最近ブログも動画の更新も滞り気味ですみません。6月は仕事が繁忙期でなかなか時間が取れませんでした。7月はある程度緩くなると思うんで頑張ります・・・
そんな中でアップした東海道交通戦争、今回は羽田空港の国際化を中心に取り上げました。
動画内ではアジアのハブ空港争いに出遅れた日本が、羽田空港の再国際化で巻き返しを図る、という書き方をしましたが、実際、アジア地域は巨大なハブ空港の建設が相次ぎ、人を呼び込むためのし烈な争いをしています。単に空港を作るだけでなく、各国の航空会社によるネットワーク構築による乗り継ぎ客争奪戦や、各空港のサービス競争にも発展しており、この競争がアジア地域のハブ空港の地位を押し上げる原動力になっているようです。
実際、スカイトラックスの2018年の最新空港ランキングではベスト10のうちアジアの空港は羽田と中部を含む5空港がランクインしています(ちなみに北米は一番上でバンクーバーの14位、アメリカのトップはデンバー空港の29位だそうで・・・)
www.bloomberg.co.jp
このランキングでは1位がシンガポールのチャンギ、2位が韓国の仁川、3位が羽田、4位が香港、7位が中部となっていますが、このランキングはあくまでも空港の設備やサービス面、乗り継ぎのしやすさなどを総合的に評価したランキング。利用者数や飛行機の発着回数、路線数と言った、空港の実力を表すランキングではありません(第一、お世辞にもハブ空港と言える規模でない中部がランクインしてる時点で(ry)
では、実際のところ、アジア最大のハブ空港はどこになるのでしょうか。利用者数や発着回数などの比較しやすい数字で見ていきましょう。
・利用者数
空港の利用者数は規模を示すには一番の指標。単純に利用者の多い空港=需要の多い空港と言えます。
で、下の記事にある「世界で最も忙しい空港ランキング」要は世界で乗降客数が多いランキングとも言えますが、世界一多いのはアメリカのアトランタ・ハーツフィールド・ジャクソン空港の約1億309万人。2位は北京首都空港、3位はドバイ国際空港、4位に東京の羽田空港がランクインしています。
では、アジア地域に限定したランキングを見て見ましょうか。
1位(全体2位) 北京・首都国際空港 約9580万人
2位(全体4位) 東京・羽田空港 約8540万人
3位(全体8位) 香港国際空港 約7270万人
4位(全体9位) 上海・浦東国際空港 約7000万人
5位(全体13位) 広州・白雲国際空港 約6590万人
6位(全体16位) デリー・インディラガンジー空港 約6350万人
7位(全体17位) ジャカルタ・スカルノハッタ空港 約6300万人
8位(全体18位) シンガポール・チャンギ国際空港 約6220万人
9位(全体19位) ソウル・仁川国際空港 約6220万人
やはり人口の多い中国の空港が上位を占めていますね。日本の空港でランクインしているのは羽田だけで、成田はトップ20位の圏外。関空や中部はお呼びじゃありません。
とは言え、大抵の空港は国内線と国際線を合わせた乗客数ですので、単純に国際ハブ空港としての乗り継ぎ客数を示す数値でないことには留意するべきでしょう。そんな中でも国際線しかなく、人口的にも大きくない香港とシンガポールが上位を占めているのは素直に凄いです。この2空港は早い時期から乗継客を重視した空港運営を行っていますので、さすがはハブ空港の元祖というべきでしょうか。
・発着回数
発着回数が多いという事は、それだけ乗り継げる路線が多く、ハブ空港たりえるという事。こちらは少し古い2015年のデータになりますが、国際空港評議会(ACI)の発着回数ランキングを参考にしました。ちなみに世界一位はまたしてもアトランタの88万2497回。二位はシカゴ・オヘア空港の87万5136回、三位がダラス・フォートワース空港の68万1299回、四位がロサンゼルス国際空港の65万5564回とアメリカの空港が上位4位までランクインしています。上位30空港で見てもアメリカの空港は半数以上の16空港がランクインしていますから、改めてアメリカの航空業界の巨大さが分かるのではないでしょうか。
それでは、アジアの空港に絞ったランキングを見ていきましょう。
1位(全体5位) 北京首都空港 59万169回
2位(全体15位) 上海虹橋空港 44万8213回
3位(全体18位) 羽田空港 43万8542回
4位(全体22位)香港国際空港 41万6900回
5位(全体26位)広州白雲空港 40万9674回
