空やLOTポーランド航空など新規就航した会社もあるので、主要都市の路線が減った分、それ以外の都市への路線は増えており、首都圏全体では欧州路線の便数や就航地はむしろ増えているのです。路線的にも羽田と成田で棲み分けができていると言えますし、北米路線に関しても主要都市の路線が羽田に移る分、成田には新規路線開拓の余地ができるのではないでしょうか。
もう一つの要素はアジアー北米間の乗り継ぎ需要。欧州路線の場合は地理的に東南アジアからの乗り継ぎは見込めず、中国、韓国からも地理的には日本乗り継ぎは逆戻りになるので、自国路線か香港、中東経由が主流になります。つまり日本発の欧州路線は基本的に日本国内の需要が大半になり、乗り継ぎ需要は多く見込めない為、昼間の羽田路線が解禁になると国内乗継が便利な羽田にこぞって路線を移したわけです。
一方の北米路線はアジアの東に位置する日本の方が地理的に有利であり、ANAもJALも近年はこの区間の乗り継ぎ需要を重視しています。特にANAは羽田を国内→海外乗継ハブ、成田をアジア→北米乗継ハブと位置付ける「デュアルハブ戦略」を取っており、当分はこの流れは変わらないでしょう。
今回の羽田発着枠増加でアメリカ路線が充実すれば、他の地域の路線配分にもよりますがアジア→北米の乗継需要の一部が羽田に移るのは避けられないと思います。しかし、全ての需要を満たすまでの本数はないですし、前述の通り新規路線開設の余地もありますから、成田にも一定のハブ機能は残るのではないでしょうか。と言うより成田発の東南アジア路線が乗継重視のダイヤを組む一方、羽田発は日本国内で使いやすいダイヤを組んでいますし、羽田路線に乗客が集中するのは航空会社サイドも本意ではないでしょうから、今後も羽田と成田の棲み分けは続くものと思われます。
羽田発着枠増加後の姿は今後の配分と航空会社の路線申請が出揃うまではまだ見えて来ません。しかし首都圏の航空需要の大きさや万が一の二重系統を考えると羽田と成田の共存は今後も必要です。上手く役割を棲み分けて今後も日本の空の玄関口の役割を果たしていってほしいですね。