〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

酒は飲んでも呑まれるな・・・相次ぐ航空会社の酒に関する不祥事

すいません、仕事が忙しいのと新作動画の制作でブログの方が滞り気味になっていました。しばらくぶりに更新する内容が不祥事関係と言うのもアレなんですが・・・

 

10月28日、ロンドン・ヒースロー空港発羽田行きのJAL44便に乗務予定だった副操縦士が、イギリスでの基準値を大幅に上回るアルコールが検出され、その場で現地の警察当局に拘束されました。乗務前の会社の検査ではアルコール反応は見られなかったものの、その後航空機に向かうバスの運転手が副操縦士からアルコール臭を感じて空港の保安担当者に連絡。警察の呼気検査で規定値0.09mg/lに対し約10倍の0.93mg/lのアルコール量が検出され、その場で身柄を拘束されてしまいました。

 

JAL副操縦士、英国で拘束 乗務前アルコール検査基準を大幅超過

 

副操縦士の会社への説明では出発時刻の20時間前までに滞在先のホテルでワイン2本とビール5本を飲んだとしていますが、確かにそれだけの量を飲めば、アルコールが体内に残っていてもおかしくありません。日本の法令では乗務8時間前の飲酒を禁止していますが、呼気検査の基準に関しては日本国内では明確な規定はなく、各社に任せられています。一方のイギリスでは呼気検査や血中濃度の基準が決まっており、副操縦士はいずれも基準値を大幅に超えた数値が検出され、悪質性が高いとして逮捕されてしまいました。呼気検査に使われた機械も息を吹きかけるだけの旧型で、事件を受けたJALでは今月中に新型機械への入れ替えを行うとしています。さらに国交省も相次ぐ飲酒トラブルを受けて基準を強化するなど対策に乗り出しました。

 

飲酒で拘束されたJAL副操縦士、29日に判決 国交省は基準強化

headlines.yahoo.co.jp

 

更にANAでも酒に関する不祥事が相次いでおり、10月25日にANAウィングスの機長が飲酒による体調不良で乗務できなくなり、代替パイロットの手配で5便が遅延。またパイロットではありませんが、10月3日にはパリ支店長が羽田行きANA便の機内で酒に酔って乗客にけがを負わせ、諭旨解雇処分となっています。

ANA、子会社パイロット飲酒で5便遅延

ANA、パリ支店長が酒酔いで乗客けが ワイン6杯、諭旨解雇

 

さらに言えばJALも2年前に副操縦士が乗務12時間前の飲酒禁止の規定を破った上に機長や駆け付けた警察官に暴行を加えて逮捕される不祥事を起こしており、前述の新型アルコール検知器はこの不祥事を受けて入れ替えを行っている最中でした。

JALの副操縦士、断酒を虚偽申告 2年前から飲酒

 

今回の件に限らず、飛行機のパイロットは少しのミスが取り返しのつかない大惨事になる可能性もある程大きな責任を背負っており、酒気帯び状態での飲酒などもってのほか。それ故乗務前の飲酒は他の乗り物よりも厳しく制限されるはずなのですが、意外にも航空法ではパイロットの飲酒に関する規定はなく、呼気検査の基準に関しても各社まちまちでした。パイロットの数が少なく、特殊な職業であった時代なら「飲酒を含めた自己管理ができていて当然」と各個人や会社の倫理観にゆだねることもできたと思いますが、航空会社や航空機の数が増え、世界的にパイロットが足りなくなってきている現代では残念ながらパイロットの質や倫理観にも差は出てくると思います。これを機会にパイロットの飲酒に関する基準を明確化し、違反した場合の罰則や検査体制の強化などを整備する必要があるのではないかと思います。

 

ところで、酒に関するトラブルは何も航空会社に限った事ではなく、私たちの日常でも起こりうることです。パイロットでなくとも過度な飲酒で酩酊状態になり、他人に迷惑をかけたり、ましてや暴力沙汰になるような行為は現に慎むべきでしょう。ANAのパリ支店長の件はまさに酒での失態で全てを失ってしまったケースであり、このケースに限らずとも、酒の席での不祥事が命取りになってしまった例は多々あります。

また、日本は比較的酒の席でのトラブルには寛容なお国柄ですが、海外ではそうじゃない国の方が多数派で、公共の場での飲酒は禁止になっている国が多いですし、欧米では公共の場で酩酊状態になるのは軽蔑の対象になります。先日の渋谷のハロウィンのバカ騒ぎなんかは、海外の人から見れば「公共の場で泥酔して暴れたり物を壊したりする野蛮な行為」と映って軽蔑の対象になってもおかしくないと思います。さらに言えば飲めない人や未成年に飲酒を勧める行為も海外では御法度。一見すると他の国でも酒を飲んでバカ騒ぎしているように見えても、ちゃんと節度を守って飲んでいたり、場所をわきまえていたりしますので、公園の花見などで普通に酒を飲んでいたり、電車やバスで酔いつぶれてたりする人を普通に見かける日本の方が世界的に見れば異常とも言えます。

 

今回のJALの副操縦士の一件は何百人もの乗客の命を預かるパイロットとしては許されざる行為であり、酒気帯び状態のまま操縦して万が一の事があった場合の事を考えると、乗務前に拘束されたのは不幸中の幸いとも言えます。しかし、一連の酒に関する不祥事は酒に対して寛容すぎる日本の文化にも一因があるような気もします。私はお酒は好きですが、誰かに強要されたり度を過ぎて飲み過ぎるのは好きではありませんし、そろそろ泥酔に寛容すぎる日本の酒文化は修正する必要があるのではないかと思います。一連の不祥事を単に航空会社の問題と片づけず、私達にも起こりうることと考えて他山の石としなければならないのではないでしょうか。