6位(全体30位)ジャカルタ空港 38万129回
うーん、さっきの旅客数ランキングに比べるとちょっと寂しいですね。シンガポールのチャンギや仁川がランク外になったのは意外です。旅客数3位のドバイも発着回数になると27位とかなり下になってしまいます。
発着数ランキングになると「大型機で大量に旅客をさばく空港」よりも「小型機でより多く本数を飛ばす空港」の方が有利になってくるので、大型機の比率の高いアジアの空港はランキングを落とす傾向にあるのかも知れません。
しかしそんな中でも国際線しかないのに発着回数の多い香港には驚きました。恐らく中国本土への利用が多く、便数も多く出ている分、チャンギよりも旅客数や発着回数を稼いでいるのでしょうか。
・貨物取扱量
ハブ空港は何も旅客だけではありません。元々ハブアンドスポークシステムは旅客ではなく物流システムのひとつとして生み出されており、最初に航空業界でハブアンドスポークシステムを生み出したのは貨物会社のフェデックスです。アジアのハブ空港争いは航空貨物を巡る争いとも言えます。
貨物取扱量ランキングは先ほどの発着枠ランキングと同じところを参考にしました。今度は前置きなしでアジアのランキングを見て見ましょう。
1位(全体1位) 香港国際空港 442万2227トン
2位(全体3位) 上海浦東空港 327万3732トン
3位(全体5位) 仁川国際空港 259万5674トン
4位(全体8位) 成田国際空港 212万2134トン
5位(全体10位) 台湾桃園空港 202万5291トン
6位(全体13位)北京首都空港 188万9830トン
7位(全体14位)シンガポールチャンギ空港 188万6880トン
8位(全体19位)広州白雲空港 153万7759トン
9位(全体22位)バンコクスワンナプーム空港 123万563トン
10位(全体23位)羽田空港 117万3961トン
11位(全体24位)深圳奉安空港 101万3691トン
12位(全体29位)インディラ・ガンジー空港 77万3896トン
貨物に関しては他のランキングよりもアジアの空港が多くランクインしています。ここでようやく成田もランキングに顔を出して来た他、台湾やバンコクなどの他のアジアの巨大空港もランクインしています。ひときわ際立つのは香港。全体でも一位な上にアジア2位の上海を100万トン以上も引き離しています。世界的に見てもフェデックス最大のハブであるメンフィスをわずかに上回る第一位。香港半端ないって!
・で、数字から見たアジア最強のハブ空港は?
利用者数や発着回数と言う面から見れば、北京首都空港が最強と言えるかもしれません。しかし、北京は人口の多い中国の首都ですから旅客数が多いのはある意味当然と言えますし、利用者の大半は国内線利用です。さらには中国の法律で国際線同士の乗継であっても中国への出入国が義務付けられており、この点でもハブ空港の定義を考えると北京はハブ空港と言えるかどうかは疑問の余地が残ります。
下のURLは国土交通省の資料ですが、世界の主要空港の就航都市数を見ても北京は97都市と他の空港と比べても見劣りしてしまいます(その点については日本も同じですが・・・)貨物量と言う面でも他の空港よりも少なく、北京を「アジア最強」とするのは少々ためらいます。
では、数字の面から見たアジア最強のハブ空港はどこか。個人的には総合的なデータを見る限りでは香港・チェクラプコク国際空港が最強なのではないかと思います。
貨物取扱量は文句なしのアジア1位、利用者数こそアジア3位ですが、国内線主体の北京や成田に対し国際線だけでこの旅客数ですから、国際空港としてはかなりの大規模空港と言えます。さらに発着回数の面でも羽田に匹敵する規模ですし、国際線旅客数に限ればアジア最大と言ってもいいでしょう。
元々香港は中継貿易として栄えた地域であり、現在でも貿易や金融が経済の中心ですので、人や物の往来の手段としてハブ空港は必要不可欠な存在であり、香港の生命線ともいえる施設。それゆえこれだけ強大になったのも納得ですし、昔から大きな影響力を持っているのも当然と言えます。
とは言え、シンガポールや仁川などの他のハブ空港が劣っているという訳ではなく、これらの総合的な力は互角と言えます。そう考えると日本の航空行政の出遅れ感を改めて感じてしまいますね・・・
↓データ的なものではないですが、世界の主要空港や旅客ターミナルなどを紹介した本です。私も買いましたがこれ見てるだけでも海外に行った気になれるのでお勧め。