〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

LATAMワンワールド脱退・・・曲がり角に来ている「航空アライアンス」

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南米最大の航空会社グループでワンワールドに加盟しているLATAM(ラタム)は9月26日、デルタ航空との関係強化とワンワールドからの脱退を発表しました。デルタ航空がLATAM株20%を19億ドルで取得した上でLATAMに3億5000万ドルを投資、LATAMの債務削減のためにLATAM保有のA350型4機を引き取るほか、LATAM発注のA350型10機もデルタが受領する方向で調整しているようです。

提携には関係国の承認が必要ですが、デルタとLATAMは路線の重複がほとんどなく、承認はスムーズに行くだろうとの予測で、1~2年で承認が降りるのではないかとのこと。LATAMのワンワールド脱退時期やスカイチーム加盟の有無については未定ですが、承認が得られる見通しが立った段階で去就がはっきりするのではないでしょうか?

 

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LATAMは2012年にチリのフラッグキャリア・LANグループとブラジル最大の航空会社・TAMの統合でできた南米最大の航空会社グループです。合併に際してはLANグループがTAMを買収した格好であり、グループの本社はチリのサンディアゴ、CEOもLAN側のCEOが就任し、アライアンスもLANグループが加盟していたワンワールドを選択してTAMは加盟していたスターアライアンスを脱退するなど、LAN側が主導権を持っています。

南米各国に子会社を設立して南米屈指のネットワークを誇ったLANと、南米一の大国であるブラジルで1位のTAMの組み合わせはまさに「強者連合」というべきものであり、LATAMを抱えるワンワールドはアメリカン航空の豊富な南米路線を含め、南米地域では他のアライアンスを圧倒していました。

今回のLATAMの脱退とデルタとの提携は、その南米でのパワーバランスが根底から覆るほどの大事件であるといえます。南米での拠点を失う事になるワンワールドと、LATAMを手に入れた事で広大な南米路線を手にするデルタ。南米地区のアライアンス間の競争に大きな影響を与える事になりそうです。

 

ところでデルタとLATAMの提携のニュースが出る前、デルタのCEOは「スカイチームのアライアンス事業は成功していない」との見解を示しました。スカイチームが利用客や加盟航空会社にとって価値のあるものになっていないと不満を漏らしており、デルタは異なるアプローチでネットワーク構築を図るとしています。

スカイチーム内の力関係を考えるとデルタは盟主と言える立場ですが、そのデルタ自身がアライアンスのあり方に疑問を持ち、距離を置くのは異例と言えますが、最近のデルタの動きを見ているとそう思っていても無理はないなと思えるのです。

近年のデルタは大韓、エールフランスKLM、中国東方、ヴァージンアトランティック、アリタリアと言ったスカイチーム内外の航空会社に出資をしたり、出資表明をしたりと個別に提携関係を強化する動きが目立ちます。大半はスカイチーム加盟会社なのでアライアンス内の提携強化と取れなくもありませんが、単にアライアンスの結束を高めるだけなら自己資金を投入してまで出資する必要はないでしょう。

もしかしたらデルタはスカイチームは自社が主導権を握る形でのアライアンス再構築を目論んでいるのかも知れません。外資規制の問題があるので子会社化や合併は不可能ですが、この動きは90年代初頭にKLMがノースウェストに出資したりアメリカン航空がカナディアン航空に出資したような2社間提携に近いものを感じます。スカイチームの枠組みは維持しつつ、戦略上重要と判断した会社とは個別出資と言う形でより強固な関係を築く、と言うのがデルタの今後の提携戦略になるのではないでしょうか。

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一方、LATAMを失う見通しとなったワンワールドですが、他にも「脱退予備軍」は存在します。中東御三家では唯一アライアンスに加盟しているカタール航空。以前からアメリカン航空やカンタスとの不仲が囁かれ、独自のアライアンス設立を模索しているとの噂があり、ワンワールド脱退の噂が度々起こっています。

今のところは残留の方向ですが、アメリカンとは中東の航空会社の乗り入れ制限問題で対立し、カンタスともカタールと政治的に対立関係にあるUAEのエミレーツ航空と提携関係にある事から名指しで批判するなど関係はいいとは言えません(実際、ワンワールド加盟会社でありながらアメリカン航空とカンタスとは提携してません)

一方でカタール航空はキャセイパシフィック航空やIAG(ブリティッシュエアウェイズやイベリア航空などの親会社)にも出資しており、そのIAG内のブリティッシュエアウェイズもカンタスとは2013年に提携解消されるなどワンワールド内の関係は複雑化しており、あまり纏まりがあるとは言えません。今後の展開次第では他のアライアンスの草刈り場になったり、第4のアライアンス設立の際に引き抜きに遭う可能性も十分考えられます。

 

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そして日本でもスカイチーム加盟会社を中心にANAとJALの提携会社の取り合い合戦が激化しています。ANAがJALと提携関係にあったベトナム航空に出資して鞍替えさせたかと思えばJALはANAが提携していたハワイアン航空やアエロメヒコと提携してかっさらって行きました。その後もANAはアリタリア航空と、JALはアエロフロートと提携し、ガルーダインドネシアに至ってはANA、JAL両方とコードシェアを結んでいます。

流石にカンタスのようにアライアンス内の会社と手を切ってまで個別提携をするケースはありませんが、ワンワールド加盟前のJALは個別に提携関係を結ぶ「全方位外交」を模索していた時期があり、その時のパイプがあるので個別提携をやりやすい環境にあります。万が一ワンワールドが空中分解してしまったとしても、案外「全方位外交」を復活させて単独でやって行ったりして・・・?

 

そしてもう一社気になる存在は昨年スカイチームを脱退した中国南方航空の動向。当初は中国本土の加盟会社がいないワンワールド入りが囁かれていましたが、未だにその気配はありません。南航にもカタール航空が5%を出資しており、来年1月からはコードシェアも開始する予定。ひょっとしたらワンワールドとカタール航空の新アライアンスのどちらにつくか、動向を伺っているのかも知れません。

そう考えると今後の動向によってはカタール航空と中国南方航空が中心となった新アライアンス結成と言う、LATAM脱退よりも遥かに衝撃的なニュースが駆け巡るかも知れません。その場合、21世紀の航空業界の中心となって来たスターアライアンス、ワンワールド、スカイチームの三大アライアンスの枠組みが大きく変わる可能性は高いと思います。

カタール航空が新アライアンスを立ち上げた場合、恐らく真っ先に切り崩されるのはワンワールド加盟会社だと思いますので、JALにも影響が出てくる話になるかも知れません。航空アライアンスのあり方そのものに疑問を呈するアナリストも複数いるそうですし、近い将来、加盟会社のアライアンス移動に止まらない大きな変動があるかも知れません。今後の動向に注目です。

 

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