〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

株価的には本当にヤバかったカナディアン航空

迷航空会社カナディアン航空、後編ではスターアライアンスワンワールドによる代理戦争に翻弄されるカナディアン航空と、買収合戦には勝利したものの、その後経営が悪化して破産に追い込まれたエアカナダのその後を描きました。

 


迷航空会社列伝「仁義なき空中戦」カナディアン航空 後編「踊らされたカナダグース」

 

史実ではエアカナダによるカナディアン航空の買収、救済合併となったわけですが、当時の新聞記事をまとめたサイトを見ると、カナディアン航空の買収金額と株価が異様に低い事に気がつきました。どうやら、カナディアン航空は市場からはほぼ見切りをつけられていたようです。

 

当時の記事によれば、エアカナダによるカナディアン航空の買収金額(カナディアン株の過半数)は9200万カナダドル、日本円にしてわずか65億円という少なさでした。これとは別にアメリカン航空保有するエアカナダ株25%もエアカナダが買い取りましたが、これも総額4080万米ドル(42億円)と、売上高18億米ドルの企業の買収額としてはかなり少ないものでした。

ちなみにエアカナダのカナディアン株買取金額は1株たったの2カナダドル(140円)。しかし、カナディアン航空がエアカナダの買収受け入れを表明した1999年12月3日のカナディアン株は1.7ドルでしたから、これでも高く買ってもらえた方だったんです。

 

これらの事から、買収時のカナディアン航空時価総額は日本円換算で100億ちょっとくらいしかなかったのではないかと思います。現在東証2部に上場しているスターフライヤーの10月2日時点の時価総額が116億7700万ですから、末期のカナディアン航空の価値は10機程度しか保有機がない新興航空会社と同程度だったと言えるでしょう。

 

・・・と、調べているうちに新たな事実が判明しました。カナディアン航空の1999年の決算は14億1900万カナダドルの赤字だったようです。日本円に直すと1000億円近い赤字ですから、数字の上からもカナディアン航空の経営が末期状態だったことが分かります。恐らく元々の業績が悪かったところにカナディアンの経営不安や買収合戦がさらなる客離れを引き起こして搭乗率が悪化し、損失を膨れ上がらせたのではないかと思います。

これだけの赤字額だとほとんどの路線が赤字だと思いますので、カナディアン航空は企業経営的には完全に行き詰まっていたと思います。恐らく民事再生法的な破綻をしても損失しか生まないカナディアンを救済するスポンサーは現れなかったと思います(支援したくても外資規制でできなかったアメリカン航空はともかくとして)

 

もしエアカナダが手を差し伸べなければカナディアン航空は運航停止で消滅か、最悪の場合スイス航空のように燃料代すら払えず飛行機差し押さえになっていたかもしれません。そう考えるとこんな資産価値ゼロの会社を丸ごと買ってくれたエアカナダこそがホワイトナイトだったのかも・・・?