〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

JALの長距離LCC参入発表、新たな路線開拓に期待

先日の一部報道でJALの中長距離LCC参入のニュースが報じられましたが、今日、正式に参入計画が発表されました。7月に準備会社を設立し、2020年の春ダイヤをメドに就航を目指す計画です。

 

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LCC事業に積極的なANAに対し、これまでのJALはジェットスタージャパンには出資したものの、一定の距離を置いてきました。LCC参入が本格化したころはJALはまだ再建中であまり身動きが取れなかった事、再建後もいわゆる「8.10ペーパー」による縛りで事業拡大に制限があったことで、LCC事業拡大がし辛かったのもあると思いますが、JAL自身、どちらかと言うとフルサービス事業を発展させる方向に行っていたのもあるのかと思います。長距離路線は運航コストが掛かる分、ビジネスクラスやプレミアムエコノミーの比率を上げて客単価を上げる戦略を取る会社が多く、JALもANAも長距離用機材はエコノミーの比率が低くなっています。恐らくJALも下手にLCCに参入して自分から客単価を下げるのは得策ではないと考えていたと思います。

しかし、世界のLCCはここ数年で短距離から中長距離路線に拡大しており、アジア地域でもエアアジアXやシンガポール航空傘下のスクートが日本→東南アジア路線やホノルル線を運航したり、カンタス傘下のジェットスターがオーストラリア路線を飛ばしたりしています。大西洋路線でもノルウェーエアシャトルなどが参入するなどLCCの守備範囲は年々広くなっています。今のところ日本から北米大陸や欧州に飛ばすLCCはありませんが、今後も参入がないとは言えません。ANAがピーチを作った時と同様、どうせLCCが来るならいっそ自分たちで、という事なのでしょう。

 

ビジネス需要が大きいロンドンやパリなどの大都市や乗り継ぎ需要の大きい路線は今後もフルサービスキャリアのJALで運航する方が得策だと思いますが、例えばローマやアテネ、デンパサールなど観光需要は大きいけど客単価は低い路線はLCCの方がいいかもしれません。また、関空発着の長距離路線は観光需要主体で客単価が低い傾向にあるので、こちらをLCCで飛ばすのもアリではないかと思います。ANAが今のところ長距離LCCに関心がないのも参入の理由でしょうが、長距離路線のノウハウが豊富なJALの強みを生かす、と言う点でも中長距離LCCの方がいいのかも知れません。

 

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機材はボーイング787-8型2機の予定ですが、新造機になるのか、JALの787を改修するのかはまだ決まってません。座席数は300席程度になるようですが、上級クラスを設置するかどうかもこれから。JALのLCCが成功するかどうかは、JAL本体のブランドとどれだけ差別化できるか、ピーチのような単なる格安にとどまらない、魅力のあるブランディングができるかどうかにかかっていると思います。恐らくLCCの詳細が分かるのは来年以降かと思いますが、787の航続距離なら例えばかつてJALが就航していた路線で観光需要が高いローマやラスベガス、あるいはこれまで直行便がほとんどなかったマイアミやアテネ、タヒチなども十分射程圏内に入ってくるのではないでしょうか。これまでなかった長距離LCCの分野でJALがどんな一手を打ってくるのか。期待して待ちたいところです。

マロウドインターナショナル成田の滑走路ビューが素晴らしすぎた

5月5日に東京に行ってきましたが、宿泊先は東京都内ではなく、なぜか成田空港で取りました。その理由は「マロウドインターナショナル成田」の高層滑走路側確約ランウェイ16プラン。このホテルに滑走路ビューの部屋がある事は知っていましたが、まさかゴールデンウィークの時期に空いているとは思っていませんでした。という訳で東京での用事を済ませた後、一路ホテルへと向かいました。

 

www.marroad.jp


 

ホテルに到着したのは16時半頃。チェックインした後に気付いたんですが、通常だと15時チェックインなのにこのプランだけ13時チェックインだったみたいです・・・他のプランよりも高額なのはこの辺も理由の一つなのかも知れません。だとしたらちょっともったいない事をしましたね・・・次は13時ちょうどにチェックインするか。

 

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部屋は12階のセミダブルでした。で、肝心の部屋なんですが、あまりの滑走路ビューぶりに興奮して部屋の写真撮るの忘れてました・・・ちなみに部屋からは滑走路だけではなく京成電鉄の線路も見下ろすことができます。

 

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では、この滑走路ビューで撮れた航空機の数々をご紹介しましょう。なお私は撮影技術、機材とも素人レベルですので、写真の質については余り期待しないでくださいw

