〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

2018-2022年度ANAグループ中期経営計画に見る路線計画の展望

少し前の動画になりますが、航空各社の2018年度の運航計画をまとめた動画をアップしました。

 


【ANAグループ編】迷航空会社列伝特別編・2018年航空各社運航計画


【JALグループ編】迷航空会社列伝特別編・2018航空各社運航計画


【スカイマーク・エアドゥ・FDAなど】迷航空会社列伝・各社運航計画2018

 

今年は各社とも大きな路線開設や新機材導入のニュースもなく、比較的静かな1年となります。ここ数年は国際線の開設ラッシュが続いた反動とも言え、各社とも今年は足場固めの一年と位置付けているようです。また、来年度はANAはA380や787-10、JALはA350と国内線用787の導入があるため、それらの機材受け入れの為の準備の年でもあります。航空ファン的には話題が少なく物足りない一年かも知れませんが、その分来年は新機材導入や、東京オリンピックを見据えた国際線の新規開設や増便が期待されますので、来年の運航計画を楽しみに待ちたいところですね。

 

 

さて、2月1日にANAグループの2018~2022年度の中期経営戦略が発表されました。ここでもやはり東京オリンピックやアジア経済の好況、旺盛な訪日需要を見据えて国際線の拡大方針が明記されています。

2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略について|プレスリリース|ANAグループ企業情報

trafficnews.jp

 

詳細についてはまた解説動画を作ろうと思いますので、ここではANAグループの路線展望に絞って書きたいと思います。

ANAグループの大まかな収益構造は国内線と国際線で3分の1ずつ、残りの3分の1を貨物とLCC事業、航空以外の事業となりますが、今回の中期計画では国内線は現状維持、国際線は2018年比で150%、貨物は140%、LCCは200%、航空以外の事業で120%と、創業以来の収益の柱である国内線以外で稼いでいく方針が鮮明となっています。国内線に関しては少子高齢化でこれ以上の伸びは見込めませんので、これは妥当な計画かと思います。伸び率だけを見るとLCC事業を伸ばしていくようにも見えますが、ANAグループ全体で見れば1割にも満たない比率なので、倍になっても今後の収益の柱とは言い難い規模です。

となるとやはり今後の収益の柱であり最大の成長事業と見込んでいるのは国際線事業でしょう。中期計画通りに推移すれば2022年度のANAグループの国際線事業の売上は9000億以上となり、国内線を完全に上回ります。当然、それだけ拡大させるという事は今までの路線計画では考えられないような路線も開拓していかないと達成はできないという事。実際、ANAも今後の国際線戦略として自社路線網の空白地帯である「ホワイトスポット」への就航を掲げています。

 

では、そのホワイトスポットへの路線はどこが考えられるか。真っ先に思いつくのはJALしか飛ばしていないモスクワや、日本の航空路線が途絶えたブラジルへの路線です。このうちブラジル方面はスターアライアンス内にアビアンカ航空がいますので、比較的参入しやすいのではと思います(ただし、ブラジル方面に関しては過去に就航歴のある上にアビアンカより遥かに強力なLATAMの協力を得られるJALの方が参入しやすそうですが)。また、同じスターアライアンス内にいる会社がいる路線、という考え方をすれば、ターキッシュエアラインズのいるイスタンブール、エジプト航空のいるカイロ、エチオピア航空のいるアディスアベバ、南アフリカ航空のいるケープタウン辺りもホワイトスポットを埋める路線としては有力です。

そして、個人的に可能性があるんじゃ?と思うのが、ANAと提携しているエティハド航空の本拠地であるアブダビ。中東御三家の一角を占めるエティハド航空ですが、他地域の航空会社に出資して独自のアライアンスを作る戦略はエアベルリンの運航停止と穀潰しアリタリア航空の破たんで仕切り直しを迫られています。となると次の方策として考えられるのが、資本提携に頼らずに各地の有力航空会社と手を組む「全方位外交」。実際、アブダビにはエティハド以外にもヨーロッパやアジア各地の航空会社が乗り入れていますし、ANAもエティハド航空とはコードシェアを行っています。

エティハドもアジア側のパートナーを増やしたいところでしょうし、ANA側もアブダビに飛ばしてエティハドの路線網に接続できれば特に南ヨーロッパや中東・アフリカ方面への路線網補完が可能となります。JALが加盟するワンワールドには中東御三家の一角、カタール航空がいますし、もう一つの中東御三家のエミレーツ航空は既に自力で強大な路線網を築いていますから、これはお互いの為にも結構ありだと思うんですがどうでしょ?

 

その他の路線ではニュージーランド航空のいるオークランドやヨーロッパではJALのヘルシンキ線に対抗してスカンジナビア航空の就航地であるコペンハーゲンかストックホルム、東欧地域でLOTポーランド航空のいるワルシャワと、同じスターアライアンス内の航空会社でも直行便のない地域は結構ありますので、まだ伸びしろはありそうです。お隣韓国の大韓航空はタシケントやコロンボ、プラハにパラオなど、日本の航空会社ではまず飛ばさないような路線にまで飛ばして自社路線網を充実させていますので、今後のANAグループがどこに飛ばすのか、来年以降の路線計画に期待したいところです。