〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

JJ統合に立ちはだかった「公正取引委員会」の存在

東海道交通戦争、第5章中編はJJ統合を巡る攻防を描きました。


東海道交通戦争第六章「シャトル便戦争」中編

 

最高裁判所が「憲法の番人」なら、公正取引委員会は「経済の憲法」とも言われ、自由な市場競争を担保するための法律である独占禁止法を運用する、いわば「独禁法の番人」。特定の企業や団体が利益を独占しないよう目を光らせており、大企業の合併もここが首を縦に振らなければ実現は不可能です。

 

JALJASの統合の際も、統合で大手航空会社が減ることで寡占化が進み、運賃が高止まりすることを懸念して、問題ありとの見解を発表しました。当時の公取委の事例を転載します。

 

(平成13年度:事例10)日本航空(株)及び(株)日本エアシステムの持株会社の設立による事業統合:公正取引委員会

 

(1) 大手航空会社(JALJAS及び全日本空輸株式会社)が3社から2社に減少することにより,これまでも同調的であった大手航空会社の運賃設定行動が更に容易になる。

(2) また,就航企業数が少ない路線ほど特定便割引運賃が全便に設定される割合及びその割引率が低くなっており,大手航空会社数の減少は競争に重大な影響を及ぼす。

(3) このような状況の下,混雑空港における発着枠の制約等により,新規参入等が困難であることから,新規参入が同調的な運賃設定行動に対する牽制力として期待できない。

(4) その結果,航空会社が設定する運賃について,価格交渉の余地がない一般消費者がより大きな不利益を被ることとなる。

 

要は「競争相手が減り、新たな競争相手が育つ環境がなければ航空運賃が高止まりし、消費者に不利益をもたらす」というわけであり、JALJASも発着枠の返上や新規参入会社の支援といった譲歩案を提示し、国土交通省も新規参入会社の育成を約束してやっと承認を取り付けました。その後、5年に一度羽田空港の発着枠の配分を見直す制度ができ、大手航空会社の発着枠を回収して新規会社に再配分することである程度は競争が活発化しました。(もっとも、その新規会社もスカイマーク以外は某青い会社の支配下にあるので、本当に公正な競争なのかは疑問符がつきますが)

 

ともあれ、もしあそこで公取委がストップをかけずに無条件に統合を認めていれば、新規参入会社はろくな後押しも受けられずに力尽きて破綻し、本当にANAJALの複占になっていたかもしれません。かつては「吠えない番犬」と揶揄された公取委が吠え始めたのはこの辺りから。最近では某芸能事務所の件で調査を始めたというニュースで注目されている公取委。自由競争は野放しにすれば強者による寡占・独占を招くことにも繋がりますから、これからも「独禁法の番人」として目を光らせてほしいものです。