まずはアメリカン航空のボーイング787。去年さくらの山に来たときはデルタとユナイテッドはバンバン撮影できたんですが、アメリカンだけは第二滑走路着陸、離陸もタイミングが合わなかったので撮ることができなかったんですよね。1年越しでようやくアメリカビッグスリーを押さえることができました。

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続いてエミレーツ航空のA380。これは去年も撮影できたんですが、滑走路間近だとその大きさはけた違いですね。

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タイ国際航空のA380とエアタヒチヌイのA340。距離があるとは言え、同じエアバス機でもその大きさの差は歴然。ちなみにこのエアタヒチヌイの成田~パペーテ線は週二便の運航ですが、就航地自体も成田、オークランド、ロサンゼルス、パリの4都市だけで、日本はもちろん、アジア全体でもこの機体が見られるのは成田だけと言うレア機材です。さらに言えばエアタヒチヌイのA340も今年から787に順次置き換えられる予定ですので、個人的に貴重なショットになったとニヤニヤ。どうでもいい事ですが個人的に好きな旅客機はボーイング757とエアバスA340。747やA380のような巨大な飛行機も好きなんですけど、スマートな機体の方が好きなんですよね。

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キャセイパシフィック航空のボーイング777-300と747-8F。キャセイ自体は成田のほかに羽田、中部、関西、千歳にも就航してますし、成田からは直行便4往復、台北経由2往復の合計6往復が飛んでますから珍しくもなんともないのですが、こうやって2機が並ぶ光景、それも旅客便と貨物便が並ぶのは日本では珍しいのではないでしょうか?ちなみにキャセイパシフィックのボーイング747-400は2016年に退役してますが、貨物機に関しては747-8Fに置き換わり当分安泰。この下の画像で紹介する日本貨物航空の747-8Fと合わせ、貨物に関してはまだまだ747は現役の様です。

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明けて5月6日、日本貨物航空の747-8Fとマレーシア航空のA350。これも撮った後で知ったのですが、マレーシア航空のA350はこれが日本初就航だったようで、何気に初就航機材をゲットしてしまったみたいですw

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フェデックスのMD-11Fの着陸。旅客型からは全機引退して久しいMD-11ですが、貨物型はまだ現役の機材が多いです。が、生産中止から20年近くたつ機体ですから、その貨物機からも退役する機体が出ているようで、成田にもいつまで飛んでくるかは分かりません。恐らく日本で撮れる最後の三発大型ジェット機になると思いますので、撮れるうちに撮っておきたい機体です。

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そして、今回の成田訪問で最大の目的だったのがデルタ航空のボーイング757。この機種自体が日本ではレアな機体ですが、2003年ころからノースウエスト航空が成田発のアジア路線用に757を常駐させて定期運用した事で、成田では757の撮影が比較的容易となりました。デルタ合併後も757の常駐は続き、グアム、サイパン、パラオ路線に使用されてきましたが、今年に入ってこれらの路線が相次いで運休となり、この日のサイパン線を持って成田でのデルタ757使用路線は消滅してしまいました。この部屋を撮ったのも最後にどうしてもこの機体を撮影したかったからで、無事目的を果たすことができたのは良かったです。

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ANAの767とのツーショット。757と767は操縦資格を共通化した初めての機種ですが、こうして並べると似ているようないないような。

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そして定期路線最後のテイクオフ。残念ながら離陸の瞬間は窓の向こう側になってしまったので撮影することはできませんでした。でも最後にデルタの757を見ることができて良かったです。ここ数年、デルタの日本路線の運休、撤退が相次いでいますが、ノースウエスト時代から日本とアメリカの空の懸け橋になった会社、お願いだから全面撤退だけはしないで・・・

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デルタの757を見送ってから少ししてチェックアウトの時間になったので泣く泣く退出。ちなみにチェックアウト時間も11時ですので、滑走路ビュープランを使えば22時間は滞在できる計算です。この滞在時間の長さと間近に航空機が見える絶景ぶり、大浴場やスポーツジムの利用券が付くことを考えると「リピート率ナンバーワン」のプランなのも納得です。ホテル内もコンビニやレストランなど最低限の飲食施設もありますし、空港や成田市内への無料バスも出ていますし、東京駅からも直通の高速バスがありますから、空港利用者だけでなく、飛行機撮影が目的でも十分すぎるくらいの環境の良さです。

ただ、今回は滑走路ランウェイ16に近い部屋で、航空機の着陸が多かった時間帯だったのが幸いでした。翌朝はホテルの反対側の第二滑走路の着陸が多かったですし、確か冬場は離着陸の方向が反対だったので、必ずしも今回のように撮影三昧となるとは限りません。ですがそれを考慮してもホテルからの飛行機撮影にはこれ以上ないくらいのロケーションであることには変わりありません。

 

これはまたリピートしたいなあ・・・もちろん今度は13時チェックインでたっぷり粘ります。その前に撮影技術と機材を何とかしろ

 

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イラン航空の「古い飛行機を大切に使いましょう計画」継続?

