〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

キャセイパシフィック、香港エクスプレスを買収。今後のキャセイグループの行く末は

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3月27日、香港の大手航空会社キャセイパシフィック航空は、中国の海南航空グループ(HMA)から傘下のLCC「香港エクスプレス」を49億3千万香港ドル(約690億円)で買収すると発表しました。その後7月19日に買収手続きが完了し、香港エクスプレスは正式にキャセイグループの一員に。買収後も路線やブランドは維持されますが、CEOはキャセイから送り込まれます。ここ数年のアジアでのLCC設立ブームからは距離を置き、フルサービスキャリア一本で路線展開していたキャセイですが、今回の買収で方針を転換することになります。

 

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今回の買収について、モルガン・スタンレーは「香港の基盤を強化できるが買収額は割高」と疑問を呈す一方、ジェフリーズのアナリストは「キャセイと香港エクスプレスは異なる顧客基盤を持つ」と一定の評価を出すなど、市場の評価は分かれています。実際、香港エクスプレスの純資産価値は約11億香港ドルと買収額の2割強しかなく、2018年12月期の最終損益も1億4100万ドルの赤字と確投資効率を考えるとあまり良い買い物とは言えません。キャセイが就航していない日本の地方都市への路線は魅力的ですが、成田や関空などキャセイと香港エクスプレスがバッティングする路線も多く、買収後は香港エクスプレスの経営改善とキャセイと香港エクスプレスの棲み分けが課題になるでしょう。

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キャセイパシフィック航空は貿易港である香港の地の利を生かし、香港の役割が変化するのに合わせて事業を拡大してきました。イギリス統治時代は香港が中国大陸と世界を結ぶ玄関口となった事で急速に事業を拡大し、1970年代に香港がアジアの金融・貿易センターとしての地位を確立すると世界中にネットワークを広げ、香港をハブとした路線展開を行います。航空連合への加盟も早く、1998年に発足したワンワールドの創立メンバーでもありました。

 

しかし、中国の急速な経済成長で航空需要が急増すると中国国際、東方、南方といった中国本土の航空会社は世界各地へ直行便を飛ばし、香港を経由せずとも自国の航空会社や中国本土に乗り入れる航空会社の便を使って海外に行けるようになった事でキャセイの強みは薄れます。

さらに元々乗継需要狙いだったシンガポール航空に加え、タイ国際航空や大韓・アシアナ航空、近年ではJALやANAといったアジアの他の大手航空会社が乗継需要を重視するようになり、更にはLCCの台頭で価格重視の顧客が流れるなど、アジアの航空会社間の競争の激化でキャセイの業績は悪化していきました。

2016年12月期には得意のビジネス需要の低迷と燃料ヘッジの失敗で赤字決算となり、600人の人員削減などのリストラに踏み切りました。昨年度は黒字になったものの、決して経営は盤石とは言えません。香港エクスプレスの買収は堅調な需要がある日本路線が目的と言われており、LCC事業に参入する事で価格重視の顧客を取り込みたいところでしょうが、レガシー系列のLCCも成功と言えるのはカンタス系列のジェットスターくらいで、シンガポール航空系列のスクートは業績が低迷し、タイ国際航空系列のノックエアも赤字続き。ANA系列のピーチは好調ですが、規模的には他社よりも小さく、バニラとの統合作業など不透明要素が残っています。キャセイが買収した香港エクスプレスの経営も赤字であり、今後経営を立て直せなければ却って経営の重荷になる可能性もあり、今回の買収を上手く活かせるかどうかがキャセイグループの分かれ道になるのではないでしょうか。

 

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