〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

「合弁会社」で明暗を分けたエアアジア・ジャパンとジェットスタージャパン

ほぼ2か月ぶりの投稿となりました迷航空会社列伝、今回は初代エアアジア・ジャパンを取り上げました。ANAとエアアジアとの合弁で作られた会社でしたが、結果はご存知の通り1年ちょっとで合弁解消、会社はANAが引き取って別ブランドでのLCCでの出直しと言う結果になりました。現在はYouTubeのみの公開ですが、今週中にはニコニコの方でもアップしますので、ニコニコ派の方はもうしばらくお待ち下さい。

 


迷航空会社列伝「水と油の同床異夢」1年3か月で消えたエアアジア・ジャパン(初代)

 

さて、動画内ではエアアジア・ジャパンが失敗した理由を「東南アジアのビジネスモデルをそのまま持ってきた事」「成田空港を拠点にして柔軟な運用ができなかった事」「ANAとエアアジアの考えの相違」としましたが、実際のところはANAとエアアジアの考えが真逆で、最後まで会社の方針が定まらなかったことが理由の殆どだと思います。もっと言えば経営権や路線計画はANA、ブランドや実際の運航管理をエアアジアにしたことで会社として統一した意思が取れず、双方の領域で対立してしまったのも上手く行かなかった原因ではないでしょうか。

このように複数の企業による合弁会社は出資した会社が対等な立場な分、主導権争いに陥って空中分解するリスクを抱えています。最近の例だと富士フイルムとアメリカのゼロックス(正確にはゼロックスのイギリス法人が出資)が共同で出資した「富士ゼロックス」が、富士フイルムによるゼロックス本体の買収計画を機に富士フイルムとゼロックスとの対立が表面化、喧嘩別れの危機に陥っています。最悪の場合、長年欧米とアジアで事業を棲み分けてきた富士フイルムとゼロックスが別々のブランドで世界規模で対立する事態になり兼ねません。

 

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しかし、JALとカンタスの合弁会社のジェットスタージャパンにはエアアジア・ジャパンのような主導権争いをすることなく、現在でも良好な関係を築いています。ジェットスタージャパンの場合はJALとカンタスのほかに三菱商事と東京センチュリーリースも出資しているため、間に入る出資者がいることで単純にJALとカンタスの対立になりにくいのもあると思います。

それ以上にJALとカンタスは元々同じ「ワンワールド」の加盟会社ですから、以前より関係ができていたことも合弁がスムーズに行っている理由ではないかと思います。さらにJALは出資はするもののジェットスタージャパンの経営には口出しをせず、基本的にカンタスとジェットスターにすべてを委ねていますので、そもそも主導権争いが起こる要素がありません。現在は国際線乗継利用の場合に限りJALとのコードシェアも行っていますので、カンタスとジェットスターとの関係同様、JALとジェットスタージャパンとの関係も上手く棲み分けができているのかもしれません。

 

両社の例を見る限りだと、合弁会社と言えどもどちらかの会社が主導権を握った方が上手く行くのではないかと思います。「船頭多くして船 山に登る」ということわざがありますが、対等の精神にこだわり過ぎると主導権争いが起こり、会社の方針も定まらずに迷走してしまうケースも少なくありません。エアアジアにとっては高い授業料でしたが、今度のエアアジア・ジャパンではそのしくじり経験を生かして成功を納めて欲しいものです。

 

・・・今のところダメそうな雰囲気だけど。