〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

「北陸新幹線最強伝説」で空路は不要になったのか

2月6日ころから北陸地方を襲った大雪は今も福井県を中心に大きな影響を与えています。小松空港は8日の今日も全便欠航が決定、JRの在来線も金沢~福井間が未だに不通で関西・中京方面の特急は全滅。道路も北陸道はようやく全線開通したものの金津・丸岡ICは閉鎖したままですし、国道8号線もまもなく開通する見込みですが、最大で1500台が立ち往生し、自衛隊の災害派遣要請を行うほどの大災害になりました。

当然、私の住む富山県も雪の影響は大きく、6日は雪かきで仕事どころではありませんでした。で、それが原因なのか風邪をひいて只今体調不良です・・・

 

しかし、そんな危機的状況の中でも唯一影響がほとんどなかったのが北陸新幹線。6日に一部徐行運転を行い、「つるぎ」2本が運休となった程度でその後はほぼ定時運転を続けています。北陸新幹線が雪に強い理由は下記の記事を参照して頂ければと思いますが、この他ダイヤに余裕を持たせているのも定時運転に貢献しているようです。

trafficnews.jp

 

一部では税金の無駄使いの象徴のように言われている整備新幹線ですが、図らずも今回の大雪で雪国のインフラとしては有用なものだと証明した格好です。北陸新幹線のお陰で少なくとも富山・石川は完全な孤立化を免れましたし、「整備新幹線不要論」も少なくとも北陸と北海道新幹線に関しては大雪時のインフラとして必要な工事であると思うので当てはまらないのではないでしょうか。

 

さて、今回の大雪で「北陸新幹線最強伝説」にまた新たな1ページが加わったわけですが、だからと言って「もう対東京のインフラは新幹線だけでいいんじゃね?飛行機要らなくね?」と思うのは早計です。確かに今回の大雪で空港の滑走路は閉鎖され、航空路線は雪国での脆弱性を露呈しましたが、全ての災害に対して弱いとは限りません。

例えば1995年の阪神・淡路大震災の時も、2004年の新潟県中越地震の時も、2011年の東日本大震災の時も、新幹線は震災で路盤や線路設備が崩れ、長期間の運休を余儀なくされました。ここで「新幹線は地震に弱い」と言うつもりは毛頭ありません。むしろ日本の新幹線技術は地震大国日本を想定した作りになっていますし、震災後の復旧も比較的早いものですから、他国と比べてもかなり優秀なものだと思います。北陸新幹線についても阪神・淡路大震災の時の教訓が生かされていると思うので、仮に沿線で大地震が起こったとしても過去の新幹線ほどには被害を受けないかも知れません。

 

しかし、線で結ぶ新幹線はどこか1か所でも寸断されればそのネットワーク力を活かすことはできません。これに対して空路は極端な話、空港さえ無事なら飛行機を飛ばすことができますし、震源地近くの空港が使用不能になっても近隣の空港である程度はカバーできます。実際、東日本大震災の時も近隣の福島、山形、花巻の空港に羽田行きの臨時便が多数設定され、4月29日の東北新幹線運転再開までは空路が東京と東北各地を結ぶ重要なインフラとして機能しました。「雪に強い北陸新幹線があるから空路は不要」という話ではなく、新幹線も空港もインフラ設備としては必要なもので優劣をつけるものではないと思います。万が一の事態を考えると交通手段は多いに越したことはありませんし。

 

そしてもう一つ、今の羽田便は単純な東京~富山・石川県の移動手段だけでなく、国際線の乗り継ぎや航空貨物という新たな役割があるという事。過去の新幹線開業時の航空路の例と違い、羽田~富山線がある程度残ったのも羽田発国際線の乗り継ぎや航空貨物を考慮している部分もあると思います(ちなみに富山発の第1便だけが767なのも航空貨物を考慮しての事。737はコンテナが積めないという弱点がありますから)

北陸新幹線の開業で絶対的な信頼を寄せられるインフラができたことは喜ばしい事ですし、それが今回の大雪でも絶大な力を発揮しましたが、空路も大事なインフラの一つ。今回の大雪で「だから飛行機はダメなんだ」と言わず、両方を維持できるよう、使い分けることが大事なんじゃないかと思います。