〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

イラン航空の「古い飛行機を大切に使いましょう計画」継続?

今週はJALの長距離LCC参入やエールフランスの経営危機など大きなニュースが多かった航空業界ですが、ここに来てアメリカのイラン制裁のニュースが飛び込んできました。制裁対象には航空機の輸出も含まれ、アメリカ製のボーイング機はもちろん、アメリカ製部品を使用しているエアバス機も対象になるようです。

headlines.yahoo.co.jp

 

経済制裁の是非はさておき、これで一時は制裁解除で新型機の納入が進んでいたイラン航空を始めとしたイランの航空会社の機材更新が、にわかに危うくなってきました。2016年の制裁解除後はイラン航空はエアバス、ボーイングに新型機を大量発注し、100機を発注したエアバス機に関しては2017年から順次納入されてきましたが、777や737など80機を発注したボーイング機はアメリカ政府の許可が下りなかったのか、納入が先送りにされてきました。そこへきての今回の制裁ですから、やはり水面下では納入をストップされていたのではないでしょうか。イラン航空以外にもアーセマーン航空から737MAX30機を受注しているボーイングに取って、今回の経済制裁は大きな痛手になるのは間違いありません。

 

一方、イラン航空に納入された新型機も下記のサイトを見る限り、納入されたのはA330-300型2機とA321型1機、ATR72-600型8機の計11機。発注から納入までは通常1~2年かかる事を考えると、本来であればこれからが納入のピークだったはず。しかし、エアバス機の納入が2017年3月で止まっていることを考えると、ひょっとしたらアメリカ側から何らかの圧力がかかって納入がストップしていたのかも知れません。

flyteam.jp

 

さて、今後経済制裁が正式に発動された場合、イラン航空の機材更新はかなり苦しいものになる事が予想されます。ボーイング機の納入は絶望的ですし、エアバス機にしても欧州各国は今のところアメリカの制裁に追随する気配はありませんが、アメリカ製の部品をある程度使っている以上、イランへの輸出はかなり厳しくなります。残るATR機ですが、こちらはフランスとイタリアとの共同開発な上にエンジンもカナダ製(ただしメーカーはアメリカのプラットアンドホイットニーのカナダ子会社ですが)なので、こちらの方は輸出禁止の対象にはならず、何とか納入できるかもしれません(よくみたらATRだけは2017年12月まで納入が続いてましたし)。しかし、近距離路線用のATRだけでは到底間に合いませんし、より老朽化が深刻なのは中長距離用の大型機ですから、今回の経済制裁でイラン航空が受ける影響はとても深刻です。そうなるとまた中古のエアバスで凌ぐしかなくなるんですかね・・・

 

イラン航空の機材老朽化の深刻さは以前私が制作したこの動画を見て頂ければわかるかと思いますが、正直、空の安全に直結する民間の航空機の更新はイランに取って急務ですし、他国にも乗り入れる以上、その国の空の安全にも関わってきます。それだけに今回のトランプ大統領の決定は非常に憤りを感じていますし、ボーイングがダメとしても、せめてエアバスの納入は認めて欲しいところ。今後のイランの空が心配になるニュースですので、今後の展開が気になります。


迷航空会社列伝「古い飛行機を大切に末永く使わざるを得ない」イラン航空