〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

続・両備グループバス廃止問題 ボールを投げられた行政と住民はどう答えを出すのか

 2月10日に両備バスの廃止問題を取り上げた記事を書きましたが、その後の進展はどうなったのでしょうか。

www.meihokuriku-alps.com

 

まず仕掛けた側の両備グループ。バス廃止問題に対する特設サイトを設け、これまでの経緯や路線廃止届提出に至った理由、両備グループの地域交通に対する考えと想い、今の地方交通が抱えている構造的な問題を訴えており、利用者に対しても文書の端々で迷惑をかけていることに対して詫びており、問い合わせ窓口を設置して電話番号やメール送信フォームを公開するなど、問題を提起した当事者として利用者の不安や疑問に対処する姿勢を示しています。

バス路線廃止届提出に関する特設情報サイト |

 

一方、問題の発端になった八晃運輸。中国運輸局の認可が下りた後は予定通り新規路線の運行準備を始めています。まだ正式な運行開始日の発表はありませんが、近々プレスリリースを出すとしており、今のところ参入を撤回するつもりは無さそうです。

一方で両備グループの廃止問題については今のところ新たな言及はありません。まあ、下手に発言して反発を買うわけには行きませんし、直接的には無関係ですから、黙っていた方が得策だとは思いますが・・・

headlines.yahoo.co.jp

 

そして両備グループバス廃止問題は国会の場でも取り上げられました。2月16日には衆議院予算委員会が岡山で公聴会を行い、22日には予算委員会での質問でこの問題が取り上げられ、安倍首相も問題解決の為、支援などで協力したいと答弁しています。

世論も今のところ両備グループと小嶋社長を支持する声の方が多く、世論や国会を動かしたと言う点ではバス路線廃止という「劇薬」を使ってまで地方の公共交通問題を訴えた両備グループの捨て身の主張は、ある程度は「成功」と言えるでしょう。

http://www.ksb.co.jp/sp/newsweb/detail/8997

www.nikkei.com

 

そんな中、ヤフーニュース上に出たあるネット記事。この記事では両備グループの今回の措置を否定的にとらえ、廃止発表の日の夜に唐突に八晃運輸の新規路線を認可した中国運輸局の措置を「行政のやり方が不服だから国民を困らせる」という両備グループの施策を拒絶する行政サイドの強い意思表示、ととらえています。

headlines.yahoo.co.jp

両備グループの訴えに賛同する人が多い中、あえて逆行する記事を出して問題提起をしたこと自体は評価したいと思います。八晃運輸の新規参入も両備グループの大規模路線廃止も法律にのっとった正規の手続きとは言え、今回の両備グループの廃止発表はある意味利用者と自治体を人質に取ったようなものですから、この記事の主張も分からなくはありません。

しかし、昨年3月の八晃運輸の認可申請以降、両備側は何度も国や自治体に申し入れを行い、国交省にも認可反対の意見書を提出するなど事あるごとに問題を訴えてきました。また、地域交通の在り方を自治体や事業者、利用者や地域住民などで議論する協議会の設置を何度も申し入れるなど、両備サイドからは問題提起や話し合いの場を設ける提案は何度もされていました。にも関わらず、一部の自治体(というか岡山市)では協議会の設置すらなく、両備側の意見もろくに反映されないまま八晃運輸の路線認可が下りる見込みになるなど、両備グループの訴えは半ば黙殺されました。

今回の路線廃止申請はいわば両備グループの「最後の手段」であり、真に責められるべきは地域の公共交通をバス会社に丸投げし、将来の公共交通の在り方を真剣に考えてこなかった行政サイドであり、バス会社の窮状を見て見ぬふりをして来た一部の地域住民でしょう。この記事では「行政は両備のわがままに同調せず、毅然とした態度を取るべき」というスタンスの様ですが、むしろ今回の問題は地方交通の問題を放置してきた行政サイドに責任があるのではないでしょうか。

 

一方、こちらの記事は両備の姿勢を「規制緩和一辺倒の国交省と調整役を果たさない岡山市に投じた一石」としてとらえ、公共交通の維持には行政の支援が不可欠であり、行政が事業者と住民の調整役としてもっと積極的に動くべき、というスタンスです。その上で住民側も行政任せにせず、積極的に協議に参加して最善の方向に結論が出るように見守るべきとしています。地域の公共交通はその地域の自治体の問題であり、そこに暮らす住民の問題です。今までは路線の維持を事業者の良心や使命感に依存していましたが、そのやり方はもう限界に来ています。近年の井笠鉄道バスの破産や、青森の南部バスの経営破たんと隣県の岩手県北自動車への事業譲渡など、全国的にバス会社の経営が行き詰って来たのも明らかです。

headlines.yahoo.co.jp

 

今回の両備グループのバス路線廃止の手段そのものが正しい行動だったかと言われると、正直言って微妙です。しかし、これまでの経緯を考えると、こうでもしないとこの問題に注目が集まりませんでしたし、両備グループも正攻法ではないと分かった上であえて問題提起として行動を起こしました。実際にこの廃止発表が全国的に報道されたことで地方交通の窮状がクローズアップされましたし、自治体も問題解決の為、協議会の設置に動き出しました。今後は岡山のバス路線の在り方をどうするか、両備や八晃運輸だけでなく、行政や住民も真剣に議論する必要があるでしょう。両備が届け出た最初の廃止日まではあと7か月。もうこれ以上バス会社任せで問題の先送りはできないでしょう。部外者の私が言う事ではないとは思いますが、この協議会設置を機に、事業者、行政、地域住民の双方にとって最善の道を見つけられるよう、議論を重ねて納得のいく答えを出してもらいたいですね。

 

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