〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

地域航空会社の業務提携は地方路線維持の切り札になるか

12月10日、新聞各紙が日本エアコミューター(JAC)、天草エアライン(AMX)、オリエンタルエアブリッジ(ORC)、北海道エアシステム(HAC)、ANAウィングスの地域航空会社5社が共同運行やパイロット訓練、機材共通化の面で業務提携する方向で最終調整していると報じました。実現すればライバル関係であるJAL系とANA系の会社が手を結ぶ世界的にも珍しいケースとなります。


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報道によると、まずは九州に拠点を置くJAC、AMX、ORCの3社で先行して提携の準備を始め、その後他の2社にも広げていくとの事。具体的な提携内容はコードシェアや機体整備、パイロット訓練の共同化、機体の共通化など広範囲になります。

元々は2016年に国交省が設置した有識者会議で「将来の人口減少で存続が危ぶまれる離島やローカル路線の維持」の方法を検討し、将来的な合併や経営統合を模索するよう各社に促したもの。これについては系列会社の問題や収支状況の違い、各社に出資する自治体の株をどうするかと言う問題や地域性が薄れる事への自治体の反発などで統合は困難と判断され、まずは「提携」という形に落ち着いたようです。

九州3社で先行して検討に入るのも、既にこの3社は旅行商品開発などで協力関係にあり、特にJACとAMXは既に同じATR42型を使用しており、整備やパイロット訓練、AMX機の整備で運航ができない時のJAC機のリースなど深い協力関係にあります。今後検討が進められるであろう各社の提携も、恐らくJACとAMXのケースがモデルになるのではないでしょうか。

 

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さて、このグループの枠を越えた地域航空会社の提携ですが、それ自体は生活路線でもある離島路線の維持と言う面では有益でないかと思います。しかし、実現には越えなくてはならないハードルが山ほどあり、国交省の思惑通りに提携効果が出るかは微妙な所です。

 

まず機材の問題。前述の通りJACとAMXはATR42型への置き換えで既に共通化を終えており、HACも同型機の導入を決定しましたので、この3社に関しては問題はないと思います。

しかし問題は残るORCとANAウィングスの2社。このうちORCは社名変更時から使用しているボンバルディアダッシュ8-200型の更新時期が近付いており、近いうちに後継機を決める必要があります。ところが昨年からANAウィングス保有のダッシュ8-400型のリースとANAウィングス運航路線の一部移管が進められており、将来的にどうしたいのか良く分からなくなってきています。JACやAMXとの提携を考えれば老朽化が進むダッシュ8-200型をATR機に置き換えて共通事業機とするのが妥当な所ですが、今の流れではダッシュ8-400を追加購入してANAウィングスと共通化する方向に向いているように見えます。

そしてANAウィングスの方もプロペラ機は長年ダッシュ8シリーズを使用しており、ATR機は入れる気はなさそう。かと言って絶賛ATR機置き換え中のJACなどの会社が今更ダッシュ8に戻すとは思えないので、選択肢はORCやANAウィングスがATRを買うか、完全統一はせず別々の機体を使うのかの二択しかありません。今後の提携協議ではこの点も問題になると思います。

 

そして一番大きなハードルは共同運行の方法。同じ便にANAとJALの両方の便名が付くにしても、予約システムをどうするかという問題が発生します。AMXやORCにとっては大きな負担となるばかりか、ANAとJALどちらのシステムを採用するのか、その場合採用しなかった会社のコードシェアはどうするのか、色々と揉める要素が多そうです。

それ以上にJAL系のJACやHACの路線にANAの便名をつけられるのか、逆にANAウィングスの便にJAL便名をつけられるのかと言う問題が残ります。大抵の離島路線はどちらか片方の会社しか路線がありませんから、個人的にはJAL系しかない奄美群島路線をANA便で予約できれば嬉しいですが、現実問題、ライバル会社に塩を売るような事が本当にできるのか疑問です。

 

色々と不透明感が残る今回の業務提携意向ですが、厳しさを増す離島路線維持の為には思い切った対策が必要なのも事実。ここまで来たからには系列の垣根を越えて本当に利用者や住民の為になるような提携にして欲しいところですね。まずは正式発表と具体的な提携内容を待ちたいところです。