〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

ピーチとバニラの統合でLCCはどう変わるか

3月16日の夜にANAホールディングス傘下のピーチアビエーションとバニラエアの統合のニュースが飛び込んできました。統合方法や一本化の時期などは未定ですが、統合後はピーチのブランドに一本化される予定です。

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昨年にピーチが子会社化されたあたりからピーチとバニラの経営統合は十分あり得る話だとは思っていました。機材は同じA320ですし、路線の重複も少ない。それでいて同じANAホールディングス傘下の航空会社になったわけですから、似たようなLCCが2社もあるのも非効率ですし、1社にまとめたくなるのも自然な事です。

 

しかし、ピーチとバニラは似ているようで社風も出自も全くの別物。ピーチは和製LCCの第一号として2012年に運航を開始したいわば和製LCCのパイオニア。当初はANAの出資は3分の1にとどめ、関西弁のアナウンスや高級車の機内販売、たこ焼きやお好み焼きなどの型破りな機内食販売など、安売りだけでない独自のサービスで顧客の支持を集めました。就航三年目で早くも黒字転換、日本のLCCでは唯一累積損失を一掃し、2017年の当期純利益は49億円と目下の業績は好調そのものです。

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一方のバニラエアはANAとエアアジアの合弁で設立された「エアアジア・ジャパン」が前身ですが、2013年10月に両社の合弁は解消。その後ANAがエアアジアの持ち株分を買い取り、12月に「バニラエア」という新しいブランドで再スタートを切っています。「リゾート」をコンセプトに成田~奄美線などこれまであまり注目されなかった地域の需要を掘り起こすなど、一定の成果はありましたが、そもそもの出自が合弁解消で宙に浮いた会社を急遽衣替えした会社ですから、最初から十分に準備期間を設け、ブランディングを徹底させたピーチとの差は歴然。業績についてもピーチと比べると芳しくなく、累積損失は120億円に上っています。両社の統合に関してはバニラの業績の悪さがピーチの業績にまで影響を与えないかが気がかりです。

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そして、業績以上に懸念しているのがピーチとバニラの社風の違い。独力で経営規模を拡大し、ベンチャー気質のあるピーチと、ANAの傘下にあり、各セクションの責任者もANAからの出向者で固められているバニラとでは社風も経営方針も別物。この社風の違いが経営統合が進まなかった理由でもあり、今回の統合はある意味レガシーキャリアとLCCを統合するようなものかも知れません。

それでも両社が統合に踏み切るのは、ANAグループの中期計画で掲げられた中距離LCCの参入計画があるからでしょう。すでにエアアジアXやスクートが中距離路線に進出し、ピーチとしても今後の成長には中距離路線の進出が不可欠ですし、それには一定の人員が必要になる。バニラとの統合で重複路線を整理し、空いた人材や機材を新規路線の開拓や中距離路線進出に振り向けるという事でしょう。それには両社の社員の融和が不可欠なので、人材流出を最小限に食い止めるためにも、一刻も早く新しい体制を整えるべきです。近いうちに両社から正式な発表があるかと思いますので、そこで統合の方法や社内融和の方法、統合後の経営戦略や路線計画がどこまで出てくるか。まずはその発表を待ちたいところです。