〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

アメリカ航空業界の真の勝者は誰?

迷航空会社列伝、今回は4回にわたってUSエアウェイズを取り上げました。ここまで長くするつもりはなかったんですが、結構書く事が多くて・・・

 


【前編:成り上がり会社の誤算】迷航空会社列伝「買収攻勢の馴れの果て」USエアウェイズ


後編後半・合併の果てに見たものは【迷航空会社列伝・USエアウェイズ】


後編前半・早めに動いたはずなのに、気が付いたら周回遅れ【迷航空会社列伝・USエアウェイズ】

 

予定よりも長くなってしまいましたが、それでもこの会社に関しては他にも語りたい事がありますので、今回からしばらくは動画では書ききれなかったUSエアウェイズ関係の事柄を紹介したいと思います。

 

動画ではUSエアウェイズとアメリカンが合併し、USエアウェイズ側が主導権を握ったと書きましたが、実際のところ、アメリカの航空会社の大再編で最後に勝った会社は一体どこなのでしょうか。

 

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まあ、実際のところこの長い長いサバイバルを生き残っただけでも十分勝者と言えるのですが、現在メジャーエアラインとして君臨している以下の4社がサバイバルの中でもブランドを維持し、大手の地位を確保した勝者と言えます。

 

1位:アメリカン航空(アメリカン+USエアウェイズ+アメリカウエスト+TWA)

2位:デルタ航空(デルタ+ノースウエスト)

3位:ユナイテッド航空(ユナイテッド+コンチネンタル)

4位:サウスウエスト航空(サウスウエスト+エアトラン)

 

 しかし、この4社のうち1位のアメリカン航空は動画の通り、CEOをはじめとした役員のほとんどはUSエアウェイズ側、さらに言えばそのUSエアウェイズを買収したアメリカウエスト出身の役員が占めていますので、本当の勝者はアメリカン航空と言うよりはそのアメリカンで上手く立ち回った旧アメリカウエスト航空と言えるかもしれません。

同様に3位のユナイテッド航空もコンチネンタルとの対等合併でロゴマークとカラーリングはコンチネンタル側のものを丸々採用しましたし、合併後のCEOのジェフ・スマイゼックとその後のCEOのオスカー・ムニョスはコンチネンタル出身と、どちらかと言うとコンチネンタル色が強くなっています。

 

こうしてみると、合併後の主導権と言う意味での勝者は、デルタ、サウスウエスト、コンチネンタル、アメリカウエストとも言えますね。

次に各社の2016年の決算を見て見ましょう。なお、株価は2018年2月16日のものです。

 

           売上高    営業利益     当期利益   株価

アメリカン航空   401.8億ドル  52.84億ドル  26.76億ドル 51.58ドル

デルタ航空     396.39億ドル     69.52億ドル  43.73億ドル 52.85ドル

ユナイテッド航空     365.56億ドル  43.38億ドル  22.63億ドル 66.52ドル

サウスウエスト航空  211.71億ドル  35.15億ドル  34.88億ドル   58.27ドル 

 

売上高では辛うじてアメリカン航空が1位ですが、デルタとの差は5億ドル強ほどしかなく、ちょっとした事で逆転されそうな数値です。また、利益面でも各社とも数十億ドル単位の営業利益を出しており、赤字続きで破産が日常茶飯事だった10年前がウソの様です。

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しかし、その中でも利益的に頭一つ抜け出ているのがデルタ航空。営業利益、当期利益とも4社の中ではトップで、利益率も営業利益ベースで17.5%とかなり高いものです。アメリカンとユナイテッドはそれぞれ11と13%と、これでも十分素晴らしいすうじなのですが、この2社と比べてもデルタの収益性の高さが際立ちます。そして、サウスウエスト航空も利益率16.6%と利益率ベースではデルタに匹敵します。各社とも足元の業績は好調ですが、その中でも高い利益率を誇るデルタとサウスウエストの2社が真の勝者と言えるでしょう。航空株を徹底的に避けてきたウォーレン・バフェットが再度航空会社への投資を始めたのもこの業績を見れば納得です。

 

日本でもJALとANAの業績は過去に比べると収益性はかなり高くなっており、一昔前では考えられなかった営業利益1000億円越えとなっていますが、アメリカの航空会社の業績の良さはそれ以上となっています。サウスウエスト以外は破産による人件費削減も業績改善の理由ですので、その辺は手放しでほめられるものではないのですが、「航空会社は高コスト&イベントリスクの高さで業績が悪い」という考えも、再編による過当競争の解消と経営システムの洗練でそろそろ過去の話になりつつあるのかも知れません。

  

 

 

 

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