〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

スカイマーク復活とANAとの関係

2年前に経営破綻したスカイマークですが、その後の業績は急回復しています。

先月には破綻以来初めて新しい機材の発注を発表し、再び路線拡大に舵を切りました。

 

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まあ、スカイマークの場合は本業の業績が悪かったというよりはA330導入のコスト増加分をペイできなかったのと国際線用に発注したA380の違約金問題が原因なので、737単一機種に戻して路線も絞り、身の丈にあった経営にすれば十分利益の出る事業構造だったわけなので、当然といえば当然なのですが。

もちろん、スカイマーク自身も定時出発率の改善やサービスの充実、価格戦略などの努力を行っていたのも大きな理由です。さらに言えば経営破綻後にスポンサーのインテグラルから来た佐山展生会長の手腕も大きく、特に破綻直後すぐに全国の支店を回って従業員の不安払拭に努めたり、従業員とのコミュニケーションを重視し、「従業員を幸せにする」と言い切る姿勢はコンチネンタル航空の再建を彷彿とさせます。

 

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名航空会社列伝「全米最高の航空会社」コンチネンタル航空 第1話・前進プラン

 

今の業績と会社の社風であれば、数年後の再上場も十分可能だと思います。

そこで問題になってくるのは、今後の成長戦略とANAとの関係でしょう。現在のスカイマークは国内線のみの運航ですが、国内線は世界情勢や戦争リスクに左右されにくいという利点がある一方、人口減少が予想される日本では今後の成長が見込めないという問題を抱えています。破綻前のスカイマークが出した答えが大型化と長距離国際線への参入でしたが、身の丈に合わない拡大策であえなく頓挫しました。

今のスカイマークが大型機を導入するとは考えにくいので、当面は安全性と定時出発率の向上という基本的な品質向上を図りつつ、737で飛べる範囲の近距離国際線への参入、というのが現実的な拡大策かなと思います。

 

そして、再建スポンサーでもあるANAとの関係。再建計画時に予定されていたANAとのコードシェアは未だに進まず、スカイマーク側にのらりくらりとかわされ続けている印象です。ANA側はコードシェアと同時に予約システムもANAのableに統一するよう求めていますが、able統一=航空会社の生命線である予約システムや顧客データをANAに握られることを意味しており、エアドゥやソラシドエア同様、事実上のANA傘下になることを意味しています。

独立性を維持したいスカイマークとしては予約システムの統一は絶対にしたくないでしょうが、ANAにしても本来必要のなかったA380を発注してまでもエアバスを味方にして再建スポンサーになったわけですし、再建したらはいさようなら、というわけにもいかないでしょう。今は付かず離れずの状態ですが、今後スカイマークの再上場が現実になれば、ANAとの関係をどうするかという問題が必ず出てきます。再上場を機にANAの保有株を売ってもらい、売却益を得ることでよしとするか、あくまでも予約システム統一とコードシェアを求めていくのか。ANAとの関係がどうなるかで、将来のスカイマークの姿は大きく変わってくるのかもしれません。

 

 

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