〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

内装から見るZIPAIRの方向性

12月18日、JAL(日本航空)が100%出資する中長距離国際線LCCのZIPAIRが787の初号機の機内をお披露目しました。上級クラスにあたる「ZIPフルフラット」が18席、エコノミークラスにあたる「スタンダード」が272席の合計290席と、JAL時代の1.5倍の座席数になります。

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特筆すべきは上級クラス。シート自体はジャムコ製のヘリンボーン式フルフラットシートで、KLMオランダ航空などと同じものだそうです。180度フルフラットで少なくとも座席の快適性はフルサービスキャリアと同等のようです。また、上級クラス、エコノミークラスとも黒と白を基調とした落ち着いたデザイン。ピーチやジェットスター、エアアジアなど、基本的にLCCはカジュアルなデザインで明るい色を基調とする会社が多いのですが、ZIPAIRはそれらのLCCとは一線を画しているのが内装のデザインからも伺えます。

一方のエコノミーのシートは横9列、シートピッチ31インチとJAL本体の横8列、シートピッチ34インチと比べるとかなり狭く感じますが、国内線用の787と同じサイズですので、取り立てて狭いという訳でもありません。31インチというシートピッチはスクートやエアアジアX、ジェットスターと言った中距離LCCとほぼ同じですし、JAL以外の航空会社は国際線でも787は横9列仕様。しかもANAの787-8はZIPAIRと同等の31インチですから、ある意味「ANAの787と同等のシートサイズ」とも言えますね(ANAの名誉の為に言いますが、同じ787でも-9型のシートピッチは34インチとJALの国際線と同等です)

その一方で機内モニターはエコノミーはもちろん、上級クラスでもなし。その代わりに機内WiFiを設置し、全席にタブレットホルダーやコンセント、充電用USB端子を設置し、手持ちのスマホやタブレットでインターネットや動画などを見られるようにしています。個人モニターを付けない事で0.5トンの軽量化に成功し、燃費効率が良くなるという効果もあるそうです。

 

そして、内装とは別に注目したいのは西田社長のコメント。ZIPAIRの成功に不可欠な要素として「定時性」を挙げ、「安全以外では一番優先度が高く、機材の稼働率向上に直結する」と、顧客満足度向上と機材稼働率向上による収益拡大を図るとしています。

機材稼働時間を伸ばして収益力を高めるのはLCCの常道と言えますが、その分機材運用に余裕がなくなり、一度遅れが出ると他の路線にも波及し、定時性は総じて悪くなりがちです。その為、消費者の間では「LCCは遅れるのが当たり前」という認識が強く、実際、国内線の定時運航率ランキングではピーチやジェットスタージャパン、バニラエアといったLCCは下位に沈んでいます。

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air.tabiris.com

 

「定時性向上」を掲げる社長に落ち着いた雰囲気の内装、FSCとそん色ないシート。これらから導き出されるZIPAIRの方向性は単なる価格重視で低コストなLCCではなく、必要なサービスを取捨選択し、価格を抑えつつも上質感を与えるコストパフォーマンス重視なLCC、どちらかというとMCC(ミドルコストキャリア)寄りのLCCなのではないでしょうか。中長距離路線だと明るい色よりも落ち着いた内装の方がリラックスできるでしょうし、価格重視だけどよくも悪くもノリの良い既存のLCCの雰囲気を敬遠する層もいると思われます。今後発表されるであろうサービス内容で方向性ははっきりすると思いますが、ひょっとしたらZIPAIRは既存のLCCとは異なるコンセプトやサービスを提供することで従来のLCCとは異なる客層を掘り起こそうとしているのかも知れません。今後のサービス発表に期待したいですね。

 

 

 

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