〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

ANAの737−700型、今後はどうなる

今回はYoutube限定でANAの737−700型を取り上げました。

 


迷旅客機列伝「主役のはずが日陰者」不運の新型機・ANA737-700(前編)

 


迷旅客機列伝「主力のはずが日陰者」不運の新型機・ANA737ー700(後編)

 

 

今じゃ忘れられてるかもしれませんが、最初はこの機種だけで小型ジェット機をすべて賄おうとしてたんですよね。発注を決めた2003年は国際線は同時多発テロやイラク戦争、経済悪化などで需要が冷え込み、国内線もJJ統合でANAの絶対的優位が脅かされていた頃。ANAも選択と集中を進めていた頃でした。国際線は長距離路線を縮小して成長著しい中国路線にシフト、国内線も不採算の地方間路線を縮小し、伊丹発着路線の機材小型化と多頻度運行化、ホテル事業の売却や機種削減など、収益拡大のためなりふり構わぬリストラを進めましたが、737−700型の発注もダウンサイジングと多頻度運航、内際兼用による近距離国際線の拡大を目論んでのことだったと思います。

 

戦略そのものは間違っていなかったと思います。実際、その後の日本の航空業界は機材のダウンサイジングと多頻度運航が主流になりましたし、ANAの近距離国際線も90年代とは比べ物にならないほど拡充しました。特に中国路線に関してはJALよりも広大なネットワークを構築しています。しかし、統一機種として選定したのが737−700型、というのは少々小さすぎました。動画内でも触れた通り、プレミアムクラス設置で座席数が減ったことで767−300との差が大きくなりすぎ、需要の低い地方路線では単価の高いプレミアムクラスは供給過剰。これが原因でANAは途中から737−800に切り替え、さらには近距離国際線のA320neo発注の遠因になったのではないかと思います。

 

では、今後ANAの737−700はどうなるのか。私の個人的な考えですが、近距離国際線用にA320neoが入ったことで国際線はそっちに任せ、国内ローカル線用に回されるのではないかと思います。他社との競争の面ではパーソナルモニターもコンセントも機内Wifiもない737−700はサービス面で見劣りしてしまいますし、機齢10年前後ならそろそろ内装の手直しも必要な頃。それなら機内設備も充実しているA320neoを737−700の代わりに国際線に入れ、押し出した737−700で経年化したA320ceoや737−500の入れ替えを行う、と考えるのが自然でしょう。おそらく、その際に機内もプレミアムクラスを撤去してモノクラス仕様にするのではないでしょうか。

 

とは言ったものの、エアドゥなどの他の会社にリースされる可能性もあると思いますし、思い切って737−700は全部売却、なんてこともあり得るかもしれません。結局は所有者であるANAの戦略次第なのでいち素人がどうこう言える話ではないのですが、少なくとも737−700のポジションが今のまま、というのだけは考えられません。今後の処遇によってはこの話、続編が必要になるかも・・・?

 

 

全日空商事 1/200 ANA 737-700 JA03AN NH20020
 

 

「リンク」が倒産してしまった本当の理由

まず解説一発目は先日アップした最新作から。

 

 

九州地盤の地域航空会社として就航準備を進めたものの、お金が足りなくて倒産したリンク。就航計画では福岡と北九州をハブに展開をするようでしたが、地方路線中心という事業計画に不安を覚えて出資者が集まらなかったのが致命傷となりました。

 

しかし、地方路線中心のリージョナル航空会社というビジネスモデルは決して珍しいものではなく、アメリカでは大手航空会社の地方間路線を委託運行する会社が数多く存在します。有名どころではMRJ最大の発注先でもあるスカイウエスト航空や、アラスカ航空系列のホライゾンエアなどで、これらの会社の路線が枝葉のようにアメリカの中小都市をきめ細やかに結んでいます。アメリカのハブアンドスポーク方式はリージョナル航空会社が支えていると言っても過言ではありません。

 

日本でもリージョナル航空会社の成功例があり、仙台空港をベースにANAの地方間路線を補完する存在のIBEXエアラインズと、名古屋空港静岡空港をベースに、主にJALの撤退路線に就航して規模を拡大したフジドリームエアラインズFDA)の2社が代表例です。いずれも大手航空会社と手を結びつつ、経営の独立性は維持している事、そして母体企業が存在する事が共通点です(IBEXは会計ソフト会社日本デジタル研究所が親会社、FDAは静岡の物流グループ・鈴与の完全子会社)

 

リンクがスターフライヤーと手を結んだのも、SFJの東京ー北九州線の利用者を取り込み、自社の宮崎線や松山線に誘導する意図もあったのではないかと思います。しかし、SFJ自体が中小航空会社レベルの事業規模であり、後ろ盾としては心許ないものでした。

航空会社はどうしても初期コストが高くなるので、資本力のある会社がバックにいるか否かが成功の分かれ道となります(でかいバックがいてもダメなケースもあるわけですが、それはまた別の機会に)。特にリージョナル航空会社は需要の小さい路線とターゲットにするという特性上、採算性の面で厳しいものがあります。FDAも鈴与が腹を括って全額出資したからこそ、周囲の環境や外野の声に左右されることなく会社を軌道に乗せられましたし、IBEXも日本デジタル研究所が出資しなければ今頃会社自体が存在しなかったかもしれません。

日本のリージョナル会社やコミューター会社は大手航空会社の系列か、就航先の自治体の支援があるか、さもなくば会社を支えてくれる母体があるかのいずれかであり、単独で航空会社を立ち上げようとしたケースは計画段階で行き詰まるか、就航に漕ぎ着けてもすぐに行き詰まって消えて行きました。それだけ航空会社は軌道に乗せるのが難しい事業であることを示しており、勢いだけでは絶対に成功しません。

 

動画内ではリンクが行き詰まったのはお金がなかったからと結論づけましたが、もっと言えばバックアップしてくれる後ろ盾がいなかったのが致命傷でした。もしきちんとした会社がバックについていれば、あるいは最初から競合しようとせず、大手の会社のフィーダー路線として生きる道を選択していれば、リンクのフルカラーのATR72が九州の空を飛んでいたのかも知れません。九州ベースの短距離路線・というターゲットは悪くはないんですけどね。

ブログ始めました

初めての方は初めまして。

Youtubeニコニコ動画で私の動画をご存知の方は、いつも動画をご覧頂き、ありがとうございます。

 

まず簡単に自己紹介を。私はYoutubeニコニコ動画で航空や鉄道系の解説動画をアップしています、akamomoです。

現在は航空会社の栄枯盛衰や歴史、経営戦略やトンデモ要素などを紹介する「迷航空会社列伝」と、東京ー大阪間の鉄道と航空の争いを中心に戦後日本の交通の歴史を紹介する「東海道交通戦争」を中心に投稿しています。

 

これからこのブログでは投稿した動画の補足説明や解説、航空や鉄道関連の話題を紹介していきたいと思います。どうぞ宜しく。