〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

「リンク」が倒産してしまった本当の理由

まず解説一発目は先日アップした最新作から。

 

 

九州地盤の地域航空会社として就航準備を進めたものの、お金が足りなくて倒産したリンク。就航計画では福岡と北九州をハブに展開をするようでしたが、地方路線中心という事業計画に不安を覚えて出資者が集まらなかったのが致命傷となりました。

 

しかし、地方路線中心のリージョナル航空会社というビジネスモデルは決して珍しいものではなく、アメリカでは大手航空会社の地方間路線を委託運行する会社が数多く存在します。有名どころではMRJ最大の発注先でもあるスカイウエスト航空や、アラスカ航空系列のホライゾンエアなどで、これらの会社の路線が枝葉のようにアメリカの中小都市をきめ細やかに結んでいます。アメリカのハブアンドスポーク方式はリージョナル航空会社が支えていると言っても過言ではありません。

 

日本でもリージョナル航空会社の成功例があり、仙台空港をベースにANAの地方間路線を補完する存在のIBEXエアラインズと、名古屋空港静岡空港をベースに、主にJALの撤退路線に就航して規模を拡大したフジドリームエアラインズFDA)の2社が代表例です。いずれも大手航空会社と手を結びつつ、経営の独立性は維持している事、そして母体企業が存在する事が共通点です(IBEXは会計ソフト会社日本デジタル研究所が親会社、FDAは静岡の物流グループ・鈴与の完全子会社)

 

リンクがスターフライヤーと手を結んだのも、SFJの東京ー北九州線の利用者を取り込み、自社の宮崎線や松山線に誘導する意図もあったのではないかと思います。しかし、SFJ自体が中小航空会社レベルの事業規模であり、後ろ盾としては心許ないものでした。

航空会社はどうしても初期コストが高くなるので、資本力のある会社がバックにいるか否かが成功の分かれ道となります(でかいバックがいてもダメなケースもあるわけですが、それはまた別の機会に)。特にリージョナル航空会社は需要の小さい路線とターゲットにするという特性上、採算性の面で厳しいものがあります。FDAも鈴与が腹を括って全額出資したからこそ、周囲の環境や外野の声に左右されることなく会社を軌道に乗せられましたし、IBEXも日本デジタル研究所が出資しなければ今頃会社自体が存在しなかったかもしれません。

日本のリージョナル会社やコミューター会社は大手航空会社の系列か、就航先の自治体の支援があるか、さもなくば会社を支えてくれる母体があるかのいずれかであり、単独で航空会社を立ち上げようとしたケースは計画段階で行き詰まるか、就航に漕ぎ着けてもすぐに行き詰まって消えて行きました。それだけ航空会社は軌道に乗せるのが難しい事業であることを示しており、勢いだけでは絶対に成功しません。

 

動画内ではリンクが行き詰まったのはお金がなかったからと結論づけましたが、もっと言えばバックアップしてくれる後ろ盾がいなかったのが致命傷でした。もしきちんとした会社がバックについていれば、あるいは最初から競合しようとせず、大手の会社のフィーダー路線として生きる道を選択していれば、リンクのフルカラーのATR72が九州の空を飛んでいたのかも知れません。九州ベースの短距離路線・というターゲットは悪くはないんですけどね。