〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

300円で新幹線に乗れる⁉︎「博多南線」に乗ってきた

 

貝塚公園でヘロンを見た後、一旦地下鉄で博多駅に戻りました。次の目的はJR博多南線です。

 

 ↓この前の行程はこちら

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さて、新幹線の改札を抜けてっと・・・

 

って新幹線⁈
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そうなんです。実はこの博多南線、車両も規格も新幹線のものなんですが、なぜか「在来線」扱い。しかもこの区間を管理するのはJR九州ではなくJR西日本なので、形としては「JR九州の縄張りにJR西日本が新幹線規格の在来線で殴り込んできた」という格好になります。なぜこんな不思議な路線が存在するのでしょうか?


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種明かしをするとこの路線、山陽新幹線の博多駅〜博多総合車両所間の回送線を旅客扱いしているもの。回送線自体は1975年10月の山陽新幹線全線開業時に作られましたが、当然ながら旅客営業は全く想定されていませんでした。

ところが福岡市の都市化に伴い周辺の地域が宅地化されて行くと、車両基地の近くにある那珂川町の住民から「回送列車に乗せて欲しい」と言う要望が上がります。当時の那珂川町には鉄道がなく、博多へは路線バスで1時間近くかかる「陸の孤島」新幹線の回送列車なら博多まで一本で、バスよりもはるかに速く行けるのでこの要望も当然と言えば当然でした。

しかし、ここで大きな問題が発生します。要望が出された当時は国鉄分割民営化の真っ只中であり、国鉄改革法で「九州島内の在来線はJR九州が運行する」と定められた事が旅客化への大きな障害となり、その後しばらく運営会社を巡るJR側と地元との協議は難航しました。山陽新幹線の回送線という性格上、運営はJR西日本がやるのが筋ですが、国鉄改革法の規定がある以上、博多南線はJR九州に運営させるしかない。そんな両社の対立で何年も計画は進みませんでしたが、最終的には線路の保有と列車の運行管理はJR西日本が行うが、博多南駅の窓口業務はJR九州に委託する、という形で決着。1990年4月1日に博多南線が開業し、車両と線路は新幹線だけど扱いは在来線、という異例の路線が誕生したのです。ちなみに、博多南駅のJR九州への委託契約は2010年に解消され、以後はJR西日本の直接管理となっています。つまり、博多南駅は「九州に唯一存在するJR西日本の在来線駅」という訳です。

 

 

さて、そんな博多南線の列車ですが、朝ラッシュ時は1時間に3~4本、夕方のラッシュ時は1時間に2~3本、昼間は1時間に1本の運行です。列車は博多南駅のホームの関係上、8両編成の列車のみ運行され、「こだま」や一部の「ひかり」で博多駅に到着した列車がそのまま博多南駅まで直通します。

面白いのが博多までは名前付きの列車だったのが、博多南線に入ると名前が外れる事。逆に博多南発の列車は博多から先は「こだま」などの列車になる事実上の直通列車でも、博多南線内では博多止まり、名無しの「特急」として運転されます。ちなみにJRの特急で愛称がないのはこの博多南線が唯一の例だそうで、そういう意味でもレアケースです。

 

使用車両は主に「こだま」に使用される500系や700系「レールスター」。一部九州新幹線直通用のN700系が使用されることもあるようです。この日乗車した車両は500系でした。考えて見たら500系も既に登場から20年以上経ち、新幹線車両としては現役最古参になってしまいました。デザイン的には今でも十分通用するんですけどねえ・・・


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座席は全席自由席。このうち4〜6号車は「こだま」では指定席車として使用されますが、座席は2×2の広い座席。足元もかなり余裕がある「乗り得座席」と言えます。もっとも、博多南へは8分で着きますし、平日昼間の列車なのでガラガラでしたけど・・・あと明らかにご同業と思われる方が数名500系にカメラを向けてました。

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博多からあっという間に博多南駅到着。1日の利用者数は15000人と多く、博多南線のおかげで利便性が飛躍的に上がった那珂川町は人口を伸ばし、昨年めでたく「那珂川市」となりました。鉄道趣味的には面白い路線ですが、那珂川市民にとってはなくてはならない大事なライフライン。これだけの利用者がいれば廃線になる事はまずないでしょうし、福岡を訪れた際は8分間、300円の「新幹線乗車」を楽しんでみてはいかがでしょうか?

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この後は西鉄バスに乗り換えて大橋駅まで移動し、西鉄に乗車。再び福岡空港に戻って帰路に着きます。

 

 

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