今週はJALの長距離LCC参入やエールフランスの経営危機など大きなニュースが多かった航空業界ですが、ここに来てアメリカのイラン制裁のニュースが飛び込んできました。制裁対象には航空機の輸出も含まれ、アメリカ製のボーイング機はもちろん、アメリカ製部品を使用しているエアバス機も対象になるようです。

headlines.yahoo.co.jp

 

経済制裁の是非はさておき、これで一時は制裁解除で新型機の納入が進んでいたイラン航空を始めとしたイランの航空会社の機材更新が、にわかに危うくなってきました。2016年の制裁解除後はイラン航空はエアバス、ボーイングに新型機を大量発注し、100機を発注したエアバス機に関しては2017年から順次納入されてきましたが、777や737など80機を発注したボーイング機はアメリカ政府の許可が下りなかったのか、納入が先送りにされてきました。そこへきての今回の制裁ですから、やはり水面下では納入をストップされていたのではないでしょうか。イラン航空以外にもアーセマーン航空から737MAX30機を受注しているボーイングに取って、今回の経済制裁は大きな痛手になるのは間違いありません。

 

一方、イラン航空に納入された新型機も下記のサイトを見る限り、納入されたのはA330-300型2機とA321型1機、ATR72-600型8機の計11機。発注から納入までは通常1~2年かかる事を考えると、本来であればこれからが納入のピークだったはず。しかし、エアバス機の納入が2017年3月で止まっていることを考えると、ひょっとしたらアメリカ側から何らかの圧力がかかって納入がストップしていたのかも知れません。

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さて、今後経済制裁が正式に発動された場合、イラン航空の機材更新はかなり苦しいものになる事が予想されます。ボーイング機の納入は絶望的ですし、エアバス機にしても欧州各国は今のところアメリカの制裁に追随する気配はありませんが、アメリカ製の部品をある程度使っている以上、イランへの輸出はかなり厳しくなります。残るATR機ですが、こちらはフランスとイタリアとの共同開発な上にエンジンもカナダ製(ただしメーカーはアメリカのプラットアンドホイットニーのカナダ子会社ですが)なので、こちらの方は輸出禁止の対象にはならず、何とか納入できるかもしれません(よくみたらATRだけは2017年12月まで納入が続いてましたし)。しかし、近距離路線用のATRだけでは到底間に合いませんし、より老朽化が深刻なのは中長距離用の大型機ですから、今回の経済制裁でイラン航空が受ける影響はとても深刻です。そうなるとまた中古のエアバスで凌ぐしかなくなるんですかね・・・

 

イラン航空の機材老朽化の深刻さは以前私が制作したこの動画を見て頂ければわかるかと思いますが、正直、空の安全に直結する民間の航空機の更新はイランに取って急務ですし、他国にも乗り入れる以上、その国の空の安全にも関わってきます。それだけに今回のトランプ大統領の決定は非常に憤りを感じていますし、ボーイングがダメとしても、せめてエアバスの納入は認めて欲しいところ。今後のイランの空が心配になるニュースですので、今後の展開が気になります。


迷航空会社列伝「古い飛行機を大切に末永く使わざるを得ない」イラン航空

ANAのA380デザインと機内仕様公開、これは本気でハワイ路線を獲りに来てる!

ANAが2019年春をめどに成田ーホノルル線に投入を予定しているエアバスA380の機内仕様とデザインが発表されました。

 

trafficnews.jp

ANAのA380、エコノミーにカウチシート ファーストはドア付き、4クラス520席

 

座席数は2階席がファースト8席、ビジネス56席、プレミアムエコノミー73席、1階席がエコノミー383席の合計520席。このうちファーストクラスは日本初のドア付き個室型シートとなり、エコノミーも後部60席はこれまた日本初となる「カウチシート」を導入。カウチシートはエコノミーの横3列のレッグレストを跳ね上げてベッドのように使えるようにしたシートで、エコノミー料金に追加料金を払う事で利用できます。カウチシートはニュージーランド航空などで導入されていますが、まさかここでA380に入れてくるとは思いませんでした。

