〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

日本~ロシアへの路線開設が急に増えてきたワケ

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2020年に日本からロシアへの航空路線が大幅に増えるのをご存知でしょうか?2020年夏ダイヤからの羽田空港の発着枠増加に合わせてJALとANAが羽田~モスクワ線を開設するのは周知の通りですが、ロシア側の方もアエロフロートが羽田~モスクワ線を開設するほか、もう1枠はS7航空に割り当てられ、羽田~ウラジオストク線を夏ダイヤ期間中に就航させる見込みです。

さらにロシア航空当局はアエロフロートとS7航空の他にもオーロラ航空、ウラル航空、ヤクーツク航空にも日本路線への就航を認可。各社の認可路線は後述しますが、つい数年前までは成田~モスクワと極東路線、北海道~サハリン路線程度しかなかった日本~ロシアの航空路線は来年には一気に活発化することになりそうです。

www.aviationwire.jp

 

2020年夏スケジュール以降に就航予定、及び認可された路線は以下の通り。

日本側航空会社

JAL・・・羽田~モスクワ 週7往復(3月29日に成田から移管)

      成田~ウラジオストク 週3往復(2月28日就航、3月29日から週7往復)

ANA・・・羽田~モスクワ 週7往復(夏スケジュール中に就航)

     成田~モスクワ 週2往復(3月29日就航)

 

ロシア側航空会社

アエロフロート・・・関西~モスクワ 週4往復(6月15日就航予定)

※羽田発着路線については就航日・行き先未定。

S7航空・・・羽田~ウラジオストク 週7往復(就航日未定)

オーロラ航空・・・成田~ハバロフスク 週7往復(就航日未定)

ウラル航空・・・成田~ウラジオストク 週7往復(就航日未定)

        成田~クラスノヤルスク 週7往復(就航日未定)

        成田~エカテリンブルク 週3往復(就航日未定)

        関西~ウラジオストク 週4往復(就航日未定)

ヤクーツク航空・・・成田~ペトロパブロフスク・カムチャッキー 週2往復(就航日未定)

 

これらの予定路線が全て就航すれば、日本~ロシア間の航空路線は日本側週16往復、ロシア側週41往復、合計週57往復が増えることになります。アエロフロートの羽田発着路線が成田からの振り替えではなく純増という形だと更に週7往復分が増える計算です。

さらに驚きなのがエアアジアが日本~ウラジオストク線の開設を予定しているとのニュース。エアアジア・ジャパンを使って就航させるのか、既存のエアアジアXの路線を以遠権という形で延長するのかは不明ですが、事実だとしたら10年前は週2便程度しかなかった日本~ウラジオストク路線は第三国のエアラインも参入する過密路線に変貌する事になります。

www.traicy.com

 

 

ちなみに、現在の日本~ロシア路線はどんな感じかというと

 

成田~モスクワ アエロフロート週7往復、JAL週7往復

成田~ウラジオストク S7週7往復、アエロフロート週5往復(運航はオーロラ)

成田~ハバロフスク S7週3往復

成田~イルクーツク S7週2往復(夏期のみ運航)

成田~ノボシビルスク S7週1往復

成田~ユジノサハリンスク オーロラ週2往復

関西~ウラジオストク S7週1往復

札幌~ユジノサハリンスク オーロラ週5往復

札幌~ウラジオストク ウラル航空週3往復(運休中・12月16日から再開予定)

 

合計しても週43往復ですから、来年には一気に倍以上になる計算です。羽田発着路線についてはロシアへの割り当てが日ロ各2枠分、合計4枠あったので納得としても、成田や関空からの路線も増えまくっていますので、ちょっと増えすぎではないでしょうか?

 

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背景にあるのはロシアからの訪日客の急激な増加です。日本政府観光局の調べでは今年1~9月のロシアからの訪日客は前年比22.2%増の8万700人。これはベトナムの29.1%に次ぐ高い伸び率だそうで、近年のロシアから日本へのビザ要件緩和が呼び水となっています。これが日本~ロシア航空路線の開設ラッシュにつながる理由のひとつなのは間違いありませんが、この8万700人という数字、月単位に直すと約9000人弱、1日当たりだと300人程度。ボーイング777クラスの大型機1往復かA320クラスの小型機2往復で十分賄える人数です。いくら伸び率が高いとは言え、これだけでは航空路線が増えまくっている理由としては弱いですよね。

 

もう一つの大きな理由は以前の当ブログの記事でも触れた、一部地域への電子ビザによる手続きの簡素化。2017年8月30日のウラジオストクを皮切りに電子ビザの対象地域は拡大しており、ハバロフスクやユジノサハリンスクなどのロシア沿海地方、今年の10月からはサンクトペテルブルクでも電子ビザでの渡航が可能となりました。JALやANAがウラジオストクへの路線開設を計画したのも、近年成田からロシア沿海地方への路線開設が相次いでいるのも電子ビザの対象地域拡大を受けてのもので、日ロ双方で観光客が増える見込みがあるから日本~ロシア間の路線開設ラッシュが起きたのではないかと思われます。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 

www.jiji.com

 

そして、近い将来には電子ビザの対象はロシア全土に広まるかも知れません。ロシアのプーチン大統領が2021年1月1日以降、外国人観光客向けにロシア全土に入国できる統一電子ビザを導入する方針を示したためです。今の段階ではまだ本決まりではないですが、大統領が公言したという事は実現可能性は高いと思われます。

現在、ロシアに入国するには前述の電子ビザ対象地域以外は正規のビザ取得の手続きを取る必要があり、手続きの煩雑さがロシアへの旅行客を遠ざけている一因です。現在でもウラジオストクなどは電子ビザで簡略化されていますが、他の都市への移動は不可、入国場所も限られるなどの制約があります。統一電子ビザが実現すれば煩雑なビザ申請や移動の制約から解放され、ロシア旅行のハードルはグッと下がるので日本からの観光客が急増する可能性を秘めているのです。

tabiris.com

 

恐らく、2020年の日本~ロシア路線の開設ラッシュはこの電子ビザの対象拡大を見越してのものであると考えられます。航空会社側の思惑通りになる、とは限りませんが、2021年以降に統一電子ビザが実現すれば、ロシアへの観光ブームが起きる可能性もあります。ひょっとしたら数年後には日本~ロシア間の航空路線は日本~中国までは行かなくとも、日本~台湾や日本~韓国の航空路線と同等の規模になるのかも知れません。その為にも是非統一電子ビザは実現して欲しいですね。

 

 ↓ロシアの統一電子ビザができればロシア方面への地球の歩き方などのガイドブックもバリエーションが増えるかも知れませんね。

 

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