〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

アシアナ航空売却で韓国やアジアの航空会社再編は起こる?

4月15日、韓国の大手航空会社、アシアナ航空を保有する大手財閥、錦湖(クムホ)アシアナグループは、金融支援と引き換えに保有するアシアナ航空株を売却すると発表しました。

アシアナ航空は1988年に韓国の航空会社参入規制が緩和された事に伴い、クムホグループによって設立され、以来クムホグループの中核企業・韓国第2位の大手航空会社として発展してきましたが、近年はアシアナ自体の業績悪化に加え、クムホグループ自体も拡大戦略とM&Aの失敗で7兆ウォン(約7000億円)の負債を抱え、資金繰りに窮した結果今回の売却となりました。今後は売却先を探すことになりますが、同じ韓国国内の大手財閥、SKグループやハンファグループが有力視されています。

 

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さて、今回のアシアナ航空の売却ですが、多額の負債を抱えるアシアナやクムホグループの再建にはこれしかなかったのだろうと思います。近年は機内食が用意できない問題で自殺者を出したり、クムホグループ会長自身も傘下企業の女子社員に喜び組のようなことをさせていた事が発覚するなど不祥事が続いていました。市場もクムホグループを離れる事で経営改善が期待できるとアシアナ株がストップ高になったくらいですから、クムホグループ単体での立て直しは企業統治面でも難しかったのではなかったのでしょうか。

 

その一方で今回の売却が韓国やアジアの航空再編に繋がる可能性は低そうです。大抵の国で設けられている航空会社の外資規制は韓国にもあり、アシアナ航空を外資系ファンドや国外の航空会社に売却するのは不可能。国内の競合他者への売却も大韓航空は独占禁止法に引っかかる可能性が高い上に大韓の親会社の韓進グループも会長の急死で今後のグループ運営が不透明になっており、アシアナ買収どころではないので現実的ではありません。イースター、ティーウェイ、チェジュといった中堅LCCも規模的にアシアナ丸ごと買収は不可能ですし、今回のアシアナ売却は傘下のエアソウル、エアプサンの個別売却は想定していませんから、今のまま推移すれば業界的にはアシアナの親会社が移動して終わり、となりそうです。

 

むしろ今後の懸念事項はアシアナの売却先探しが長期化する事でしょう。売却先として名前が挙がってるSKもハンファも「アシアナを買えるだけの財力とメリットがある」と言うだけで、当事者から手が挙がった訳ではありません。アシアナ売却のネックは売上高に匹敵する7兆ウォンの負債であり、クムホよりも大きいSKやハンファと言えども簡単に手は上げにくいと思います。

ひょっとしたら、アシアナに出資して乗り継ぎを強化したい海外の航空会社と組んでリスクを分散させることも考えられます。候補としては同じスターアライアンスに所属するユナイテッド、ルフトハンザ、ANA辺りが考えられますが、韓国の加盟会社がいないワンワールド加盟会社が鞍替え狙いで出資を持ちかける可能性もあります。いずれにしろ売却先が決まるまでは数ヶ月かかると言われていますので、この問題が決着するまでは時間がかかりそうです。

 

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