さらにメインデッキ後方には多目的ルームを設置し、軽食やドリンクを自由に取れるバーカウンターを設けるなど、巨大なA380の客室を生かした設備を多数設けています。

そして外観の塗装もハワイでは神聖な動物であるウミガメをデザインした「FLYNG HONU」という特別塗装に。塗装自体は以前より公表されていましたが、今回の発表では3機とも別の塗装が施されるなど、かなり気合いの入ったもの。私は3機ともあの青いウミガメの塗装になるか、一機だけウミガメで後の二機は通常塗装になるのかと思っていたので、これはいい意味で予想を裏切られました。

この他にも機内照明や壁紙もハワイを意識したものとなり、機内Wi-FiコンテンツもFLYNG HONU専用のものを用意するなど、思った以上に力が入っています。

 

正直、ここまでハワイ路線に力を入れて来るとは思いませんでした。A380購入の経緯を考えるとANAに取っては必ずしも発注の必要のなかった機種ですが、3機と言う少なさを逆手に取り、特別塗装や実験的なシートレイアウト、ハワイ路線に特化したサービスやレイアウトと、「ANAのA380に乗ってみたい」と思わせる仕掛けがいくつもあり、特別感を演出する機材に仕上がりそうです。これは本気でハワイ路線を獲りに来てますね。

 

さて、そこで気になるのがJALとハワイアン航空の動向。JALにとってはハワイ路線は長年に渡る牙城ですし、ハワイアンにとっても自分のホームに正面から喧嘩を売られる訳ですから、両社とも何らかの対抗策は立てて来るはずです。特にこの2社は今年から提携関係にありますので、ひょっとしたら両社共同で何か仕掛ける可能性もあります。

個人的には今後のハワイ路線はANAとJAL・ハワイアン連合を軸にしてサービス合戦が繰り広げられるのではないかと思います。A380と言う飛び道具でANAがシェアを奪うのか、はたまたネットワーク力で勝るJAL・ハワイアン連合が押し返すのか。近年ハワイへの観光客は復調傾向にあり、再び人気が出ていますので、2019年以降、ハワイ路線の競争は激化しそうです。

 

 

ただ、一つ心配なのがこの2大勢力以外のハワイ路線運行会社、特に近年日本路線が縮小傾向にあるデルタ航空の動向。2大勢力のサービス合戦が激化すればするほど、他の航空会社は埋没してしまい、客足が遠のく可能性も考えられます。

触発されてデルタやユナイテッドなどの会社もハワイ路線のサービス強化に動いてくれれば一番いいのですが、近年のデルタの日本路線撤退傾向を考えると「儲からないならうちはいいや」とホノルル線撤退に動かないか少々心配です。考えすぎであればいいんですけどね・・・

 

両備グループバス廃止問題③だんだん「両備vs岡山市」になってきた

2月に2度取り上げた両備グループの路線バス廃止問題、最近また話題になってきましたので再び取り上げたいと思います。この問題の経緯は過去記事をご覧頂ければと思いますが、簡単に言えば両備のドル箱路線であり創業路線でもある「西大寺線」に八晃運輸のバス「めぐりん」が参入しようとし、両備グループが問題提起として赤字31路線の廃止を届け出た問題です。単なるバス路線参入の諍いにとどまらず、地方の公共交通の在り方に一石を投じたものでした。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 

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あれから2か月以上が経ちましたが、その後の経緯を簡単にご紹介します。

まず赤字路線の廃止問題ですが、廃止日を来年3月にそろえた後、3月15日に廃止届を取り下げました。元々が公共交通の在り方への問題提起が目的ですし、両備も本気で廃止にするつもりではなかったのでしょう。岡山県も公共交通の在り方と路線の維持・確保に向けた検討会を立ち上げるとして一定の成果を得ましたし、問題が長引けば両備サイドにも批判が来たでしょうから、ここが引き時であったと思います。

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その後、両備グループは4月17日にめぐりんの認可取り消しを求めて東京地裁に提訴し、舞台は法廷へと移ります。両備側の主張としてはめぐりんの停留所設置に際し、岡山市の道路占有許可手続きに誤りがあったにも関わらず認可され、手続きに瑕疵があり採算を度外視しためぐりんの認可は違法としています。

