〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

日本貨物航空、整備記録改ざんと事故隠蔽で業務改善命令喰らう。

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日本郵船グループの貨物航空会社「日本貨物航空(NCA)」が航空機の整備記録を改ざんしていたとして、国土交通省から「業務改善命令」を出されてしまいました。この他にも報告義務がある事故報告を怠ったなど、安全管理が極めてずさんだと判断され、航空事業者としては初めての「連続式耐空証明」の取り消しまで喰らってしまいました。

通常、航空機は1年毎に飛行機の構造や強度などの検査を受け、安全性を確認する「耐空証明」を受ける義務がありますが、一定の整備基準を満たした事業者に対しては、毎年の検査が免除される「連続式耐空証明」が交付され、基本的には1年毎の検査を受けなくても良くなります。現在、この「連続式耐空証明」は11社が認められていますが、認められた会社は厳しい安全基準を満たし、十分な整備体制を持っていると国にお墨付きをもらったようなもの。それが取り消されるという事は、「お前の会社は安全基準を満たしていない」と言われるようなものですから、日本貨物航空の犯した不正がいかに重大な事かが分かるかと思います。

 

国交省、NCAに事業改善命令 整備記録改ざん、連続耐空証明はく奪

 

問題が表面化したのは6月16日、「整備記録に事実と異なる記載が見つかった」と日本貨物航空が発表し、全11機の運航を停止した事から。それ以前の2017年1月にバードストライクで機体前部に運航を中止する必要がある程の大規模な損傷を受けましたが、航空日誌には「小修理」と記載してそのまま運航を続けました。運航中に大修理が必要なほどの損傷は「航空事故」として国に報告する必要がありましたが、NCAは報告せずにそのまま運航。さらに2018年3月にも大規模損傷を受けるほどの事故があったにも関わらず、5月まで国交省には報告しませんでした。

これを受けて国交省が立ち入り検査に踏み切り、調査の結果、整備記録のデータ改ざんが複数行われていたことが発覚します。先の全便運航停止はこの結果を受けての事ですが、実際は「事実と異なる記載」で済む話ではありませんでした。2017年4月12日には関空に向かって飛行していたNCA便が落雷に遭い、関空到着後成田に回送して整備することになりましたが、その際、整備記録が不明確だったことで具体的な内容が読み取れず、適切に整備しないまま運航に戻されたり、今年4月には補給・交換が必要だったフラップの潤滑油を交換せず、整備記録に改ざんした数値を記録するなど、安全管理がずさんだったことが発覚し、今日の業務改善命令となってしまいました。

 

7月5日以後、安全確認が終わった機体から運航を再開していますが、7月20日現在、11機のうち運航に復帰できたのは2機だけで、残りの機体はまだ安全の確認が取れていません。運航停止の原因が記録の改ざんや不適切整備ですから、確認に時間がかかるのも当然と言えるでしょう。他社への振り替えなどで物流に影響が出ているほか、運航停止の長期化と連続式耐空証明取り消しによる検査強化などで、NCAの業績にも打撃を与えるのは間違いありません。NCA側は「追加の点検や整備をしなくても済むようデータを改ざんした。機体をより多く飛ばすためだった」という趣旨の説明をしているようですが、改ざんの代償はあまりにも大きすぎました。

 

航空会社に取って「安全運航」は最も優先されるべきものですが、その安全運航を軽視してると言われても仕方のないようなことをNCAは犯してしまいました。航空会社として整備記録の改ざんや不適切な修理は恥ずべきものであり、安全より目先の利益を優先したと言われても仕方がないと思います。今回の業務改善命令は当然でしょう。

しかし、考えようによっては大事故を起こして尊い人命を失い、会社の存続に関わるような事態になる前に不正が発覚した事は不幸中の幸いとも言えます。NCAは今回の一件を真摯に受け止め、再発防止と管理体制の徹底的な見直しを行って、今一度安全運航に対して真摯になって欲しいと思います。