〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

登録記号狂奏曲のこぼれ話。

迷航空会社列伝、今回は番外編として航空機の登録記号にまつわる迷走を紹介しました。


迷航空会社列伝・外伝「登録記号狂奏曲~急成長が招いたJA8000番台の迷走~」

 

JA8000番台のひっ迫によるゴタゴタは本編をご覧頂くとして、ここでは動画では書ききれなかった登録記号にまつわるエピソードをご紹介しましょう。

 

①JA8000番台にはまだ空き番号があった

実はJA8000番台にはまだ登録されていない空き番号が若干ですが存在しています。例えば各番台のトップナンバーのうち、JA8200、8300、8400、8500と8900は旅客機として登録され、JA8600はアジア航測の事業用機、JA8700は航空局所有のYS-11、JA8800は海上保安庁の軽輸送機に使われましたが、「JA8000」「JA8100」は現在でも未登録です。

元々各番台のトップナンバーは割り当てが避けられる傾向にありましたが、残りの番号がひっ迫してくるとそうも言ってられなくなり、次々と割り当てられていきましたが、JA8000番台のトップナンバーであるJA8000は流石に登録を躊躇したのでしょうか。そうしているうちに新ルールでの登録がスタートし、最後まで残ったJA8000とJA8100は使われることなく欠番となったのではないかと思います。

 

また、「JA8093」も未登録のまま。しかもその前に登録された「JA8091」と「JA8092」は登録からわずか半年ほどで登録抹消となっています。登録記号がひっ迫している時期にそんな贅沢なと思いますが、実はその登録抹消になった機体、今でも日本の空を飛んでいるのです。

種明かしをすると、この「JA8091」と「JA8092」は実は政府専用機の747-400の事。当初は総理府が発注して受領したため、JAナンバーでの登録となりましたが、運用開始前に航空自衛隊に移籍し、自衛隊の機体識別番号が付けられたために登録抹消となったのです。

で、問題の「JA8093」ですが、政府専用機は合計3機を購入する計画があり、3機目の747の登録用として、この番号が用意されていました。最初の2機の納入から数年後をめどに購入するつもりで、実際に3機目の購入予算も原案に組み込まれたことがありました。しかし、その頃の日本はバブル崩壊後の経済低迷で、とてもじゃないけど数百億円もかかる専用機の購入などできない状態。3機目の予算は大蔵省の査定であえなく却下され、幻の政府専用機となってしまいました。政府専用機用の番号と言う特殊要素があったからか、以後「JA8093」の登録番号は一度も使われることなく、現在も欠番のままです。

この他にも確認できる限りではJA8592とJA8593が未使用っぽいです。他にも探せば出てくるのかも知れませんが、全部調べるのは流石に勘弁して・・・

 

②JA8500番台にターボプロップ機が登録されたわけ

動画内でも触れていますが、本来は3発ワイドボディ機用に割り当てられていたJA8500番台は最終的には小型ターボプロップ機から大型ワイドボディ機まで多彩な機種が登録される無法地帯となってしまいました。

で、そのJA8500番台のうち、ターボプロップ機が登録されたのはジェイエアのジェットストリーム31のJA8590とJA8591、日本エアコミューターのサーブ340のJA8594の3機。なぜ3発ワイドボディ機の枠にターボプロップ機が登録されたのか。理由は簡単。「本来登録されるはずだった機体が納入されず、宙に浮いていた番号だから」です。

本来JA8590~8599の枠に登録されるはずだったのは日本航空のMD-11。1990年にJALはMD-11を確定10機、オプション10機発注しており、確定発注分は1993年から順次納入されましたが、その際、JA8580~JA8589の登録記号が割り当てられました。一方のオプション発注分にはJA8590~JA8599の割り当てが想定され、登録が避けられてきましたが、MD-11が想定通りのパフォーマンスを発揮できなかった事と、双発機の長距離洋上飛行の制限が緩和され、777-200ERの投入が可能になったことで結局オプション分の10機は確定発注に切り替えられないままに終わりました。

いつまでたっても発注されないMD-11用にいつまでも登録記号を空けておくわけには行かず、結局JA8590~JA8599の登録記号は順次他の機体に付けられていきます。で、その頃に納入されたのが前述のジェットストリーム31やサーブ340ですが、本来のターボプロップ用だったJA8600~JA8800番台がパンク寸前だったため、宙に浮いていたJA8590番台の番号が割り当てられた、と言うわけです。

 

③登録記号の迷走は地上作業にも影響を与えていた

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日本の旅客機には空港のグランドスタッフなどが作業を行う航空機を識別しやすいよう、上の写真のようにノーズギアドアに登録記号のうち3桁を記入しています。しかし、かつてはこのペイントも下2桁だけでした。

かつての登録記号の区分であれば同じ機種の下2桁が同じ番号になる事はあり得ませんでしたが、登録記号の原則が崩れてくると、下2桁がかぶってしまう機体が出現してしまいます。例えば全日空のボーイング767は納入機体が多かった上にそこらじゅうの番台で登録されてしまったので、「JA8257とJA8357」や「JA8569とJA8669」のように、登録記号の下2桁だけで機体を判別するのが不可能となってしまいました。万が一これらの機体が隣同士のスポットに止まってしまうと、下2桁の数字だけを見て取り違えが発生してしまうかもしれません。そこでこの部分の登録記号は下2桁から下3桁に書き換えられることになりました。

しかし、登録記号が新ルールに移行すると、今度は同じ機種で下3桁のうち末尾が同じアルファベットの機体が続出します。例えば上記のANAの787の場合、登録記号は今のところ全て「JA8〇〇A」、777はJA8000番台で登録された機体を除くと「JA7〇〇A」となっており、下三桁だけを書く方式だとJA805AとJA705Aの下3桁がかぶってしまい、取り違えの可能性が出て来ます。まあ、先ほどの下2桁の例と違い、777と787は形も大きさも違いますから取り違えの可能性は少ないですが、それでも安全上間違いのリスクはないに越したことはありません。そこで今度は登録記号の上3桁を書く方式になったというわけです。

最も、これに関しては一部の機体を見ただけですので、末尾アルファベット2桁の機体がどう書かれているかは分かりません。そのうち確かめたいところではありますが、こうしてみると登録記号一つとってもいろんなエピソードがあるもんですね。

 

旅客機に詳しい方でない限り、気に留めることはない機体の登録記号。しかし、その登録記号の一つ一つから航空業界の発展の歴史が垣間見えたり、個々の旅客機の歴史やドラマが詰まっているもの。もし今度飛行機に乗ったり、空港に飛行機を見に行く機会があれば、そういった旅客機の登録記号にも目を向けてみてはいかがでしょうか。案外、新しい発見があるかも知れません。