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これに対して岡山市は2か所については土地利用者の理解は得られていないものの、すでに両備グループのバス停があるから新設の影響はすくないから「有効」と判断、残り一か所は民間所有地なので感知しないと国に報告。両備側は反発して抗議文を提出するなど、問題の対立軸は「両備vs八晃運輸」から「両備vs岡山市と中国運輸局」になりつつある感があります。

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そして今度は両備バスと岡山電気軌道の労働組合が4月23日以降のストを通告。しかもそのストの理由が「めぐりん益野線参入による収益悪化で賃金カットになる可能性があり、雇用と生活水準の維持と益野線参入阻止を会社が国に働き掛けること」というこれまた異例のもの。建前は組合員の生活維持の為ですが、競合他社の参入阻止を掲げるストは聞いたことがありません。

そして23日には本当にストを実施。と言っても影響の少ない昼間の1時間だけですが、26日には午後1時~4時にストを実施、めぐりんの運航開始日の27日には大半の路線で終日ストを実施するなど、更なる混乱が懸念されました。

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そして今日、組合側はバスは運行するものの、運賃の収受はしない「集改札スト」に変更すると発表。実質的に無料でバスを走らせるという、これまた異例の対応となりました。昔は近鉄でも切符の収受をしない「集改札スト」が行われていたようですが、ICカードが普及した現在では困難なのか、近年では見られない手法です。

この方法ならお客様には迷惑をかけずに経営だけにダメージを与えられますが、ダメージを与えるのは競合路線であるめぐりんも同じ。よりによって運航開始初日に「集改札スト」をぶつけられるわけですから、いくら格安運賃でも「実質無料」にはかなう訳がありません。これはかなりうまい手だなと思います。最初から組合側はこれを狙ってたんじゃね?と思うくらいの手際の良さです。

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それにしてもこの間の岡山市の両備に対する対応は「塩対応」と言ってもいい位。先の認可問題に対する対立もそうですが、今回のストに関しても「労使間で話して回避して欲しい」と当事者意識ゼロの他人事と言わんばかりの発言です。

岡山市にしてみれば、廃止届やストでいたずらに岡山市の交通を混乱させる両備に対していい印象はないのかも知れません。しかし、元はと言えば赤字の路線バス問題を両備任せにして放置し、競合会社の参入発表があり両備が何度も問題を訴えてもろくに取り合わなかった岡山市にも責任があるはず。ここまで問題がこじれた以上、岡山市も当事者のひとりとして本気で問題に取り組む必要があるはずなのに、今のところそんな素振りはありません。

www.sanyonews.jp

 

とは言え、このままゴタゴタが続くのは両備にも、岡山市にも、利用者にも決していいことではありません。両備が認可取り消し訴訟と一緒に訴えていためぐりんの認可執行停止は24日に裁判所に却下されましたので、少なくとも4月27日の運行開始は阻止できなくなりました。今後認可取り消しの判決が出たとしても、それまでは西大寺線は2社競合になりますので、組合のスト戦術も長期的に見れば有効な手段とは言えず、むしろ更なる収益悪化や利用者の非難と言う形で組合に襲い掛かるかも知れません。

今のところ世論は両備に味方する人が多いものの、問題が長引けば次第に批判の矛先は八晃運輸や岡山市ではなく、両備側に向けられる可能性さえあります。そろそろ第三者(この場合は岡山県か政府になるかと思いますが)が間に入って、八晃運輸や周辺市町村も交えた問題解決の話し合いをする頃ではないでしょうか。そして、この問題だけでなく、岡山の公共交通の在り方、地方の公共交通を維持するための仕組みを真剣に議論する場も作る必要があるでしょう。

 

国会もこういう問題をもっと積極的に取り上げて議論する必要があると思うんですけどねえ・・・

「経済減便」は利用者にとってプラスかマイナスか

国土交通省が予約客が少なく採算の取れない国内航空便を条件付きで運休させる「経済減便」を制度化させるそうです。

 

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国交省、赤字便の運休制度化 7日前告知で経済減便認める

 

 

 

・「不採算」を理由にした運休は日本初

これまで定期航空路線の運休は機材トラブルや悪天候など「物理的に航空機の運航が不可能」な場合に限られており、一度航空券を販売したら極端な話、利用者が1名だけでも運航する必要がありました。認可を受けた公共交通機関である以上、当たり前と言えば当たり前ですし、利用者側からすれば運航されない可能性のある飛行機なんて安心して乗れるわけがありませんから、「毎日運航される」事に何の疑問も持たないのではないでしょうか。

