〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

JALとANAがウラジオストクに同時就航・・・供給過剰にならないの?

日本航空(JAL)と全日空(ANA)はほぼ同時に来年春からの成田~ウラジオストク線の就航を発表しました。両社が競合する路線は数あれど、空港の開港や発着枠増加という要因がないのにほぼ同時に同じ路線に就航するという事は国際線では初めての事ではないでしょうか。


www.aviationwire.jp

 

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まずは両社の就航計画を見て見ましょう。JALはボーイング737-800型で夏スケジュールは一日1往復のデイリー運航。冬スケジュールは別途発表です。ダイヤは

成田11:20→ウラジオストク14:45

ウラジオストク16:25→成田17:40

となり、夏ダイヤ開始とともに就航したいとしています。

www.traicy.com

 

一方のANAですが、今回は冬スケジュール期間中の開設としか発表されず、運航スケジュールや機材、就航日については決まり次第発表となっています。機材はA320neoの可能性が高いですが、具体的なダイヤや機材も発表したJALに比べると出遅れ感が否めません。発表もJALの翌日と言う事を考えると、元々就航計画はあったものの、具体的な内容を練っている間にJALが先に発表してしまったため、ANAも慌てて発表したのかも知れません。

www.traicy.com

 

さて、日本~ロシア極東間の路線は基本的にロシア側の会社によって運航されてきました。現在成田~ウラジオストク線を運航してるのはワンワールド加盟会社のS7航空の週7往復とアエロフロート(但し運航はオーロラ航空)の週5往復の計12往復。この他にS7航空が成田~ハバロフスク線を週3往復、成田~ノボシビルスク、イルクーツク線をそれぞれ週1往復、関空~ウラジオストク線を週2往復運航しています。ここに来年からは日本側のJALとANAが一気に就航するわけですから、成田~ウラジオストク線は4社運航となり、恐らく座席供給量も倍になるでしょう。

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ここで疑問に思うのが「それだけ一気に便数増えて供給過剰にならないの?」と言う事。今でこそロシアから日本に来る際はビザ要件が緩和されていますが、日本からロシアに行くには未だにビザが必要なため、ロシアへの観光旅行へのハードルはまだまだ高いです。日本から海外に行く場合、大抵の国はビザなしで渡航できますし、日本から直行便が飛んでいる国でビザが必要なのはロシア、インド、パキスタン、カンボジア、エジプト、エチオピア、カタールの7か国しかありません。しかもロシアとパキスタン以外は空港到着後の申請で済んだり、事前に電子申請を済ませればビザが発給されたりとビザ取得のハードルが低いので、如何にロシアへの渡航のハードルが高いかがお分かりいただけるでしょう。

 

但し、今回JALとANAが就航予定のウラジオストクに関しては少々事情が異なります。2017年8月1日からウラジオストクのみの訪問であれば入国4日前までにロシア外務省の専用ページで申請すれば、8日間以内の滞在が可能な電子ビザが発行されることになり、以前に比べるとビザ申請のハードルは下がっています。実際、電子ビザの導入後は年間1万人も行けばいい方だったウラジオストクへの日本人観光客は1万8000人以上に急増、この勢いはまだ続いているそうです。最近ではウラジオストク版の「地球の歩き方」も出版されており、「日本から一番近いヨーロッパ」とも言われるウラジオストクの注目度はじわじわと上がってきているのです。JALやANAがこの路線に目を付けたのは、ロシアからの訪日客増加だけでなく、日本からウラジオストクへの観光客増加も見越してではないでしょうか。

 

tokyo.mid.ru

 

withnews.jp

 

ただし、それでも座席供給数が倍増する成田~ウラジオストク線が供給過剰ではない、とは言えません。電子ビザで簡素化されたとはいえ、それでもビザ取得が必要な事に変わりはなく、またかつて軍事拠点で外国人はおろかロシア人でさえ立ち入りが厳しく制限されていた過去から、ウラジオストクに心理的な壁を持っている人はまだまだ多いと思います。観光拠点として伸びる土壌はあるとは言え、ウラジオストクは日本人にとってはまだまだ「近くて遠い都市」なのです。

そんな中で発表されたJALとANAのウラジオストク就航ですが、正直な事を言えば特にANAは楽観視できないと思います。と言うのも現在成田~ウラジオストク線を飛ばしているS7航空もアエロフロートもJALと提携しており、相手国側でこれらの会社の支援を受けやすく、コードシェアもやりやすいJALに比べると、ANAは自力でウラジオストク側の地上支援や販売体制を構築する必要があるためです。ANAは今年の10月にもパースとチェンナイに就航しますが、これらの新規路線も提携相手の支援を受けにくい路線。この上、参入条件の良くないウラジオストクにまで手が回るのかという心配はあります。就航後も提携関係にあるJAL、S7、アエロフロートがこの路線でも手を組んでしまったら、ANAはかなり苦しい戦いになるでしょう。今回の発表の情報量の差を見ている限り、どうもANAが苦戦しているように見えるのですが・・・

 

とは言え、日本側の航空会社が就航することでウラジオストクの注目度が高まり、観光客増加の呼び水になる可能性は十分考えられます。また、来年の東京オリンピックを機にロシアとのビザ要件がさらに緩和されれば、行きやすくなったロシアへの観光需要自体が増えて、手軽に行けるヨーロッパとしてウラジオストクへの観光が爆発的に増えるかも知れません。来年の就航後、ウラジオストクやロシアへの観光客がどう推移するか、供給過剰で共倒れにならず上手く共存できるのか注目していきたいですね。

 

 

↓記事内でも取り上げた、ウラジオストクの「地球の歩き方」。モスクワやサンクトペテルブルクはまだないらしいので、この点からもウラジオストクへの観光需要が高まっていることが伺えますね。渡航予定はなくても一度手に取って眺めてみるだけでもウラジオストクと言う都市を知れていいかも知れません。

 

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