しかし、営利企業である航空会社からすれば赤字と分かっていても飛ばさなければならないのは大きな負担です。新規路線の開設や増便にも二の足を踏むでしょうし、赤字の飛行機を飛ばす分、どこか他で取り返さなければなりませんから、採算が良く競合が少ない路線が値上げされるなどの弊害も出てしまいます。特に運賃が格安な分、搭乗率が高くないと採算割れに陥りやすいLCCに取っては「必ず飛ばさなければならない」今の定期航空路線の制度は大きな負担であり、アメリカなどで認められている経済減便制度の導入をかねてより求めていました。

国交省も昨年から制度導入に向けた検討を重ねており、昨年8月にはネット上でのアンケート調査も行っています。今回の経済減便制度のルール設定からも、アンケートの結果を反映したものになっていることがうかがえます。

http://www.mlit.go.jp/monitor/H29-kadai01/27.pdf

海外では当たり前の制度でも、日本では航空業界はもちろん、他の交通機関でもない制度ですので(某JRが昔やってた月一運休も見方によっては体のいい経済減便な気もしますが)、導入に慎重になるのも当然ですね。いずれにしろ「交通機関はダイヤ通りに運行されるもの」という従来の常識を覆す制度になるのは間違いありません。

 

・そんなに甘くない運休の条件

さて、この経済減便制度ですが、不採算なら自由に運休していいわけではなく、条件がいくつかあります。

①運休便の前後3時間以内に同一路線の自社便があること。

まあ、これは当然でしょう。1日1便しかない路線で運休されてしまったら振り替えようがないですし、次の便まで待てる時間としてはこのくらいが限界でしょう。また、他社便の振り替えを認めていないのも大きなポイント。航空会社側の都合による運休なわけですから、自分たちで何とかしろと言う事でしょう。

②運航の7日前までに国交省に届け出て、予約客に振り替えや払い戻しの連絡をする。

これも当然。運休決定から代替交通機関を探したり、旅程を変える時間を考えると最低でも一週間前には連絡が欲しいところ。国交省への届け出を義務付けたのも安易に経済減便を選択させないための歯止めと運休情報の把握と言う面では妥当だと思います。

③ウェブサイトからの予約の際、運休やスケジュール変更になる可能性がある事を利用者に告知する。

運休の可能性がある便を告知する必要はありますから、これも必要な条件だと思います。航空会社は全ての便の予約状況を把握しているわけですから、どの便が運休になる可能性があるかは大体わかるはず。利用者の中にはスケジュールが変わると困る人もいるわけですから、事前に運休リスクを周知することは必要だと思います。

また、運休を実施した場合は路線や便数を公表する必要がありますので、運休情報が蓄積されれば、どの便が運休の可能性があるかを推測できることもできるのではないでしょうか。

 

こうしてみると安易な「経済減便」をさせないよう、かなりの歯止めが掛けられている事が伺えます。また、制度的に認められたとしても、乗り継ぎによるネットワーク力で勝負するJALやANAはあまり利用しないのではと思います。例えばある便自体は赤字でも、乗客の大半が乗り継ぎ客と言うケースでは、その便を運休させて赤字が減るメリットよりも、乗り継ぎ客を他の便に振り替えるコストや手間、運休によって旅程変更を余儀なくされる利用者の航空会社への信用低下というデメリットの方が大きく、それなら多少赤字でも飛ばした方がいい、という判断になるかと思います。特に国際線乗継客の多い成田路線は経済減便はデメリットの方が多そうです。

実際のところ、経済減便制度はLCCの要望が大きかったようですので、実際に運用が始まればLCCは経済減便制度を積極利用、JALやANAはネットワークを重視して極力飛ばし、「本当に搭乗率が悪くて大赤字が確実」な便だけ経済減便制度を使うという形になるのではないでしょうか。

 

・航空会社には恩恵のある「経済減便」、利用者にメリットはあるの?

さて、経済減便制度が航空会社にとってはプラスの制度であることは言うまでもありませんが、利用者目線で見れば航空会社の都合で運休にされるのは不利益はあってもメリットはないように思えます。実際、経済減便自体は運休に伴う見舞金や追加サービスがない限り、利用者にとってはメリットは全くないと言っていいでしょう。

しかし、経済減便によって赤字になる便が減り、航空会社の経営改善に寄与すれば利用者サイドにも運賃の低減や増便と言う形でメリットが生まれます。運賃の低減は今まで赤字の便の為に高めに運賃を設定せざるを得なかったのが、経済減便でその必要が無くなれば高めに設定していた分を値下げして利用者に還元、という動きが生まれるかも知れません。また、「極端に搭乗率が悪ければ運休しても構わない」となれば、需要予測が低く増便に躊躇していた路線も増便に踏み切りやすくなるかもしれないので、結果的には利用者側の利便性も向上する、と言う理屈です。

 

しかし、本来のダイヤなら乗り継げたはずなのに、経済減便で運休になってしまうと乗り継げなくなる、あるいは運休になったことでホテルのチェックインやレンタカーの予約に間に合わず、キャンセルされるといった実害も十分予想されます。その場合、どこまで航空会社が補償してくれるのかが問題となりますが、フルサービスの会社ならともかく、LCCの場合は運休しても払い戻してはいおしまい、となる事は十分に考えられます。その辺がどうなるかは詳細の発表を待つ必要がありますが、内容によっては経済減便で不利益を受けるリスクを覚悟する必要があるかも知れません。

以上の事から、利用者サイドから見た経済減便制度は「メリットはあるが実感はし辛い。むしろ短期的には運休で受ける不利益の方が目立つ」となるのではないでしょうか。

 

国交省のアンケートでも経済減便制度自体は「賛成」「仕方ない」と答えた人が多数派となった一方、実際に運休となった場合の差額負担を求める人も半数以上いました。個人的にも経済減便制度自体は航空会社の経営強化や利便性向上の面から賛成ですが、利用者への影響を最小限に抑えるためのフォローや、制度や運休の可能性のある便の周知徹底は必要だと思います。この辺の対策をしっかり取らないと、運休された便の利用者の不満が募り、航空業界全体への不信感につながってしまうと思いますので、国交省や各航空会社には万全の対策をした上で有効に運用してもらいたいですね。

 

 

 

航空会社が「突然死」するワケ

迷航空会社列伝、今回は昨年10月に破産したモナーク航空を取り上げました。


迷航空会社列伝「業態転換は破滅のもと?~イギリス版て〇み〇らぶ・モナーク航空」

 

ご存知の通り、モナークの破産は突然だったため、欧州各地で11万人が取り残されるという、イギリス航空史上最大の倒産劇となってしまいます。イギリス民間航空局が帰国の為の臨時便を大量に手配する事態となり、日本を含めた世界中で大きく報道されました。当ブログでも破産直後にモナーク航空について取り上げています。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

また、突然の破たんでツアーキャンセルになり、お金が戻ってこなかったり旅行先から帰ってこれなくなったりして社会問題となった「てるみくらぶ」を思い出した方も多いのではないでしょうか。てるみくらぶについては係長様の「しくじり企業L」で取り上げられていますので、詳しくはこちらをご覧下さい。

 


【ゆっくり解説】しくじり企業L 01話 ~てるみくらぶ~

 

さて、モナーク航空に限らず、航空会社はなぜかある日突然破産して飛行機が止まる、というケースがしばしば起こります。古くはタイのエア・サイアムが突然運航停止となり、旅行者が国外に取り残された例や、同時多発テロ後にスイスのフラッグキャリア・スイス航空が資金ショートを起こして飛行機が差し押さえられ、全便運航停止となった例、記憶に新しいところでは台湾のトランスアジア航空が前日に運航停止を表明した後、会社解散を決めた例など、何の前触れもなく「突然死」してしまう事例が過去に何度もありました。

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そう言えばこの会社のお金って返金されたんでしょうか?

 

日本の航空会社も経営破綻した前例はありますが、運航開始前に破産したか、破たんはしても航空機の運航は続けられたケースばかりでしたので、チケットが紙くずになったり乗る飛行機がなくなったという例はありません。利用者からしてみればたまったものではない航空会社の突然の破産ですが、なぜこのような「突然死」が起こりえるのでしょうか?

カタール航空で人気の世界都市へお出かけください。

 

理由①イベントリスクによる急激な経営悪化

このケースは1991年の湾岸戦争や2001年の同時多発テロ、2008年のリーマン・ショックなど、航空需要が急激に悪化して利用者が激減する場合に起こります。元々業績の悪かった会社や、多額の負債を抱えて返済に苦しんでいた会社が、頼みの綱だったドル箱路線の採算悪化でお金が入って来なくなり、資金繰りに行き詰まって力尽きるケースが多いです。

湾岸戦争時に運航停止になったイースタン航空やミッドウェイ航空などがこれに当たります。

 

理由②当てにしていた資金がストップされ、万策尽きた

航空会社に限らず、会社が倒産するのは「お金が無くて支払いができなくなった時」ですが、言い換えれば資金繰りのメドさえ付けば会社は存続できます。しかし、その当てにしていた資金が入って来ず、支払いができなくなればその会社はある日突然潰れてしまいます。

このケースの代表的な例がパンナムとスイス航空。パンナムは湾岸戦争による経営悪化でチャプター11を申請後、大西洋路線を他社に売却し、自らはデルタの支援を受けつつ、マイアミ近辺の国内線と一部の中南米線だけを運航する中規模航空会社として存続する計画でした。しかし、その当てにしてたデルタからの資金は株主の猛反対にあってストップされ、資金繰りのメドが立たなくなったパンナムは運航停止に追い込まれました。

スイス航空のケースについては私の動画を見て頂ければと思いますが、これについても当てにしてたUBSの資金が遅れた事で世界中を揺るがす事態になってしまったので、資金不足がどれだけ恐ろしいかがお分かり頂けると思います。

 

理由③毎日の現金収支で会社が回ってしまうから資金不足に気づきにくい

例えば製造業だと商品の代金が振り込まれるのは大抵納品後。それまでの間の材料費や人件費などは一旦会社建替えになりますし、工場や製造ラインなどの設備投資費も膨大になりますので、常に潤沢な資金を用意する必要があります。それ故に多額の損失で資金繰りが逼迫すれば東芝やシャープのように早い段階で経営危機が表面化するケースが多いです(粉飾してたら気づきようはないですけど)しかし、見方を変えればどうしようもなくなる前に問題発覚すればまだ手を打つことができる、とも考えられます。

 

ところが航空会社の場合、航空機などの設備投資はかかるものの、収入である航空運賃は基本的に前払い。一方の燃料代や着陸料などの運航経費は到着時の支払いか、後払いになりますので、一時的に現金が手元に残ります。無論後払いになったお金もいずれ必ず支払うべきお金なのですが、前払いの航空券のお陰で毎日お金が入って来ますので「これだけ現金があればなんとかなるし、毎日現金が入って来るから何とか乗り切れる!」と思ってしまいがちです。が、その「何とか乗り切れる」を繰り返しているうちに負債はどんどん膨らんでいき、利払いも増えていきます。そして、資金繰りが苦しくなってきたときにはどうしようもない位の負債になり、支払いに窮してある日突然破産、となってしまいます。

 

クレジットカードでの決済だと実際の支払いまで間があり、買物してお金を払ったという感覚が薄れる為「まだ大丈夫」と思ってガンガン使い、気が付いたら支払いが膨れて首が回らなくなってカード破産する人と考え方は同じですね。経営破綻前のJALもこれに近い感じでしたし(最も、JALの場合はそれ以外にも問題は多かったのですが、問題を先送りにして金遣いもユルユルでしたので、まあ本質的には同じです)業界は違いますがてるみくらぶも同じような考えで目先の現金欲しさに安売りを続けた結果、負債が膨らんで首が回らなくなりました。日銭が入ると資金繰りは楽ですが、財務がいい加減だとこう言うリスクもあるわけです。

 

理由④過剰な投資や需要を見誤った投資をして負債が膨らんだ

航空会社は何百億もする航空機を使うビジネスなので、機材計画は5年先、10年先を見据えたものでなければいけません。資金面の他にも保有機を一機増やすだけでパイロット10人、客室乗務員数十人、整備士や地上スタッフも考えると100人近い人材を確保する必要がありますから、何年も前から準備する必要があります。

 

しかし、会社の体力を超えた機材を買ったり、機材を過剰に購入してしまうと、その機材が就航して稼ぐまでの間、何十億、何百億というお金を負担しなければなりません。また、就航後も目論見通りに乗客が乗らないと利益を出して投資資金を回収するどころか、下手したら損失を出して会社にダメージを与えてしまいます。

スロバキアのスカイヨーロッパのように、急成長を遂げた会社がある日突然資金繰りに行き詰まって破産するのは大体このパターンで、会社の成長スピードに資金が追いつかず、少しでも需要が減って搭乗率が下がると入るお金も減って資金繰りに行き詰まり、破産してしまう会社が現れます。「急成長=将来安泰」とは限らないのが、航空ビジネスの難しいところです。

 

以上、航空会社が突然行き詰まる理由について書いてみました。突然の破産は何も航空業界に限った話ではないのですが、毎日休みなく飛行機が動く分、突然止まった時のインパクトは他の業界よりも大きいもの。本当はそんな終わり方をする航空会社はない方がいいのですが、航空ビジネスの特性を考えると、今後もないとは言い切れないのが難しいところ。色んな意味で「ご利用は計画的に」。

 

 

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